分母を見れば指標がわかる―婚姻率が「人口千対」である理由
第116回医師国家試験 C問題 第15問
国試問題にチャレンジ
総人口を分母とする指標はどれか。
- a.婚姻率
- b.乳児死亡率
- c.老年人口指数
- d.標準化死亡比
- e.合計特殊出生率
対話形式の解説
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ドクターまとめ
衛生統計の指標は、分母が何かによって意味が決まります。婚姻率は年間婚姻件数を人口全体で割った人口千対の粗率で、出生率・死亡率・離婚率と同じグループに属します。乳児死亡率は出生千対、老年人口指数は生産年齢人口、標準化死亡比は期待死亡数、合計特殊出生率は年齢別の女性人口がそれぞれ分母であり、総人口ではありません。粗率は年齢構成の影響を受けるため、集団間の比較には年齢調整死亡率やSMRが用いられます。「出来事が起こりうる集団を分母にとる」という原則で指標を整理しておくと、暗記に頼らず統計データを正しく読み解く力が身につきます。
解答・解説
正解はaです
人口動態統計や人口静態統計で使う指標は、何を分母にしているかで性質が決まる。どの集団の中でどれだけ起こったかを表す指標なので、分母を正しく覚えておくことが指標を理解する基本になる。
分母で指標を分類する
・人口全体(人口千対)を分母にする「粗率」: 出生率、死亡率(粗死亡率)、婚姻率、離婚率など ・出生数を分母にする指標: 乳児死亡率、新生児死亡率、早期新生児死亡率など ・出産数(出生数+死産数)を分母にする指標: 死産率、周産期死亡率(分母は出生数+妊娠満22週以後の死産数) ・特定の年齢層の人口を分母にする指標: 年齢別出生率とそれを合計した合計特殊出生率、年齢3区分の人口を組み合わせた人口指数 ・期待値を分母にする指標: 標準化死亡比(SMR) 本問では、5つの指標のうち人口全体を分母にするものを選ぶ。年間の婚姻件数を人口で割り、1,000を掛けた婚姻率がこれにあたる。正確には、人口動態統計の粗率の分母は10月1日現在の日本人人口であり、外国人を含む厳密な意味の「総人口」ではない。ただし、ある年齢層や出生数などに絞らず人口全体を分母にしている指標は選択肢の中で婚姻率だけなので、これが正解となる。
選択肢考察
- ○a. 婚姻率
婚姻率は、年間の婚姻届出件数を人口で割って1,000を掛けた値(人口千対)である。年齢や性別で人口を絞らず、人口全体を分母とする粗率の一つなので、本問の条件にあてはまる。人口動態統計で実際に分母として使うのは10月1日現在の日本人人口だが、人口全体を分母にしている点は変わらない。離婚率、出生率、粗死亡率も同じく人口千対で表される。
- ×b. 乳児死亡率
乳児死亡率は、生後1年未満の死亡数を年間出生数で割って1,000を掛けた値(出生千対)であり、分母は出生数である。乳児は母体の健康状態や生活環境の影響を強く受けるため、乳児死亡率は地域や国の衛生状態・生活水準を反映する指標として重視される。日本の乳児死亡率は出生千対でおよそ2前後と、世界でも最も低い水準にある。
- ×c. 老年人口指数
老年人口指数は、老年人口(65歳以上)を生産年齢人口(15〜64歳)で割って100を掛けた値であり、分母は生産年齢人口である。働き手100人で何人の高齢者を支えているかを表す。年少人口(0〜14歳)を分母にした老年化指数や、年少人口と老年人口の和を生産年齢人口で割った従属人口指数と混同しないよう注意する。
- ×d. 標準化死亡比
標準化死亡比(SMR: standardized mortality ratio)は、観察集団で実際に起きた死亡数を期待死亡数で割った値で、100を掛けて表すことが多い。期待死亡数とは、基準集団(全国など)の年齢階級別死亡率を観察集団の年齢階級別人口に当てはめて求めた死亡数の合計である。これは間接法による年齢調整の考え方で、年齢構成の違いを除いて地域間の死亡状況を比べるのに使う。分母は期待死亡数であり、総人口ではない。100を超えれば基準集団より死亡が多いと判断する。
- ×e. 合計特殊出生率
合計特殊出生率は、15〜49歳の女性について、年齢ごとに「母の年齢別出生数÷その年齢の女性人口」を求め、それを全年齢分合計した値である。各年齢別出生率の分母はその年齢の女性人口であり、総人口ではない。1人の女性が、その年の年齢別出生率のとおりに一生の間に子を産むと仮定したときの子の数にあたる。人口を維持するのに必要な水準(人口置換水準)はおよそ2.07とされ、日本の値はこれを大きく下回っている。
人口千対の粗率
出生率、死亡率、婚姻率、離婚率は、いずれも年間の件数を10月1日現在の日本人人口で割って1,000を掛けた値である。粗率は人口の年齢構成の影響を受ける。たとえば高齢化が進んだ集団では、粗死亡率は高くなりやすい。そのため集団間で比べるときは、年齢調整死亡率(直接法)や標準化死亡比(間接法)を使う。
年齢3区分人口による指数
・年少人口指数=年少人口(0〜14歳)÷生産年齢人口(15〜64歳)×100 ・老年人口指数=老年人口(65歳以上)÷生産年齢人口×100 ・従属人口指数=(年少人口+老年人口)÷生産年齢人口×100 ・老年化指数=老年人口÷年少人口×100 このうち老年化指数だけは分母が年少人口になる。
母子保健の指標の分母
・乳児死亡率、新生児死亡率(生後4週未満)、早期新生児死亡率(生後1週未満): 出生千対 ・周産期死亡率: 出生数+妊娠満22週以後の死産数を分母とする(千対) ・死産率: 出産数(出生数+死産数)を分母とする(千対) ・妊産婦死亡率: 出産10万対(国際比較では出生10万対を用いることもある)
出生に関する指標
合計特殊出生率は女児と男児の両方を数える。女児だけを数えた総再生産率、さらに母親になるまでの女児の死亡を考慮した純再生産率もある。純再生産率が1を下回ると、将来人口は減っていく。
POINT
・婚姻率、離婚率、出生率、粗死亡率は人口千対の粗率で、分母は人口全体(人口動態統計では日本人人口) ・乳児死亡率、新生児死亡率は出生千対、周産期死亡率は出生数+妊娠満22週以後の死産数が分母 ・老年人口指数の分母は生産年齢人口(15〜64歳)、老年化指数の分母は年少人口 ・標準化死亡比=実際の死亡数÷期待死亡数(×100)。間接法による年齢調整 ・合計特殊出生率は、15〜49歳の女性の年齢別出生率(分母はその年齢の女性人口)を合計した値
