StudyMed医師国家試験

「お仕事は続けられていますか?」―生活に目を向ける一言が信頼をつくる医療面接

第116回医師国家試験 B問題 第9問

国試問題にチャレンジ

第116回 B問題 第9問

医療面接において患者と良好なコミュニケーションを行うために適切なのはどれか。

  1. a.医学用語を用いて病状を説明する。
  2. b.相手が話したことは繰り返さない。
  3. c.冒頭から閉じられた質問を用いる。
  4. d.電子カルテの画面を見ながら話を聞く。
  5. e.症状が患者の生活に及ぼしている影響を聞く。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は医療面接のコミュニケーションの問題だ。判断の軸はひとつ、「その行動で患者が『この医師は自分の話をきちんと聞いて、理解しようとしてくれている』と感じられるか」。この視点で選択肢を見ていこう。
医学生医学生
OSCEの医療面接の練習を思い出します。でも正直、専門用語で正確に説明したほうが誠実なのでは、と思うこともあります。
ドクタードクター
正確さは大事だけれど、伝わらなければ意味がないんだ。一般の患者さんの多くは医学用語になじみがなく、専門用語が並ぶと理解できないうえ、質問しにくい雰囲気や心理的な距離が生まれる。説明は平易な言葉に言い換えて、図や例えも使い、途中で理解を確認しながら進めるのが基本だよ。どうしても専門用語を使うなら、意味を添えて説明すればいい。
医学生医学生
患者さんの言葉を繰り返すのはどうでしょう。オウム返しみたいで、かえって失礼な気がしていました。
ドクタードクター
そう感じる人は多いね。でも反復や要約は、聞き取った内容が正しいか確認できるし、「ちゃんと受け止めてもらえた」と患者さんに伝わる効果がある。「眠れなくてつらいんですね」と感情の言葉を返せば、共感の表明にもなる。だから繰り返さないというのは不適切なんだ。
医学生医学生
質問の仕方では、最初から「はい・いいえ」で答える質問をすると効率はよさそうですが……。
ドクタードクター
それが閉じられた質問だね。冒頭から使うと医師の想定の範囲内でしか情報が得られず、患者さんが本当に伝えたいことや心配事を聞き逃しやすい。まずは「今日はどうなさいましたか」のような開かれた質問で自由に語ってもらい、焦点を絞った質問を経て、最後に閉じられた質問で細部を確認する。この順番が大切だ。
医学生医学生
臨床実習の外来見学で、電子カルテに入力しながら話を聞いている場面をよく見ました。忙しいと仕方ないのかなと思ったのですが。
ドクタードクター
現実には記録も必要だけど、画面ばかり見ていると患者さんは関心を持たれていないと感じるし、表情やしぐさといった非言語的な情報も見落としてしまう。患者さんの方に体を向け、適度に視線を合わせ、うなずきや相づちを交えて聴くのが望ましい。入力が必要なときはひと言断って、話の区切りで行えばいいんだ。
医学生医学生
そうすると正解は、症状が生活に及ぼしている影響を聞くこと、ですね。
ドクタードクター
正解。同じ腰痛でも、デスクワークの人と立ち仕事の人、子育て中の人とでは困りごとがまったく違う。仕事や家事、睡眠、趣味への影響を尋ねることで、その人が何に困り、何を心配し、どんな回復を望んでいるかが見えてくる。それが患者さんの価値観に沿った治療目標を一緒に考える材料になるんだ。
医学生医学生
医療面接の講義で習った「解釈・心配・期待・影響」を聴く、という話につながりますね。
ドクタードクター
その通り。病気そのものだけでなく、患者さんの体験としての病いに目を向けるのが患者中心の医療面接の核心だ。生活全体に関心を寄せてもらえたと感じることで、信頼関係も深まる。
医学生医学生
結局、どの選択肢も「話しやすさ」と「理解されている感覚」を守れるかどうかで判断できるんですね。
ドクタードクター
そういうことだ。最後にもうひとつ、面接の締めくくりも大事にしてほしい。要約して内容を確認したあと、「ほかに気になることはありませんか」と尋ねる。患者さんは緊張して言いたいことを全部言えなかったり、死への不安や性の悩みのように切り出しにくい話題を抱えていたりすることが多いからね。
医学生医学生
最後の一言が、一番大切な情報を拾うきっかけになることもあるわけですね。沈黙も急がずに待つようにします。
ドクタードクター
いい心がけだ。沈黙は患者さんが考えをまとめている時間でもある。技法を形だけなぞるのではなく、目の前の人を理解したいという姿勢があってこそ、傾聴も共感も本物になるよ。

まとめ

医療面接は診断のための情報収集の場であると同時に、患者との信頼関係を築き、治療への参加を促す場です。開かれた質問から始めて閉じられた質問で詳細を確認し、平易な言葉での説明、反復・要約・共感、患者に体を向けた非言語的な配慮を組み合わせることが基本となります。とくに症状が仕事・家事・睡眠など生活に及ぼす影響や、患者の解釈・心配・期待を聴くことは、その人の価値観に沿った治療目標を共有するうえで欠かせない患者中心の医療の要素です。面接の最後に要約と「ほかに気になることはありませんか」という確認を入れることで、言い残された大切な情報も拾い上げられます。こうした姿勢はOSCEだけでなく、あらゆる診療科での日々の臨床の土台になります。

解答・解説

正解はeです

医療面接は、診断に必要な情報を集める場であると同時に、患者と医師の信頼関係を築き、患者の理解や治療への参加を促す場でもある。そのための基本は、患者を一人の生活者として尊重し、話しやすい雰囲気を作って傾聴・共感し、患者の言葉で語られた内容を正確に受け止めることである。 各選択肢を判断する際は、「その行動が患者に『この医師は自分の話をきちんと聞き、理解しようとしてくれている』と感じさせるか」という視点で考えるとよい。専門用語による説明、復唱の回避、最初から「はい・いいえ」で答えさせる質問、画面ばかり見ながらの聴取は、いずれも患者の理解や話しやすさ、信頼感を損なう。一方、症状が日常生活や仕事、家庭にどのような影響を与えているかを尋ねることは、患者中心の医療面接の中心的な要素であり、良好なコミュニケーションにつながる。

選択肢考察

  1. ×a.  医学用語を用いて病状を説明する。

    一般の患者の多くは医学用語になじみがなく、専門用語を多用すると内容が伝わらないばかりか、質問しにくい雰囲気や心理的な距離を生む。病状説明は平易な日常語に言い換え、必要に応じて図や例えを用い、途中で理解度を確認しながら進めるべきである。やむを得ず専門用語を使う場合は、その意味を説明する。

  2. ×b.  相手が話したことは繰り返さない。

    患者の言葉や話の要点を適宜繰り返すこと(反復)や、話をまとめて返すこと(要約)は、聞き取った内容が正しいかを確認できるうえ、「きちんと受け止めてもらえた」と患者に伝える効果がある。感情面の言葉を繰り返せば共感の表明にもなる。したがって繰り返しを避けるのは不適切である。

  3. ×c.  冒頭から閉じられた質問を用いる。

    閉じられた質問(closed question、「はい・いいえ」や短い語で答える質問)を最初から用いると、医師の想定の範囲内でしか情報が得られず、患者が本当に伝えたいことや心配事を聞き逃しやすい。面接の冒頭は「今日はどうなさいましたか」のような開かれた質問(open-ended question)で患者に自由に語ってもらい、その後、焦点を絞った質問を経て、必要な事項を閉じられた質問で確認していくのが基本の流れである。

  4. ×d.  電子カルテの画面を見ながら話を聞く。

    画面を見続けたまま話を聞くと、患者は関心を持たれていないと感じ、話す意欲や信頼感が損なわれる。また表情や視線、しぐさなどの非言語的な情報も見落としやすい。患者の方に体を向け、適度に視線を合わせて(ずっと凝視するのではなく、顔の中央付近を柔らかく見る程度)、うなずきや相づちを交えながら聴くのが望ましい。記録の入力が必要な場合は、ひと言断ったうえで、話を区切って行う。

  5. ○e.  症状が患者の生活に及ぼしている影響を聞く。

    同じ症状でも、仕事・家事・睡眠・趣味などへの影響の程度や、それに対する受け止め方は患者ごとに大きく異なる。生活への影響を尋ねることで、患者が何に困り、何を心配し、どのような回復を望んでいるかが明らかになり、患者の価値観に沿った治療目標や方針を共に考える材料になる。さらに、自分の生活全体に関心を寄せてもらえたと患者が感じることで信頼関係が深まる。患者の解釈・心配・期待・影響を聴き取ることは、患者中心の医療面接の重要な要素である。

医療面接の基本的な流れ

1. 導入:挨拶、自己紹介、患者の氏名確認、面接の目的の説明、話しやすい環境(プライバシー、座る位置や距離)の整備 2. 情報収集:開かれた質問から始め、焦点を絞った質問、閉じられた質問へと進める。主訴、現病歴、既往歴、家族歴、生活歴・社会歴などを聴取する 3. 患者の考えの把握:病気についての患者の解釈、心配・不安、期待、生活への影響を尋ねる 4. まとめ:要約して内容を確認し、「ほかに気になることはありませんか」と言い残しがないか確かめる 5. 説明と今後の方針の共有

良好なコミュニケーションのための技法

・傾聴:関心をもって注意深く聴き、話をさえぎらない ・促し:うなずき、相づち、「それで」「もう少し詳しく教えてください」などで話を続けやすくする ・反復・要約:患者の言葉を繰り返し、話をまとめて返して理解を確認する ・共感:「それはおつらかったですね」と患者の感情を受け止めて言葉にする ・沈黙の活用:患者が考えをまとめる時間を尊重する ・非言語的コミュニケーション:視線、表情、姿勢、声の調子、距離に配慮する

最後の確認の意義

患者は医師の前で緊張し、話そうと思っていたことを全部は言えないことが多い。また、死への不安や性に関することなど切り出しにくい話題もある。面接の終わりに言い残しがないかを尋ねることで、こうした大切な情報を拾い上げることができる。

POINT

・医療面接は開かれた質問から始め、閉じられた質問で詳細を確認する。 ・平易な言葉で説明し、反復・要約・共感の技法を用いる。 ・患者の方を向き、視線や表情など非言語的コミュニケーションにも配慮する。 ・症状が生活に及ぼす影響や、患者の解釈・心配・期待を聴くことが患者中心の医療につながる。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。