人口は減るのに世帯は増える―数字で読み解く日本の「家族のかたち」
第115回医師国家試験 F問題 第9問
国試問題にチャレンジ
我が国の世帯構成について正しいのはどれか。
- a.世帯数は増加傾向にある。
- b.三世代世帯は単独世帯より多い。
- c.単独世帯は核家族世帯より多い。
- d.65歳以上の者のみの世帯は全世帯の過半数を占める。
- e.核家族世帯の中ではひとり親と未婚の子のみの世帯が最も多い。
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
わが国では人口が減少に転じた後も世帯数は増加を続けており、その背景には単独世帯や夫婦のみの世帯など少人数世帯の増加による平均世帯人員の減少(2019年で2.39人)があります。単独世帯は増えていますが、夫婦のみ・夫婦と未婚の子のみ・ひとり親と未婚の子のみを合わせた核家族世帯は全体の約6割を占め、単独世帯より多く、三世代世帯は約5%まで減少しています。また、全世帯の約半数を占めるのは「65歳以上の者のいる世帯」であり、「65歳以上の者のみの世帯」は約3割にとどまる点など、似た用語の範囲の違いに注意が必要です。核家族世帯の中では夫婦と未婚の子のみの世帯が最多で、ひとり親と未婚の子のみの世帯が最少です。高齢者の独居や夫婦のみ世帯の増加は在宅療養や退院支援、地域包括ケアの課題に直結するため、世帯構造の傾向を理解しておくことは日常診療にも役立ちます。
解答・解説
正解はaです
問われていること
わが国の世帯構造の現状と推移を問う統計問題である。世帯に関する統計は、厚生労働省の国民生活基礎調査(毎年実施、3年ごとに大規模調査)と、総務省の国勢調査(5年ごと)で把握される。出題当時の最新データである2019年(令和元年)国民生活基礎調査を中心に整理する。
2019年国民生活基礎調査の世帯構造(全世帯約5,179万世帯に対する割合)
・単独世帯 28.8% ・夫婦と未婚の子のみの世帯 28.4% ・夫婦のみの世帯 24.4% ・ひとり親と未婚の子のみの世帯 7.0% ・三世代世帯 5.1% ・その他の世帯 6.3% 核家族世帯(夫婦のみ+夫婦と未婚の子のみ+ひとり親と未婚の子のみ)は合計約60%を占める。
大きな流れ
・総世帯数は一貫して増加しているが、1世帯当たりの平均世帯人員は減少を続け、2019年には2.39人となった。 ・単独世帯と夫婦のみの世帯が増え、三世代世帯は大きく減少している。 ・65歳以上の者のいる世帯は全世帯の約半数(2019年49.4%)に達しているが、65歳以上の者のみで構成される世帯はそれより少なく、約3割である。 選択肢を判断する際は、「単独世帯」と「核家族世帯(合計)」、「65歳以上の者のいる世帯」と「65歳以上の者のみの世帯」のように、似た言葉の範囲の違いに注意することが重要である。
選択肢考察
- ○a. 世帯数は増加傾向にある。
国民生活基礎調査・国勢調査のいずれでも、わが国の世帯数は増加を続けている。人口は2008年頃をピークに減少に転じたが、単独世帯や夫婦のみの世帯といった少人数世帯が増え、1世帯当たりの人数が減っている(2019年の平均世帯人員は2.39人)ため、人口が減っても世帯数は増えるという現象が起きている。よって正しい。
- ×b. 三世代世帯は単独世帯より多い。
2019年の三世代世帯は全世帯の5.1%にすぎず、単独世帯(28.8%)の方がはるかに多い。三世代世帯はかつて(1980年代)は全世帯の1割を超えていたが、核家族化と高齢者の独居・夫婦のみ世帯の増加により減少し続けている。
- ×c. 単独世帯は核家族世帯より多い。
単独世帯は28.8%で、個々の世帯構造の中では最も多い類型の一つであるが、核家族世帯は夫婦のみ(24.4%)、夫婦と未婚の子のみ(28.4%)、ひとり親と未婚の子のみ(7.0%)の合計で約60%となり、単独世帯の約2倍である。単独世帯が増加傾向にあることから正しいと誤認しやすいが、比較の対象が核家族世帯「全体」である点に注意する。
- ×d. 65歳以上の者のみの世帯は全世帯の過半数を占める。
65歳以上の者のみで構成される世帯(高齢者世帯)は2019年で約1,488万世帯、全世帯の28.7%であり、過半数には遠く及ばない。全世帯の約半数(49.4%)を占めるのは「65歳以上の者のいる世帯」であり、両者を混同しないことが重要である。
- ×e. 核家族世帯の中ではひとり親と未婚の子のみの世帯が最も多い。
核家族世帯の内訳は、夫婦と未婚の子のみの世帯28.4%、夫婦のみの世帯24.4%、ひとり親と未婚の子のみの世帯7.0%(いずれも全世帯に対する割合、2019年)であり、ひとり親と未婚の子のみの世帯は核家族世帯の中で最も少ない。最も多いのは夫婦と未婚の子のみの世帯である。なお、ひとり親世帯では母親と子の世帯が父親と子の世帯より大幅に多い。
用語の定義(国民生活基礎調査)
・単独世帯:世帯員が一人だけの世帯 ・核家族世帯:夫婦のみの世帯、夫婦と未婚の子のみの世帯、ひとり親と未婚の子のみの世帯の総称 ・三世代世帯:世帯主を中心とした直系三世代以上の世帯 ・高齢者世帯:65歳以上の者のみで構成するか、またはこれに18歳未満の未婚の者が加わった世帯
65歳以上の者のいる世帯
2019年には全世帯の49.4%を占め、その内訳は夫婦のみの世帯(約32%)と単独世帯(約29%)が多く、合わせて6割を超える。三世代世帯は1割程度まで減っている。高齢者のみの世帯は、本人や配偶者が病気・要介護状態になると在宅生活の継続が難しくなりやすく、地域包括ケアや介護サービスの需要増加の背景となっている。
その後の動向
2022年の国民生活基礎調査では、単独世帯が32.9%と全世帯構造の中で最多となり、65歳以上の者のいる世帯は全世帯の50%をわずかに超えた。それでも核家族世帯の合計は単独世帯より多く、65歳以上の者のみの世帯(高齢者世帯)は約3割であって、本問の正誤は変わらない。
平均世帯人員の推移
1953年頃は5人前後であったが、その後減少を続け、2019年は2.39人、2022年は2.25人となっている。
POINT
・世帯数は増加、平均世帯人員は減少(少人数世帯の増加) ・単独世帯は増加しているが、核家族世帯の合計(約6割)の方が多い ・三世代世帯は約5%まで減少 ・65歳以上の者の「いる」世帯は約半数、65歳以上の者「のみ」の世帯は約3割 ・核家族世帯で最多は夫婦と未婚の子のみの世帯、最少はひとり親と未婚の子のみの世帯
