StudyMed医師国家試験

波線の向こうに隠れた目盛―日本人の食塩摂取量グラフを「知識で逆算」して読む

第115回医師国家試験 C問題 第14問

国試問題にチャレンジ

第115回 C問題 第14問

 1995~2018年の日本の性別の一人当たり食塩消費量を下に示す。  Xに相当する数値はどれか。

第115回 C問題 第14問の問題画像
  1. a.10.2
  2. b.10.5
  3. c.11.0
  4. d.12.0
  5. e.15.0

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、日本人の食塩摂取量の推移を男女別に示したグラフから、縦軸の目盛を読み取る問題だ。細かい数値を暗記していなくても、最近の摂取量の大まかな値と男女差を知っていれば逆算できる。もう一つの注目点は、縦軸の0.0のすぐ上に入っている波線だよ。
医学生医学生
公衆衛生の講義で国民健康・栄養調査の数字は出てきましたが、正直うろ覚えです。最近は男性で1日11 gくらいでしたっけ。
ドクタードクター
その感覚で十分だ。2018年は男性11.0 g、女性9.3 gで、男女差はおおむね1.5〜2 g程度で推移している。まずこの2つを手がかりにしよう。では、グラフの軸はどう読むべきかな。
医学生医学生
0.0から10.0までの間隔と、10.0からXまでの間隔が同じに見えるので、Xは20でしょうか。でもそんな選択肢はないですね。
ドクタードクター
そこが落とし穴なんだ。波線は「ここは省略しています」という記号だから、0.0から10.0までの距離は目盛として使えない。使えるのは、10.0の線、Xの線、そしてその上下に同じ間隔で引かれた補助線だけ。つまり10.0とXの差が1目盛の幅になる。
医学生医学生
なるほど、軸の下の方は「圧縮」されているんですね。CBTの統計の問題でも、軸の切り方で印象が変わるグラフがありました。
ドクタードクター
そうだね。では2018年の点を見てみよう。女性は10.0の線より目盛間隔の約3分の1下、男性はXの線より目盛間隔の約半分下にある。女性9.3 gなら10.0より約0.7 g下、男性11.0 gならXより約1 g下。ここから1目盛はどのくらいになる?
医学生医学生
0.7 gが3分の1目盛、1 gが半目盛なので、どちらも1目盛は約2 gですね。だからXは12.0です。
ドクタードクター
正解。Xは12.0で、2018年の男性約11 g、女性約9.3 gという実測値ときれいに一致する。ほかの数値も確認しておこう。Xが11.0だとしたらどうなる?
医学生医学生
1目盛が1 gになるので、男性はXの線とほぼ重なるはずですが、グラフでは明らかに下にあります。男性が10.5 g程度になってしまいますね。
ドクタードクター
その通り。男女差も1 g未満と実際より小さくなる。10.5や10.2はさらに目盛が細かくなって、男女差が0.5 g未満になってしまう。逆に15.0だと1目盛が5 gで、男性は12 g台、女性は8 g台、男女差は4 g以上と大きくなりすぎる。
医学生医学生
選択肢ごとに「この目盛ならこう読める」と当てはめて、実際の値と合うかを検証すればいいんですね。
ドクタードクター
そう、それがグラフ問題の基本戦略だ。ここで大きな流れも押さえておこう。食塩摂取量は長期的に減ってきたけれど、近年は減少が緩やかで、男性は10 g台後半、女性は9 g前後で推移している。男性が多いのは主に食事量、つまり摂取エネルギー量の差によるものだ。
医学生医学生
目標はどのくらいでしたか。高血圧の患者さんには6 g未満と、循環器内科の実習で指導されていました。
ドクタードクター
よく覚えているね。日本人の食事摂取基準では成人の目標量は男性7.5 g未満、女性6.5 g未満、高血圧や慢性腎臓病の重症化予防には6 g未満。高血圧治療ガイドラインも6 g未満、WHOは5 g未満を推奨している。健康日本21(第三次)は平均7 gを目標にしているよ。
医学生医学生
今の日本人の摂取量だと、どの目標にも全然届いていないんですね。
ドクタードクター
そうなんだ。日本人は醤油や味噌などの調味料、漬物、麺類の汁、加工食品からの食塩摂取が多い。減塩は高血圧や脳卒中、胃癌の予防の観点から重要な公衆衛生課題だ。外来で減塩指導をするときは「麺の汁は残す」「漬物を減らす」といった具体的な助言が役に立つよ。
医学生医学生
数字そのものより、「減っているけれど目標を大きく上回っている」という流れと、軸の読み方を押さえるのが大事ですね。
ドクタードクター
その理解で十分だ。細かな統計値の暗記は優先度が高くないけれど、確実に知っている値から目盛を逆算する考え方は、ほかの統計グラフの問題でもそのまま使えるよ。

まとめ

国民健康・栄養調査によると、日本人の食塩摂取量は長期的に減少してきましたが、2018年でも男性11.0 g、女性9.3 gと、男女差は約2 gで推移しています。縦軸が波線で省略されたグラフでは、0からの距離ではなく等間隔の目盛線の幅を基準に読む必要があり、本問では最近の値と男女差から1目盛を約2 gと逆算してXを12.0と判断できます。食事摂取基準の目標量は男性7.5 g未満・女性6.5 g未満、高血圧患者では6 g未満、WHOは5 g未満を推奨しており、日本人の摂取量はいずれも大きく上回っています。醤油・味噌・漬物・麺類の汁などが主な摂取源で、減塩は高血圧・脳卒中・胃癌予防の重要な課題です。知っている値から目盛を逆算する読み方と、減塩の公衆衛生的意義をセットで押さえておきましょう。

解答・解説

正解はdです

図の読み取り

グラフは1995〜2018年の国民健康・栄養調査による、20歳以上の日本人1人1日当たりの食塩摂取量(設問では「消費量」と表現されている)の推移を男女別に示したものである。縦軸は0.0のすぐ上に波線が入っており、0.0から10.0付近までの区間は省略されている。したがって0.0と10.0の間の距離は目盛として使えない。目盛として読めるのは、10.0の線とその上のXの線、さらにその上下に同じ間隔で引かれた補助線(10.0の1段下と、Xの1段上)であり、この等間隔の目盛線の幅(10.0とXの差)を基準に値を読む。男性は全期間を通じて女性より上方にあり、両者とも長期的には右肩下がりで減少している。

考え方

数値そのものを丸暗記していなくても、次のいずれかの知識があれば目盛を逆算できる。 (1)最近の食塩摂取量は男性約11g、女性約9g(2018年は男性11.0g、女性9.3g)。 (2)男女差はおおむね1.5〜2g程度で推移している。 グラフで2018年の女性の値は10.0の線より目盛間隔の約3分の1下、男性の値はXの線より目盛間隔の約半分下に位置している。女性9.3gが10.0の線より約0.7g下にあり、男性11.0gがXの線より約1g下にあることから、10.0とXの間の目盛間隔は約2gと読め、X=12.0と判断できる。逆にX=11.0とすると男性の2018年値は約10.5g、X=10.5や10.2とすると男女差が0.5g未満となり、いずれも実際の値と合わない。X=15.0では目盛間隔が5gとなり、2018年の男性が12g台、女性が8g台となって実際の値から外れる。 なお、0.0の線を基準に「0.0から10.0までと10.0からXまでが同じ間隔」と読むとX=20のような誤った値になる。波線で省略された軸では、省略部分を除いた等間隔の目盛だけを使うことが大切である。 本問は細かな統計値の記憶を問う設問であり、現在の国試対策としての優先度は高くない。ただし「日本人の食塩摂取量は減少傾向だが、依然として目標量を大きく上回る」という大きな流れは押さえておきたい。

選択肢考察

  1. ×a.  10.2

    Xが10.2であれば、10.0とXの目盛間隔はわずか0.2gとなる。すると2018年の値は男性約10.1g、女性約9.9gと読め、男女差は0.2g程度にしかならない。実際の値(男性11.0g、女性9.3g、差約1.7g)と大きく食い違う。

  2. ×b.  10.5

    Xが10.5であれば目盛間隔は0.5gで、2018年の男性値は約10.3g、女性値は約9.8gと読めてしまう。男女差も0.5g程度となり、実際の値(男性11.0g、女性9.3g)や1.5〜2g程度という男女差と合わない。

  3. ×c.  11.0

    Xが11.0であれば目盛間隔は1gとなり、2018年の男性値は約10.5g、女性値は約9.7gと読める。2018年の男性値11.0gはXの線とほぼ重なるはずだが、グラフでは男性の点はXの線より明らかに下にあり矛盾する。男女差も1g未満となり実際より小さい。

  4. ○d.  12.0

    10.0とXの目盛間隔を2gとすると、2018年は男性約11.0g、女性約9.3gと読め、国民健康・栄養調査(平成30年)の実測値と一致する。男女差も約1.5〜2gで推移しており、実際の傾向と合致する。したがってXは12.0である。

  5. ×e.  15.0

    Xが15.0であれば目盛間隔は5gとなり、2018年の男性値は約12.5g、女性値は約8.2gと読め、いずれも実際の値(男性11.0g、女性9.3g)から外れる。男女差も4g以上と過大になり、1995年の男性値は20gを超えることになって、実際の推移とかけ離れている。

日本人の食塩摂取量の動向

国民健康・栄養調査(健康増進法に基づき毎年実施)によると、20歳以上の食塩摂取量は長期的に減少してきた。2018年は男性11.0g、女性9.3g、全体で10.1gであり、その後も男性は10g台後半、女性は9g前後で推移し、近年は減少が緩やかになっている。男性が女性より多いのは主に摂取エネルギー量(食事量)の差による。

食塩摂取の目標

・日本人の食事摂取基準(2020年版、2025年版): 成人の目標量は男性7.5g/日未満、女性6.5g/日未満。高血圧および慢性腎臓病の重症化予防には6g/日未満。 ・日本高血圧学会の高血圧治療ガイドライン: 高血圧患者の減塩目標は6g/日未満。 ・WHO: 成人で5g/日未満を推奨。 ・健康日本21(第三次): 食塩摂取量の平均を7gとすることを目標としている(第二次では8g)。 日本人の摂取量はいずれの目標も大きく上回っており、減塩は高血圧・脳卒中・胃癌などの予防の観点から重要な公衆衛生課題である。

日本人の食塩摂取源

醤油、味噌などの調味料、漬物、麺類(汁)、加工食品からの摂取が多いのが特徴である。

POINT

・日本人の食塩摂取量(2018年)は男性11.0g、女性9.3g。男女差は約2g。 ・長期的には減少傾向だが、近年は横ばいに近い。 ・目標量は男性7.5g未満、女性6.5g未満(食事摂取基準)、高血圧患者は6g未満、WHOは5g未満。 ・グラフ問題では、確実に知っている最近の値や男女差から目盛を逆算するとよい。波線で省略された軸では、0からの距離ではなく等間隔の目盛線の幅を基準に読む。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。