臍と脇腹に浮かぶ青紫の斑―Cullen徴候とGrey-Turner徴候が告げる重症膵炎
第114回医師国家試験 F問題 第28問
国試問題にチャレンジ
急性壊死性膵炎でみられるのはどれか。2つ選べ。
- a.Courvoisier徴候
- b.Cullen徴候
- c.Grey-Turner徴候
- d.Murphy徴候
- e.Rovsing徴候
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
急性壊死性膵炎では、膵とその周囲の壊死に伴って出血性の滲出液が後腹膜腔に広がり、靱帯や筋膜の間隙を伝って皮下に達すると、臍周囲にCullen徴候、側腹部にGrey-Turner徴候という青紫色〜褐色の着色斑が現れます。いずれも重症膵炎を示唆しますが、出現頻度は高くなく、発症から時間がたって出ることが多いため、早期の重症度評価は造影CTや予後因子で行います。他の選択肢は、Courvoisier徴候が悪性腫瘍による下部胆管閉塞、Murphy徴候が急性胆嚢炎、Rovsing徴候が急性虫垂炎の所見です。徴候名・所見・疾患を機序とともに組にして理解しておくことは、試験対策だけでなく、急性腹症の診察で病態と重症度を素早く見抜く力につながります。
解答・解説
正解はb, cです
本問は、腹部の代表的な身体所見(人名の付いた徴候)と、それが見られる疾患を正しく結び付けられるかを問う。 急性膵炎では、膵酵素が膵内で活性化し、膵とその周囲が自己消化される。そのうち、膵実質や膵周囲脂肪組織の壊死を伴うものが急性壊死性膵炎で、重症化しやすい病型である。壊死と炎症が進むと、血管が傷んで出血性の滲出液が後腹膜腔に広がる。滲出液は筋膜の間隙や靱帯に沿って移動し、やがて皮下に達して皮膚に青紫色〜褐色の着色斑をつくる。この斑が臍周囲に出たものをCullen徴候、側腹部に出たものをGrey-Turner徴候と呼ぶ。 残りの選択肢は、それぞれ別の疾患の徴候である。Courvoisier徴候は悪性腫瘍による下部胆管閉塞、Murphy徴候は急性胆嚢炎、Rovsing徴候は急性虫垂炎に対応する。徴候名・所見・疾患の三つを組にして覚えておけば確実に解ける。
選択肢考察
- ×a. Courvoisier徴候
Courvoisier徴候は、黄疸があり、腫大した胆嚢を圧痛なく触れる所見である。胆嚢管合流部より十二指腸側(下部)の胆管が閉塞すると、胆汁がうっ滞して胆嚢が緊満する。原因は膵頭部癌、遠位胆管癌、十二指腸乳頭部癌などの悪性腫瘍が典型である。一方、総胆管結石では、慢性炎症で胆嚢壁が線維化して硬くなるため、胆嚢は腫大しにくい。急性壊死性膵炎の徴候ではない。
- ○b. Cullen徴候
Cullen徴候は臍周囲の皮膚に現れる青紫色〜褐色の着色斑(皮下出血斑)である。急性壊死性膵炎(出血性膵炎)で生じた出血性の滲出液が、後腹膜から肝鎌状靱帯・肝円索に沿って臍の皮下へ広がることで生じると考えられている。発症から1〜2日以上たって出ることが多い。重症膵炎を示唆する所見であるため正しい。なお、子宮外妊娠の破裂など、ほかの腹腔内・後腹膜出血でも見られることがある。
- ○c. Grey-Turner徴候
Grey-Turner徴候は側腹部(左側に多い)の皮膚に現れる青紫色〜褐色の着色斑である。急性壊死性膵炎で生じた出血性の滲出液が、後腹膜腔の腎傍腔を伝って側腹壁の皮下に達することで生じる。Cullen徴候と同様に重症膵炎を示唆する所見であるため正しい。腹部大動脈瘤破裂などの後腹膜出血でも見られることがある。
- ×d. Murphy徴候
Murphy徴候は急性胆嚢炎の所見である。検者が右季肋部(胆嚢の位置)を手で圧迫したまま患者に深く息を吸わせると、下がってきた炎症のある胆嚢が指に当たって痛み、吸気が途中で止まる。陽性なら胆嚢炎を強く疑う根拠になるが、陰性でも胆嚢炎は否定できない(特異度は比較的高いが、感度は高くない)。急性膵炎の徴候ではない。
- ×e. Rovsing徴候
Rovsing徴候は急性虫垂炎の所見である。仰臥位で左下腹部(下行結腸)を、下から上に押し上げるように圧迫すると、反対側の右下腹部(回盲部)の痛みが増強する。腸管内のガスが逆行して盲腸が伸展されることや、炎症が波及した腹膜が刺激されることで説明される。急性膵炎の徴候ではない。
急性膵炎の皮膚徴候
Cullen徴候: 臍周囲の着色斑 Grey-Turner徴候: 側腹部の着色斑 Fox徴候: 鼠径靱帯の下方(大腿上部)の着色斑 いずれも出血性の滲出液が後腹膜腔から皮下へ広がったことを示し、重症の急性壊死性膵炎を示唆する。ただし出現頻度は高くなく、出現までに時間がかかるため、早期診断に頼れる所見ではない。
急性膵炎の概要
主な原因はアルコールと胆石である。診断は、①上腹部の急性腹痛発作と圧痛、②血中または尿中の膵酵素の上昇、③超音波・CT・MRIでの急性膵炎の所見、のうち2項目以上を満たし、他の膵疾患や急性腹症を除外したものとされる。重症度は予後因子とCTグレードで評価する。造影CTで膵実質の造影不良域があれば壊死を示す。治療の基本は、十分な初期輸液、鎮痛、全身管理である。
その他の主な腹部徴候
Courvoisier徴候: 無痛性の胆嚢腫大と黄疸 → 膵頭部癌、遠位胆管癌、乳頭部癌 Murphy徴候: 右季肋部の圧迫と深吸気で吸気が止まる → 急性胆嚢炎 Rovsing徴候: 左下腹部の圧迫で右下腹部痛が増強 → 急性虫垂炎 このほか急性虫垂炎では、McBurney点の圧痛、Lanz点の圧痛、Blumberg徴候(反跳痛)、psoas徴候、Rosenstein徴候なども見られる。
POINT
・Cullen徴候(臍周囲)とGrey-Turner徴候(側腹部)の着色斑は、重症の急性壊死性膵炎を示唆する。Fox徴候(鼠径部)も同じ機序である。 ・Courvoisier徴候は悪性腫瘍による下部胆管閉塞、Murphy徴候は急性胆嚢炎、Rovsing徴候は急性虫垂炎の所見である。
