StudyMed医師国家試験

腫れる膵炎、縮む膵炎―自己免疫性膵炎を「ソーセージ」で見抜く

第119回医師国家試験 A問題 第1問

国試問題にチャレンジ

第119回 A問題 第1問

自己免疫性膵炎で誤っているのはどれか。

  1. a.膵の萎縮を認める。
  2. b.高齢男性に好発する。
  3. c.病理で線維化を認める。
  4. d.IgG4関連疾患に含まれる。
  5. e.治療はグルココルチコイド投与が第一選択である。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は自己免疫性膵炎の基本的な特徴を問う問題だ。誤っている記述を選ぶ形式だから、典型像をしっかり押さえたうえで、そこから外れるものを探していこう。カギは、アルコール性などの一般的な慢性膵炎との対比だ。まず、自己免疫性膵炎と聞いて何を思い浮かべるかな。
医学生医学生
IgG4が高くなる膵炎、というイメージです。CBTの勉強で覚えました。
ドクタードクター
いいスタートだね。日本で多い自己免疫性膵炎は1型で、全身性のIgG4関連疾患の膵病変と位置づけられている。だからIgG4関連疾患に含まれるという記述は正しい。一般に「自己免疫性膵炎」といえば1型を指すと考えていいよ。
医学生医学生
1型ということは、2型もあるんですか。
ドクタードクター
ある。2型は好中球が膵管上皮に入り込んで壊すGELという病変が特徴で、血清IgG4は上がらず、比較的若い人に多く、潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患を合併しやすい。欧米に比較的多いけれど、日本ではまれだ。今回は1型を前提に考えよう。では疫学はどうかな。
医学生医学生
自己免疫と聞くと、膠原病みたいに若い女性に多いのかと思ってしまいます。
ドクタードクター
そこは典型的な誤解だね。1型自己免疫性膵炎は中高年以降、特に60歳代以降の男性に多く、男女比はおよそ3〜4対1と男性優位なんだ。だから高齢男性に好発するという記述は正しい。そして、この年齢・性別は膵癌の好発層と重なる。これが臨床上とても大事なポイントになる。
医学生医学生
膵癌との鑑別が問題になる、ということですね。
ドクタードクター
その通り。次は病理だ。1型の組織像はリンパ形質細胞性硬化性膵炎、LPSPと呼ばれる。高度のリンパ球・形質細胞浸潤、花筵状線維化、閉塞性静脈炎、そして多数のIgG4陽性形質細胞の浸潤が4つの柱だ。
医学生医学生
病理学の講義で、花筵状線維化は「むしろの目のように渦巻く線維化」と習いました。なので、線維化を認めるという記述は正しいですね。
ドクタードクター
よく覚えているね。では画像所見に移ろう。膵の萎縮を認める、という記述はどう思う?
医学生医学生
慢性膵炎の一種だと考えると、萎縮しても不思議ではない気もしますが……。
ドクタードクター
そこが今回の落とし穴だ。自己免疫性膵炎の活動期の画像は「萎縮」ではなく「腫大」が基本なんだ。膵全体がびまん性に腫れて輪郭がなめらかになり、ソーセージ様と表現される。一部が腫瘤状に腫れる限局性腫大のこともある。造影CTでは遅延相で均一に濃染し、膵の周りに被膜様の低吸収帯、いわゆるcapsule-like rimを伴うことがある。主膵管は不整に細くなる狭細像を示す。
医学生医学生
なるほど。萎縮と膵石、主膵管の不整な拡張は、アルコール性の慢性膵炎の所見でしたね。
ドクタードクター
その対比が大事なんだ。慢性膵炎は萎縮して膵管が広がり、自己免疫性膵炎は腫れて膵管が細くなる。ただし、長い経過の例や再燃を繰り返した例、ステロイド治療後には二次的に萎縮がみられることもある。それでも、本症を特徴づける所見ではない。だから誤っているのは萎縮の記述だ。
医学生医学生
治療はステロイドが第一選択という記述も、正しいということですね。
ドクタードクター
そう。閉塞性黄疸や腹痛、膵外病変による症状がある例では、経口プレドニゾロンを0.6 mg/kg/日程度から始めて漸減するのが標準で、多くの例で速やかに改善する。ステロイドによく反応すること自体が、診断を支持する所見にもなるんだ。ただし減量や中止の後に再燃しやすいので、維持療法を行うことも多い。
医学生医学生
ステロイドがよく効くなら、疑わしければまず投与してみる、というのはどうでしょうか。
ドクタードクター
そこは注意が必要だね。膵癌を十分に否定しないまま安易に投与すると、癌の診断を遅らせてしまう危険がある。だから投与前に、超音波内視鏡下穿刺吸引、EUS-FNAなどで悪性を除外することが求められるんだ。
医学生医学生
臨床実習の消化器内科で、黄疸の患者さんが膵癌か自己免疫性膵炎かでカンファレンスが盛り上がっていたのを思い出しました。
ドクタードクター
まさに現場で悩むところだ。臨床像としては、痛みの乏しい閉塞性黄疸で見つかることが多いのも膵癌と紛らわしい点だね。診断の手がかりとして、膵外病変の検索も役立つ。IgG4関連疾患では、硬化性胆管炎、涙腺・唾液腺が腫れるミクリッツ病、後腹膜線維症、間質性腎炎などが同時に、あるいは時期をずらして起こりうる。糖尿病を合併することもあり、ステロイドで改善する場合もある。
医学生医学生
画像、血清IgG4、病理、膵外病変、ステロイド反応性を組み合わせて診断するんですね。
ドクタードクター
その通り。血清IgG4は135 mg/dL以上が目安だ。一つの所見に頼らず、複数を組み合わせて膵癌を見逃さないこと。それがこの病気を扱ううえでの一番の心構えだよ。

まとめ

自己免疫性膵炎は、日本ではほとんどが1型で、IgG4関連疾患の膵病変として位置づけられ、中高年以降の男性に多く発症します。画像ではソーセージ様のびまん性腫大や限局性腫大と主膵管の狭細像が典型で、萎縮・膵石・膵管拡張を示すアルコール性などの慢性膵炎とは対照的であり、本問では「萎縮を認める」が誤りです。病理ではリンパ球・形質細胞浸潤、花筵状線維化、閉塞性静脈炎、IgG4陽性形質細胞浸潤がみられ、治療はグルココルチコイドが第一選択で反応は良好ですが、再燃しやすい点に注意が必要です。好発層や無痛性黄疸という臨床像が膵癌と重なるため、ステロイド投与前に悪性を確実に除外し、血清IgG4や膵外病変も含めて総合的に診断することが重要です。「腫れる膵炎」と「縮む膵炎」を対比して理解することは、膵疾患の画像診断と鑑別の基礎になります。

解答・解説

正解はaです

自己免疫性膵炎(autoimmune pancreatitis:AIP)の基本的な特徴を問う問題である。「誤っているもの」を選ぶ形式なので、典型像と異なる記述を探す。 日本で多くみられるAIPは1型で、全身性の疾患であるIgG4関連疾患(IgG4-related disease:IgG4-RD)の膵病変と位置づけられている。押さえるべき典型像は次のとおりである。 ・疫学:中高年から高齢の男性に多い。 ・画像:膵のびまん性腫大(「ソーセージ様」と表現される)や限局性腫大を示し、周囲に被膜様の低吸収帯(capsule-like rim)を伴うことがある。主膵管は不整に細くなる(狭細像)。 ・血液:血清IgG4の高値(135 mg/dL以上が診断基準の目安)。 ・病理:リンパ球・形質細胞の著しい浸潤、花筵状(storiform)線維化、閉塞性静脈炎、IgG4陽性形質細胞の浸潤(lymphoplasmacytic sclerosing pancreatitis:LPSP)。 ・治療:グルココルチコイド(副腎皮質ステロイド)がよく効く。 このように、活動期の画像所見の基本は「腫大」であり、「萎縮」ではない。萎縮はアルコール性などの慢性膵炎で典型的にみられる所見で、両者を対比して覚えておくと判断しやすい。したがって誤っているのはaである。

選択肢考察

  1. ○a.  膵の萎縮を認める。

    誤った記述であり、本問の正解である。AIPの特徴的な画像所見は、膵全体がびまん性に腫れて輪郭がなめらかになる「ソーセージ様腫大」、あるいは一部が腫瘤状に腫れる限局性腫大である。造影CTでは遅延相で均一に濃染し、膵周囲に被膜様の低吸収帯を伴うことがある。膵萎縮は、長期経過例や再燃を繰り返した例、ステロイド治療後に二次的にみられることはあるが、本症を特徴づける所見ではない。萎縮・膵石・主膵管の不整拡張は、むしろアルコール性などの慢性膵炎を示唆する所見である。

  2. ×b.  高齢男性に好発する。

    正しい記述である。1型AIPは中高年以降、特に60歳代以降の男性に多く、男女比はおよそ3〜4:1と男性優位である。膵癌の好発年齢・性別と重なるため、膵癌との鑑別が臨床上の大きな課題となる。

  3. ×c.  病理で線維化を認める。

    正しい記述である。1型AIPの組織像はLPSP(リンパ形質細胞性硬化性膵炎)と呼ばれ、①高度のリンパ球・形質細胞浸潤、②花筵状線維化(storiform fibrosis:線維が渦巻き状・むしろの目のように錯綜する線維化)、③閉塞性静脈炎、④多数のIgG4陽性形質細胞浸潤が特徴である。好酸球浸潤を伴うことも多い。

  4. ×d.  IgG4関連疾患に含まれる。

    正しい記述である。1型AIPはIgG4関連疾患の代表的な臓器病変である。IgG4関連疾患では、膵のほか胆管(IgG4関連硬化性胆管炎)、涙腺・唾液腺(ミクリッツ病)、後腹膜(後腹膜線維症)、腎(間質性腎炎)などに同時性・異時性に病変が生じうるため、膵外病変の検索も診断に役立つ。なお、好中球の膵管上皮内浸潤(granulocytic epithelial lesion:GEL)を特徴とする2型AIPはIgG4関連疾患には含まれないが、日本ではまれであり、一般に「自己免疫性膵炎」といえば1型を指す。

  5. ×e.  治療はグルココルチコイド投与が第一選択である。

    正しい記述である。閉塞性黄疸、腹痛、膵外病変による症状などがある例では、経口グルココルチコイド(プレドニゾロン0.6 mg/kg/日程度から開始し、漸減する)が第一選択で、多くの例で速やかに改善する。ステロイドへの良好な反応は診断を支持する所見にもなる。ただし、膵癌を十分に否定せずに安易に投与すると癌の診断を遅らせる危険があるため、投与前の鑑別が重要である。一部の無症状例では無治療で自然に軽快することもあり、また減量・中止後に再燃しやすいため維持療法が行われることも多い。

自己免疫性膵炎の分類

・1型(LPSP):IgG4関連疾患の膵病変。高齢男性に多く、血清IgG4高値、膵外病変の合併が多い。日本のAIPの大部分を占める。 ・2型(IDCP:idiopathic duct-centric chronic pancreatitis):好中球による膵管上皮の破壊(GEL)が特徴。血清IgG4は上昇せず、比較的若年に多く、炎症性腸疾患(特に潰瘍性大腸炎)の合併がみられる。欧米に比較的多い。

臨床像

・無痛性の閉塞性黄疸(膵内胆管の狭窄や硬化性胆管炎による)で発見されることが多く、腹痛は軽度か欠如することが多い。 ・膵内分泌障害による糖尿病の合併がしばしばみられ、ステロイド治療で改善することもある。

診断の要点

・画像(膵腫大、主膵管狭細像)、血清学(IgG4 135 mg/dL以上)、病理、膵外病変、ステロイド反応性を組み合わせて診断する(日本膵臓学会の臨床診断基準)。 ・膵癌との鑑別が最重要であり、超音波内視鏡下穿刺吸引(EUS-FNA)などで悪性を否定することが求められる。

慢性膵炎(アルコール性など)との対比

・慢性膵炎:膵萎縮、膵石、主膵管の不整拡張、外分泌・内分泌機能低下。 ・自己免疫性膵炎:膵腫大、主膵管のびまん性・限局性狭細、ステロイドが有効。

POINT

・自己免疫性膵炎(1型)はIgG4関連疾患の膵病変である。 ・高齢男性に多く、無痛性閉塞性黄疸で発症しやすい。 ・画像はソーセージ様のびまん性膵腫大と主膵管狭細像が典型で、萎縮ではない。 ・病理はリンパ球・形質細胞浸潤、花筵状線維化、閉塞性静脈炎、IgG4陽性形質細胞浸潤。 ・治療の第一選択はグルココルチコイドで、反応良好だが再燃しやすい。投与前に膵癌の除外が必須。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。