「異常なし」でも消えない不安―医療面接で口にしてはいけない一言
第114回医師国家試験 E問題 第4問
国試問題にチャレンジ
他の医療機関で異常を認めないと説明された後も,不安が続いている患者が来院した。 対応する医師の医療面接における言葉として適切でないのはどれか。
- a.「あなたの気持ちを聞かせてください」
- b.「どのような病気を心配されていますか」
- c.「異常を認めないと言われても不安があるのですね」
- d.「心配し過ぎるあなたの性格に問題があるように思います」
- e.「不安をお持ちでしょうが,それでもよく頑張っていますね」
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
他院で「異常なし」と説明されても不安が続く患者は、自分の訴えが十分に受け止められていないと感じていることが多く、医療面接では傾聴、共感(繰り返し・反映)、解釈モデルの聴取、支持的態度が基本となります。開放型質問で気持ちを語ってもらい、何を心配しているかを具体的に尋ね、感情を言葉にして返し、頑張りをねぎらう言葉はいずれも適切です。一方、「心配し過ぎる性格に問題がある」のように医師の価値観で患者を評価して伝える評価的態度は、患者を傷つけて信頼関係を損ない、背景にある身体疾患や精神疾患の見逃しにもつながるため避けるべきです。Porterの5つの態度(評価的・解釈的・調査的・支持的・理解的)を区別して理解しておくことは、OSCEだけでなく日々の診療で患者と向き合う力の土台になります。
解答・解説
正解はdです
本問は「適切でないもの」を選ぶ問題である。 状況を整理すると、患者は別の医療機関で「異常なし」と説明されたにもかかわらず不安が消えず、改めて受診している。このような患者は、「自分の訴えを本気で受け止めてもらえなかった」「説明に納得できていない」と感じていることが多い。ここで医師が「異常はないのだから気にしなくてよい」と突き放したり、不安を抱く患者自身を否定したりすれば、不安はさらに強まり、医師・患者関係も築けない。 医療面接で求められるのは、(1) 患者の話を遮らずに聴く(傾聴)、(2) 患者の感情を言葉にして受け止める(共感・反映)、(3) 患者が何を心配しているのか、どう考えているのか(解釈モデル)を尋ねる、(4) 患者の努力や頑張りを肯定的に支える(支持)、といった姿勢である。逆に、医師自身の価値観で患者の性格や考え方を良い・悪いと判断して伝える「評価的態度」は、患者を傷つけ、話しにくくさせるため避けるべきである。 各選択肢がどの態度・技法にあたるかを考えると、患者の性格を問題視するdだけが評価的態度であり、適切でない。
選択肢考察
- ×a. 「あなたの気持ちを聞かせてください」
適切である。患者が抱えている不安や感情を自由に語ってもらう開放型の質問(オープンクエスチョン)であり、傾聴の姿勢を示している。不安を主訴に来院した患者では、まず気持ちを十分に話してもらうことが、不安の背景を理解し信頼関係を築く出発点となる。
- ×b. 「どのような病気を心配されていますか」
適切である。患者が自分の症状をどう理解し、何を恐れているか(解釈モデル)を尋ねる質問である。たとえば家族ががんで亡くなったためにがんを心配している、といった具体的な懸念がわかれば、それに焦点を当てた説明や必要な検査の検討ができ、患者の納得につながる。前医で「異常なし」と言われても不安が残る背景には、こうした懸念が十分に扱われていないことが多い。
- ×c. 「異常を認めないと言われても不安があるのですね」
適切である。患者の言葉や様子から読み取った感情を医師が言葉にして返す技法で、患者が述べた内容をそのまま返す場合は「繰り返し」、表出された感情を汲み取って返す場合は「反映」と呼ばれ、いずれも共感的態度の表れである。患者は「この医師は自分の気持ちをわかってくれている」と感じ、さらに話を続けやすくなる。
- ○d. 「心配し過ぎるあなたの性格に問題があるように思います」
適切でない(正答)。医師個人の判断基準や価値観で患者の性格を「問題がある」と断じ、それを患者に伝える評価的態度である。不安を抱えて受診した患者を否定することになり、患者は傷つき、自分の訴えが軽視されたと感じて心を閉ざしてしまう。医師は中立の立場を保ち、患者の価値観や感情を尊重して接するべきである。また、話を十分に聴かないうちに不安の原因を性格に帰すと、見逃されている身体疾患や、不安症などの精神疾患の評価もおろそかになりかねない。
- ×e. 「不安をお持ちでしょうが,それでもよく頑張っていますね」
適切である。患者の不安に理解を示したうえで、不安を抱えながらも日常生活を送り、受診行動をとっていることを肯定的にねぎらう支持的態度である。患者の自己評価を支え、医師への信頼を高めることにつながる。
医療面接における医師の態度(Porterの分類)
医師が患者の発言にどう応じるかは、一般に次の5つに分けて整理される。 ・評価的態度:医師の価値観で患者の考えや行動の善し悪しを判断して伝える(例:「それはあなたが悪い」)。患者を萎縮させるため避ける。 ・解釈的態度:患者の問題の原因を医師が解釈して示す(例:「それはストレスのせいでしょう」)。早すぎる解釈は押し付けになりやすい。 ・調査的態度:さらに情報を得るために質問を重ねる。必要だが、尋問のようになると患者は話しにくくなる。 ・支持的態度:患者の考えや行動を肯定し、励まし、ねぎらう(例:「よく頑張っていますね」)。 ・理解的(共感的)態度:患者の気持ちをそのまま受け止め、理解したことを伝える(例:「不安だったのですね」)。医療面接で最も重視される。
医療面接の主な技法
・開放型質問(オープンクエスチョン):「どうされましたか」など、自由に答えられる質問。面接の初期に用いる。 ・閉鎖型質問(クローズドクエスチョン):「はい・いいえ」で答える質問。情報の確認に用いる。 ・促し、繰り返し、言い換え、要約:話を続けやすくし、理解を確認する。 ・反映:患者の感情を言葉にして返す。 ・解釈モデルの聴取:患者が病気の原因・重さ・今後をどう考え、何を心配し、何を期待しているかを尋ねる。
「異常なし」と言われても不安が続く患者への対応
検査で異常がないことを伝えるだけでは、不安が解消されないことが多い。患者の具体的な心配(解釈モデル)を聴き出し、それに沿って説明することが重要である。また、身体症状症や病気不安症(かつての心気症)、不安症、うつ病などの精神疾患が背景にある可能性も念頭に置き、必要に応じて評価・紹介を行う。
POINT
・医療面接では傾聴、共感(繰り返し・反映)、解釈モデルの聴取、支持的態度が基本。 ・医師の価値観で患者の性格や行動を評価して伝える「評価的態度」は避ける。 ・「異常なし」と言われても不安が続く患者には、何を心配しているのかを具体的に尋ね、その懸念に沿って説明する。
