「陽性なら確定に近い」検査はどれ?―関節リウマチと抗CCP抗体、特異度で選ぶ血液検査
第114回医師国家試験 B問題 第50問(連問)
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連問の共通文
次の文を読み,49と50の問いに答えよ。 42歳の女性。倦怠感と関節痛を主訴に来院した。 現病歴:半年前に全身の倦怠感と両手首の痛みを自覚した。その後,両肘にも痛みが出現し,物を握りにくくなったという。発熱や咽頭痛,咳,痰,体重減少,発熱および寝汗はない。 既往歴:高血圧症で診療所に通院中。 生活歴:喫煙歴と飲酒歴はない。夫と10歳の息子との3人暮らし。仕事は病院事務をしている。 家族歴:兄が糖尿病。その他,特記すべきことはない。 現症:意識は清明。身長153 cm,体重49 kg。体温36.0℃。脈拍88/分,整。血圧134/80 mmHg。呼吸数18/分。SpO2 97%(room air)。皮疹を認めない。眼瞼結膜は貧血様で眼球結膜に黄染を認めない。咽頭に異常を認めない。甲状腺腫と頸部リンパ節を触知しない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦,軟で,肝・脾を触知しない。両側の肘,手関節,中手指節関節,近位指節間関節の圧痛と腫脹を認める。 検査所見:血液所見:赤血球384万,Hb 11.0 g/dL,Ht 33%,白血球6,200,血小板38万。血液生化学所見:総蛋白7.8 g/dL,アルブミン3.3 g/dL,総ビリルビン0.4 mg/dL,AST 11 U/L,ALT 8 U/L,LD 160 U/L(基準120~245),CK 22 U/L(基準30~140),尿素窒素10 mg/dL,クレアチニン0.4 mg/dL,Na 143 mEq/L,K 4.4 mEq/L,Cl 105 mEq/L。CRP 3.3 mg/dL。
この患者を診断する上で最も特異度の高い検査はどれか。
- a.CRP
- b.抗核抗体
- c.血清IgG
- d.抗CCP抗体
- e.リウマトイド因子〈RF〉
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
6週以上続く対称性の小関節主体の多関節炎で、DIP関節病変や皮疹、筋所見を欠く場合は関節リウマチを第一に考えます。診断を確定に近づけるには「陽性なら病気がある可能性が高い」特異度の高い検査が有用で、抗CCP抗体は感度約70〜80%、特異度約95%前後と最も優れています。リウマトイド因子は感度は同程度でも他の膠原病・慢性肝疾患・慢性感染症・高齢者で陽性となり、CRPや血清IgG、抗核抗体も関節リウマチに特異的ではありません。抗CCP抗体は早期から陽性となり、陽性例は関節破壊が進みやすいという予後予測の意義もあり、2010年ACR/EULAR分類基準にも組み込まれています。感度と特異度の使い分け(SnNout・SpPin)を理解することは、あらゆる検査を臨床で正しく使う基本となります。
解答・解説
正解はdです
所見の整理と診断
42歳女性が、半年前から全身倦怠感と関節痛を訴えている。痛みは両手首から両肘へ広がり、物を握りにくくなっている。診察では両側の肘、手関節、中手指節関節(MCP関節)、近位指節間関節(PIP関節)に圧痛と腫脹があり、6週間以上続く左右対称性の小関節主体の多関節炎である。遠位指節間関節(DIP関節)の記載はない。 検査では Hb 11.0 g/dL の軽度貧血があり、MCV(平均赤血球容積)は Ht 33% ÷ 赤血球 384万/μL × 1,000 ≒ 86 fL で正球性である。CRP 3.3 mg/dL と炎症反応が上昇し、アルブミンは 3.3 g/dL と軽度低下している。慢性炎症に伴う貧血と考えられる。CK は正常で筋炎は考えにくく、皮疹・Raynaud現象・甲状腺腫もない。 以上から、変形性関節症(DIP関節優位で炎症反応に乏しい)、乾癬性関節炎(DIP関節・非対称性・皮疹や爪病変)、全身性エリテマトーデス(SLE)や全身性強皮症、多発性筋炎・皮膚筋炎(皮膚・筋所見を欠く)は考えにくく、関節リウマチ(RA)が最も疑われる。
設問の考え方
本問は、関節リウマチの診断を確かにするうえで「特異度」が最も高い検査を問うている。 ・感度:その病気の人のうち、検査が陽性になる割合。感度が高い検査は、陰性であれば病気を否定するのに役立つ。 ・特異度:その病気でない人のうち、検査が陰性になる割合。特異度が高い検査は、陽性であれば病気を確定する方向に強く働く(他の病気では陽性になりにくい)。 関節リウマチに関連する検査のうち、CRP、IgG、抗核抗体、リウマトイド因子(RF)はいずれも他の自己免疫疾患や感染症、肝疾患などで陽性・高値となりうるため特異度が低い。一方、抗CCP抗体(抗環状シトルリン化ペプチド抗体)は関節リウマチ以外の疾患で陽性になることが少なく、特異度はおよそ95%前後と最も高い。したがって正解は抗CCP抗体である。
選択肢考察
- ×a. CRP
CRP(C反応性蛋白)は、炎症性サイトカイン、特にインターロイキン6(IL-6)の刺激で肝臓が産生する急性期蛋白である。活動性の関節リウマチでは多くの例で上昇し、疾患活動性の評価(DAS28-CRP など)や治療効果の判定に用いられる。2010年ACR/EULAR分類基準でも急性期反応物質の項目(CRPまたは赤沈の異常で1点)に含まれる。しかし、細菌感染症、他の膠原病、悪性腫瘍、外傷など炎症を起こすあらゆる病態で上昇するため、関節リウマチに対する特異度は低い。誤りである。
- ×b. 抗核抗体
抗核抗体(ANA)は細胞核内の成分に対する自己抗体の総称である。SLEではほぼ全例で陽性となり、全身性強皮症、混合性結合組織病(MCTD)、Sjögren症候群などでも高頻度に陽性となる。関節リウマチでも2〜3割程度で陽性となるが、他の膠原病のほうがはるかに高頻度であり、低力価であれば健常者でも陽性になることがある。関節リウマチの診断に対する特異度は低く、誤りである。
- ×c. 血清IgG
関節リウマチでは慢性炎症に伴い、多クローン性の高γグロブリン血症として血清IgGが上昇することがある。本例でも総蛋白7.8 g/dL に対してアルブミン3.3 g/dL と、グロブリン分画の増加が示唆される。しかし、多クローン性のIgG上昇はSLE、Sjögren症候群、慢性肝疾患、慢性感染症などでも広くみられ、関節リウマチに特異的な所見ではない。誤りである。
- ○d. 抗CCP抗体
抗CCP抗体は、アミノ酸のアルギニンがシトルリンに変換(シトルリン化)された蛋白に対する自己抗体(抗シトルリン化蛋白抗体、ACPA)を、人工的に合成した環状シトルリン化ペプチドを抗原として測定するものである。関節リウマチの滑膜ではフィブリノゲンやビメンチンなどのシトルリン化蛋白が生じており、これに対する免疫反応が病態に関わると考えられている。関節リウマチに対する感度はおよそ70〜80%でRFと同程度だが、特異度は約95%前後と高く、他の膠原病や感染症で陽性になることは少ない。さらに発症前や早期から陽性となることがあり、陽性例では骨びらんなど関節破壊が進行しやすいという予後予測の意義もある。本問の選択肢の中で最も特異度が高く、正しい。
- ×e. リウマトイド因子〈RF〉
リウマトイド因子(RF)は、IgGのFc部分に対する自己抗体(主にIgM型)である。関節リウマチ患者の約70〜80%で陽性となり、2010年ACR/EULAR分類基準の血清学的項目にも抗CCP抗体と並んで含まれる。しかし、Sjögren症候群やSLEなど他の膠原病、C型肝炎などの慢性肝疾患、慢性感染症(感染性心内膜炎、結核など)、クリオグロブリン血症でも陽性となり、健常な高齢者でも一定の割合で陽性となる。このため特異度は抗CCP抗体より低い。誤りである。
関節リウマチの主な血液検査の特徴
・抗CCP抗体:感度 約70〜80%、特異度 約95%前後。診断的価値が高く、早期診断と関節破壊の予後予測に有用である。 ・リウマトイド因子(RF):感度 約70〜80%だが特異度は低い。他の膠原病、慢性肝疾患、慢性感染症、高齢者でも陽性となる。 ・CRP・赤沈:疾患活動性の指標。特異性はない。 ・抗核抗体:関節リウマチでは2〜3割程度で陽性。SLEなど他の膠原病の鑑別に用いる。 ・マトリックスメタロプロテイナーゼ3(MMP-3):滑膜増殖を反映し、関節破壊の予測や活動性評価の参考になるが、他の関節炎や腎機能低下、ステロイド投与でも上昇する。
2010年ACR/EULAR分類基準
少なくとも1か所の関節に滑膜炎があり、他疾患で説明できない場合に、次の合計が6点以上で関節リウマチに分類する。 ・罹患関節:大関節1か所 0点、大関節2〜10か所 1点、小関節1〜3か所 2点、小関節4〜10か所 3点、小関節を含む11か所以上 5点 ・血清学的検査(RF、抗CCP抗体):いずれも陰性 0点、いずれかが低値陽性 2点、いずれかが高値陽性(基準上限の3倍超)3点 ・急性期反応物質(CRP、赤沈):いずれも正常 0点、いずれかが異常 1点 ・症状持続期間:6週未満 0点、6週以上 1点 本例は小関節を多数含む多関節炎(3〜5点)、CRP上昇(1点)、持続6週以上(1点)であり、ここに抗CCP抗体やRFの陽性が加われば6点以上となる。
感度と特異度の使い分け
感度の高い検査は陰性のときに疾患を除外するのに役立ち(SnNout)、特異度の高い検査は陽性のときに疾患を確定するのに役立つ(SpPin)。関節リウマチの確定に近づくには特異度の高い抗CCP抗体が有用である。
関節リウマチの臨床像の補足
30〜50歳代女性に多い。近年は65歳以上で発症する高齢発症関節リウマチも増えており、若年発症に比べ男女差が小さく、肩や膝などの大関節から急性に発症し、炎症反応が強いことがある。リウマチ性多発筋痛症や偽痛風、感染性関節炎との鑑別が問題になる。
POINT
・関節リウマチの診断で最も特異度が高い血液検査は抗CCP抗体(特異度約95%前後)である。 ・RFは感度は同程度だが、他の膠原病・慢性肝疾患・慢性感染症・高齢者でも陽性となり特異度が低い。 ・CRP・赤沈は疾患活動性の指標であり、診断の特異性はない。 ・抗CCP抗体は早期から陽性になりやすく、陽性例は関節破壊が進行しやすい。 ・特異度の高い検査は「陽性なら確定に近づく」、感度の高い検査は「陰性なら除外に近づく」。
