熱も出ない、静かに腎を蝕む―IgG4関連腎臓病は「間質」と「ステロイド」で押さえる
第114回医師国家試験 A問題 第13問
国試問題にチャレンジ
IgG4関連疾患の腎病変について正しいのはどれか。2つ選べ。
- a.思春期に好発する。
- b.間質性腎炎を認める。
- c.初発症状は発熱が多い。
- d.半月体形成性腎炎を認める。
- e.治療は副腎皮質ステロイドが第一選択である。
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
IgG4関連疾患は、血清IgG4高値とIgG4陽性形質細胞浸潤・線維化により全身の臓器に腫大性病変をつくる慢性炎症性疾患で、60歳代を中心とする中高年男性に多くみられます。腎病変であるIgG4関連腎臓病の主体は尿細管間質性腎炎で、IgG4陽性形質細胞の密な浸潤と花筵状線維化が特徴であり、糸球体病変としては膜性腎症の合併が知られ、半月体形成性腎炎は典型的ではありません。発熱などの全身炎症症状は乏しく、腎機能低下や検尿異常、造影CTでの多発造影不良域、他臓器病変の精査をきっかけに見つかることが多く、低補体血症を伴いやすい点も手がかりになります。治療は副腎皮質ステロイドが第一選択で反応は良好ですが、再燃が多く、治療が遅れると線維化により腎機能の回復が不十分になるため早期診断が重要です。悪性腫瘍や類似疾患との鑑別を意識しながら、病変の主座と治療反応性を押さえることが、この疾患を見逃さない臨床判断につながります。
解答・解説
正解はb, eです
IgG4関連疾患(IgG4-related disease:IgG4-RD)は、血清IgG4の上昇と、IgG4陽性形質細胞の著しい浸潤および線維化によって、全身のさまざまな臓器に腫大や結節・肥厚性病変を生じる慢性の炎症性疾患である。日本から提唱された疾患概念で、自己免疫性膵炎、Mikulicz病(涙腺・唾液腺の腫大)、硬化性胆管炎、後腹膜線維症などが同じ病態の臓器病変として整理されている。 腎臓に病変が生じたものをIgG4関連腎臓病(IgG4-related kidney disease:IgG4-RKD)とよぶ。本問はその特徴を問うている。押さえるべき軸は次の4点である。 1. 好発年齢・性:中高年(60歳代中心)の男性に多い。 2. 病変の主座:糸球体ではなく尿細管間質であり、組織像は尿細管間質性腎炎である。 3. 発見の契機:発熱などの全身炎症症状は目立たず、腎機能低下、検尿異常、画像検査での腎の異常影、あるいは他臓器のIgG4関連病変の精査中に見つかることが多い。 4. 治療:副腎皮質ステロイドがよく効き、第一選択となる。 この4点に照らすと、「間質性腎炎を認める」と「治療は副腎皮質ステロイドが第一選択」が正しい。
選択肢考察
- ×a. 思春期に好発する。
IgG4関連疾患は中高年に好発し、発症のピークは60歳代で、男性に多い(特に膵病変や腎病変で男性優位が目立つ)。思春期の発症はまれである。
- ○b. 間質性腎炎を認める。
IgG4関連腎臓病の主病変は尿細管間質性腎炎である。腎生検では、尿細管間質にリンパ球とIgG4陽性形質細胞が密に浸潤し、IgG4陽性形質細胞が高倍率1視野あたり10個を超え、かつIgG4/IgG陽性細胞比が40%を超えるという所見(診断基準ではこの両方を満たすことが求められる)がみられる。さらに花筵(むしろ)状線維化(storiform fibrosis)と呼ばれる渦巻き状の特徴的な線維化を伴う。画像では、造影CTで腎実質の多発性の造影不良域、びまん性腎腫大、乏血性の腫瘤などを示す。
- ×c. 初発症状は発熱が多い。
IgG4関連疾患は、発熱、強い倦怠感、CRPの著明な上昇といった激しい全身炎症症状を示すことが少ないのが特徴の一つである。腎病変は、健康診断などでの腎機能低下(血清クレアチニン上昇)や尿検査の異常、CTでの腎の異常影、あるいは自己免疫性膵炎や涙腺・唾液腺腫大など他臓器病変の精査中に見つかることが多い。発熱が初発症状として多いわけではない。
- ×d. 半月体形成性腎炎を認める。
IgG4関連腎臓病の主体は尿細管間質の病変であり、糸球体病変は一部の症例にみられるにすぎない。合併する糸球体病変として知られているのは主に膜性腎症であり、半月体形成性腎炎は典型的ではない。半月体形成性腎炎(急速進行性糸球体腎炎の組織像)を起こす代表的疾患は、ANCA関連血管炎、抗GBM(糸球体基底膜)抗体病、ループス腎炎、IgA血管炎などである。
- ○e. 治療は副腎皮質ステロイドが第一選択である。
IgG4関連疾患は副腎皮質ステロイドへの反応性が良く、治療の第一選択である。通常はプレドニゾロン0.6 mg/kg/日程度で開始し、数週間後から漸減して維持量を続ける。早期に治療すれば腎機能の回復が期待できるが、診断や治療が遅れると線維化と腎萎縮が進み、回復が不十分となるため、早期診断・早期治療が重要である。減量中や中止後の再燃が多いことも知られており、難治例・再燃例では免疫抑制薬やリツキシマブ(抗CD20抗体)が検討される。
IgG4関連疾患の包括診断基準の骨子
1. 臨床的・画像的に、単一または複数臓器にびまん性あるいは限局性の腫大、腫瘤、結節、肥厚性病変を認める。 2. 血清IgG4高値(135 mg/dL以上)。 3. 病理組織学的に、著明なリンパ球・形質細胞の浸潤と線維化を認め、IgG4陽性形質細胞の浸潤(IgG4/IgG陽性細胞比が40%を超え、かつIgG4陽性形質細胞が高倍率1視野あたり10個を超える)がある。 ※悪性腫瘍(悪性リンパ腫、癌など)や類似疾患(Sjögren症候群、多中心性Castleman病など)との鑑別が重要である。
IgG4関連腎臓病の特徴
・2011年に日本腎臓学会からIgG4関連腎臓病の診療指針(診断基準)が示された。 ・検査所見:血清IgG4高値に加え、高IgG血症、低補体血症、高IgE血症を伴うことが多い。低補体血症は他臓器のIgG4関連疾患よりも腎病変で目立つ。 ・画像:造影CTで多発性の造影不良域、びまん性腎腫大、乏血性腫瘤、腎盂壁の肥厚など。 ・病理:尿細管間質性腎炎、IgG4陽性形質細胞浸潤、花筵状線維化。 ・合併:自己免疫性膵炎、涙腺・唾液腺炎、硬化性胆管炎、後腹膜線維症などの他臓器病変を伴うことが多い。
主な臓器病変
・膵:自己免疫性膵炎(1型) ・涙腺・唾液腺:Mikulicz病、Küttner腫瘍(顎下腺) ・胆管:IgG4関連硬化性胆管炎 ・後腹膜:後腹膜線維症(水腎症の原因となる) ・その他:肺、大動脈周囲、下垂体、甲状腺など
POINT
・IgG4関連疾患は60歳代を中心とする中高年男性に多い。 ・腎病変(IgG4関連腎臓病)の主体は尿細管間質性腎炎で、IgG4陽性形質細胞浸潤と花筵状線維化が特徴。糸球体病変では膜性腎症の合併が知られる。 ・発熱など全身炎症症状は乏しく、腎機能低下・検尿異常・画像異常で見つかることが多い。 ・血清IgG4 135 mg/dL以上、低補体血症を伴いやすい。 ・治療の第一選択は副腎皮質ステロイド。早期治療が腎機能回復の鍵で、再燃が多い。
