StudyMed医師国家試験

蘇生のあとの5分間―Apgarスコアは「その瞬間」だけを採点する

第113回医師国家試験 F問題 第59問

国試問題にチャレンジ

第113回 F問題 第59問

日齢0の新生児。在胎39週3日,自然分娩で出生した。出生時啼泣はなく皮膚刺激を行ったが無呼吸のためバッグバルブマスクで換気を開始した。生後2分で自発呼吸が出現したため換気を中止した。生後5分の時点では全身にチアノーゼを認めた。心拍数140/分。呼吸数70/分。鼻腔内吸引によって強い咳嗽反射が出現した。手足をバタバタ動かしている。  生後5分のApgarスコアはどれか。

  1. a.10点
  2. b.8点
  3. c.6点
  4. d.4点
  5. e.2点

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は新生児のApgarスコアを計算する問題だ。出生直後に蘇生を要した経過が書かれているけれど、問われているのは生後5分の時点の点数。どの情報を採点に使うかを見極めるのがカギになるよ。まず、Apgarスコアの5項目を挙げられるかな。
医学生医学生
Appearance、Pulse、Grimace、Activity、Respirationの頭文字で、皮膚色、心拍数、反射、筋緊張、呼吸ですね。それぞれ0〜2点です。
ドクタードクター
完璧だ。生後1分と5分に評価して、合計0〜10点で表す。では、この子の5分の時点を項目ごとに見ていこう。まず皮膚色は?
医学生医学生
全身にチアノーゼなので0点だと思います。四肢だけなら1点でしたよね。
ドクタードクター
その通り。体幹がピンクで手足だけ紫なら1点、全身ピンクで2点。全身チアノーゼは0点だ。次は心拍数。
医学生医学生
140/分なので、100/分以上で2点です。
ドクタードクター
そう、心拍数は100/分が境目。100未満なら1点、なしなら0点だ。次は呼吸だけど、ここで迷う人が多い。
医学生医学生
正直、迷いました。最初は無呼吸でバッグバルブマスク換気をしていたので、呼吸は減点されるのかなと。それに70/分は少し多い気もします。
ドクタードクター
いいところに気づいたね。でも採点は「その時点の所見」で行うのが原則だ。生後2分で自発呼吸が出てからは換気なしで呼吸が続いていて、5分の時点で十分に呼吸できている。新生児としてはやや多呼吸寄りでも、良好な自発呼吸として2点と評価する。過去に蘇生したかどうかは点数に影響しないんだ。
医学生医学生
なるほど、経過に引きずられないことが大事なんですね。反射は鼻腔吸引で強い咳嗽なので2点ですか。
ドクタードクター
正解。刺激への反応が咳・くしゃみ・啼泣なら2点、顔をしかめる程度なら1点、反応なしで0点。最後に筋緊張は?
医学生医学生
手足をバタバタ動かしているので、活発な自動運動で2点。合計すると0+2+2+2+2で8点です。
ドクタードクター
その通り、生後5分のApgarスコアは8点だ。10点にするには皮膚色が満点でなければならず、6点や4点にするには皮膚色以外でさらに減点が必要になる。でも今回は皮膚色以外すべて満点の基準を満たしている。2点や4点は、出生直後の状態をイメージして選んでしまう引っかけだね。
医学生医学生
産婦人科の実習で分娩に立ち会ったとき、元気に泣いている赤ちゃんでも手足が紫っぽくて驚いたのを覚えています。
ドクタードクター
健康な新生児でも出生直後は末梢性チアノーゼがよくみられるから、皮膚色は満点になりにくい項目なんだ。生後数分は酸素飽和度が徐々に上がっていく途中だからね。ただし全身性の中心性チアノーゼが続くなら、酸素投与の必要性や先天性心疾患・呼吸器疾患の可能性も考える必要がある。
医学生医学生
点数の解釈も覚えておかないといけませんね。8点なら正常の範囲でしょうか。
ドクタードクター
国内では8〜10点を正常、4〜7点を軽症仮死、0〜3点を重症仮死とする区分が一般的だ。国際的には7点以上を正常とすることが多い。1分値は出生時の仮死の程度を、5分値は蘇生への反応や神経学的予後との関連をよく反映するとされる。5分値が7点未満なら、5分ごとに生後20分まで再評価を続けることが推奨されているよ。
医学生医学生
ということは、蘇生を始めるかどうかもApgarスコアで決めるんですか。
ドクタードクター
そこは大事な誤解ポイントだ。蘇生の判断はスコアの算出を待たずに、呼吸や啼泣の有無、筋緊張、心拍数をもとにすぐ行う。新生児蘇生法では、保温・気道確保・皮膚刺激などの初期処置をして、無呼吸や心拍100/分未満が続けば速やかにバッグマスク換気を始める。今回の子はまさにその手順で自発呼吸が戻った例だね。Apgarスコアはあくまで状態を記録・評価する物差しだと理解しておこう。

まとめ

Apgarスコアは皮膚色・心拍数・反射・筋緊張・呼吸の5項目を各0〜2点で採点し、生後1分と5分に評価する新生児の状態指標です。本例の生後5分は全身チアノーゼで皮膚色0点、心拍140/分で2点、換気なしの自発呼吸で2点、鼻腔吸引で強い咳嗽反射があり2点、四肢の活発な運動で2点となり、合計8点です。採点はその時点の所見だけで行い、それ以前の無呼吸や人工換気の有無は点数に影響しない点がポイントです。国内では8〜10点を正常、4〜7点を軽症仮死、0〜3点を重症仮死とし、5分値は蘇生への反応や予後との関連をよく反映します。なお、蘇生の開始はスコアを待たずに呼吸・心拍・筋緊張から判断するという原則もあわせて押さえておくと、分娩室での実践に直結します。

解答・解説

正解はbです

Apgarスコアとは

Apgarスコアは出生直後の新生児の状態を評価する指標で、生後1分と5分に、皮膚色(Appearance)、心拍数(Pulse)、刺激に対する反射(Grimace)、筋緊張(Activity)、呼吸(Respiration)の5項目をそれぞれ0〜2点で採点し、合計0〜10点で表す。

本例の経過

在胎39週3日の正期産児。出生時は啼泣も自発呼吸もなく、皮膚刺激にも反応しなかったためバッグバルブマスクによる人工換気を開始し、生後2分で自発呼吸が出現した。出生直後は新生児仮死の状態であったが、蘇生に反応して回復しつつある経過である。問われているのは生後5分の時点での評価であり、その時点の所見だけで採点する。

生後5分の採点

・皮膚色:全身にチアノーゼ → 0点(体幹がピンクで四肢のみチアノーゼなら1点、全身ピンクなら2点) ・心拍数:140/分 → 100/分以上なので2点 ・呼吸:生後2分以降は人工換気なしで自発呼吸が持続しており、呼吸数70/分で十分な呼吸がある → 2点 ・反射(刺激に対する反応):鼻腔内吸引で強い咳嗽反射 → 咳・くしゃみ・啼泣などの強い反応なので2点(顔をしかめる程度なら1点) ・筋緊張:手足をバタバタ動かしている → 四肢の活発な自動運動があるので2点 合計:0+2+2+2+2=8点 したがって生後5分のApgarスコアは8点である。蘇生処置を要した経過であっても、採点はその時点の所見で機械的に行うことがポイントである。

選択肢考察

  1. ×a.  10点

    誤り。10点となるには全項目が2点でなければならないが、本例は生後5分で全身にチアノーゼがあり、皮膚色が0点である。最大でも8点にとどまる。

  2. ○b.  8点

    正しい。皮膚色は全身チアノーゼで0点、心拍数は140/分(100/分以上)で2点、呼吸は人工換気なしで自発呼吸が保たれており2点、反射は鼻腔吸引で強い咳嗽反射があり2点、筋緊張は四肢を活発に動かしており2点で、合計8点となる。

  3. ×c.  6点

    誤り。6点とするには皮膚色以外の項目でさらに2点分の減点が必要であるが、心拍数は100/分以上、反射は強い咳嗽、筋緊張は四肢の活発な運動、呼吸も自発呼吸が持続しており、いずれも満点の基準を満たす。出生直後に仮死があったことや人工換気を行ったことは、生後5分の採点には影響しない。

  4. ×d.  4点

    誤り。4点程度は軽度〜中等度の新生児仮死に相当し、心拍数低下や弱い呼吸、筋緊張低下などを伴う状態である。本例の生後5分の所見は、皮膚色以外はすべて良好であり当てはまらない。出生時(生後1分)の状態であれば低い点数となった可能性があるが、問われているのは生後5分の点数である。

  5. ×e.  2点

    誤り。2点は心拍数が少なく、自発呼吸も反射も筋緊張もほとんどない重症新生児仮死に相当する。本例の生後5分の状態とは大きく異なる。

Apgarスコアの採点基準

・皮膚色(Appearance):0点 全身蒼白または全身チアノーゼ/1点 体幹はピンク、四肢チアノーゼ/2点 全身ピンク ・心拍数(Pulse):0点 なし/1点 100/分未満/2点 100/分以上 ・反射(Grimace:鼻腔カテーテル挿入や足底刺激への反応):0点 反応なし/1点 顔をしかめる/2点 咳・くしゃみ・啼泣 ・筋緊張(Activity):0点 だらりとしている/1点 四肢をいくらか屈曲/2点 四肢を活発に動かす ・呼吸(Respiration):0点 なし/1点 弱い啼泣・不規則な浅い呼吸/2点 強く泣く・良好な呼吸

評価の目安

合計8〜10点:正常、4〜7点:軽症仮死(第1度仮死)、0〜3点:重症仮死(第2度仮死)とするのが国内で一般的な区分である(国際的には7〜10点を正常とすることが多い)。 生後1分値は出生時の状態(仮死の程度)を、生後5分値は蘇生への反応と神経学的予後との関連をよく反映するとされる。5分値が7点未満の場合は、5分ごとに生後20分まで再評価を続けることが推奨されている。

Apgarスコアと蘇生の関係

新生児蘇生の開始や処置の判断は、Apgarスコアの算出を待たずに、呼吸(自発呼吸・啼泣の有無)、筋緊張、心拍数などをもとに行う。新生児蘇生法(NCPR)では、出生直後に保温・気道確保・皮膚刺激などの初期処置を行い、無呼吸や心拍100/分未満が続く場合は速やかにバッグマスク換気を開始する。本例はこの手順に沿った蘇生が行われ、自発呼吸が回復した経過である。

皮膚色について

健康な新生児でも出生直後は四肢末端のチアノーゼ(末梢性チアノーゼ)がしばしばみられ、皮膚色が満点になりにくい項目である。生後数分間は動脈血酸素飽和度が徐々に上昇していく過程にあるため、生後5分でもチアノーゼが残ることがある。全身性(中心性)のチアノーゼが続く場合は、酸素投与の必要性や先天性心疾患・呼吸器疾患の可能性も考慮する。

POINT

・Apgarスコアは皮膚色・心拍数・反射・筋緊張・呼吸の5項目を各0〜2点で採点し、生後1分と5分に評価する。 ・心拍数は100/分を境に1点と2点が分かれる。 ・全身チアノーゼは0点、四肢のみのチアノーゼは1点。 ・採点はその時点の所見で行い、それ以前の蘇生処置の有無は点数に影響しない。 ・8〜10点正常、4〜7点軽症仮死、0〜3点重症仮死(国内の一般的区分)。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。