StudyMed医師国家試験

胎児の腎臓は意外と早起き―妊娠週数で並べる胎児・胎盤の発達カレンダー

第113回医師国家試験 F問題 第20問

国試問題にチャレンジ

第113回 F問題 第20問

胎児・胎盤について最も早期に起こるのはどれか。

  1. a.胎盤の完成
  2. b.頭髪の発生
  3. c.肺胞の形成
  4. d.精巣の下降
  5. e.腎臓の尿産生

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、胎児や胎盤の発達がそれぞれ妊娠何週ころに起こるかを比べる問題だ。一つずつ細かな週数を覚えるより、妊娠初期・中期・後期のどこに属するかで大まかに並べるのがコツだよ。直感的にはどれが一番早いと思う?
医学生医学生
胎盤がないと胎児は育たないので、胎盤の完成が一番早いと思ったんですが……。
ドクタードクター
そう考える人は多いね。でも胎盤は妊娠7週ころから絨毛の発達とともに形成が進み、構造的に完成するのは妊娠15〜16週ころ、つまり妊娠4か月の終わりなんだ。それより早く起こるものが選択肢にある。
医学生医学生
え、腎臓の尿産生ですか?おしっこを作るのはもっと後かと思っていました。
ドクタードクター
正解は腎臓の尿産生だ。永久腎である後腎は妊娠5週ころに発生して、妊娠9〜12週ころには尿を作り始める。妊娠初期の終わりには主要な器官の原基はほぼ揃っていて、腎臓はもう働き出しているんだ。
医学生医学生
発生学の講義で前腎・中腎・後腎の順に出てくると習いました。後腎ができてすぐに機能し始めるんですね。
ドクタードクター
そう。そしてこの胎児尿は羊水に排泄される。妊娠中期以降は胎児尿が羊水の主な供給源になるんだ。だから腎無形成や尿路閉塞があるとどうなるかな。
医学生医学生
羊水が減るので、羊水過少ですね。Potter sequenceで肺低形成を起こすと病理の講義で聞きました。
ドクタードクター
その通り。胎児の尿が羊水を作り、羊水が肺の発達を支えているという、つながりで理解しておこう。逆に食道閉鎖などで胎児が羊水を飲み込めないと羊水過多になる。では残りの選択肢も見ていこう。頭髪はいつごろだと思う?
医学生医学生
うぶ毛と一緒に妊娠中期くらいでしょうか。
ドクタードクター
いい感覚だね。頭髪やうぶ毛は妊娠5か月、20週前後から出現し始める。胎動を母親が自覚し始めるのとほぼ同じころだ。次に肺胞の形成はどうかな。
医学生医学生
早産児が呼吸窮迫症候群になりやすいので、かなり遅い時期だと思います。
ドクタードクター
正しい理解だ。肺は偽腺様期、細管期、終末嚢期、肺胞期の順に発達する。サーファクタントは妊娠24週ころから作られ始めて34週ころに十分量になり、真の肺胞は妊娠末期から出生後にかけて作られる。だから選択肢の中ではかなり遅い部類だね。
医学生医学生
精巣の下降も遅そうです。小児外科の実習で、早産児は停留精巣が多いと教わりました。
ドクタードクター
まさにその理由がこれ。精巣は後腹壁で発生し、導帯に導かれて下降して、妊娠26〜28週ころに鼠径管を通過、30週以降に陰嚢内に到達する。多くは出生までに完了するけれど、早く生まれると下降が間に合わないことがあるんだ。選択肢の中では最も遅い。
医学生医学生
並べると、尿産生、胎盤完成、頭髪、肺胞、精巣下降の順ですね。
ドクタードクター
その通り。節目の週数も一緒に押さえておくと応用が利くよ。妊娠4〜7週は器官形成期で催奇形因子の影響を最も受けやすい時期、16週ころに胎盤完成、22週が法的な生育限界、34週ころに肺が成熟する。妊婦さんへの薬の説明や早産児の管理を考えるとき、こうした目安が判断の土台になる。
医学生医学生
産婦人科の実習で、妊婦健診の超音波で羊水量を見ていた意味がやっとつながりました。
ドクタードクター
羊水量は胎児の腎機能や嚥下を間接的に映す窓なんだ。羊水の異常を見たら、胎児のどの臓器に問題がありそうかを考える習慣をつけておこう。

まとめ

胎児の腎臓(後腎)は妊娠5週ころに発生し、妊娠9〜12週ころには尿の産生を始めるため、選択肢の中で最も早く起こる出来事です。胎盤の完成は妊娠15〜16週ころ、頭髪やうぶ毛の出現は20週前後、肺サーファクタントは24週ころから産生され34週ころに十分量となり、真の肺胞は妊娠末期から出生後に形成され、精巣は30週以降に陰嚢内へ下降します。胎児尿は妊娠中期以降の羊水の主成分であり、腎無形成や尿路閉塞では羊水過少から肺低形成(Potter sequence)を、嚥下障害では羊水過多をきたします。器官形成期、胎盤完成、生育限界、肺成熟といった節目の週数を軸に整理しておくと、催奇形性の評価や早産児の管理など臨床判断にも役立ちます。

解答・解説

正解はeです

胎児の発育過程で各器官の形成・機能開始がおおよそ妊娠何週に起こるかを問う問題である。選択肢の出来事をおおよその時期で並べると次のようになる。 腎臓の尿産生(妊娠9〜12週ころ開始)→ 胎盤の完成(妊娠15〜16週ころ)→ 頭髪の発生(妊娠20週前後、妊娠5か月ころ)→ 肺胞の形成(終末嚢が妊娠24〜26週以降、真の肺胞は妊娠30週代以降に出現)→ 精巣の陰嚢内への下降(妊娠30週以降、多くは出生までに完了) 妊娠初期(第1三半期)の終わりにはすでに主要な器官の原基ができあがり、腎臓は機能を開始している。一方、肺や精巣下降のように出生前の最終段階で完成する過程もある。器官形成期(妊娠4〜7週ころ)、胎盤完成(16週ころ)、早産の生存限界に関わる肺の成熟(22週以降)など、節目となる週数を基準に整理しておくと解きやすい。

選択肢考察

  1. ×a.  胎盤の完成

    胎盤は妊娠7週ころから絨毛の発達とともに形成が進み、妊娠15〜16週ころ(妊娠4か月末)に構造的に完成する。尿産生の開始(9〜12週)よりは遅い。胎盤完成とともに、妊娠維持に必要なプロゲステロンの主な産生源が黄体から胎盤へ移行する(luteal-placental shift、妊娠7〜10週ころから始まる)。

  2. ×b.  頭髪の発生

    頭髪や全身のうぶ毛(毳毛)は妊娠5か月(妊娠16〜19週)ころから20週前後に出現し始める。妊娠中期の現象であり、尿産生開始よりはるかに遅い。

  3. ×c.  肺胞の形成

    肺の発生は、偽腺様期(妊娠5〜17週ころ)、細管期(16〜26週ころ)、終末嚢期(26週〜出生前後)、肺胞期(妊娠30週代後半〜出生後数年)の順に進む。ガス交換が可能な終末嚢と肺サーファクタントの産生(Ⅱ型肺胞上皮細胞から、妊娠24週ころより産生開始、34週ころに十分量)がそろうのは妊娠後期であり、真の肺胞は妊娠末期から出生後にかけて形成・増加する。選択肢の中では遅い部類に入る。

  4. ×d.  精巣の下降

    精巣は腹腔内の後腹壁で発生し、導帯(gubernaculum)に導かれて下降する。妊娠26〜28週ころに鼠径管を通過し、妊娠30週以降に陰嚢内へ到達して、多くは出生までに下降が完了する。そのため早産児では停留精巣の頻度が高い。選択肢の中で最も遅い時期に起こる。

  5. ○e.  腎臓の尿産生

    永久腎である後腎は妊娠5週ころに発生し、妊娠9〜12週ころ(おおむね10週前後)から尿の産生を始める。選択肢の中で最も早く起こる。胎児尿は羊水に排泄され、妊娠中期以降は羊水の主な供給源となる。このため腎無形成や尿路閉塞があると羊水過少をきたし、肺低形成などを伴うPotter sequenceにつながる。

胎児発育の主な目安(妊娠週数)

・妊娠4〜7週:器官形成期。催奇形因子の影響を最も受けやすい(絶対過敏期)。 ・妊娠5週ころ:後腎の発生。 ・妊娠8週ころ:胎芽から胎児と呼ぶようになる。外性器の性差は妊娠12週ころから明らかとなる。 ・妊娠9〜12週ころ:尿産生開始。胎児が羊水の嚥下も始める。 ・妊娠15〜16週ころ:胎盤完成。 ・妊娠16〜20週ころ:うぶ毛・頭髪の出現、母体が胎動を自覚し始める(初産婦では18〜20週ころ)。 ・妊娠22週:法的な生育限界(これ以前の分娩は流産)。 ・妊娠24週ころ:肺サーファクタント産生開始。 ・妊娠34週ころ:肺サーファクタントが十分量となる。 ・妊娠30週以降:精巣の陰嚢内への下降。

羊水と胎児尿

妊娠初期の羊水は主に羊膜や母体血漿からの滲出によるが、妊娠中期以降は胎児尿が主成分となる。羊水は胎児の嚥下や肺からの分泌とも循環しており、胎児の嚥下障害(食道閉鎖など)では羊水過多、尿産生障害では羊水過少となる。

POINT

・胎児の尿産生は妊娠9〜12週ころに開始し、選択肢の中で最も早い。 ・胎盤完成は妊娠15〜16週ころ。 ・頭髪・うぶ毛は妊娠5か月(20週前後)ころから。 ・肺サーファクタントは24週ころから産生、34週ころに十分量。肺胞は妊娠末期〜出生後に形成。 ・精巣は妊娠30週以降に陰嚢内へ下降し、出生までに完了することが多い。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。