10日前に生ワクチン、今日打てるのはどれ?―「接種間隔」と「定期接種」の二重チェック
第120回医師国家試験 C問題 第50問
国試問題にチャレンジ
1歳2か月の女児。予防接種の相談のため母親に連れられて来院した。1週間前に転入したばかりだった。母子健康手帳を確認すると,予防接種は順調に接種され,最終のワクチン接種は来院10日前に麻疹・風疹混合ワクチンと水痘ワクチンのそれぞれ1回目を接種していた。体温36.3℃。活気は良好で,咽頭の発赤を認めず,聴診で異常所見を認めない。 受診当日に接種可能で,かつ定期接種のワクチンはどれか。
- a.水痘ワクチン2回目
- b.おたふくかぜワクチン1回目
- c.インフルエンザワクチン1回目
- d.小児用肺炎球菌ワクチン4回目
- e.ヒトパピローマウイルス〈HPV〉ワクチン1回目
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
異なるワクチン間の接種間隔は2020年10月の改正で簡素化され、27日以上あける必要があるのは「注射生ワクチンの後に別の注射生ワクチンを接種する場合」のみとなりました。不活化ワクチンは他のワクチンとの間隔制限がないため、10日前にMR・水痘ワクチンを接種した1歳2か月児でも、定期接種で追加接種の時期にあたる小児用肺炎球菌ワクチン4回目は当日接種できます。水痘・おたふくかぜワクチンは注射生ワクチンのため当日は接種できず、おたふくかぜと小児のインフルエンザは任意接種、HPVワクチンの定期接種対象は小6〜高1相当の女子である点も押さえておきましょう。同一ワクチンの複数回接種ではワクチンごとの間隔(水痘2回目は1回目から3か月以上)を守る必要があります。「種類・間隔・定期か任意か・対象年齢」を順に確認する習慣は、小児科外来や健診での予防接種相談に直結する実践的な知識です。
解答・解説
正解はdです
状況の整理
・1歳2か月の女児で、予防接種の相談に来院した。1週間前に転入したばかりである。 ・母子健康手帳では、これまでの予防接種はスケジュールどおり進んでいる。 ・最後の接種は10日前で、麻疹・風疹混合(MR)ワクチンと水痘ワクチンの各1回目を受けている。いずれも注射で接種する生ワクチンである。 ・体温36.3℃、活気良好、咽頭発赤なし、聴診異常なしで、当日の予診上、接種を見合わせる理由はない。
考え方
設問は「当日接種できる」と「定期接種である」という2つの条件を同時に満たすものを選ばせている。したがって、各選択肢について次の3点を順に確認すればよい。 ①生ワクチンか不活化ワクチンか: 現在の日本の規定では、注射生ワクチンを接種した後に別の注射生ワクチンを接種する場合のみ、27日以上の間隔をあける必要がある。それ以外の組み合わせ(不活化ワクチン同士、注射生ワクチン後の不活化ワクチン、不活化ワクチン後の生ワクチンなど)には、異なるワクチン間の接種間隔の制限はない。本例は10日前に注射生ワクチンを受けているため、今日は注射生ワクチンを接種できないが、不活化ワクチンなら接種できる。 ②同じワクチンの接種間隔: 同一ワクチンを複数回接種する場合は、そのワクチンごとに決められた間隔を守る必要がある。 ③定期接種か任意接種か、および対象年齢: 定期接種は予防接種法に基づき市町村が実施するもので、ワクチンごとに対象年齢が定められている。 これらを当てはめると、条件をすべて満たすのは、1歳〜1歳3か月が標準的な時期にあたる小児用肺炎球菌ワクチンの追加接種(4回目)である。 なお、定期接種は住民票のある市町村が実施主体なので、転入後は新しい市町村の予診票などを用いて接種を続けることになる。
選択肢考察
- ×a. 水痘ワクチン2回目
水痘ワクチンは定期接種(A類疾病)であるが、注射生ワクチンであり、10日前に注射生ワクチン(MR・水痘)を接種したばかりの本例では27日以上の間隔があいておらず、当日は接種できない。さらに、水痘ワクチンの2回目は1回目から3か月以上(標準的には6〜12か月)あけて接種することになっており、その点からも時期尚早である。
- ×b. おたふくかぜワクチン1回目
おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)ワクチンは注射生ワクチンであり、注射生ワクチン接種から10日しか経っていない本例では、27日以上の間隔の規定を満たさず当日は接種できない。また、日本では現在も任意接種(自治体によっては費用助成あり)であり、定期接種化が検討されている段階である。二つの条件をいずれも満たさない。
- ×c. インフルエンザワクチン1回目
インフルエンザHAワクチン(注射)は不活化ワクチンなので、生ワクチン接種後でも間隔の制限なく当日に接種できる。しかし小児では任意接種であり、定期接種ではない。インフルエンザが定期接種(B類疾病)となるのは、65歳以上の者と、60〜64歳で心臓・腎臓・呼吸器の機能やHIVによる免疫機能に一定の障害がある者に限られる。なお、13歳未満の小児では通常2回接種する。
- ○d. 小児用肺炎球菌ワクチン4回目
小児用肺炎球菌ワクチン(結合型ワクチン)は定期接種(A類疾病)であり、不活化ワクチンなので、10日前に生ワクチンを接種していても異なるワクチン間の間隔制限を受けず、当日接種できる。標準的なスケジュールは、生後2か月から27日以上の間隔で初回接種を3回行い、3回目から60日以上あけて生後12〜15か月に追加接種(4回目)を1回行うというものである。本例はこれまで予定どおり接種を受けてきた1歳2か月児であり、ちょうど追加接種の標準的な時期にあたる。体調にも問題がないため、当日接種可能な定期接種として最も適切である。
- ×e. ヒトパピローマウイルス〈HPV〉ワクチン1回目
HPVワクチンは不活化ワクチンなので、生ワクチンとの接種間隔は問題にならず、定期接種(A類疾病)でもある。しかし定期接種の対象は小学校6年生から高校1年生に相当する年齢の女子(標準的には中学1年生)であり、1歳2か月児は対象外である。子宮頸癌などの予防を目的に、性交渉を経験する前の年代に接種するワクチンである。
異なるワクチンの接種間隔のルール(2020年10月改正)
・注射生ワクチン(MR、麻疹、風疹、水痘、BCG、おたふくかぜなど)→ 別の注射生ワクチン: 27日以上あける。生ワクチンによる干渉(先に接種したワクチンで誘導されたインターフェロンなどが、後のワクチンウイルスの増殖を抑えて効果を弱める)を避けるためである。 ・上記以外の組み合わせ(不活化ワクチン同士、注射生ワクチン→不活化ワクチン、不活化ワクチン→生ワクチン、経口生ワクチンであるロタウイルスワクチンの前後など): 間隔の制限はない。 ・同じワクチンを複数回接種する場合は、ワクチンごとに定められた間隔を守る。 ・医師が必要と認めれば、複数のワクチンの同時接種も可能である。
主なワクチンの分類(小児)
・生ワクチン: BCG、MR、水痘、おたふくかぜ、ロタウイルス(経口)。 ・不活化ワクチン: 5種混合(ジフテリア・百日咳・破傷風・ポリオ・Hib)、4種混合、小児用肺炎球菌、B型肝炎、日本脳炎、HPV、インフルエンザ。
定期接種と任意接種(小児)
・定期接種(A類疾病): Hib、小児の肺炎球菌感染症、B型肝炎、ロタウイルス、ジフテリア・百日咳・破傷風・ポリオ、結核(BCG)、麻疹・風疹、水痘、日本脳炎、HPV感染症。 ・任意接種: おたふくかぜ、小児のインフルエンザなど。 ・高齢者のインフルエンザや肺炎球菌感染症は、B類疾病の定期接種である。
1歳前後の主な接種スケジュール
・1歳になったらすぐ: MRワクチン1期、水痘ワクチン1回目、小児用肺炎球菌ワクチン追加接種(4回目)、5種混合ワクチン追加接種(4回目、3回目から6か月以上あけて)。 ・水痘ワクチン2回目: 1回目から3か月以上、標準的には6〜12か月後。 ・MRワクチン2期: 小学校入学前の1年間。
予防接種の不適当者(主なもの)
明らかな発熱(37.5℃以上)、重篤な急性疾患にかかっていることが明らかな者、当該ワクチンの成分によるアナフィラキシーの既往がある者など。生ワクチンでは妊娠や明らかな免疫機能異常も不適当となる。
POINT
・注射生ワクチンの後に別の注射生ワクチンを接種する場合のみ27日以上あける。不活化ワクチンは他のワクチンとの間隔制限なし。 ・同一ワクチンの複数回接種は、ワクチンごとの間隔(水痘2回目は1回目から3か月以上)を守る。 ・おたふくかぜワクチンと小児のインフルエンザワクチンは任意接種。HPVワクチンの定期接種は小6〜高1相当の女子。 ・小児用肺炎球菌ワクチンは初回3回+1歳〜1歳3か月で追加1回の計4回が標準。
