StudyMed医師国家試験

関節の病気なのに肺が命を左右する―関節リウマチの「関節外病変」を疾患ごとに整理する

第113回医師国家試験 B問題 第20問

国試問題にチャレンジ

第113回 B問題 第20問

関節リウマチの関節外病変はどれか。

  1. a.外陰部潰瘍
  2. b.間質性肺炎
  3. c.後腹膜線維症
  4. d.虚血性視神経症
  5. e.大動脈弁閉鎖不全症

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、関節リウマチが関節以外にどんな病変を起こすかを問う問題だ。選択肢はどれも膠原病・リウマチ性疾患でおなじみの病変だから、「それぞれがどの疾患の代表的病変か」を対応づけながら考えるのがコツだよ。
医学生医学生
関節リウマチって、手指の関節が腫れる病気というイメージが強くて、関節以外となると少し自信がないです。
ドクタードクター
そこがまず押さえたいポイントなんだ。関節リウマチは対称性の多発関節炎、つまり滑膜の炎症が主役だけれど、本質は全身性の自己免疫疾患。だから肺、皮膚、眼、心臓、血液など、関節の外にもさまざまな病変が出てくる。
医学生医学生
免疫学の講義で「RAは全身病」と強調されていたのを思い出しました。中でも頻度が高いのは何ですか。
ドクタードクター
代表格は肺病変、とくに間質性肺炎だ。胸部CTで丁寧に見ると、関節リウマチ患者のかなりの割合に間質性の陰影が見つかるとされている。病型は通常型間質性肺炎(UIP)パターンや非特異性間質性肺炎(NSIP)パターンが多く、生命予後を左右する重要な合併症なんだ。というわけで、正解は間質性肺炎だね。
医学生医学生
危険因子はあるんですか。
ドクタードクター
高齢、男性、喫煙歴、リウマトイド因子や抗CCP抗体の高値などが挙げられている。もう一つ大事なのが治療薬との関係。メトトレキサートや生物学的製剤など、抗リウマチ薬そのものが薬剤性肺障害を起こしうるから、治療開始前に間質性肺炎があるかどうかを確認することが薬の選択にも影響するんだよ。
医学生医学生
臨床実習の膠原病内科で、メトトレキサートを始める前に必ず胸部CTを撮っていたのはそういう理由だったんですね。
ドクタードクター
その通り。では他の選択肢も疾患と結びつけていこう。外陰部潰瘍はどうかな。
医学生医学生
口腔内アフタ、ぶどう膜炎と並ぶ、Behçet病の主症状ですよね。
ドクタードクター
正解。Behçet病の4主症状は口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍、皮膚症状、眼症状、外陰部潰瘍。外陰部潰瘍は有痛性の深い潰瘍で、関節リウマチの病変としては一般的ではない。次は後腹膜線維症。
医学生医学生
後腹膜が線維化して尿管を巻き込み、水腎症になる病気でしたっけ。原因は……正直ぱっと出てきません。
ドクタードクター
重要な原因はIgG4関連疾患だね。血清IgG4高値を背景に、自己免疫性膵炎、硬化性胆管炎、涙腺・唾液腺の腫大などと合併しうる。関節リウマチの関節外病変ではないよ。
医学生医学生
虚血性視神経症は、高齢者の側頭部痛と顎跛行で有名な巨細胞性動脈炎ですか。
ドクタードクター
よく結びつけられたね。巨細胞性動脈炎で後毛様動脈が侵されると、突然の視力低下や失明をきたす。疑った時点で速やかに高用量ステロイドを始める必要がある緊急事態だ。関節リウマチに伴う血管炎でまれに起こることはあっても、代表的な関節外病変とはいえない。最後に大動脈弁閉鎖不全症。
医学生医学生
脊椎関節炎の講義で、強直性脊椎炎の関節外病変として出てきました。HLA-B27と関連する病気ですよね。
ドクタードクター
そう。強直性脊椎炎では大動脈基部の炎症で弁輪が拡大し、大動脈弁閉鎖不全症が起こる。高安動脈炎や梅毒性大動脈炎、Marfan症候群でもみられる病変だね。
医学生医学生
選択肢それぞれを「病変→疾患」で対応づけると、関節リウマチに当てはまるのは間質性肺炎だけになる、ということですね。
ドクタードクター
その整理ができれば完璧だ。最後に関節リウマチの関節外病変を広く押さえておこう。肘頭など圧迫を受けやすい部位の伸側に出るリウマトイド結節、胸膜炎や心膜炎といった漿膜炎、強膜炎・上強膜炎、二次性Sjögren症候群による乾燥症状、皮膚潰瘍を伴う血管炎、長期経過でのAAアミロイドーシスなどがある。
医学生医学生
Felty症候群もリウマチの関連でしたよね。CBTの問題で見た覚えがあります。
ドクタードクター
そう、関節リウマチに脾腫と好中球減少を伴うのがFelty症候群だ。また、血管炎などの関節外症状を伴う難治性・重篤なものは悪性関節リウマチと呼ばれ、わが国では指定難病になっている。それから頸椎の環軸椎亜脱臼も、挿管時などに頸髄圧迫を起こしうるので臨床では要注意だ。関節だけを診るのではなく、呼吸器症状や全身の変化にも目を配ることが、リウマチ診療ではとても大切なんだよ。

まとめ

関節リウマチは小関節の対称性多発関節炎を主病変としますが、本質は全身性自己免疫疾患であり、関節外病変のなかでも間質性肺炎は頻度が高く生命予後を左右する重要な合併症です。抗リウマチ薬自体も薬剤性肺障害を起こしうるため、治療開始前に間質性肺炎の有無を評価することが薬剤選択に直結します。ほかにリウマトイド結節、漿膜炎、強膜炎、血管炎、Felty症候群、AAアミロイドーシスなども押さえておきましょう。一方、外陰部潰瘍はBehçet病、後腹膜線維症はIgG4関連疾患、虚血性視神経症は巨細胞性動脈炎、大動脈弁閉鎖不全症は強直性脊椎炎の代表的病変です。「病変と疾患の対応」で整理する習慣は、膠原病領域の鑑別全般に役立ちます。

解答・解説

正解はbです

関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)は、手指・手関節などの小関節を中心とする対称性の多発関節炎(滑膜の炎症)を主病変とするが、本質的には全身性の自己免疫疾患であり、関節以外の臓器にもさまざまな病変(関節外病変)を生じる。代表的なものは肺病変(間質性肺炎、器質化肺炎、気管支拡張症、胸膜炎、リウマトイド結節)、漿膜炎(胸膜炎・心膜炎)、皮下のリウマトイド結節、眼病変(強膜炎・上強膜炎、乾燥症状)、皮膚潰瘍を伴う血管炎、長期経過例でのAAアミロイドーシスなどである。 本問は、各選択肢が「どの膠原病・リウマチ性疾患に特徴的な病変か」を対応づけられるかを問うている。外陰部潰瘍はBehçet病、後腹膜線維症はIgG4関連疾患、虚血性視神経症は巨細胞性動脈炎、大動脈弁閉鎖不全症は強直性脊椎炎(および大動脈炎をきたす疾患)の代表的病変であり、RAの関節外病変として最も重要かつ頻度が高いのは間質性肺炎である。

選択肢考察

  1. ×a.  外陰部潰瘍

    外陰部潰瘍はBehçet病の4主症状(口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍、皮膚症状、眼症状〈ぶどう膜炎〉、外陰部潰瘍)の一つである。有痛性の深い潰瘍で、男性では陰嚢、女性では大小陰唇に好発する。RAの関節外病変としては一般的でない。

  2. ○b.  間質性肺炎

    間質性肺炎はRAの関節外病変のなかで最も重要なものの一つである。胸部CTで評価すると、RA患者の2〜5割程度に間質性陰影が認められるとされ、病型としては通常型間質性肺炎(UIP)パターンや非特異性間質性肺炎(NSIP)パターンが多い。高齢、男性、喫煙歴、リウマトイド因子・抗CCP抗体高値などが危険因子とされ、生命予後を左右する。さらにメトトレキサート、レフルノミド、ブシラミン、生物学的製剤などの抗リウマチ薬による薬剤性肺障害も起こりうるため、既存の間質性肺炎の有無は治療薬選択にも影響する。

  3. ×c.  後腹膜線維症

    後腹膜線維症は、大動脈周囲から後腹膜にかけて線維性組織が増生する病態で、尿管を巻き込んで水腎症をきたすことがある。原因としてIgG4関連疾患が重要であり、ほかに自己免疫性膵炎、硬化性胆管炎、涙腺・唾液腺炎(Mikulicz病)などと合併しうる。RAの関節外病変ではない。

  4. ×d.  虚血性視神経症

    虚血性視神経症は、巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)で後毛様動脈が侵されることにより生じる重篤な合併症で、突然の視力低下・失明をきたす。失明を防ぐため、疑った時点で速やかに高用量の副腎皮質ステロイドを開始する必要がある。RAに伴う血管炎でまれにみられることはあるが、RAの代表的な関節外病変とはいえず、頻度は間質性肺炎と比べてはるかに低い。

  5. ×e.  大動脈弁閉鎖不全症

    大動脈弁閉鎖不全症は、強直性脊椎炎で上行大動脈基部の炎症(大動脈炎)により大動脈弁輪が拡大して生じる関節外病変として知られる。高安動脈炎、梅毒性大動脈炎、Marfan症候群などでも生じる。RAでもまれに心病変は生じうるが、典型的な関節外病変としては挙げられない。

関節リウマチの主な関節外病変

・全身症状:発熱、全身倦怠感、体重減少、貧血(慢性炎症に伴う貧血) ・皮膚・皮下:リウマトイド結節(肘頭など圧迫を受ける部位の伸側に好発)、血管炎による皮膚潰瘍・指趾壊疽 ・肺:間質性肺炎、器質化肺炎、気管支拡張症、細気管支炎、胸膜炎(胸水は糖が低値となりやすい)、肺内リウマトイド結節 ・心:心膜炎 ・眼:強膜炎・上強膜炎、二次性Sjögren症候群による乾燥性角結膜炎 ・腎:AAアミロイドーシス(長期の慢性炎症による。蛋白尿、腎機能障害、下痢などの消化器症状)、薬剤性腎障害 ・神経:手根管症候群などの絞扼性神経障害、血管炎による多発単神経炎、環軸椎亜脱臼による頸髄圧迫 ・血液:Felty症候群(RA+脾腫+好中球減少) 血管炎などの関節外症状を伴い、難治性・重篤なものは「悪性関節リウマチ」と呼ばれ、わが国では指定難病とされている。

他の選択肢の疾患と特徴的病変の整理

・Behçet病:口腔内アフタ、外陰部潰瘍、ぶどう膜炎、結節性紅斑、血管型・腸管型・神経型 ・IgG4関連疾患:血清IgG4高値、自己免疫性膵炎、後腹膜線維症、涙腺・唾液腺腫大 ・巨細胞性動脈炎:50歳以上、側頭部痛、顎跛行、虚血性視神経症、リウマチ性多発筋痛症の合併 ・強直性脊椎炎:HLA-B27、炎症性腰背部痛、仙腸関節炎、前部ぶどう膜炎、大動脈弁閉鎖不全症

POINT

・RAは全身性疾患であり、関節外病変として間質性肺炎が最も重要(予後規定因子、抗リウマチ薬の選択にも影響)。 ・ほかにリウマトイド結節、漿膜炎、強膜炎、血管炎、Felty症候群、AAアミロイドーシスを押さえる。 ・外陰部潰瘍=Behçet病、後腹膜線維症=IgG4関連疾患、虚血性視神経症=巨細胞性動脈炎、大動脈弁閉鎖不全症=強直性脊椎炎、と疾患との対応で整理する。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。