StudyMed医師国家試験

熱が下がっても消えない発疹―麻疹の経過を3つの時期で読み解く

第113回医師国家試験 B問題 第19問

国試問題にチャレンジ

第113回 B問題 第19問

麻疹について誤っているのはどれか。

  1. a.潜伏期間は10~14日である。
  2. b.発熱は二峰性の経過を取る。
  3. c.口腔粘膜に白色斑がみられる。
  4. d.皮疹は癒合する。
  5. e.解熱とともに皮疹は消失する。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は麻疹の臨床像についての知識問題で、誤った記述を選ぶ形式だ。麻疹は「カタル期」「発疹期」「回復期」という時間の流れで整理すると、一つひとつの記述の正誤がすっきり判断できる。特に、発熱と発疹がどのタイミングで出て、どう消えていくかに注目しよう。
医学生医学生
小児科の講義で、麻疹は感染力がとても強いと強調されていました。
ドクタードクター
その通り。麻疹ウイルスはパラミクソウイルス科のRNAウイルスで、空気感染、飛沫感染、接触感染のいずれでも広がる。免疫のない人が感染すると、ほぼ全員が発症するほどだ。まず潜伏期間から確認しよう。
医学生医学生
10〜14日というのは、だいたい2週間ということで合っていますか。
ドクタードクター
合っている。感染から発熱などの症状が出るまでが約10〜12日、発疹が出るまでが約14日なので、おおむね2週間と考えてよい。曝露後72時間以内なら緊急のワクチン接種で発症予防や軽症化が期待できる、という点も臨床では大切だ。次に、症状の始まり方を見ていこう。
医学生医学生
最初は風邪みたいな症状でしたよね。熱と咳と鼻水と、目が赤くなる……。
ドクタードクター
そう、それがカタル期で、3〜4日ほど続く。この時期が最も感染力が強いんだ。そしてカタル期の終わり、発疹が出る1〜2日前に、頬の粘膜、特に奥歯の向かい側に周囲が赤い小さな白色斑が多数現れる。これがKoplik斑だ。
医学生医学生
口の中の白い斑点というのはKoplik斑のことですね。発疹より先に出るなら、早く気づくための大事なサインになりそうです。
ドクタードクター
まさに。発疹が出る前に麻疹を疑える貴重な手がかりで、発疹が出てから2日ほどで消えてしまう。さて、カタル期の終わりに体温はいったん少し下がり、その後39〜40℃の高熱が再び出て、それと同時に発疹が現れる。これが二峰性発熱だ。
医学生医学生
熱が下がって治りかけたと思ったら、また上がるんですね。家族からすると驚きそうです。
ドクタードクター
そうだね。発疹は耳の後ろ、首、顔から始まって、体幹、四肢へと下に広がる。最初は小さな紅色の斑状丘疹だけれど、数が増えるにつれて互いに癒合して大きな不整形の紅斑になる。ただし、その間に健常な皮膚が島のように残るのが特徴だ。
医学生医学生
風疹の発疹は癒合しにくいと習った気がします。そこが鑑別点ですか。
ドクタードクター
いいところに気づいたね。風疹の発疹は小さいまま癒合しにくく、3日ほどで色素沈着を残さずに消える。では本題だ。麻疹の発疹は熱が下がると同時に消えるだろうか。
医学生医学生
熱が下がるのと同時に消える……いえ、どこかで解熱と発疹がセットになった病気があったような。
ドクタードクター
それが突発性発疹だね。ヒトヘルペスウイルス6型・7型による乳児の病気で、3日前後の高熱が下がるのとほぼ同時に発疹が出てくる。麻疹では、発疹が出てから3〜4日で解熱するが、発疹はすぐには消えない。出た順に色が薄れていき、褐色の色素沈着をしばらく残しながら、数週間ほどかけて消えていくんだ。
医学生医学生
なるほど、熱が下がったタイミングで発疹が消えるという記述が誤りなんですね。突発性発疹と混ぜないように気をつけます。
ドクタードクター
その整理で完璧だ。最後に臨床での注意点をまとめておこう。麻疹は5類感染症の全数把握疾患で、診断したら直ちに届け出が必要だ。院内では空気感染対策として陰圧個室とN95マスクを用いる。確定診断には麻疹特異的IgM抗体やPCRによるウイルス遺伝子検出などの検査室診断が推奨される。
医学生医学生
小児科の実習で、発熱と発疹の子が来たときに、まず予防接種歴を確認していた理由がよくわかりました。
ドクタードクター
大切な視点だね。合併症としては肺炎が死亡原因として特に重要で、中耳炎、クループ、急性脳炎もある。さらに、感染から数年〜10年ほどたって発症する亜急性硬化性全脳炎、いわゆるSSPEは進行性で予後不良だ。特効薬はないから、MRワクチンの2回定期接種による予防が何より重要になる。生ワクチンなので、妊婦や重い免疫不全の人には接種できない点も押さえておこう。

まとめ

麻疹は約10〜12日の潜伏期を経て、発熱・咳・鼻汁・結膜充血を示すカタル期に入り、その終わりに頬粘膜のKoplik斑が出現します。いったん体温が下がった後に再び高熱となって発疹が出る二峰性発熱が特徴で、発疹は耳後部・顔から体幹・四肢へ広がって癒合し、解熱後も褐色の色素沈着を残して徐々に消退します。解熱とともに発疹が出るのは突発性発疹、癒合しにくく色素沈着を残さないのは風疹であり、発熱と発疹のタイミングや性状が鑑別の要点です。麻疹は全数届出の対象で空気感染対策を要し、肺炎やSSPEなど重い合併症があるため、MRワクチン2回接種による予防の意義とあわせて理解しておくことが、小児の発熱・発疹診療の基本になります。

解答・解説

正解はeです

麻疹(はしか)は、パラミクソウイルス科に属する麻疹ウイルスによる急性ウイルス感染症である。空気感染(飛沫核感染)、飛沫感染、接触感染で伝播し、ヒトの感染症のなかでも特に感染力が強い。免疫をもたない人が感染するとほぼ全員が発症する。 典型的な臨床経過は次の3期に分けて理解するとよい。 1. カタル期(前駆期、約3~4日):約10~12日の潜伏期を経て、38℃前後の発熱、咳・鼻汁・くしゃみなどの上気道症状、結膜充血・眼脂などのカタル症状が出現する。この時期の終わり(発疹出現の1~2日前)に、頬粘膜(臼歯に対向する部位)に周囲が赤い小さな白色斑であるKoplik(コプリック)斑が現れる。感染力はこの時期が最も強い。 2. 発疹期(約4~5日):カタル期の終わりに体温がいったんやや下がった後、再び高熱(39~40℃)となり、それとともに発疹が出現する。これが「二峰性発熱」である。発疹は耳の後ろ・頸部・顔面から始まり、体幹、四肢へと下行性に広がる。紅色の斑状丘疹で、次第に癒合して不整形の大きな紅斑となるが、健常皮膚が島状に残る。 3. 回復期:発疹出現から3~4日ほどで解熱し、全身状態が改善する。発疹は出現した順に退色するが、すぐには消えず、褐色の色素沈着をしばらく残す。 本問は「誤っているもの」を選ぶ問題である。皮疹が解熱とともに速やかに消えるという記述は、色素沈着を残して徐々に消退する麻疹の経過とは合わない。解熱と皮疹の関係で混同しやすい疾患として突発性発疹(解熱とともに発疹が出現する)があり、それと区別して覚えておくことが重要である。

選択肢考察

  1. ×a.  潜伏期間は10~14日である。

    正しい記述である(本問では誤りの選択肢ではない)。麻疹の潜伏期間は感染から発熱などの症状出現まで約10~12日、発疹出現までは約14日であり、おおむね2週間程度と考えてよい。なお、曝露後72時間以内であれば緊急のワクチン接種により発症予防や軽症化が期待でき、ワクチン接種が困難な人では曝露後6日以内のヒト免疫グロブリン投与が考慮される。

  2. ×b.  発熱は二峰性の経過を取る。

    正しい記述である。カタル期の発熱が数日続いた後、発疹期に入る直前に体温が一時的に下がり、その後発疹の出現とともに再び高熱となる。この二相性(二峰性)の発熱は麻疹の特徴的な経過である。

  3. ×c.  口腔粘膜に白色斑がみられる。

    正しい記述である。カタル期の後半、発疹が出る1~2日前に、頬粘膜(特に臼歯の向かい側)に周囲が発赤した、やや隆起した1mm程度の白色斑が多数出現する。これがKoplik斑で、麻疹に特徴的な粘膜疹であり、発疹出現前に麻疹を疑う重要な手がかりとなる。発疹出現後2日程度で消失する。

  4. ×d.  皮疹は癒合する。

    正しい記述である。麻疹の発疹は鮮紅色の小さな斑状丘疹として始まり、数を増すにつれて互いに癒合して不整形の大きな紅斑となる。癒合した発疹の間には健常な皮膚が残るのが特徴である。風疹の発疹は癒合しにくく小さいままで、3日程度で色素沈着を残さずに消えることから、両者の鑑別点となる。

  5. ○e.  解熱とともに皮疹は消失する。

    誤った記述であり、これが正解である。麻疹では発疹出現後3~4日で解熱するが、発疹は解熱と同時に消えるわけではない。出現した順に退色していき、褐色調の色素沈着を残して、しばらく(数週間程度)かけて消退する。「解熱と発疹」の関係が特徴的なのは突発性発疹(ヒトヘルペスウイルス6型・7型)で、こちらは3日前後の高熱が下がるのとほぼ同時に発疹が出現する。

麻疹の基本事項

・病原体:麻疹ウイルス(パラミクソウイルス科、一本鎖RNAウイルス) ・感染経路:空気感染(飛沫核感染)、飛沫感染、接触感染。院内では空気感染対策(陰圧個室、N95マスク)が必要である。 ・感染可能期間:症状出現の1日前(発疹出現の約4日前)から、発疹出現後4~5日頃まで。学校保健安全法では第2種感染症に分類され、出席停止期間は「解熱した後3日を経過するまで」である。 ・感染症法:5類感染症(全数把握)で、診断したら直ちに届け出る。

検査・診断

臨床症状に加え、血清の麻疹特異的IgM抗体の検出、ペア血清でのIgG抗体価の上昇、咽頭ぬぐい液・血液・尿からのウイルス遺伝子検出(PCR)で確定する。検査室診断が推奨されている。

合併症

・肺炎(ウイルス性肺炎、細菌の二次感染):死亡原因として重要 ・中耳炎、クループ(喉頭気管炎) ・急性脳炎:約1,000例に1例程度、後遺症を残すことがある ・亜急性硬化性全脳炎(SSPE):感染後数年~10年程度を経て発症する遅発性の中枢神経疾患で、進行性に悪化し予後不良 ・一過性の細胞性免疫低下:ツベルクリン反応の陰性化、結核の悪化など

治療・予防

特異的な抗ウイルス薬はなく、対症療法が中心である(栄養状態の悪い地域ではビタミンA投与が推奨される)。予防にはワクチンが最も重要で、日本では麻疹風疹混合(MR)ワクチンを1歳時(第1期)と小学校入学前の1年間(第2期)の2回定期接種する。弱毒生ワクチンのため、妊婦や重度の免疫不全者には接種しない。

発疹性ウイルス疾患の比較

・麻疹:二峰性発熱、Koplik斑、癒合する発疹、色素沈着を残す ・風疹:発熱と同時期に発疹、癒合しにくい小紅斑、約3日で色素沈着を残さず消退、耳介後部・後頭部リンパ節腫脹 ・突発性発疹:3日前後の高熱の解熱とともに発疹出現、乳児に多い ・伝染性紅斑:両頬の蝶形紅斑(りんご病)、四肢のレース状紅斑

POINT

・麻疹の潜伏期は約10~12日(発疹までは約14日)。 ・経過:カタル期→いったん解熱傾向→発疹とともに再発熱(二峰性発熱)。 ・Koplik斑は発疹出現の1~2日前に頬粘膜に出現する白色斑。 ・発疹は耳後部・顔から体幹・四肢へ広がり、癒合し、消退後に色素沈着を残す。 ・「解熱とともに発疹出現」は突発性発疹であり、麻疹と混同しない。 ・合併症として肺炎、中耳炎、脳炎、SSPEが重要。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。