StudyMed医師国家試験

男の子は数えない―「女児だけの合計特殊出生率」で解く総再生産率

第112回医師国家試験 F問題 第84問

国試問題にチャレンジ

第112回 F問題 第84問

ある地域の15歳から49歳までの女性人口と出生数を表のように仮定する。 年齢別 女性人口(人) 年齢別出生数(人) 男 女 15歳から19歳まで 各 100,000 各 2,100 各 2,000 20歳から39歳まで 各 100,000 各 5,200 各 5,000 40歳から49歳まで 各 100,000 各 1,100 各 1,000  ※15歳から49歳までの総女性人口 3,500,000 人 総再生産率を求めよ。  ただし,小数第2位以下の数値が得られた場合には,小数第2位を四捨五入すること。 解答:① . ②

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は人口統計の計算問題で、テーマは総再生産率だ。ポイントは2つ。1つは「何を数える指標か」を正しく理解すること、もう1つは表の数値が「各年齢ごと」に示されていることを読み取ることだ。まず、総再生産率とはどんな指標か説明できるかな。
医学生医学生
公衆衛生の講義で出てきた気がしますが、合計特殊出生率とどう違うのか、あいまいです。
ドクタードクター
そこから整理しよう。合計特殊出生率は、15歳から49歳までの女性の年齢別出生率を合計したもので、1人の女性が一生のうちに産む子どもの平均数に相当する。総再生産率はこれを女児の出生だけに限って計算したもの。つまり1人の女性が生涯に産む女の子の平均数だ。
医学生医学生
ということは、表にある男児の出生数は使わないんですね。
ドクタードクター
その通り。人口が次の世代に再生産されるかどうかは、将来子どもを産む女性がどれだけ生まれるかで決まる、という発想だね。では年齢別出生率の計算に進もう。年齢別出生率は、その年齢の母から生まれた子の数を、その年齢の女性人口で割ったものだ。
医学生医学生
15歳から19歳だと、女児2,000人を女性人口100,000人で割って0.02ですね。20歳から39歳は0.05、40歳から49歳は0.01。全部足して0.08……あれ、ずいぶん小さいです。
ドクタードクター
そこが一番の落とし穴だ。表には「各100,000」「各2,000」と書いてあるよね。これは15歳の女性が100,000人、16歳の女性も100,000人……という意味で、年齢階級全体の数ではない。総女性人口3,500,000人が、15歳から49歳の35歳分に100,000人を掛けた数と一致していることからも確認できる。
医学生医学生
なるほど、1歳ごとの出生率が並んでいるのだから、階級に含まれる歳数を掛けないといけないんですね。
ドクタードクター
そう。15歳から19歳は5歳分なので0.02×5で0.10、20歳から39歳は20歳分なので0.05×20で1.00、40歳から49歳は10歳分なので0.01×10で0.10。合計すると1.20、小数第2位を四捨五入して1.2が答えだ。
医学生医学生
男児も含めてしまうと、合計特殊出生率になってしまうわけですね。
ドクタードクター
その通り。この表の数値で男女合計を計算すると約2.46になる。それから、出生数の総和を総女性人口3,500,000人で割ってしまう誤りもある。これは一般出生率に近い別の指標になってしまうから注意しよう。
医学生医学生
CBTの勉強のときも、出生率の分母が総人口なのか女性人口なのかでよく混乱しました。
ドクタードクター
分母の区別は計算問題の生命線だね。粗出生率は総人口が分母で人口1,000対、一般出生率は15歳から49歳の女性人口が分母、年齢別出生率はその年齢の女性人口が分母だ。そのうえで、年齢別出生率を合計するのが合計特殊出生率と総再生産率だね。
医学生医学生
純再生産率というのもありましたよね。総再生産率とはどう違うんですか。
ドクタードクター
総再生産率は女性の死亡を考慮していない。生まれた女児が全員、母親と同じ年齢まで生きると仮定しているんだ。純再生産率は、生命表に基づく女性の生存率を加味して、生まれた女児のうち母親世代の年齢まで生き残る数を表す。純再生産率が1.0なら人口は長期的に増えも減りもしない静止人口、1.0を上回れば増加、下回れば減少に向かう。
医学生医学生
合計特殊出生率でいう人口置換水準の約2.1と同じ意味合いですか。
ドクタードクター
考え方は同じだ。合計特殊出生率なら2.07前後、純再生産率なら1.0が人口置換の目安になる。合計特殊出生率に女児の出生割合、約0.49を掛けるとおおよそ総再生産率になるから、2.07前後に0.49を掛けると、ちょうど1前後になるね。
医学生医学生
日本では総再生産率と純再生産率の差は大きいんでしょうか。
ドクタードクター
日本は乳幼児期から再生産年齢までの女性の死亡がとても少ないので、両者はほぼ同じ値になる。例えば2015年は合計特殊出生率1.45に対し、総再生産率は約0.71、純再生産率は約0.70だった。1を大きく下回っていて、長期的な人口減少が見込まれる状態だということが数字からも読み取れる。
医学生医学生
統計の数字が、そのまま少子化の深刻さを示しているんですね。地域医療実習で人口減少の話を聞いたときの実感とつながりました。
ドクタードクター
そう、指標の意味がわかると、統計の数字が社会の姿として見えてくる。計算問題では、女児だけを数えること、表が各歳ごとの値かどうかを確認すること、分母を間違えないこと。この3つを意識しておこう。

まとめ

総再生産率は、15〜49歳の女性の「女児の」年齢別出生率を合計した指標で、1人の女性が生涯に産む女児の平均数を表し、男児の出生数は計算に用いません。本問では表の数値が各年齢ごとに示されているため、年齢階級ごとの出生率に含まれる歳数を掛けて合計し、0.02×5+0.05×20+0.01×10=1.20から1.2となります。男女児合計で計算すると合計特殊出生率に、出生数の総和を総女性人口で割ると一般出生率に近い別の指標になってしまう点が典型的な誤りです。さらに女性の生存率を加味したものが純再生産率で、1.0を上回れば人口は長期的に増加、下回れば減少に向かいますが、日本では両者はほぼ等しく、いずれも1を大きく下回っています。各指標の定義と分母を正確に区別することが、計算問題の正答と人口動態の理解の両方につながります。

解答・解説

正解は1.2です

総再生産率とは

総再生産率は、ある期間に観察された年齢別の出生状況がそのまま続くと仮定したとき、1人の女性が再生産年齢(15~49歳)を通じて産む「女児」の平均数を表す指標である。計算上は、各年齢(1歳刻み)の「女児の年齢別出生率」=(その年齢の母から生まれた女児数)÷(その年齢の女性人口)を、15歳から49歳まで合計して求める。合計特殊出生率を女児の出生に限って計算したものと考えればよい。したがって、本問では男児の出生数は計算に使わない。

計算の手順

表の数値は「各年齢ごとに」示されている点に注意する(例えば15歳の女性が100,000人、16歳の女性も100,000人……)。総女性人口3,500,000人は、15~49歳の35歳分×100,000人に一致しており、この読み取りが正しいことが確認できる。 1. 15~19歳(5歳分)  女児の年齢別出生率=2,000÷100,000=0.02  5歳分の合計=0.02×5=0.10 2. 20~39歳(20歳分)  女児の年齢別出生率=5,000÷100,000=0.05  20歳分の合計=0.05×20=1.00 3. 40~49歳(10歳分)  女児の年齢別出生率=1,000÷100,000=0.01  10歳分の合計=0.01×10=0.10 総再生産率=0.10+1.00+0.10=1.20 小数第2位を四捨五入して 1.2 となる。

よくある誤り

・男児を含めた出生数で計算すると、合計特殊出生率(本問の数値では(4,100×5+10,200×20+2,100×10)÷100,000=約2.46)を求めてしまう。 ・年齢階級ごとの出生率を1回ずつしか足さない(0.02+0.05+0.01=0.08)と、各年齢の分を合計していないことになる。年齢階級に含まれる歳数を掛けるのを忘れないこと。 ・出生数の総和を総女性人口3,500,000で割ると、一般出生率に近い別の指標になってしまう。

人口再生産に関する主な指標

・合計特殊出生率(TFR):15~49歳の女性の年齢別出生率(男女児合計)を合計したもの。1人の女性が一生に産む子どもの平均数に相当する。 ・総再生産率:年齢別出生率を女児のみについて合計したもの。女性の死亡は考慮しない。おおよそ「合計特殊出生率×女児の出生割合(約0.49)」となる。 ・純再生産率:総再生産率に、生命表に基づく女性の生存率(母親世代の女性が各年齢まで生き残る確率)を加味したもの。1人の女性が生涯に産む女児のうち、母と同じ年齢まで生き残る数の平均を意味する。

純再生産率の意味

純再生産率が1.0であれば、母親世代と同じ数の女性が次世代に残ることになり、将来的に人口は増えも減りもしない(静止人口)。1.0を上回れば人口は長期的に増加、下回れば減少に向かう。合計特殊出生率でいえば、人口置換水準はおよそ2.1前後とされる(日本では2.07前後)。

日本の状況

日本は乳幼児期から再生産年齢までの女性の死亡が非常に少ないため、総再生産率と純再生産率の値はほぼ等しい。例えば2015年は合計特殊出生率1.45に対し、総再生産率は約0.71、純再生産率は約0.70であった。純再生産率が1を大きく下回っており、長期的な人口減少が見込まれる状態である。

出生率関連指標の分母の違い

・出生率(粗出生率):年間出生数÷総人口×1,000 ・一般出生率(総出生率):年間出生数÷15~49歳女性人口×1,000 ・年齢別出生率:その年齢の母の出生数÷その年齢の女性人口 分母が何かを区別して覚えることが計算問題の正答につながる。

POINT

・総再生産率=15~49歳の「女児の」年齢別出生率の合計(男児は数えない)。 ・合計特殊出生率は男女児合計、純再生産率は女性の死亡(生存率)も考慮した値。 ・純再生産率が1.0を上回れば人口は長期的に増加、1.0未満なら減少に向かう。 ・年齢階級でまとめて示された表では、各歳の出生率に含まれる歳数を掛けて合計する。 ・日本では総再生産率と純再生産率はほぼ同じ値である。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。