日本人はどこで最期を迎えるのか―死亡場所の統計から見える看取りの変化
第112回医師国家試験 F問題 第16問
国試問題にチャレンジ
平成27年(2015年)の人口動態統計における死亡の場所別にみた割合を示す。 死亡の場所 (ア) (イ) (ウ) (エ) (オ) その他 割合(%) 74.6 12.7 6.3 2.3 2.0 2.1 (イ)はどれか。
- a.自宅
- b.病院
- c.診療所
- d.老人ホーム
- e.介護老人保健施設
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
2015年の人口動態統計では、死亡場所は病院が約75%と最多で、自宅約13%、老人ホーム約6%、介護老人保健施設約2%、診療所約2%の順でした。1950年代には自宅死亡が8割以上を占めていましたが、1970年代後半に病院死亡が逆転し、病院死亡は2000年代半ばの約8割をピークに緩やかに減少しています。多死社会を迎え、地域包括ケアシステムのもとで在宅医療や施設での看取りが推進されており、老人ホームでの死亡は増加、自宅死亡は横ばいからやや増加に転じています。順位と推移の背景をあわせて理解しておくことは、統計問題への対応だけでなく、患者さんの望む看取りを支える医療を考えるうえでも役立ちます。
解答・解説
正解はaです
人口動態統計の死亡票には「死亡したところの種別」が記載され、病院、診療所、介護医療院・介護老人保健施設、助産所、老人ホーム、自宅、その他に分けて集計される。本問は2015年の死亡場所の内訳を示した表から、各割合がどの場所に当たるかを読み取る問題である。 考え方の手順は次のとおりである。 1. わが国では1970年代後半に病院死亡が自宅死亡を上回って以降、病院が圧倒的に多い死亡場所であり、7割を超える74.6%の(ア)は病院である。 2. 2位の12.7%の(イ)は自宅である。在宅医療・在宅看取りが推進されているが、2015年時点で自宅死亡は1割強にとどまっていた。 3. 3位の6.3%の(ウ)は老人ホーム(特別養護老人ホーム、有料老人ホームなど)である。高齢化と施設での看取りの増加を反映して、2000年代以降急速に増えている。 4. (エ)2.3%が介護老人保健施設、(オ)2.0%が診療所である。診療所は有床診療所の減少に伴い、死亡場所としての割合は低下傾向にある。 したがって(イ)は自宅である。「病院>自宅>老人ホーム>介護老人保健施設>診療所」という2015年の順位を押さえておけば解ける。
選択肢考察
- ○a. 自宅
自宅での死亡は12.7%で、病院に次ぐ第2位であり(イ)に当たる。自宅死亡は1950年代には8割以上を占めていたが、医療の高度化や家族形態の変化とともに減少し、近年は1割強で推移していた。地域包括ケアシステムによる在宅看取りの推進により、2015年前後からわずかに増加傾向がみられる。
- ×b. 病院
病院での死亡は74.6%と最も多く、(ア)に当たる。病院死亡の割合は2000年代半ば(約8割)をピークに緩やかに減少しているが、依然として死亡場所の大半を占める。
- ×c. 診療所
診療所での死亡は2.0%で、(オ)に当たる。看取りを行う有床診療所が減少していることから、診療所での死亡割合は長期的に低下している。
- ×d. 老人ホーム
老人ホームでの死亡は6.3%で、(ウ)に当たる。人口動態統計でいう老人ホームには養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホームが含まれる。施設での看取りの普及により、2000年代以降急増している死亡場所である。
- ×e. 介護老人保健施設
介護老人保健施設での死亡は2.3%で、(エ)に当たる。介護老人保健施設はもともと在宅復帰を目指したリハビリテーションを担う中間施設であるため、死亡場所としての割合は老人ホームより低いが、増加傾向にある。
死亡場所の年次推移
・1951年頃は自宅死亡が8割を超え、病院死亡は1割程度にすぎなかった。 ・その後、病院死亡が増加し、1970年代後半(1976〜1977年頃)に病院死亡が自宅死亡を逆転した。 ・病院死亡は2000年に78.2%、2000年代半ばに約8割でピークとなり、その後は緩やかに減少している(2015年は74.6%)。 ・自宅死亡は2000年代に12%前後まで低下した後、ほぼ横ばいからやや増加に転じている。 ・老人ホーム、介護老人保健施設での死亡は増加が続いている。2015年以降もこの傾向は続き、病院死亡の割合はさらに低下して、自宅と老人ホームの割合が増えている。
背景
・高齢化の進展により年間死亡数は増え続けており(いわゆる多死社会)、病床数だけで看取りを担うことは困難である。 ・国は地域包括ケアシステム(住まい・医療・介護・予防・生活支援を一体的に提供する体制)の構築を進め、在宅医療や施設での看取りを推進している。 ・各種意識調査では、人生の最期を自宅で迎えたいと希望する人が少なくない一方、実際の自宅死亡は希望を大きく下回っている。
統計上の区分
人口動態統計の死亡場所は、病院、診療所、介護医療院・介護老人保健施設(介護医療院は2018年創設)、助産所、老人ホーム、自宅、その他に分類される。グループホームやサービス付き高齢者向け住宅などの扱いには注意が必要で、統計の区分と実際の居住形態が一致しない場合がある。
POINT
・2015年の死亡場所:病院74.6%>自宅12.7%>老人ホーム6.3%>介護老人保健施設2.3%>診療所2.0%。 ・病院死亡が自宅死亡を上回ったのは1970年代後半である。 ・病院死亡は2000年代半ばをピークに減少傾向、老人ホームでの死亡は増加傾向、自宅死亡は横ばいからやや増加。 ・在宅看取りの推進は地域包括ケアシステムの柱の一つである。
