StudyMed医師国家試験

看護師は掃除をしない?―「訪問看護」と「訪問介護」の境界線

第112回医師国家試験 C問題 第8問

国試問題にチャレンジ

第112回 C問題 第8問

訪問看護サービスに含まれないのはどれか。

  1. a.服薬指導
  2. b.歩行訓練
  3. c.室内清掃
  4. d.食事の援助
  5. e.人工呼吸器の管理

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は在宅医療を支えるサービスのうち、訪問看護に何が含まれるかを問う問題だ。ポイントは、よく似た名前の「訪問介護」との役割分担。看護の仕事の本質が何かを考えると、答えは自然に見えてくるよ。
医学生医学生
在宅医療の実習で訪問看護に同行したとき、看護師さんが本当にいろいろなことをしていて、正直どこまでが訪問看護なのか曖昧です。
ドクタードクター
そう感じるのは自然だね。まず法律上の定義から整理しよう。看護師の業務は保健師助産師看護師法で「療養上の世話」と「診療の補助」の2本柱とされている。訪問看護は、主治医が出す訪問看護指示書に基づいて、この2本柱を利用者の自宅で行うサービスなんだ。
医学生医学生
指示書が必要なんですね。訪問看護ステーションから勝手に行くわけではないと。
ドクタードクター
その通り。担い手は看護師や保健師、准看護師のほか、ステーションに所属する理学療法士・作業療法士・言語聴覚士も含まれる。では、2本柱に当てはめて選択肢を見ていこう。人工呼吸器の管理はどちらに入るかな。
医学生医学生
医師の指示のもとで行う医療的な処置なので、診療の補助ですね。ALSの患者さんの在宅人工呼吸器管理は、神経内科の講義でも訪問看護の代表例として出てきました。
ドクタードクター
よく覚えているね。設定や作動状況の確認、気道の吸引、呼吸状態の観察、家族への指導まで含めて訪問看護の重要な業務だ。在宅酸素療法、点滴、膀胱留置カテーテル、褥瘡処置なども同じ扱いになる。次に服薬指導はどうだろう。
医学生医学生
服薬指導というと薬剤師の仕事のイメージがあるので、少し迷います。
ドクタードクター
薬剤師が自宅を訪問する居宅療養管理指導という別のサービスもあるから、迷うのはもっともだ。でも訪問看護でも、きちんと飲めているか、飲み忘れや残薬はないか、副作用が出ていないかを確認して指導する。これは療養上の世話や療養指導の一部として含まれるんだ。
医学生医学生
歩行訓練はリハビリなので、理学療法士さんが担当する訪問看護として入る、ということですね。
ドクタードクター
そう。看護師自身が行うこともあるし、ステーションのセラピストが関節可動域訓練や嚥下訓練とあわせて行うこともある。では食事の援助は?
医学生医学生
食事の介助って、ヘルパーさんの仕事のような気がします。訪問看護には入らないのでは…。
ドクタードクター
そこが引っかけやすいところ。食事・排泄・清潔のケアは、まさに「療養上の世話」の中心で、訪問看護に含まれる。特に嚥下障害がある人や胃瘻などの経管栄養をしている人では、誤嚥予防や栄養評価を含めた専門的な関わりが必要になる。もちろん訪問介護の身体介護としても食事介助は行われるから、両者が重なる部分なんだ。
医学生医学生
なるほど。そうすると残るのは室内清掃ですね。掃除は療養上の世話でも診療の補助でもない、ただの家事ということでしょうか。
ドクタードクター
その理解で正解だ。掃除・洗濯・調理・買い物といった家事は、訪問介護の「生活援助」として訪問介護員、いわゆるホームヘルパーが担う。看護の専門性を必要としないから、訪問看護のサービスには含まれない。
医学生医学生
訪問介護は「身体介護」と「生活援助」の2つに分かれる、と公衆衛生の講義で習いました。重なるのは身体介護の部分で、生活援助は介護の領域だけ、と整理できそうです。
ドクタードクター
きれいな整理だね。少し発展的な話もしておこう。訪問看護は、要介護認定を受けている人では原則として介護保険が優先される。ただし末期の悪性腫瘍や神経難病など厚生労働大臣が定める疾病の場合や、急性増悪時に主治医が特別訪問看護指示書を出した場合は医療保険で提供される。40歳未満や認定を受けていない人も医療保険だ。
医学生医学生
保険の切り替えまであるんですね。逆に、ヘルパーさんは医療行為は一切できないのですか。
ドクタードクター
原則として医療行為はできないけれど、一定の研修を受けた介護職員は、医師の指示のもとで喀痰吸引や経管栄養を実施できる。臨床に出たら、退院前カンファレンスでケアマネジャーや訪問看護師、ヘルパーと一緒に、誰が何を担うかを決める場面が必ずある。それぞれの職種の守備範囲を知っておくことが、在宅療養をうまく回すコツなんだ。
医学生医学生
訪問診療と往診の違いも、定期的か臨時か、でしたよね。在宅のサービスをセットで覚えておきます。

まとめ

訪問看護は、主治医の訪問看護指示書に基づき、看護師や訪問看護ステーションのセラピストなどが利用者の自宅で「診療の補助」と「療養上の世話」を行うサービスです。人工呼吸器などの医療機器の管理、服薬の管理・指導、歩行訓練などのリハビリテーション、食事・排泄・清潔の援助はいずれも訪問看護に含まれます。一方、掃除・洗濯・調理・買い物といった家事は訪問介護の「生活援助」としてホームヘルパーが担い、訪問看護には含まれません。訪問看護は原則介護保険ですが、末期悪性腫瘍や神経難病、特別訪問看護指示書の交付時などは医療保険で提供されます。各職種・サービスの守備範囲を理解することは、退院支援や多職種連携で在宅療養を組み立てるための基本となります。

解答・解説

正解はcです

在宅療養を支えるサービスのうち、「訪問看護」と「訪問介護」の役割の違いを問う問題である。 訪問看護は、看護師・保健師・准看護師、あるいは訪問看護ステーションの理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が、主治医の指示(訪問看護指示書)に基づいて利用者の居宅を訪問し、療養上の世話または必要な診療の補助を行うサービスである(保健師助産師看護師法で定める看護師の業務と同じ二本柱)。具体的には、病状の観察、医療処置(点滴・カテーテル・人工呼吸器・在宅酸素などの管理)、服薬の管理と指導、食事・排泄・清潔などの療養上の世話、リハビリテーション、終末期ケア、家族への支援などが含まれる。介護保険または医療保険から給付される。 一方、訪問介護は訪問介護員(ホームヘルパー)や介護福祉士が行う介護保険のサービスで、入浴・排泄・食事などの身体介護と、掃除・洗濯・調理・買い物などの生活援助からなる。 したがって、看護の専門性を必要とせず生活援助に分類される室内清掃は、訪問看護のサービスには含まれない。

選択肢考察

  1. ×a.  服薬指導

    訪問看護では、処方薬が正しく服用されているかを確認し、飲み忘れや残薬の管理、副作用の観察、服薬方法の指導を行う。療養指導の一環であり、訪問看護に含まれる。なお、薬剤師が居宅を訪問して行う訪問薬剤管理指導(居宅療養管理指導)という別のサービスもある。

  2. ×b.  歩行訓練

    訪問看護ではリハビリテーションも行われ、歩行訓練、関節可動域訓練、嚥下訓練などが含まれる。看護師のほか、訪問看護ステーションに所属する理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が担当することもある。したがって訪問看護に含まれる。

  3. ○c.  室内清掃

    室内の清掃は日常生活を維持するための家事であり、訪問介護の「生活援助」(掃除・洗濯・調理・買い物など)として訪問介護員(ホームヘルパー)が行うものである。診療の補助や療養上の世話といった看護の業務には当たらないため、訪問看護のサービスには含まれない。よって本問の正解である。

  4. ×d.  食事の援助

    食事の援助は、排泄の援助、入浴・清拭などの清潔ケアとともに「療養上の世話」に当たり、訪問看護に含まれる。特に嚥下障害や経管栄養(胃瘻など)がある利用者では、誤嚥の予防や栄養状態の評価を含めた看護の専門的な関わりが必要となる。なお、食事介助は訪問介護の身体介護としても行われ、両サービスで重なる部分がある。

  5. ×e.  人工呼吸器の管理

    人工呼吸器の管理は、医師の指示に基づいて行う「診療の補助」に当たり、訪問看護の重要な業務である。設定・作動状況の確認、気道の吸引、呼吸状態の観察、家族への指導などを行う。在宅酸素療法、点滴、膀胱留置カテーテル、褥瘡処置などの管理も同様に訪問看護に含まれる。

訪問看護の概要

・実施者:看護師、保健師、准看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士(訪問看護ステーションや医療機関に所属)。 ・前提:主治医の訪問看護指示書が必要である。 ・保険:介護保険の要介護・要支援認定を受けている人は原則として介護保険が優先される。ただし、末期の悪性腫瘍、神経難病など厚生労働大臣が定める疾病等の場合や、急性増悪時に主治医が特別訪問看護指示書を交付した場合は医療保険で提供される。認定を受けていない人や40歳未満の人は医療保険による。 ・内容:病状の観察、診療の補助(医療処置・医療機器の管理)、療養上の世話(食事・排泄・清潔)、服薬管理、リハビリテーション、終末期ケア(在宅での看取りを含む)、家族の介護指導・相談など。

訪問介護の概要

・実施者:訪問介護員(ホームヘルパー)、介護福祉士。 ・身体介護:入浴・排泄・食事の介助、更衣、体位変換、移乗など。 ・生活援助:掃除、洗濯、調理、買い物、衣類の整理など。 ・原則として医療行為は行えない。ただし一定の研修を受けた介護職員は、喀痰吸引や経管栄養を医師の指示の下で実施できる。

在宅医療を支えるその他のサービス

訪問診療(医師が計画的に定期訪問する)、往診(求めに応じて臨時に訪問する)、訪問リハビリテーション、訪問入浴介護、居宅療養管理指導(医師・歯科医師・薬剤師・管理栄養士などによる指導)などがある。

POINT

・訪問看護は主治医の指示に基づき、看護職などが「診療の補助」と「療養上の世話」を居宅で行うサービスである。 ・服薬指導、リハビリテーション(歩行訓練など)、食事・排泄の援助、人工呼吸器などの医療機器の管理は訪問看護に含まれる。 ・掃除・洗濯・調理・買い物などの家事(生活援助)は訪問介護(ホームヘルパー)の役割であり、訪問看護には含まれない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。