「測り方」に正解がある―MMTと四肢計測の決まりごとを総点検
第112回医師国家試験 B問題 第4問
国試問題にチャレンジ
成人の筋骨格系の診察において正しいのはどれか。
- a.徒手筋力テストで筋収縮のみが認められる場合は1と評価する。
- b.下腿周径は膝蓋骨下縁から5cm遠位の部位で測定する。
- c.下肢長は恥骨結合から母趾爪先までを測定する。
- d.膝関節の可動域は6方向を測定する。
- e.大腿周径は最大周径で測定する。
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
徒手筋力テスト(MMT)は0〜5の6段階で評価し、筋収縮は確認できるが関節運動がない状態を1、重力を除けば全可動域を動かせる状態を2、重力に抗して全可動域を動かせる状態を3とします。四肢周径は、大腿では膝蓋骨上縁から10cm近位(小児では5cm)、下腿では最大周径で測り、大腿四頭筋の萎縮や腫脹の評価に用います。下肢長は上前腸骨棘から内果までの棘果長(SMD)と大転子から外果までの転子果長(TMD)で測り、両者の比較から短縮の部位を推定できます。膝関節の可動域は屈曲・伸展の2方向で、6方向を測るのは股関節や肩関節です。これらの計測は「同じ方法で繰り返し測り、左右差や経時変化を比べる」ことに意味があり、手技の定義を理解することが診察とリハビリ評価の土台になります。
解答・解説
正解はaです
本問は、整形外科やリハビリテーションの診察で日常的に行う基本計測(筋力評価、四肢周径、四肢長、関節可動域)の決まりごとを問う問題である。 これらの計測は、左右差や経時的変化を比べることで初めて意味をもつ。したがって「誰が測っても同じ場所・同じ方法で測る」ことが重要であり、計測部位や評価段階には標準的な定義がある。 ・徒手筋力テスト(MMT:manual muscle testing)は0〜5の6段階で評価し、「筋収縮が見える・触れるが関節は動かない」状態を1とする。 ・周径は筋萎縮や腫脹の評価に用いる。大腿は膝蓋骨上縁から一定距離(成人では10cm)近位で、下腿は最も太い部分(最大周径)で測る。 ・下肢長は骨性の目印(ランドマーク)を基準に測り、代表的なものは上前腸骨棘から内果までの棘果長(SMD)である。 ・関節可動域(ROM:range of motion)は関節ごとに測定する運動方向が決まっており、膝関節は屈曲と伸展の2方向である。 これらの基本知識を一つずつ照らし合わせれば、正しい記述は「筋収縮のみはMMT 1」と判断できる。
選択肢考察
- ○a. 徒手筋力テストで筋収縮のみが認められる場合は1と評価する。
MMTでは、筋の収縮が視診または触診で確認できるものの関節運動はまったく起こらない状態を1(trace)と評価する。収縮もみられなければ0(zero)、重力を除いた肢位でなら関節を全可動域動かせれば2(poor)となる。記述は定義どおりで正しい。
- ×b. 下腿周径は膝蓋骨下縁から5cm遠位の部位で測定する。
下腿周径は、下腿の最も太い部分(主に腓腹筋の膨らみの部分)で測る最大周径が基本である。膝蓋骨下縁から一定距離という決め方ではない。必要に応じて、最も細い部分(足関節直上)の最小周径も測る。
- ×c. 下肢長は恥骨結合から母趾爪先までを測定する。
下肢長は、上前腸骨棘から内果までの棘果長(SMD:spina malleolar distance)で測るのが一般的である。大転子から外果までの転子果長(TMD:trochanter malleolar distance)も併せて用いる。恥骨結合や母趾先端は標準的な計測点ではない。足趾の先端は足関節の肢位で位置が変わるため、再現性のある骨性の目印として不適当である。
- ×d. 膝関節の可動域は6方向を測定する。
日本整形外科学会・日本リハビリテーション医学会の関節可動域表示ならびに測定法では、膝関節は屈曲(参考可動域130°)と伸展(0°)の2方向を測定する。6方向(屈曲・伸展・外転・内転・外旋・内旋)を測るのは、多方向に動く球関節である股関節や肩関節である。
- ×e. 大腿周径は最大周径で測定する。
大腿周径は、成人では膝蓋骨上縁から10cm近位の高さで測るのが一般的である(小児では5cm近位とすることが多い)。膝周囲に腫脹があると、膝蓋骨に近い高さの値はその影響を受けやすい。また、大腿の最大周径は付け根付近で、皮下脂肪の影響も大きく、位置を特定しにくい。このため、大腿四頭筋の萎縮を評価する目的では、膝蓋骨上縁からの距離で部位を決める。
徒手筋力テスト(MMT)の6段階
・5(normal):強い抵抗を加えても重力に抗して全可動域を動かせる ・4(good):ある程度の抵抗に抗して全可動域を動かせる ・3(fair):抵抗がなければ重力に抗して全可動域を動かせる ・2(poor):重力を除けば全可動域を動かせる ・1(trace):筋収縮はあるが関節運動はない ・0(zero):筋収縮もない 3が「重力に抗せるかどうか」の境目であることを押さえるとよい。
四肢長の計測
・棘果長(SMD):上前腸骨棘〜内果。下肢長の代表的指標。 ・転子果長(TMD):大転子〜外果。SMDとともに測定する。SMDに左右差があってもTMDに差がなければ、大転子より近位(股関節脱臼や大腿骨頸部の変形など)の異常が示唆される。 ・上肢長:肩峰〜橈骨茎状突起(または中指先端)。
四肢周径の計測
・大腿周径:膝蓋骨上縁から10cm近位(小児では5cm)。大腿四頭筋の萎縮評価に用いる。 ・下腿周径:最大周径(必要に応じて最小周径も)。 ・上腕周径:上腕二頭筋の最大膨隆部。前腕周径:最大周径。
関節可動域(ROM)
・膝関節:屈曲0〜130°、伸展0°(2方向) ・股関節:屈曲・伸展・外転・内転・外旋・内旋(6方向) ・肩関節:屈曲・伸展・外転・内転・外旋・内旋(水平屈曲・水平伸展を加えると8方向) 測定はゴニオメーター(角度計)を用い、自動運動・他動運動のどちらで測ったかを明記する。
POINT
・MMT:筋収縮のみで関節運動なし=1、重力除去下で全可動域=2、重力に抗して全可動域=3。 ・下肢長は棘果長(上前腸骨棘〜内果)と転子果長(大転子〜外果)。 ・大腿周径は膝蓋骨上縁から10cm近位、下腿周径は最大周径。 ・膝関節のROMは屈曲・伸展の2方向。
