StudyMed医師国家試験

触れないしこりを石灰化が告げる―画像で「怪しい」の次に何をするか

第111回医師国家試験 I問題 第49問

国試問題にチャレンジ

第111回 I問題 第49問

61歳の女性。乳がん検診のマンモグラフィで異常を指摘されたため来院した。左右の乳房に腫瘤を触知しない。乳房超音波検査で不整形,境界不明瞭で内部に点状の高エコースポットを伴う低エコー領域を認める。マンモグラム(A)~(C)を別に示す。  次に行うのはどれか。

第111回 I問題 第49問の問題画像
  1. a.FDG-PET
  2. b.乳房MRI
  3. c.胸腹部CT
  4. d.経皮的針生検
  5. e.骨シンチグラフィ

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、検診のマンモグラフィで見つかった触知しない病変について、次にどの検査へ進むかを考える問題だ。ポイントは2つ。画像所見がどれくらい悪性を示唆しているかと、乳癌診療がどんな順番で進むかだよ。まずはマンモグラムの石灰化をどう読むかな。
医学生医学生
片側の乳房に、細かい石灰化が集まっているように見えます。でも石灰化って、年齢とともに出てくる良性のものも多いですよね。
ドクタードクター
いいところに気づいたね。石灰化は「ある」だけでは悪性とは言えない。粗大な石灰化、中心が抜けた円形の石灰化、血管壁の石灰化などはたいてい良性だ。大事なのは形と分布。今回の拡大像では、大きさ・形・濃度がふぞろいな多形性の微細石灰化で、一部は細い線状や枝分かれ状になっている。それが集簇から区域性に分布しているんだ。
医学生医学生
線状や分枝状というのは、乳管の形をなぞっているということですか。
ドクタードクター
その通り。乳管の中で増殖した癌細胞が中心部で壊死し、そこに石灰が沈着すると、乳管の走行に沿った線状・分枝状の石灰化として写る。面疱型の非浸潤性乳管癌が典型だね。区域性の分布も、癌が乳管に沿って広がっていることを示唆する。
医学生医学生
病理の講義で、面疱壊死の真ん中に石灰化が出ているスライドを見ました。あれが画像ではこう見えるんですね。
ドクタードクター
まさにつながっているよ。超音波のほうも見てみよう。不整形で境界不明瞭な低エコー域の中に点状の高エコーがある。はっきりした腫瘤をつくらない非腫瘤性病変で、点状高エコーは微細石灰化を反映していると考えられる。
医学生医学生
マンモグラフィと超音波の両方で悪性を疑う所見がそろっているので、もう乳癌と考えていいでしょうか。そうなると、広がりを見る乳房MRIを先にやりたくなります。
ドクタードクター
そこが今回の落とし穴だね。画像でどれほど疑わしくても、乳癌の確定診断は病理診断で行うのが原則だ。しかも浸潤の有無、組織型、ER・PgR、HER2、Ki-67といった治療方針を左右する情報は、組織がないと得られない。だから次に行うのは経皮的針生検なんだ。
医学生医学生
なるほど。乳房MRIは感度が高いと習いましたが、それでも確定には使えないんですね。
ドクタードクター
感度は高いけれど特異度が十分ではなく、良性病変も造影されてしまう。乳房MRIの主な出番は、乳癌と確定したあとに、乳管内進展や多発病変、対側病変を評価して手術範囲を決める場面だよ。
医学生医学生
FDG-PET、胸腹部CT、骨シンチグラフィはどれも転移を探す検査なので、診断がつく前にやるものではない、という理解でいいですか。
ドクタードクター
そう考えていい。CTは肺・肝・リンパ節転移、骨シンチは骨転移の検索に使い、どちらも確定後の病期診断で必要に応じて行う。FDG-PETは進行例の転移・再発検索が主な用途で、非浸潤癌や石灰化主体の小さな病変には集積しにくいことも多い。原発巣の良悪性を決める検査ではないんだ。
医学生医学生
視触診、マンモグラフィと超音波、針生検で病理診断、確定してから広がりと転移の検索、という順番ですね。
ドクタードクター
その流れを押さえておけば、似た問題にも対応できる。少し発展させよう。針生検にもいくつか種類がある。穿刺吸引細胞診は簡便だけれど、組織構築がわからないので浸潤かどうかは判定できない。14G程度の針で組織片を取るコア針生検や、太い針で吸引しながら多めに組織を採る吸引式組織生検が今の中心だよ。
医学生医学生
今回のように超音波でははっきりしない石灰化病変では、どうやって狙うんですか。
ドクタードクター
超音波で描出できれば超音波ガイド下で行うけれど、石灰化しか手がかりがない場合は、マンモグラフィで位置を確認しながら行うステレオガイド下の吸引式組織生検を選ぶ。採取した検体をX線撮影して、石灰化がきちんと含まれているかを確認することも大切だ。
医学生医学生
臨床実習で乳腺外科を回ったとき、生検結果のサブタイプを見てから治療方針をカンファレンスで決めていました。
ドクタードクター
そう、ルミナールA・B、HER2陽性、トリプルネガティブといったサブタイプで、内分泌療法、抗HER2療法、化学療法の適応が変わる。針生検は診断を確定するだけでなく、治療を組み立てる出発点でもあるんだ。そして触知しない段階で検診から見つかる早期癌、とくに非浸潤性乳管癌は予後が良好なことが多い。検診の石灰化を見逃さず、きちんと病理まで進めることが患者さんを救うんだよ。

まとめ

マンモグラフィで多形性や微細線状・分枝状の石灰化が集簇性〜区域性に分布し、超音波で点状高エコーを伴う不整形の低エコー域を認める場合は、乳管内を進展する乳癌を強く疑います。ただし乳癌の確定診断は病理診断で行うのが原則であり、画像で悪性が疑われた段階で次に行うのは経皮的針生検(コア針生検や吸引式組織生検、石灰化病変ではステレオガイド下も)です。組織からは浸潤の有無や組織型に加え、ER・PgR・HER2・Ki-67などサブタイプ分類に必要な情報も得られます。乳房MRIは確定後の乳房内の広がり診断、CT・骨シンチグラフィ・FDG-PETは確定後の転移検索に用いる検査です。「画像診断→病理診断→病期診断」という順序を理解しておくことは、乳腺に限らず腫瘍診療全般の基本になります。

解答・解説

正解はdです

所見の整理

・61歳女性。乳がん検診のマンモグラフィで異常を指摘された。視触診では左右とも腫瘤を触れない(非触知病変)。 ・乳房超音波検査:不整形で境界不明瞭な低エコー領域があり、内部に点状の高エコースポットを伴う。腫瘤をつくらない低エコー域(非腫瘤性病変)に、石灰化を反映する点状高エコーが散在する所見であり、乳管内に広がる癌を強く疑わせる。 ・マンモグラム:内外斜位方向〈MLO〉撮影で、右乳房(A)には明らかな異常を認めない。左乳房(B)の上部〜中央の乳腺内に、拡大像(C)で、大きさ・形・濃度が不ぞろいな微細石灰化(多形性で、一部は細線状・分枝状)が集簇〜区域性に分布している。このような形態・分布の石灰化は悪性を強く疑う所見であり、乳管内を進展する癌(非浸潤性乳管癌〈DCIS〉や、乳管内成分の広がる浸潤性乳管癌)に典型的である。

診断へのプロセス

画像(マンモグラフィ・超音波)の両方で悪性を強く疑う所見がそろっており、左乳癌が疑われる。ただし、画像所見だけでは乳癌の確定診断はできない。乳癌の診断は病理学的に行うのが原則であり、さらに浸潤の有無、組織型、ホルモン受容体(ER・PgR)、HER2、Ki-67などの情報も治療方針の決定に不可欠で、これらは組織検体がなければ得られない。

設問の考え方

「次に行う」検査が問われている。乳腺疾患の診療は、視触診 → マンモグラフィ・超音波による画像診断 → 悪性が疑われれば針生検による病理診断、と進む。病理学的に乳癌と確定してから、乳房MRIによる乳房内の広がり診断、CT・骨シンチグラフィ・FDG-PETなどによる遠隔転移検索(病期診断)を必要に応じて追加する。本症例は画像検査で悪性が疑われた段階なので、次は経皮的針生検で組織学的診断を得る。

選択肢考察

  1. ×a.  FDG-PET

    FDG-PETはブドウ糖類似物質の集積から代謝の盛んな病変を検出する検査で、乳癌では主に進行例での遠隔転移や再発の検索に用いられる。非浸潤癌や小さな病変、石灰化主体の病変では集積が乏しいことが多く、原発巣の良悪性の確定には用いられない。診断が確定していない現段階で行う検査ではない。

  2. ×b.  乳房MRI

    造影乳房MRIは感度が高く、乳癌と確定した後の乳房内の広がり(乳管内進展、多発病変、対側病変)の評価、すなわち手術範囲の決定に有用である。しかし特異度は十分でなく、MRI所見だけで乳癌を確定することはできない。次に行うべきは病理診断である。

  3. ×c.  胸腹部CT

    胸腹部CTは肺転移、肝転移、リンパ節転移など遠隔転移の検索に用いる。乳癌と確定し、病期診断が必要になった段階で(主に進行例で)行う検査であり、診断未確定の段階での優先度は低い。

  4. ○d.  経皮的針生検

    マンモグラフィの多形性・線状分枝状の微細石灰化と、超音波での点状高エコーを伴う不整形低エコー域は、いずれも乳癌を強く疑わせる。確定診断には病理組織学的診断が必要であり、超音波ガイド下の針生検(コア針生検や吸引式組織生検)で組織を採取する。超音波で病変が明瞭に描出できない石灰化病変では、マンモグラフィガイド下(ステレオガイド下)の吸引式組織生検が用いられる。組織検体からは、浸潤の有無・組織型のほか、ER・PgR・HER2・Ki-67などの治療方針決定に必要な情報も得られる。

  5. ×e.  骨シンチグラフィ

    骨シンチグラフィは骨転移の検索に用いられる。乳癌は骨転移を来しやすいが、骨転移検索は乳癌と確定した後に、病期や症状(骨痛、ALP上昇など)に応じて行うものであり、現時点で行う検査ではない。

乳癌診断の流れ

1. 問診・視触診(腫瘤、皮膚の陥凹、乳頭分泌、腋窩リンパ節など)。 2. 画像診断:マンモグラフィ、乳房超音波検査。 3. 病理診断:穿刺吸引細胞診、針生検(コア針生検、吸引式組織生検)、必要に応じて外科的生検。現在は組織型や免疫染色の情報が得られる針生検が中心である。 4. 乳癌と確定後:乳房MRIで乳房内の広がりを評価し、病期に応じてCT、骨シンチグラフィ、FDG-PETで遠隔転移を検索する。

マンモグラフィの石灰化の読み方

・良性を考える石灰化:粗大な石灰化、中心透亮性・円形の石灰化、線維腺腫の粗大石灰化、血管壁の石灰化、乳汁うっ滞による棒状石灰化など。 ・悪性を疑う石灰化:微小円形・淡く不明瞭な石灰化、多形性(大きさ・形・濃度が不均一)、微細線状・分枝状の石灰化。分布が集簇性、線状、区域性の場合は乳管に沿った癌の進展を示し、さらに悪性の可能性が高まる。 ・微細線状・分枝状石灰化は、乳管内で壊死した癌細胞に生じた石灰化(面疱型DCISなど)が乳管の形に沿って写ることで生じる。

乳房超音波での悪性を示唆する所見

形状不整、境界不明瞭・粗ぞう、境界部の高エコー像(halo)、縦横比の大きい腫瘤(縦長)、後方エコーの減弱、内部の点状高エコー(微細石灰化)、乳腺前方境界線の断裂など。腫瘤を形成しない非腫瘤性低エコー域として描出されることもある。

針生検の種類

・穿刺吸引細胞診:細い針で細胞を吸引する。簡便だが組織構築がわからず、浸潤の判定はできない。 ・コア針生検〈CNB〉:14G程度の針で組織片を採取する。 ・吸引式組織生検〈VAB〉:太い針で吸引しながら組織を多く採取でき、石灰化病変や小病変に有用。超音波ガイド下またはステレオガイド下で行う。

乳癌の治療に関わる病理情報

ホルモン受容体(ER、PgR)、HER2、Ki-67によりサブタイプ(ルミナールA・B、HER2陽性、トリプルネガティブなど)を分類し、内分泌療法・抗HER2療法・化学療法の適応を決める。

POINT

・乳癌の確定診断は病理診断。画像で悪性が疑われたら、次は針生検(超音波ガイド下やステレオガイド下)。 ・マンモグラフィで多形性・微細線状・分枝状の石灰化が集簇性〜区域性に分布 → 乳癌(特に乳管内進展)を強く疑う。 ・乳房MRIは確定後の広がり診断、CT・骨シンチ・FDG-PETは確定後の転移検索に用いる。 ・非触知でも検診マンモグラフィの石灰化から早期の乳癌(DCISを含む)が見つかる。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。