カルシウムは減らさない!―尿路結石の再発を防ぐ「薄める・減らす・抑える」
第111回医師国家試験 I問題 第32問
国試問題にチャレンジ
尿路結石の再発予防に有用なのはどれか。2つ選べ。
- a.プリン体の摂取
- b.ビタミンCの摂取
- c.クエン酸製剤の内服
- d.カルシウムの摂取制限
- e.1日2L以上の水分摂取
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
尿路結石は5年以内に約半数が再発するため、排石・除去後の再発予防が重要です。予防の基本は、1日2L以上の飲水で尿を薄めること、結石成分の過剰摂取を避けること、クエン酸製剤などで結晶化抑制因子を補うことの3点で、クエン酸は尿中カルシウムとの錯体形成と尿アルカリ化によって結石形成を抑えます。一方、カルシウム制限は腸管でのシュウ酸吸収を高めてかえって結石を増やすため適量摂取が正しく、プリン体やビタミンCの過剰摂取は尿酸・シュウ酸を増やして結石を促進します。結石の成分を分析し、その成分に応じて生活指導と薬物療法を組み合わせる考え方は、外来での患者指導にそのまま生かせる知識です。
解答・解説
正解はc, eです
尿路結石は再発しやすい疾患で、初発後5年以内に約半数が再発するとされる。そのため、結石の排出・除去で治療が終わるのではなく、再発予防の生活指導・薬物療法が重要となる。 結石は、尿中で結晶をつくる成分(カルシウム、シュウ酸、尿酸、リン酸など)が過飽和になり、それを抑える因子(クエン酸、マグネシウムなど)が不足したときにできやすい。したがって再発予防の考え方は次の3点に集約される。 (1) 尿を薄める:十分な飲水で尿量を増やし、結石成分の濃度を下げる。 (2) 結石成分の尿中排泄を減らす:シュウ酸・プリン体・動物性たんぱく質・塩分のとりすぎを避ける。 (3) 結晶化を抑える因子を補う:クエン酸製剤などで尿中クエン酸を増やす。 わが国の尿路結石の約8割以上はカルシウム含有結石(その多くはシュウ酸カルシウム結石)であることを念頭に、各選択肢が「結石を増やすのか、減らすのか」を考えると、有用なのはクエン酸製剤の内服と十分な水分摂取である。
選択肢考察
- ×a. プリン体の摂取
プリン体は体内で代謝されて尿酸になる。プリン体を多く含む食品(レバーなどの内臓類、魚卵、干物、ビールなど)をとりすぎると尿中尿酸排泄が増え、尿酸結石の原因となる。さらに尿中の尿酸結晶はシュウ酸カルシウム結晶の核となって、カルシウム結石の形成も促進する。再発予防ではむしろ摂取を控えるべきである。
- ×b. ビタミンCの摂取
ビタミンC(アスコルビン酸)は体内で一部がシュウ酸に代謝される。大量摂取(サプリメントなど)は尿中シュウ酸排泄を増やし、シュウ酸カルシウム結石の形成を促進するおそれがあるため、結石の既往がある人には過剰摂取を控えるよう指導する。
- ○c. クエン酸製剤の内服
クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム配合製剤を内服すると尿中クエン酸が増える。クエン酸は尿中でカルシウムと可溶性の錯体(キレート)をつくり、シュウ酸カルシウムやリン酸カルシウムの結晶化・凝集を抑える。また尿をアルカリ化するので、酸性尿で析出しやすい尿酸結石やシスチン結石の予防・溶解にも有効である。低クエン酸尿症を伴うカルシウム結石、尿酸結石、シスチン結石などで用いられる。ただし過度のアルカリ化はリン酸カルシウムの析出を招くため、尿pHを確認しながら用量を調整する。
- ×d. カルシウムの摂取制限
食事中のカルシウムは腸管内でシュウ酸と結合して不溶性の塩をつくり、シュウ酸の吸収を抑えている。カルシウムを制限すると腸管で遊離シュウ酸が増えて吸収が亢進し、尿中シュウ酸排泄が増加してかえって結石ができやすくなる。また骨吸収が促進され骨量減少の原因にもなる。再発予防では、カルシウムは制限せず適量(1日600〜800mg程度)を食事からとるよう指導する。
- ○e. 1日2L以上の水分摂取
飲水量を増やして尿量を確保すると、尿中の結石成分が希釈されて過飽和になりにくくなり、また小さな結晶が尿路にとどまらず洗い流される。結石の種類を問わず有効な最も基本的な再発予防策であり、食事以外に1日2L以上の飲水で、1日尿量2L以上を保つことが目安とされる。飲む水分は水や茶などとし、糖分の多い清涼飲料水やアルコールは避ける。
尿路結石の成分と特徴
・シュウ酸カルシウム結石:最多。X線で描出される。 ・リン酸カルシウム結石:アルカリ尿で生じやすい。副甲状腺機能亢進症、尿細管性アシドーシスなどで生じる。 ・リン酸マグネシウムアンモニウム(ストルバイト)結石:ウレアーゼ産生菌(Proteusなど)による尿路感染でアルカリ尿となり生じる。サンゴ状結石になりやすい。 ・尿酸結石:酸性尿で生じやすい。X線透過性(単純X線で写りにくい)だがCTでは描出される。痛風・高尿酸血症に合併。 ・シスチン結石:常染色体潜性遺伝のシスチン尿症で生じる。酸性尿で析出。
再発予防の生活・食事指導
・飲水:食事以外に1日2L以上、尿量2L/日以上を目標。 ・カルシウム:制限しない(適量摂取)。 ・シュウ酸:ほうれん草、たけのこ、チョコレート、紅茶・緑茶(濃いもの)などのとりすぎを避ける。カルシウムを含む食品と一緒にとると吸収が抑えられる。 ・動物性たんぱく質・塩分・糖分・プリン体のとりすぎを避ける(尿中カルシウム・尿酸の増加、尿中クエン酸の減少をきたす)。 ・夕食から就寝までの間隔をあける(夜間は尿が濃縮されやすいため)。 ・肥満、メタボリックシンドロームの是正。
薬物療法
・クエン酸製剤:低クエン酸尿、尿酸結石、シスチン結石など。 ・サイアザイド系利尿薬:尿細管でのカルシウム再吸収を促進し、高カルシウム尿症を是正する。 ・アロプリノールなどの尿酸生成抑制薬:高尿酸尿症を伴う場合。 ・マグネシウム製剤:シュウ酸カルシウムの結晶化を抑える。 ・シスチン結石ではチオプロニンなども用いる。
POINT
・尿路結石は5年以内に約50%が再発する。 ・再発予防の基本は飲水(1日2L以上、尿量2L/日以上)。 ・クエン酸製剤は結晶化抑制と尿アルカリ化により再発を予防する。 ・カルシウム制限は腸管からのシュウ酸吸収を増やすため逆効果(適量摂取が正しい)。 ・プリン体、ビタミンCの大量摂取、シュウ酸・動物性たんぱく・塩分の過剰摂取は結石を促進する。
