StudyMed医師国家試験

「関係なさそう」に宝が眠る―医療面接で求められる聴き方と構え

第111回医師国家試験 H問題 第11問

国試問題にチャレンジ

第111回 H問題 第11問

医療面接を行う上での医師の態度として適切なのはどれか。

  1. a.相手が話したことを繰り返さない。
  2. b.会話をしている間は患者の目を凝視し続ける。
  3. c.主訴と関連がなさそうな症状も含めて病歴を聴取する。
  4. d.他の医療機関から得た病歴については繰り返し聞かない。
  5. e.病状改善の保証ができないことについて同意を得た後に面接を開始する。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は医療面接での医師の態度を問う問題だ。一見常識問題に見えるけれど、医療面接には「診断のための情報を集める」ことと「患者さんとの信頼関係を築く」ことという2つの目的がある。この2つの物差しで各選択肢を判断してみよう。
医学生医学生
OSCEの医療面接の練習で、評価表を見ながら何度もロールプレイしました。でも実際の診療だと、時間も限られているので効率も大事な気がします。
ドクタードクター
効率はもちろん大切だね。ただ、効率を優先して聞く範囲を狭めすぎると、大事な手がかりを落としてしまう。そこで正解は、主訴と関連がなさそうな症状も含めて病歴を聴取する、という態度だ。
医学生医学生
主訴に関係ない話まで聞くと、焦点がぼやけてしまいませんか。
ドクタードクター
そう感じるのは自然だけど、患者さんが無関係だと思っている症状が、実は同じ病気の別の顔だった、ということは珍しくない。たとえば関節痛で来た人に皮疹や口内炎があれば膠原病を考えるきっかけになるし、体重減少があれば悪性腫瘍や甲状腺疾患も視野に入る。主訴とは別の、見逃してはいけない病気が見つかることもある。
医学生医学生
膠原病内科を回ったとき、指導医の先生が手指の冷感や目の乾きまで細かく聞いていて、そこから診断がついた患者さんがいました。
ドクタードクター
まさにそういうことだね。だから現病歴だけでなく、既往歴、家族歴、生活歴、服薬歴、そして全身の臓器ごとに症状の有無を網羅的に確認するreview of systemsまで行って、手がかりを広く拾うんだ。では残りの選択肢も見ていこう。相手が話したことを繰り返さない、というのはどうかな。
医学生医学生
同じことを言い返すと、オウム返しみたいで失礼かと思っていたんですが…。
ドクタードクター
実は逆なんだ。患者さんの言葉の要点を言い直す「反復」は、傾聴を示す代表的な技法だよ。患者さんは「ちゃんと聞いてもらえている」と感じて話を続けやすくなるし、医師にとっても聞き取った内容が正しいか確かめる機会になる。避ける理由はないんだ。
医学生医学生
じゃあ、目をずっと見つめ続けるのも、関心を示しているから良いのでは。
ドクタードクター
アイコンタクト自体は大事な非言語的コミュニケーションだけど、凝視し続けると患者さんは圧迫感や緊張を覚えて、かえって話しにくくなる。適度に視線を合わせながら、ときどき外し、うなずきや表情を交えるのが自然だ。座る位置も、真正面より斜め向かいのほうが緊張を和らげやすいと言われている。
医学生医学生
紹介状に詳しく書いてある場合は、患者さんに同じことを何度も聞くと負担になりそうですが。
ドクタードクター
負担への配慮は大切だね。でも紹介状の記載が不完全だったり、その後に経過が変わっていたりすることもある。自分で改めて確認すると情報の誤りに気付けるし、前の病院では話さなかったことを患者さんが新たに語ってくれることもある。「確認のためにもう一度伺いますね」と意図を伝えて聞けばいいんだ。
医学生医学生
最後の、改善を保証できないことへの同意を先に取るというのは、医療訴訟対策みたいに見えます。医療倫理の講義でインフォームド・コンセントを習ったので、少し迷いました。
ドクタードクター
そこが引っかけだね。診療契約は一般に準委任契約と解されていて、医師は治癒という結果を保証する義務ではなく、医療水準に沿った適切な診療を行う義務を負う。だから面接の前に「治る保証はしません」と同意を取る必要はないんだ。むしろ診療の入り口でそんなことを言われたら、患者さんは不安や不信感を抱いて、信頼関係が築けなくなってしまう。
医学生医学生
予後や治療の限界は、診断がついてから丁寧に説明すべきことなんですね。インフォームド・コンセントのタイミングを取り違えていました。
ドクタードクター
その通り。ほかの技法も整理しておこう。面接の始めは「どうなさいましたか」のような開放型質問で患者さん自身の言葉で語ってもらい、情報を絞り込む段階で閉鎖型質問を使う。答えを偏らせる誘導的な質問は避ける。相づちや促し、要約、そして患者さんの感情を言葉にして受け止める共感も重要な技法だ。
医学生医学生
OSCEで「解釈モデルを聞く」と教わったのも、患者さんが病気をどう理解して何を心配しているかを知るためでしたね。
ドクタードクター
そう。同じ頭痛でも「脳腫瘍が心配で来た」のか「仕事を休めないから薬が欲しい」のかで、説明の仕方も満足してもらえるポイントも変わる。臨床では、病歴だけで診断の大半がつくとも言われるほど医療面接は大事だ。広く聞く姿勢と話しやすい雰囲気づくり、この両輪を意識してほしい。

まとめ

医療面接は、診断に必要な情報の収集と、患者と医師の信頼関係の構築を同時に行う場です。主訴と無関係に見える症状も同じ疾患の別の表れや別の重要疾患の手がかりとなりうるため、既往歴・家族歴・生活歴・服薬歴やreview of systemsを含めて幅広く聴取する態度が適切です。患者の言葉の反復や要約、適度なアイコンタクトは傾聴を示す技法であり、凝視は逆効果となるほか、紹介元の情報も自ら再確認することで誤りや新たな情報に気付けます。診療契約は結果を保証しない準委任契約であり、面接前に改善を保証しないことへの同意を取る必要はなく、かえって信頼関係を損ないます。開放型質問や共感、解釈モデルの把握といった基本技法を身につけることは、OSCEだけでなく臨床で正確な診断と良好な医師患者関係を築く土台になります。

解答・解説

正解はcです

医療面接(medical interview)は、診断に必要な情報を集める場であると同時に、患者と医師の信頼関係(ラポール)を築き、患者の不安や希望を理解し、今後の説明や治療への協力につなげる場でもある。したがって「正確で漏れのない情報収集」と「患者が話しやすい雰囲気づくり」の両方を満たす態度が求められる。 本問の選択肢は、この2つの観点から判断できる。 ・コミュニケーション技法の観点:傾聴を示す技法(反復、適度なアイコンタクト、うなずき・相づちなど)を使っているか。 ・情報収集の観点:先入観や他院の情報に頼りすぎず、診断の手がかりを広く拾っているか。 ・関係づくりの観点:面接の入り口で患者に不要な不安や心理的な壁を与えていないか。 主訴に直接関係しないように見える症状でも、全身疾患の一部であったり、別の重要な疾患の手がかりであったりすることがあるため、幅広く聴取する態度が適切である。

選択肢考察

  1. ×a.  相手が話したことを繰り返さない。

    不適切である。患者の発言の要点や語尾を医師が言い直す「反復(繰り返し)」は、傾聴を示す代表的な技法である。患者は「きちんと聞いてもらえている」と感じて話を続けやすくなり、医師にとっても聞き取った内容が正しいかを確認する機会になる。繰り返しを避ける理由はない。

  2. ×b.  会話をしている間は患者の目を凝視し続ける。

    不適切である。アイコンタクトは関心を伝える非言語的コミュニケーションとして重要だが、目を見つめ続けると患者は圧迫感や緊張を覚え、かえって話しにくくなる。適度に視線を合わせつつ、ときに視線を外す、表情やうなずきを交えるといった自然な態度が望ましい。

  3. ○c.  主訴と関連がなさそうな症状も含めて病歴を聴取する。

    適切である。患者自身が無関係と思っている症状や、医師が一見関係ないと考えた症状が、実は同じ疾患の別の表れであることは珍しくない(例:関節痛と皮疹・口内炎から膠原病を疑う、体重減少から悪性腫瘍や甲状腺疾患を疑う)。また主訴とは別の、見逃してはならない疾患が見つかるきっかけにもなる。このため現病歴に加え、既往歴・家族歴・生活歴・服薬歴、さらに系統的レビュー(review of systems:全身の各臓器系についての症状の有無を網羅的に確認すること)を行い、手がかりを広く集めるべきである。

  4. ×d.  他の医療機関から得た病歴については繰り返し聞かない。

    不適切である。紹介状などで他院の情報があっても、記載が不完全・不正確なことや、その後に経過が変化していることがある。自分で改めて確認することで情報の誤りに気付けるほか、前医では話さなかった症状や事情を患者が新たに語ってくれることもある。もちろん患者の負担に配慮し、確認の意図を伝えつつ聞くのがよい。

  5. ×e.  病状改善の保証ができないことについて同意を得た後に面接を開始する。

    不適切である。診療契約は一般に準委任契約と解されており、医師は結果(治癒)を保証する義務を負うのではなく、医療水準に沿って適切な診療を行う義務(善管注意義務)を負う。したがって面接の前に「改善を保証しない」ことへの同意を取り付ける必要はない。むしろ診療の入り口でこのような確認をすれば、患者に不安や不信感を与え、信頼関係の構築を妨げる。予後や治療の限界は、診断がついた後に必要に応じて丁寧に説明すべき事項である。

医療面接の目的

1. 診断に必要な情報の収集 2. 患者-医師間の信頼関係の構築 3. 患者への説明・教育と治療への動機付け

主なコミュニケーション技法

・開放型質問(open-ended question):「どうなさいましたか」のように自由に答えてもらう質問。面接の初めに用い、患者の言葉で語ってもらう。 ・閉鎖型質問(closed question):「はい/いいえ」で答えられる質問。情報を絞り込み確認する段階で用いる。 ・中立的質問:「お名前は」「いつからですか」など答えが一つに定まる質問。 ・誘導的質問は、患者の答えを偏らせるため避ける。 ・促し(相づち、うなずき、「それで?」)、反復(患者の言葉を繰り返す)、言い換え、要約(聞いた内容をまとめて確認する)、共感(患者の感情を言葉にして受け止める)。 ・非言語的コミュニケーション:適度なアイコンタクト、姿勢、表情、声の調子、座る位置(真正面より斜め向かいの方が緊張を和らげやすい)。

聴取すべき項目

主訴、現病歴、既往歴、家族歴、生活歴(喫煙・飲酒・職業・旅行歴など)、服薬歴・アレルギー歴、系統的レビュー(review of systems)、患者の解釈モデル(病気をどう理解し、何を心配・期待しているか)。

POINT

・医療面接は情報収集と信頼関係構築を同時に行う場である。 ・主訴と無関係に見える症状も診断の手がかりになるため、系統的レビューを含め幅広く聴取する。 ・反復・要約・適度なアイコンタクトは傾聴を示す技法である。凝視は逆効果。 ・他院からの情報も自ら再確認する。 ・診療契約は準委任契約であり、結果の保証は前提ではない。面接前に「改善を保証しない」同意を取る必要はない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。