StudyMed医師国家試験

輸液の「%」をカロリーに直せるか―在宅中心静脈栄養の離脱評価に必要な計算力

第111回医師国家試験 G問題 第43問

国試問題にチャレンジ

第111回 G問題 第43問

6歳の女児。Hirschsprung病の定期受診のため来院した。1歳時に回腸肛門吻合術を受けた。現在,在宅で中心静脈栄養,経腸栄養剤および普通食で栄養支援をしている。中心静脈栄養は1,000mL/日で,その組成の12.5%がブドウ糖で7.5%がアミノ酸である。経腸栄養剤は300mL/日(1kcal/mL)である。身長と体重は標準で,同年齢の推定エネルギー必要量は1,450kcal/日(2015年版食事摂取基準)である。中心静脈栄養から離脱できるか評価したい。  エネルギー必要量のうち,現時点で中心静脈栄養が占めている割合に最も近いのはどれか。

  1. a.20%
  2. b.25%
  3. c.45%
  4. d.55%
  5. e.75%

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、腸管不全で在宅中心静脈栄養を受けている子どもについて、中心静脈栄養が必要エネルギーのどれくらいを担っているかを計算する問題だ。ポイントは2つ。輸液に書かれた「%」をグラム数に直すこと、そして栄養素ごとのエネルギー換算係数を正しく使うことだね。まず、輸液の濃度の「12.5%」とは何を意味するかな。
医学生医学生
100mLの中に12.5g入っている、という意味でしょうか。重さ同士の割合なのか少し自信がないです。
ドクタードクター
輸液の%は通常w/v%、つまり100mLあたりのg数で表す。だから12.5%ブドウ糖なら100mL中12.5g、7.5%アミノ酸なら100mL中7.5gだ。では1,000mLだと、それぞれ何gになる?
医学生医学生
ブドウ糖が125g、アミノ酸が75gですね。
ドクタードクター
その通り。次はエネルギー換算だ。生化学の講義で習ったAtwater係数を思い出してみよう。
医学生医学生
糖質4kcal/g、蛋白質4kcal/g、脂質9kcal/gです。CBTの勉強のときに語呂で覚えました。でも、アミノ酸って蛋白合成の材料なので、エネルギーとして数えていいのか迷います。
ドクタードクター
いい疑問だね。実際の処方設計では、アミノ酸を蛋白合成に回すために非蛋白カロリー/窒素比、いわゆるNPC/N比を考える。ただ、この問題のように「エネルギーのうち何割か」を問われたら、アミノ酸も4kcal/gで単純に換算してよい。すると、ブドウ糖125g×4で500kcal、アミノ酸75g×4で300kcal、合計800kcal/日になる。
医学生医学生
800を1,450で割ると約0.55なので、55%ですね。
ドクタードクター
正解。中心静脈栄養は必要量の半分強を担っていることになる。ほかの選択肢がどこから来るのかも見ておこう。20%前後という値は何に相当すると思う?
医学生医学生
経腸栄養剤が300mLで1kcal/mLなので300kcal、1,450で割ると約21%です。そっちを答えてしまう引っかけですね。
ドクタードクター
そう。さらに、身長と体重が標準で栄養が足りていると考えれば、普通食からは1,450から800と300を引いた約350kcal、つまり約24%を摂っていると推定できる。25%はこれに近い値だ。45%は中心静脈栄養以外の部分、75%前後は中心静脈栄養に他の栄養源を足してしまった値に相当する。
医学生医学生
問われているものを取り違えると、どれも正解らしく見えてしまうんですね。ブドウ糖だけで計算すると500kcalで約34%なので、アミノ酸を忘れても選択肢にない値になります。
ドクタードクター
よく確認できているね。では背景の疾患にも触れておこう。Hirschsprung病は腸管壁内の神経節細胞が肛門側から連続して欠如する先天性疾患だ。回腸を肛門に吻合しているということは、結腸を含む広い範囲を切除したと考えられる。
医学生医学生
小児外科を回ったとき、直腸粘膜生検でアセチルコリンエステラーゼ染色をすると教わりました。全結腸型だと術後に短腸症候群になることがあるんですね。
ドクタードクター
その通り。吸収面積が減るから、静脈栄養に頼らざるを得なくなる。ただ長期の中心静脈栄養には、カテーテル関連血流感染や腸管不全関連肝障害といった合併症がつきまとう。だから残存腸管の順応を待ちながら、経腸栄養や経口摂取を少しずつ増やし、成長を指標に静脈栄養を減らしていくんだ。
医学生医学生
この子の場合だと、約800kcal分を経腸栄養剤や食事で置き換えられるか、そして腸がそれを吸収できるかを見ていくわけですね。
ドクタードクター
まさにそれが離脱評価の考え方だ。もう一つ臨床的な知識として、末梢静脈から入れられるブドウ糖濃度はおおむね10〜12.5%程度までで、それを超える高濃度輸液は静脈炎を起こすので中心静脈から入れる。病棟で輸液のラベルを見たら、何gで何kcalかを暗算する習慣をつけておくといいよ。

まとめ

輸液の濃度表示の%はw/v%で、100mLあたりのg数を表します。本問では12.5%ブドウ糖1,000mLが125g(500kcal)、7.5%アミノ酸1,000mLが75g(300kcal)となり、中心静脈栄養は計800kcal/日、必要量1,450kcalの約55%を担っています。経腸栄養剤(約21%)や推定される普通食分(約24%)と取り違えないよう、問われている対象を明確にすることが大切です。全結腸型などの広範囲型Hirschsprung病では術後に腸管不全となり在宅中心静脈栄養が必要になることがあり、感染や肝障害を避けるため、経腸・経口栄養への置き換えを段階的に進めて離脱を目指します。輸液組成をエネルギーに換算する力は、栄養管理の処方設計や離脱評価を行ううえでの基本技能です。

解答・解説

正解はdです

状況の整理

6歳女児。Hirschsprung病(腸管壁内神経節細胞が先天的に欠如する疾患)で、1歳時に回腸肛門吻合術を受けている。結腸を含む広範な無神経節腸管を切除したと考えられ、腸管の吸収面積が減少しているため、在宅中心静脈栄養(HPN)・経腸栄養剤・普通食の3つを組み合わせて栄養を確保している。今回は中心静脈栄養から離脱できるかを評価するため、必要エネルギーのうち中心静脈栄養がどの程度を担っているかを計算する。

計算に必要な知識

・輸液の濃度表示の%は通常 w/v%(100mL中のg数)である。したがって12.5%ブドウ糖は100mL中12.5g、7.5%アミノ酸は100mL中7.5gを含む。 ・エネルギー換算係数:糖質(ブドウ糖)4kcal/g、蛋白質(アミノ酸)4kcal/g、脂質9kcal/g。

計算過程

(1) ブドウ糖量:1,000mL × 12.5g/100mL = 125g → 125g × 4kcal/g = 500kcal (2) アミノ酸量:1,000mL × 7.5g/100mL = 75g → 75g × 4kcal/g = 300kcal (3) 中心静脈栄養の総エネルギー:500 + 300 = 800kcal/日 (4) 必要量に対する割合:800 ÷ 1,450 × 100 ≒ 55.2% よって最も近いのは55%である。

参考:ほかの栄養源の内訳

経腸栄養剤は300mL × 1kcal/mL = 300kcal(約21%)。身長・体重が標準で栄養状態が保たれていることから、総摂取エネルギーが必要量1,450kcalを満たしていると仮定すると、普通食からの摂取は1,450 −(800 + 300)= 350kcal(約24%)と推定される。中心静脈栄養から離脱するには、この約800kcal分を経腸栄養剤や経口摂取の増量で補えるか、さらに腸管がそれを吸収できるかを評価していくことになる。

選択肢考察

  1. ×a.  20%

    経腸栄養剤300kcalが必要量1,450kcalに占める割合(約21%)に近い値である。中心静脈栄養の割合ではない。

  2. ×b.  25%

    普通食から摂取していると推定される約350kcal(1,450 − 800 − 300)の割合(約24%)に近い値である。中心静脈栄養の割合ではない。

  3. ×c.  45%

    中心静脈栄養以外(経腸栄養剤+普通食)で賄われている分の割合(約45%)に相当する。求める値はその残りの部分である。また、ブドウ糖分のみ(500kcal、約34%)やアミノ酸を除外した計算でもこの値にはならない。

  4. ○d.  55%

    ブドウ糖125g×4kcal=500kcal、アミノ酸75g×4kcal=300kcalで、中心静脈栄養は合計800kcal/日を供給している。800÷1,450×100≒55.2%となり、最も近い。

  5. ×e.  75%

    中心静脈栄養(800kcal)と普通食分(約350kcal)を合算した場合(約79%)や、経腸栄養剤分を加えた場合(1,100kcal、約76%)に近い値で、中心静脈栄養単独の割合ではない。

主な栄養素のエネルギー換算係数(Atwater係数)

・糖質:4kcal/g ・蛋白質(アミノ酸):4kcal/g ・脂質:9kcal/g ・アルコール:7kcal/g

輸液組成の読み方

輸液の%は w/v%で、100mLあたりのg数を表す。例:5%ブドウ糖液500mLにはブドウ糖25g(100kcal)が含まれる。末梢静脈から投与できるブドウ糖濃度はおおむね10〜12.5%程度までで、それを超える高濃度は静脈炎を起こすため中心静脈から投与する。なお臨床栄養では、アミノ酸のエネルギーを蛋白合成に使わせるため、非蛋白カロリー/窒素比(NPC/N比)を考慮して処方設計を行う。本問ではアミノ酸も単純にエネルギーとして4kcal/gで換算すればよい。

Hirschsprung病

腸管壁の筋層間神経叢(Auerbach神経叢)・粘膜下神経叢(Meissner神経叢)の神経節細胞が肛門側から連続して欠如する先天性疾患で、無神経節腸管は蠕動せず機能的な通過障害を起こす。多くは直腸〜S状結腸に限局する(短域型)が、全結腸型や小腸に及ぶ広範囲型もある。診断には注腸造影(caliber change)、直腸肛門内圧検査(直腸肛門反射の欠如)、直腸粘膜生検(アセチルコリンエステラーゼ染色で陽性線維の増生、神経節細胞の欠如)が用いられる。治療は無神経節腸管の切除と正常腸管の肛門への吻合(根治術)である。全結腸型以上の広範囲型では、術後に短腸症候群・腸管不全となり、長期の在宅中心静脈栄養が必要になることがある。

中心静脈栄養からの離脱

長期の中心静脈栄養はカテーテル関連血流感染や腸管不全関連肝障害などの合併症を伴うため、残存腸管の順応(腸管適応)を待ちながら経腸栄養・経口摂取を段階的に増やし、成長(身長・体重)を指標に中心静脈栄養を減量・離脱していく。

POINT

・輸液の%は w/v%(100mL中のg数)。 ・ブドウ糖・アミノ酸は4kcal/g、脂質は9kcal/g。 ・本問:ブドウ糖125g(500kcal)+アミノ酸75g(300kcal)=800kcal、800/1,450≒55%。 ・中心静脈栄養からの離脱評価では、静脈栄養が担うエネルギーを経腸・経口で置き換えられるかを考える。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。