StudyMed医師国家試験

声帯の高さに甲状腺はいない―頸部CTは「縦の並び」と「横の並び」で読む

第111回医師国家試験 G問題 第26問

国試問題にチャレンジ

第111回 G問題 第26問

頸部造影CTを別に示す。  このスライスレベルで確認できないのはどれか。

第111回 G問題 第26問の問題画像
  1. a.喉頭
  2. b.甲状腺
  3. c.外頸静脈
  4. d.総頸動脈
  5. e.胸鎖乳突筋

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は頸部の造影CT、横断像の解剖を問う問題だ。ポイントは2つ。まず、このスライスが頸部のどの高さなのかを決めること。次に、その高さに本来どんな構造が存在するかを思い浮かべること。最初に画像の真ん中を見てみよう。何が写っているかな。
医学生医学生
中央前寄りに黒く抜けた空気の管腔があって、その周りを盾みたいな形の構造が囲んでいます。気管でしょうか。
ドクタードクター
惜しい。気管なら周囲はC字形の気管軟骨で、もっと丸い輪郭になる。盾のように前方へ角ばって張り出す軟骨は甲状軟骨だから、その内側にあるのは喉頭だ。管腔の形からは声門付近、声帯の高さあたりと考えられる。前方に下顎骨や口腔底が写り込んでいるのは、頸部がやや前屈している影響だろうね。
医学生医学生
解剖実習で喉頭を剖出したとき、甲状軟骨の内側に声帯ヒダが張っていたのを思い出しました。ということは、喉頭は「見える」側ですね。
ドクタードクター
その通り。では横方向に目を移そう。喉頭のすぐ外側に、造影剤で白く染まった丸い構造が左右に見えるはずだ。
医学生医学生
内側にあるのが総頸動脈で、その外側に内頸静脈が並んでいるんですよね。でも、喉頭の高さだと総頸動脈はもう内頸動脈と外頸動脈に分かれていませんか。
ドクタードクター
いい疑問だ。総頸動脈の分岐は甲状軟骨の上縁、だいたい第4頸椎の高さが目安になる。声門付近はそれより尾側だから、まだ分岐前の総頸動脈として写るんだ。総頸動脈、内頸静脈、その後方の迷走神経は頸動脈鞘にまとめて包まれている。
医学生医学生
胸鎖乳突筋はその前外側を斜めに覆う帯状の筋ですね。胸骨・鎖骨から乳様突起まで走るので、頸部のどの高さでもだいたい写りそうです。
ドクタードクター
そう、頸部のほぼ全長にわたるから、喉頭レベルでも確実に見える。そして胸鎖乳突筋の表面の皮下に、小さく造影される点がある。これが外頸静脈だ。
医学生医学生
OSCEの頸静脈の視診で、胸鎖乳突筋の上を斜めに走る静脈を確認した記憶があります。あれが外頸静脈ですね。
ドクタードクター
よく結びつけたね。外頸静脈は耳下腺付近で始まり、胸鎖乳突筋の表面を下って鎖骨上で鎖骨下静脈に注ぐ浅在静脈で、頸動脈鞘には含まれない。さて、残るのが甲状腺だ。甲状腺はどこにあったかな。
医学生医学生
首の前の、喉仏のあたり……と思っていたんですが、正確には喉仏より下でしたっけ。
ドクタードクター
そこが今回の落とし穴だね。甲状腺は気管上部の前面から両側を馬蹄形に包んでいて、峡部は第2〜4気管軟骨の前、左右葉も甲状軟骨の下部から気管上部の高さにある。つまり輪状軟骨より下、気管が見えるレベルで初めてはっきり現れる。声門付近の喉頭レベルには写らないんだ。だから確認できないのは甲状腺、これが正解になる。
医学生医学生
頸部エコーの実習で、甲状腺を探すときにまず気管を描出してから両脇を見るように教わったのは、そういう理由だったんですね。
ドクタードクター
まさにそう。もう一つCTの豆知識として、正常の甲状腺はヨードを貯め込んでいるから単純CTでも周囲の筋より白っぽく見え、造影CTではさらに強く濃染する。写っていれば見落としにくい臓器なんだ。
医学生医学生
縦方向は舌骨、甲状軟骨、輪状軟骨、気管と甲状腺の順、横方向は気道、総頸動脈、内頸静脈、胸鎖乳突筋、その表面の外頸静脈、と組み合わせて考えればいいんですね。
ドクタードクター
完璧だ。椎体レベルの目安も添えておこう。舌骨は第3頸椎、甲状軟骨は第4〜5頸椎、輪状軟骨は第6頸椎で、ここが喉頭と気管、咽頭と食道の境目になる。臨床では、甲状腺癌のリンパ節転移や頸部膿瘍の広がりを評価するとき、この断面解剖が前提になる。輪状甲状靱帯穿刺のような緊急手技でも、甲状軟骨と輪状軟骨の位置関係が分かっていないと迷ってしまう。画像の一枚一枚を、体の中の立体として思い浮かべる習慣をつけておこう。

まとめ

頸部の横断像では、まず中央の気道とそれを囲む軟骨からスライスの高さを判断します。甲状軟骨に囲まれた喉頭(声門付近)のレベルでは、喉頭の外側に分岐前の総頸動脈と内頸静脈、その前外側に胸鎖乳突筋、さらに表面の皮下に外頸静脈が描出されます。一方、甲状腺は輪状軟骨より下の気管上部を馬蹄形に包む臓器なので、喉頭レベルには写らず、より尾側のスライスで初めて確認できます。舌骨(第3頸椎)、甲状軟骨(第4〜5頸椎、上縁付近で総頸動脈が分岐)、輪状軟骨(第6頸椎)という縦の目安と、気道・総頸動脈・内頸静脈・胸鎖乳突筋という横の並びを組み合わせると、頸部CTを立体的に読めるようになります。この断面解剖は、頸部腫瘍や膿瘍の評価、気道確保の手技など、臨床の多くの場面の土台となります。

解答・解説

正解はbです

頸部の横断(水平断)CT画像を読み、どの高さのスライスかを判断したうえで、そこに写る構造を同定する問題である。

スライスレベルの判定

画像の中央前方には空気(黒く抜けた部分)を含む管腔があり、その周囲を盾のような形の軟骨が囲んでいる。これは甲状軟骨に囲まれた喉頭であり、管腔の形から声門付近(声帯の高さ前後)のレベルと判断できる。前方には下顎骨と口腔底の軟部組織が写り込んでおり、頸椎(第4〜5頸椎付近)の椎体も確認できる。

このレベルで見える構造

・正中:喉頭(甲状軟骨、喉頭内腔) ・喉頭の両外側:造影されて白く見える総頸動脈と、その外側の内頸静脈 ・さらに外側:前外側を斜めに走る胸鎖乳突筋 ・胸鎖乳突筋の表面(皮下):小さく造影される外頸静脈

甲状腺の位置

甲状腺は気管上部の前面〜両側にあり、峡部はおおむね第2〜4気管軟骨の前面、左右葉は甲状軟骨の下部から第5〜6気管軟骨の高さにかけて位置する。したがって喉頭(声門付近)のレベルには写らず、より尾側(足側)のスライスで初めて確認される。 頸部の断面解剖では、「舌骨→甲状軟骨(喉頭)→輪状軟骨→気管・甲状腺」という縦方向の並びと、「正中の気道→総頸動脈→内頸静脈→胸鎖乳突筋」という横方向の並びを組み合わせて考えるとよい。

選択肢考察

  1. ×a.  喉頭

    確認できる。画像中央に空気を含む管腔と、それを取り囲む甲状軟骨が描出されており、声門付近の喉頭のレベルである。喉頭は甲状軟骨の内側(後方)に位置し、成人ではおおよそ第4〜6頸椎の高さにある。

  2. ○b.  甲状腺

    確認できない。甲状腺は気管上部の前面から両側を覆うように存在し、峡部は第2〜4気管軟骨の前、左右葉は甲状軟骨下部〜気管上部の高さにある。本スライスは甲状軟骨に囲まれた喉頭(声門付近)のレベルであり、甲状腺はこれより尾側のスライスで描出される。なお、正常の甲状腺はヨードを多く含むため、単純CTでも周囲の筋より高吸収に見え、造影CTではさらに強く造影されるので、写っていれば同定は容易である。

  3. ×c.  外頸静脈

    確認できる。外頸静脈は耳下腺付近で形成され、胸鎖乳突筋の表面(浅層)を斜め下方に走行して鎖骨上で鎖骨下静脈に注ぐ。本画像でも胸鎖乳突筋の外側表面の皮下に、造影された小さな円形構造として描出されている。

  4. ×d.  総頸動脈

    確認できる。総頸動脈は喉頭・気管の外側を上行し、通常は甲状軟骨上縁(第4頸椎)付近の高さで内頸動脈と外頸動脈に分岐する。本スライスは声門付近で分岐部より尾側であるため、喉頭の両外側に造影された円形の総頸動脈が見え、その外側に内頸静脈が並ぶ。

  5. ×e.  胸鎖乳突筋

    確認できる。胸鎖乳突筋は胸骨柄・鎖骨内側端から起こり、乳様突起へ向かって頸部の前外側を斜めに走る筋である。頸部のほぼ全長にわたって存在するため、喉頭レベルの横断像でも頸動脈鞘(総頸動脈・内頸静脈・迷走神経)の前外側を覆う帯状の筋として描出されている。

頸部の主な構造と椎体レベルの目安(成人)

・舌骨:第3頸椎 ・甲状軟骨:第4〜5頸椎(上縁付近で総頸動脈が内・外頸動脈に分岐) ・輪状軟骨:第6頸椎(喉頭と気管、咽頭と食道の境界) ・甲状腺:峡部は第2〜4気管軟骨の前面、左右葉は甲状軟骨下部〜第5〜6気管軟骨の高さ

頸動脈鞘

総頸動脈(内側)、内頸静脈(外側)、迷走神経(両者の後方)が頸動脈鞘に包まれて走行する。胸鎖乳突筋はこの鞘の前外側を覆う。外頸静脈は胸鎖乳突筋の表面を走る浅在静脈で、頸動脈鞘には含まれない。

CTでの甲状腺の見え方

甲状腺はヨードを取り込んで貯蔵しているため、単純CTでも周囲より高吸収を示す。造影CTでは血流が豊富なため強く濃染する。気管の前面〜両側を馬蹄形に取り囲む構造として認識する。

POINT

・喉頭(甲状軟骨)のレベルでは甲状腺は写らず、甲状腺は輪状軟骨より下の気管上部のレベルで見える ・頸部横断像では、正中の気道の外側に総頸動脈、その外側に内頸静脈、前外側に胸鎖乳突筋、その表面に外頸静脈が並ぶ ・総頸動脈の分岐は甲状軟骨上縁(第4頸椎)付近

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。