風疹ワクチンはどこに打つ?―妊娠前の一本と「投与経路」の基本
第111回医師国家試験 F問題 第22問
国試問題にチャレンジ
28歳の女性。風疹ワクチン接種を希望して来院した。第1子妊娠中に風疹抗体価が陰性であることが判明した。第2子の挙児希望があり,現在は妊娠していない。内服薬や出血傾向をきたす基礎疾患はない。 風疹ワクチンの適切な投与経路はどれか。
- a.鼻腔内投与
- b.経口投与
- c.静脈注射
- d.皮下注射
- e.皮内注射
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
風疹ワクチンは弱毒生ワクチンで、通常は麻疹風疹混合(MR)ワクチンとして0.5 mLを皮下注射します。妊娠初期の風疹初感染は白内障・先天性心疾患・感音難聴を三徴とする先天性風疹症候群の原因となるため、抗体陰性の女性には妊娠前の接種が勧められ、妊娠中は禁忌で接種後約2か月は避妊が必要です。ワクチンの投与経路は、経口がロタウイルス、経鼻が弱毒生インフルエンザ、日本のBCGは管針による経皮、HPVやmRNAワクチンは筋肉内と整理でき、静脈内投与のワクチンはありません。同居家族の抗体確認・接種も含めた対策は、先天性風疹症候群を社会から減らすための公衆衛生上の基本として押さえておきましょう。
解答・解説
正解はdです
状況の整理
・28歳女性。前回の妊娠中の検査で風疹抗体が陰性と判明しており、第2子を希望している。 ・現在は妊娠していない。 ・内服薬や出血傾向をきたす基礎疾患はない(注射部位の出血が問題になる状況ではないことを示す情報である)。
考え方
妊娠初期(特に妊娠20週ごろまで、なかでも12週以前)に風疹に初感染すると、胎児が先天性風疹症候群(CRS:congenital rubella syndrome)を起こす危険がある。そのため、風疹抗体をもたない女性は妊娠前にワクチンで免疫をつけておくことが重要である。風疹ワクチンは弱毒生ワクチンであり、妊娠中は禁忌となるため、妊娠していない今が接種の好機である。 本問で問われているのは投与経路である。日本で用いられる風疹含有ワクチン(通常は麻疹風疹混合ワクチン:MRワクチン、または風疹単独ワクチン)は、いずれも0.5 mLを皮下に注射する。したがって正解は皮下注射である。 なお、接種後は約2か月間避妊する必要がある。
選択肢考察
- ×a. 鼻腔内投与
誤り。風疹ワクチンを鼻腔内に投与することはない。鼻腔内に噴霧するワクチンとしては、経鼻弱毒生インフルエンザワクチンがある(日本でも近年承認され、小児・青年が対象となっている)が、ワクチン全体からみれば例外的な経路である。
- ×b. 経口投与
誤り。風疹ワクチンは経口では投与しない。経口ワクチンの代表はロタウイルスワクチンである。かつては経口生ポリオワクチン(OPV)も用いられたが、日本では2012年に不活化ポリオワクチン(注射)へ切り替えられた。
- ×c. 静脈注射
誤り。予防接種として静脈内に投与するワクチンはない。ワクチンは皮下・筋肉内・皮内などの組織に投与し、局所の抗原提示細胞を介して免疫を誘導する。風疹ワクチンも静脈注射は行わない。
- ○d. 皮下注射
正しい。風疹ワクチン(MRワクチン、風疹単独ワクチン)は0.5 mLを皮下に注射する。日本では麻疹・風疹、水痘、おたふくかぜ、日本脳炎、インフルエンザ(注射用)など、多くのワクチンが皮下注射で接種されている。
- ×e. 皮内注射
誤り。風疹ワクチンは皮内には注射しない。皮内注射はツベルクリン反応検査などで用いられる手技である。なおBCGは、海外では皮内注射が一般的だが、日本では管針(スタンプ式の針)を用いた経皮接種で行う。
風疹と先天性風疹症候群
・風疹は風疹ウイルスによる感染症で、発熱、発疹、リンパ節腫脹(特に耳介後部・後頭部)を三主徴とする。 ・妊娠初期の初感染で、胎児に先天性風疹症候群が起こりうる。三主徴は白内障、先天性心疾患(動脈管開存症など)、感音難聴である。感染時期が早いほど発生リスクが高い。
風疹ワクチン接種の注意点
・弱毒生ワクチンであり、妊娠中は禁忌。接種後約2か月間は避妊する。 ・抗体陰性・低抗体価の女性には妊娠前の接種が勧められる。妊娠中に抗体陰性が判明した場合は、出産後早期の接種が推奨される。 ・妊婦への感染を防ぐため、同居家族(特に夫など)の抗体確認・接種も重要である。 ・成人の接種では、麻疹の予防も兼ねてMRワクチンを用いることが多い。
ワクチンの主な投与経路(日本)
・皮下注射:MR、水痘、おたふくかぜ、日本脳炎、インフルエンザ(注射用)など多数。 ・筋肉内注射:HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン、新型コロナウイルスのmRNAワクチンなど。B型肝炎ワクチンなど一部のワクチンは皮下・筋肉内のいずれも可能である。 ・経口:ロタウイルスワクチン。 ・経皮(管針法):BCG。 ・経鼻:弱毒生インフルエンザワクチン。 ・静脈内投与のワクチンはない。
筋肉内注射と出血傾向
筋肉内注射では深部での出血・血腫が問題になるため、抗凝固薬内服や血小板減少など出血傾向のある人では注意が必要である。本問の「出血傾向をきたす基礎疾患はない」という記載は、接種そのものに支障がないことを示している。
POINT
・風疹ワクチン(MRワクチン)は皮下注射で接種する。 ・風疹ワクチンは弱毒生ワクチンで妊娠中は禁忌、接種後約2か月は避妊。 ・抗体陰性の女性は妊娠前に接種し、先天性風疹症候群(白内障・先天性心疾患・感音難聴)を予防する。 ・経口ワクチンはロタウイルス、BCGは日本では経皮(管針法)、HPVワクチンは筋肉内注射。
