StudyMed医師国家試験

「何が心配ですか」の一言が開く扉―解釈モデルを聴く医療面接

第111回医師国家試験 C問題 第4問

国試問題にチャレンジ

第111回 C問題 第4問

他の医療機関の治療で症状が改善しない患者が受診した。  医療面接で解釈モデルを尋ねているのはどれか。

  1. a.「どのような病気が心配ですか」
  2. b.「症状について詳しく聞かせてください」
  3. c.「前にかかった医師は何と言っていましたか」
  4. d.「他に何か言い忘れていることはありませんか」
  5. e.「これまでに似たような症状が起きたことはありますか」

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は医療面接の問題だ。テーマは「解釈モデル」。言葉は聞いたことがあっても、具体的にどんな質問がそれに当たるのか、意外とあいまいなまま覚えている人も多い。それぞれの質問が「何を集めようとしているのか」に注目して考えてみよう。
医学生医学生
OSCEの医療面接で「解釈モデルを聞く」という項目がチェックリストにありました。でも正直、何となく決まり文句を言っていただけかもしれません。
ドクタードクター
それなら、まず定義から確認しよう。解釈モデルとは、患者さん自身が自分の病気や症状をどう捉えているか、という本人なりの考えのことだ。何の病気だと思っているか、原因は何か、どのくらい重いと思っているか、どんな検査や治療が必要だと考えているか、今後どうなると思っているか、といった内容が含まれる。
医学生医学生
医学的に正しいかどうかは関係ないんですか。
ドクタードクター
そう、正しさは問わない。患者さんの知識や経験、家族や知人の病歴、文化的な背景などで一人ひとり違うものなんだ。だからこそ聞かないと分からない。では、患者さん本人の考えや心配を直接引き出している質問はどれだと思う?
医学生医学生
「どのような病気が心配ですか」でしょうか。本人が何を恐れているかを聞いているので。
ドクタードクター
正解だ。たとえば頭痛が続く人が実は脳腫瘍を心配していると分かれば、その不安に焦点を当てた説明や検査計画を立てられる。「原因は何だと思いますか」「どんな検査や治療を希望されますか」も同じく解釈モデルを尋ねる質問だね。
医学生医学生
「前にかかった医師は何と言っていましたか」も迷いました。病気についての説明を聞いているので、解釈に近い気がして。
ドクタードクター
いいところで迷ったね。これは前医という他者の見解を確認する質問で、診療経過を知るにはとても大事だ。ただ、患者さん本人がどう考えているかとは別物。前医の説明を聞いたうえで本人がどう受け止めているかは、改めて尋ねる必要がある。
医学生医学生
「症状について詳しく聞かせてください」は開放型質問ですよね。自由に話してもらえるので、解釈も出てきそうですが。
ドクタードクター
開放型、あるいは話題を症状に絞った焦点を絞った質問とも言える。主訴や現病歴を詳しく把握するのに有用だけど、尋ねているのは症状そのものの情報だ。患者さんがその症状をどう解釈しているかを狙った質問ではない。
医学生医学生
「似たような症状が起きたことはありますか」は、はい・いいえで答えられる閉鎖型質問で、既往という医学的事実の確認ですね。
ドクタードクター
その通り。鑑別を絞るのには役立つけれど、考えや心配は引き出さない。「他に何か言い忘れていることはありませんか」は、面接の終盤で聞き漏らしや言い出しにくかったことを拾う質問だ。大切だけど、これも解釈を直接問うものではない。
医学生医学生
整理すると、患者さん本人の考えを聞いているか、医学的情報を集めているか、で分ければいいんですね。
ドクタードクター
そう。そのうえで、今回の患者さんが他院の治療で良くならずに受診先を変えている点にも意味がある。こういう方は、診断への疑問や説明への不満、重い病気への不安など、満たされていない思いを抱えていることが多いんだ。
医学生医学生
総合診療科を回ったとき、何か所も病院を回ってきた患者さんに、指導医の先生がまず「一番心配なことは何ですか」と聞いていたのを思い出しました。
ドクタードクター
まさにそれが実践だね。解釈モデルと医師の説明が食い違ったままだと、いくら説明しても不安は消えず、治療への納得や服薬アドヒアランスも得にくい。懸念を把握して、それに応える説明をすることが、受診の繰り返しを防ぐことにもつながる。
医学生医学生
解釈モデル以外にも、患者さんの側から聞くべきことはありますか。
ドクタードクター
患者中心の医療面接では、解釈(何が起きていると思うか)、感情(不安や恐れ)、期待(医師に何をしてほしいか)、影響(生活や仕事への支障)の4つの側面で整理すると分かりやすい。英語の頭文字でFIFEとも呼ばれる。質問法も、開放型から始めて徐々に焦点を絞り、最後に閉鎖型で確認する流れが基本だ。
医学生医学生
解釈モデルは決まり文句じゃなくて、その後の説明の方向を決めるための情報なんですね。
ドクタードクター
その理解で十分だ。聞いた答えを説明に活かしてこそ意味がある、と覚えておこう。

まとめ

解釈モデルとは、患者自身が自分の病気の病名・原因・重症度・必要な検査や治療・見通しをどう捉えているかという本人なりの考えで、医学的な正しさとは無関係に一人ひとり異なります。「どのような病気が心配ですか」「原因は何だと思いますか」「どんな検査や治療を希望されますか」といった質問がこれに当たり、症状の詳細、前医の説明、既往の有無を尋ねる質問は医学的情報の収集であって解釈モデルの聴取ではありません。前医の治療で改善せず受診先を変えた患者は満たされない不安を抱えていることが多く、解釈モデルを把握して懸念に応える説明をすることが、納得やアドヒアランス、信頼関係の構築につながります。解釈・感情・期待・影響(FIFE)の枠組みや、開放型から閉鎖型へ進める質問法とあわせて理解しておくと、OSCEから実際の臨床まで一貫して役立ちます。

解答・解説

正解はaです

本問は、医療面接における「解釈モデル」の意味を理解し、それを引き出す質問を選ぶ問題である。

解釈モデルとは

解釈モデル(explanatory model)とは、患者自身が自分の病気や症状をどのように捉えているかという、その人なりの考えや理解のことである。具体的には「何の病気だと思っているか」「原因は何だと考えているか」「どのくらい重いと思っているか」「どんな検査や治療が必要だと考えているか」「今後どうなると思っているか」などが含まれる。医学的な正しさとは無関係に、患者の知識、経験、家族や知人の病歴、文化的背景などによって一人ひとり異なる。

なぜ解釈モデルを尋ねるのか

患者の解釈モデルと医師の医学的説明が食い違ったままだと、説明を受けても患者の不安が解消されず、治療への納得や服薬アドヒアランスが得られにくい。本問の患者のように、前医の治療で症状が改善せず受診先を変えた患者は、満たされていない不安や期待を抱えていることが多い。「何が心配なのか」をまず把握することで、その懸念に焦点を当てた説明が可能となり、良好な患者–医師関係の構築につながる。

正解を導く考え方

各選択肢が「患者本人の病気に対する考え・心配」を尋ねているか、それとも症状・経過・他者の意見などの医学的情報を集めているかで判別する。患者自身の考えを直接引き出しているのは「どのような病気が心配ですか」である。

選択肢考察

  1. ○a.  「どのような病気が心配ですか」

    患者が自分の症状をどのような病気によるものと考え、何を恐れているのかを尋ねており、解釈モデルを聴取する典型的な質問である。例えば、頭痛が続く患者が実は脳腫瘍を心配していると分かれば、その不安に応じた説明や検査の計画を立てることができる。同様に「原因は何だと思いますか」「どのような検査や治療を希望されますか」といった質問も解釈モデルを尋ねるものである。

  2. ×b.  「症状について詳しく聞かせてください」

    患者に自由に語ってもらう開放型質問(open-ended question)であり、話題を症状に絞っている点で焦点を絞った質問ともいえる。主訴や現病歴を詳しく把握するのに有用だが、尋ねているのは症状そのものの情報であり、患者がその症状をどう解釈しているかではない。

  3. ×c.  「前にかかった医師は何と言っていましたか」

    前医の診断や説明の内容を確認する質問であり、これまでの診療経過を把握するうえで重要である。しかし、尋ねているのは前医という他者の見解であって、患者本人の病気に対する考えではないため、解釈モデルの聴取には当たらない。

  4. ×d.  「他に何か言い忘れていることはありませんか」

    面接の終盤などで、聞き漏らしや患者が言い出しにくかった事柄がないかを確認する質問である。重要な情報を取りこぼさないために有用だが、患者の病気に対する解釈を直接問うものではない。

  5. ×e.  「これまでに似たような症状が起きたことはありますか」

    「はい」「いいえ」で答えられる閉鎖型質問(closed question)であり、同様の症状の既往という医学的事実を確認している。鑑別診断を絞り込むのには役立つが、患者の考えや心配を引き出す質問ではない。

医療面接で用いる質問法

・開放型質問(open-ended question):「どうなさいましたか」など、患者が自由に答えられる質問。面接の初めに用い、多くの情報を引き出せる。 ・焦点を絞った質問(focused question):「痛みについてもう少し詳しく教えてください」など、話題を限定しつつ自由に答えてもらう質問。 ・閉鎖型質問(closed question):「はい」「いいえ」や単語で答えられる質問。特定の事実を確認するのに適するが、多用すると患者が話しにくくなる。 ・多項目(選択肢)質問:「ズキズキしますか、締め付けられる感じですか」など、選択肢を示す質問。 ・中立的質問:氏名や年齢など、事実を確認する質問。 一般に、開放型から始めて徐々に焦点を絞り、最後に閉鎖型で確認する流れが推奨される。

患者中心の医療面接で把握したい事項

患者の病の体験は、解釈(何が起きていると考えているか)、感情(不安や恐れ)、期待(医師に何をしてほしいか)、影響(生活や仕事への支障)の4つの側面から捉えると整理しやすい。英語の頭文字からFIFE(Feelings, Ideas, Function, Expectations)とも呼ばれる。解釈モデルはこのうち主に「解釈」と「期待」にあたり、受療行動(どの医療機関を受診するか、治療に従うかなど)にも影響する。

受療行動の背景

症状が改善せず医療機関を変える患者の背景には、診断への疑問、説明への不満、重い病気への不安などが隠れていることがある。解釈モデルを確認し、患者の懸念に応じた説明を行うことが、不要な受診の繰り返し(いわゆるドクターショッピング)の予防にもつながる。

POINT

・解釈モデルとは、患者自身が病気の原因・病名・重症度・必要な検査や治療・予後についてどう考えているかである。 ・「どのような病気が心配ですか」「原因は何だと思いますか」「どんな検査・治療を希望されますか」は解釈モデルを尋ねる質問。 ・前医の説明、症状の詳細、既往の有無を尋ねる質問は医学的情報の収集であり、解釈モデルではない。 ・質問法(開放型、焦点を絞った質問、閉鎖型など)の区別も併せて押さえる。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。