一晩で眠りと呼吸をまるごと記録する―ポリソムノグラフィに「ないもの」はどれ?
第111回医師国家試験 B問題 第9問
国試問題にチャレンジ
ポリソムノグラフィに含まれないのはどれか。
- a.脳波
- b.血圧
- c.筋電図
- d.心電図
- e.SpO2
対話形式の解説
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ドクターまとめ
ポリソムノグラフィ(PSG)は一晩の睡眠中に複数の生体信号を同時記録する検査で、睡眠時無呼吸症候群の確定診断のゴールドスタンダードであり、ナルコレプシーやレム睡眠行動障害、周期性四肢運動障害の診断にも用いられます。記録項目は、睡眠段階を判定する脳波・眼電図・頤筋筋電図と、睡眠中の異常を捉える口鼻気流、胸腹部呼吸運動、SpO2、心電図、いびき、体位、前脛骨筋筋電図などに分けると整理できます。血圧は睡眠時無呼吸と深く関連するものの、測定自体が睡眠を妨げうることもあり標準項目には含まれず、ABPMや家庭血圧で別に評価します。脳波のない簡易検査は睡眠時間を測れず重症度を過小評価しやすいため、PSGとの違いを理解しておくことが大切です。各項目を「何のために測るか」で整理すると、検査結果の解釈や適切な検査選択にも役立ちます。
解答・解説
正解はbです
ポリソムノグラフィ(polysomnography:PSG、終夜睡眠ポリグラフ検査)は、一晩の睡眠中に複数の生体信号を同時に記録し、睡眠の質と構造、そして睡眠中に起こる呼吸・循環・運動の異常をまとめて評価する検査である。主に睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome:SAS)の確定診断や重症度判定に用いられるほか、ナルコレプシー、周期性四肢運動障害、レム睡眠行動障害などの診断にも使われる。 記録項目は大きく二つに分けて考えると覚えやすい。 (1) 睡眠の状態(眠っているか、どの睡眠段階か)を判定する項目:脳波(EEG)、眼電図(EOG)、頤筋(おとがい筋)筋電図(EMG)。この3つで睡眠段階(覚醒・ノンレム睡眠N1〜N3・レム睡眠)を判定する。 (2) 睡眠中に起きている異常を捉える項目:口鼻の気流(サーミスタ・鼻圧センサー)、胸腹部の呼吸運動(呼吸努力)、経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)、心電図、いびき音、体位、前脛骨筋筋電図(下肢の動き)など。 本問は「含まれないもの」を選ぶ問題である。血圧は睡眠時無呼吸と深い関係があるものの、標準的なPSGの記録項目には入っていない。カフで夜間に繰り返し加圧すれば睡眠そのものを妨げてしまうことも、ルーチンで測定しない理由の一つと理解するとよい。
選択肢考察
- ×a. 脳波
PSGに含まれる。脳波は睡眠段階判定の中心となる記録で、覚醒時のα波、N1期の低振幅混合波、N2期の睡眠紡錘波やK複合、N3期の高振幅徐波(δ波)などから睡眠の深さを判定する。無呼吸や低呼吸の終わりに生じる覚醒反応(arousal)も脳波で検出し、睡眠の分断の程度を評価する。
- ○b. 血圧
PSGの標準的な記録項目には含まれないため、本問の正解である。閉塞性睡眠時無呼吸は低酸素と交感神経の亢進を介して高血圧(特に治療抵抗性高血圧や夜間高血圧)の重要な原因となるが、血圧の評価は通常、別途24時間自由行動下血圧測定(ABPM)や家庭血圧測定で行う。
- ×c. 筋電図
PSGに含まれる。頤筋(おとがい筋)の筋電図は、レム睡眠で骨格筋の緊張が著しく低下する(筋緊張消失)ことを捉え、レム睡眠の判定に必須である。レム睡眠中にもかかわらず筋活動が保たれていればレム睡眠行動障害を疑う手がかりとなる。前脛骨筋の筋電図は周期性四肢運動を検出するために記録する。なお、呼吸運動そのものは通常、胸部と腹部に巻いたベルト型センサーで評価する。
- ×d. 心電図
PSGに含まれる。心拍数の変化や不整脈を記録する。睡眠時無呼吸では、無呼吸中に徐脈となり呼吸再開時に頻脈となる周期的な心拍変動がみられるほか、心房細動などの不整脈を合併しやすいため、心電図の同時記録が重要である。
- ×e. SpO2
PSGに含まれる。パルスオキシメータで経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)を連続測定し、無呼吸・低呼吸に伴う酸素飽和度の低下(酸素飽和度低下指数:ODI)や最低SpO2を評価する。低呼吸の判定にもSpO2の低下(3%以上または4%以上)が用いられる。
睡眠時無呼吸症候群の検査の流れ
・簡易検査(簡易睡眠呼吸モニター、out of center sleep testing):自宅で口鼻気流、いびき、胸腹部の呼吸運動、SpO2、脈拍などを記録する。脳波を記録しないため睡眠か覚醒かを区別できず、総睡眠時間の代わりに記録時間で指数を計算する。このため重症度を過小評価しやすい。 ・PSG:原則として医療機関に一泊入院して行う。脳波・眼電図・筋電図で実際の睡眠時間と睡眠段階を把握したうえで呼吸イベントを数えるため、確定診断のゴールドスタンダードである。
無呼吸低呼吸指数(AHI)
睡眠1時間あたりの無呼吸と低呼吸の合計回数。無呼吸は10秒以上の気流停止、低呼吸は10秒以上の気流低下にSpO2低下や覚醒反応を伴うもの。成人ではAHI 5以上15未満を軽症、15以上30未満を中等症、30以上を重症とする。閉塞性では胸腹部の呼吸運動が続くのに気流が止まり、中枢性では呼吸運動自体が消失することで両者を区別できる。
PSGで診断される主な疾患
閉塞性・中枢性睡眠時無呼吸、ナルコレプシー(翌日の反復睡眠潜時検査と併用)、レム睡眠行動障害、周期性四肢運動障害など。
POINT
・PSGの記録項目:脳波、眼電図、頤筋・前脛骨筋筋電図、口鼻気流、胸腹部呼吸運動、SpO2、心電図、いびき、体位。 ・血圧はPSGの標準項目ではない(睡眠時無呼吸と高血圧は関連するが、評価はABPMなど別の方法で行う)。 ・睡眠段階の判定には脳波・眼電図・頤筋筋電図の3つが必要。 ・簡易検査は脳波がなく睡眠時間を測れない点がPSGとの大きな違い。
