「まぶしい」は濁りのサイン―症状から眼の病変部位を読む白内障の初期症状
第110回医師国家試験 H問題 第18問
国試問題にチャレンジ
白内障の初期にみられる症状はどれか。
- a.虹視
- b.小視
- c.羞明
- d.飛蚊症
- e.視野狭窄
対話形式の解説
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医学生
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医学生まとめ
白内障は水晶体が濁る疾患で、濁りによって光が散乱するため、視力低下が目立たない初期から羞明(グレア)や霧視を訴えやすく、夜間の対向車のライトがまぶしいといった訴えが典型的です。進行に伴い単眼複視や、核白内障では近視化がみられ、痛みや充血は伴いません。虹視は角膜浮腫(急性閉塞隅角緑内障の発作など)、小視は黄斑病変(中心性漿液性脈絡網膜症など)、飛蚊症は硝子体の異常、視野狭窄は網膜周辺部・視神経・視路の障害で生じます。眼の構造に沿って症状と病変部位を対応づけて整理しておくと、眼科の症候問題を効率よく解けるだけでなく、救急や内科の場面で眼疾患を見逃さない力にもつながります。
解答・解説
正解はcです
白内障は、本来透明な水晶体が濁る疾患である。水晶体はカメラのレンズにあたり、光を屈折させて網膜に像を結ぶはたらきをもつ。そこが濁ると、入ってきた光が網膜に届く前に濁りで散乱する。 初期の白内障では濁りがまだ部分的で、視力表で測る視力はあまり落ちていないことが多い。それでも散乱光が網膜全体に広がるため、像のコントラストが下がり、まぶしさ(グレア)を強く感じるようになる。典型的な訴えは「日差しの強い屋外がまぶしい」「夜間に対向車のヘッドライトがまぶしくて見えにくい」である。とくに水晶体の後面中央が濁る後嚢下白内障では、明るい場所で瞳孔が小さくなると濁った中央部分だけを光が通るため、まぶしさと見えにくさが目立ちやすい。 このほか白内障に伴う症状として、かすみ(霧視)、単眼性複視(片眼で見ても物が二重・三重に見える)、水晶体の中心部(核)が硬く濁ることで屈折力が増す近視化(老眼鏡がいらなくなった、と感じることがある)、進行例での視力低下がある。 症状から病変部位を推定するには、眼球の構造に沿って整理するのが有用である。角膜の異常では虹視、水晶体では羞明・霧視・単眼複視、硝子体では飛蚊症、黄斑では変視・小視・中心暗点、網膜周辺部・視神経・視路では視野欠損・視野狭窄が出る。本問はこの対応関係を理解していれば解ける。
選択肢考察
- ×a. 虹視
虹視は、電灯などの光源の周りに虹色の輪(光輪)が見える症状である。角膜上皮の浮腫などで角膜に細かな凹凸ができ、光が回折・散乱することで生じる。代表的な原因は急性閉塞隅角緑内障(緑内障発作)である。眼圧の急上昇で角膜浮腫が起こり、虹視に加えて眼痛・頭痛・悪心・嘔吐・霧視・視力低下を伴う。角膜上皮障害やコンタクトレンズの過装用による角膜浮腫でもみられる。白内障の初期症状として典型的なものではない。
- ×b. 小視
小視は、物が実際より小さく見える症状である。黄斑部に網膜下液や浮腫が生じると、視細胞どうしの間隔が広がり、同じ大きさの像を受けとる視細胞の数が減る。その結果、像が小さく感じられる。代表的な原因は中心性漿液性脈絡網膜症で、働き盛りの男性に多く、中心暗点・変視症(ゆがみ)を伴う。黄斑の病変による症状であり、水晶体の濁りである白内障では生じない。
- ○c. 羞明
羞明は、光を通常以上にまぶしく、不快に感じる症状である。白内障では、濁った水晶体で光が散乱し、網膜に余計な光が広がるため、視力低下がまだ軽い初期からまぶしさを訴えやすい。「晴れた日の屋外がまぶしい」「夜間運転で対向車のライトがまぶしい」といった訴えが典型的である。後嚢下白内障や皮質白内障で目立ちやすい。羞明は角膜炎・虹彩炎などの炎症性疾患や白子症(色素の欠如)でもみられるが、選択肢の中で白内障初期にみられるのは羞明である。
- ×d. 飛蚊症
飛蚊症は、目の前を黒い点や糸くず、虫のようなものが漂って見え、視線を動かすとそれも一緒に動く症状である。白い壁や青空を見たときに気づきやすい。硝子体の濁りが網膜に影を落とすことで生じる。加齢に伴う後部硝子体剝離による生理的なものが多い。一方で、急に数が増えたり光視症(光が走るように見える)を伴ったりする場合は、網膜裂孔・裂孔原性網膜剝離の前ぶれのことがある。硝子体出血やぶどう膜炎でも起こる。硝子体の症状であり、白内障の症状ではない。
- ×e. 視野狭窄
視野狭窄は、見える範囲が周辺から狭くなる状態である。網膜色素変性症などでの求心性視野狭窄、緑内障の進行例、網膜剝離、視神経から後頭葉視覚野までの視路障害などでみられる。白内障は光の通り道が全体として濁る病態なので、視野全体の見え方(感度)が一様に低下することはあっても、特定の範囲が欠ける視野狭窄は起こさない。
白内障の概要
・水晶体の混濁。原因として最も多いのは加齢である(加齢白内障)。そのほか糖尿病、ステロイド薬の長期使用、アトピー性皮膚炎、外傷、ぶどう膜炎、放射線被曝、先天性(風疹など)が原因となる。 ・混濁の部位による分類:核白内障(中心部の核が硬化・混濁し、近視化をきたしやすい)、皮質白内障(周辺部から楔状に濁る。加齢白内障で多い)、後嚢下白内障(後面中央に濁りが出る。ステロイド白内障や糖尿病で多く、早期から羞明・視力低下が目立つ)。 ・症状:霧視、羞明(グレア)、単眼複視、近視化、視力低下。痛みや充血は伴わない。 ・診断:細隙灯顕微鏡検査で、散瞳したうえで混濁を観察する。 ・治療:根本治療は手術である。超音波水晶体乳化吸引術で濁った水晶体を取り除き、眼内レンズを挿入する。点眼薬は進行を遅らせる目的で使われることがあるが、濁りを透明に戻すことはできない。
症状と障害部位の対応
・虹視:角膜浮腫(急性閉塞隅角緑内障など) ・羞明・霧視・単眼複視:水晶体混濁(白内障)、角膜混濁 ・飛蚊症・光視症:硝子体の混濁、後部硝子体剝離、網膜裂孔 ・変視症・小視症・中心暗点:黄斑病変(中心性漿液性脈絡網膜症、加齢黄斑変性など) ・視野狭窄・視野欠損:網膜周辺部、視神経、視路(緑内障、網膜色素変性症、下垂体腫瘍など)
POINT
・白内障の初期症状は羞明(グレア)と霧視。水晶体の濁りで光が散乱するためである。 ・白内障ではほかに単眼複視・近視化もみられ、痛みや充血はない。 ・虹視は角膜浮腫(緑内障発作)、小視は黄斑病変(中心性漿液性脈絡網膜症)、飛蚊症は硝子体の異常、視野狭窄は網膜・視神経・視路の障害で起こる。
