StudyMed医師国家試験

吐ききれない空気を数える―肺気量分画から解く残気率とCOPDのエアトラッピング

第110回医師国家試験 D問題 第60問

国試問題にチャレンジ

第110回 D問題 第60問

65歳の男性。労作時呼吸困難を主訴に来院し,慢性閉塞性肺疾患が疑われた。呼吸機能検査を行った結果,全肺気量〈TLC〉は7,400 mL,肺活量〈VC〉は3,600 mL,一秒量〈FEV1〉は1,600 mLであった。  残気率を求めよ。  ただし,小数点以下の数値が得られた場合には,小数点以下第1位を四捨五入すること。 解答: ①② %

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は呼吸機能検査の数値から残気率を計算する問題だ。計算そのものは単純だけど、肺気量分画の関係をきちんと頭に描けているかが問われている。まず、残気率とは何の割合か説明できるかな。
医学生医学生
全肺気量のうち、残気量が占める割合です。でも問題文に残気量そのものが書いてありません。
ドクタードクター
そこが最初の関門だね。全肺気量は、目いっぱい息を吸ったときに肺の中にある空気の総量。そこから最大限に吐き出せる量が肺活量で、吐ききってもまだ肺に残っている量が残気量だ。この3つの関係を式にするとどうなる?
医学生医学生
全肺気量は肺活量と残気量の和なので、残気量は全肺気量から肺活量を引けば出ます。
ドクタードクター
その通り。数値を入れてみよう。
医学生医学生
7,400から3,600を引いて残気量は3,800 mL。これを7,400で割ると0.5135…なので、約51%ですね。
ドクタードクター
正解。小数点以下第1位を四捨五入して51%だ。ところで、一秒量の値はどこで使った?
医学生医学生
使っていません……。何か見落としているのかと不安になりました。
ドクタードクター
それでいいんだ。一秒量は閉塞性障害の評価に使う値で、残気率の計算には関係ない。国試の計算問題では、与えられた数値をすべて使うとは限らない。迷ったら定義に戻って、必要な値だけを拾うことが大切だよ。参考までに一秒量を肺活量で割ると約44%で、本来は努力肺活量で割って一秒率を出すけれど、70%未満の閉塞性換気障害に相当するレベルだ。
医学生医学生
生理学の実習でスパイロメーターを吹いたときも、一秒率と%肺活量で換気障害を4つに分類しました。
ドクタードクター
懐かしいね。では、出てきた51%という数字の意味を考えよう。残気率の基準はおおむね20〜35%程度で、加齢でやや上がるけれど、51%は明らかな高値だ。なぜCOPDで残気が増えるかわかるかな。
医学生医学生
肺胞が壊れて、空気がたまりやすくなるからでしょうか。
ドクタードクター
大筋はそうだね。もう少し詳しく言うと、肺気腫では肺の弾性収縮力が低下し、さらに呼気時に末梢気道がつぶれやすくなる。そのため吐ききる前に気道が閉じてしまい、空気が肺内に取り残される。これがエアトラッピングで、残気量と残気率が増え、肺は過膨張になるんだ。
医学生医学生
呼吸器内科の実習で見たCOPDの患者さんの胸部X線で、横隔膜が平低化して肺が縦長に見えていたのは、そのせいなんですね。
ドクタードクター
まさにそれ。ビア樽状胸郭や滴状心も同じ過膨張の表れだ。ここで一つ大事な注意点がある。残気量や全肺気量はスパイロメーターだけで測れると思う?
医学生医学生
吐き出せない空気なので、スパイロメーターでは測れない気がします。
ドクタードクター
鋭いね。残気量、機能的残気量、全肺気量はスパイロメトリー単独では測定できず、ヘリウム閉鎖回路法や窒素洗い出し法などのガス希釈法、あるいは体プレチスモグラフ法で測る。COPDのように換気が不均等な肺では、ガス希釈法だと換気の悪い領域にガスが届きにくく、体プレチスモグラフ法より低めに出やすいことも知っておこう。
医学生医学生
拘束性障害だと逆に、肺活量も全肺気量も小さくなるんでしたよね。
ドクタードクター
そう。間質性肺炎などの拘束性障害では肺活量と全肺気量がともに減り、一秒率は保たれるか上昇する。COPDでは肺コンプライアンスが増加し、肺気腫優位型では肺拡散能も低下する、と対比で整理しておくと記憶に残りやすい。診断の基本は気管支拡張薬吸入後の一秒率70%未満であることもあわせて押さえておこう。
医学生医学生
肺気量分画の図を自分で描けるようにしておけば、どんな組み合わせで出題されても対応できそうです。
ドクタードクター
その姿勢が一番だ。1回換気量、予備吸気量、予備呼気量、残気量の4つの「量」と、それを足し合わせた肺活量、機能的残気量、全肺気量の「容量」を図で描けるようにしておけば、計算問題は怖くないよ。

まとめ

残気率は全肺気量に占める残気量の割合で、残気量は「全肺気量-肺活量」で求められるため、本問では(7,400-3,600)÷7,400×100≒51%となります。一秒量は閉塞性障害の評価に用いる値で、残気率の計算には不要であり、計算問題では与えられた数値をすべて使うとは限らない点に注意が必要です。残気率の基準はおおむね35%以下で、COPDでは弾性収縮力の低下と呼気時の気道虚脱によるエアトラッピングのため残気量・残気率が上昇し、肺は過膨張になります。残気量や全肺気量はスパイロメトリー単独では測れず、ガス希釈法や体プレチスモグラフ法を用いることも重要です。肺気量分画を図として理解しておくことは、計算問題だけでなく、閉塞性・拘束性障害の病態理解の土台になります。

解答・解説

正解は51 %です

問われていること

残気率(%RV,RV/TLC)は,全肺気量〈TLC: total lung capacity〉のうち残気量〈RV: residual volume〉が占める割合である。本問ではRVが直接示されていないため,肺気量分画の関係からRVを求めてから割合を計算する。

肺気量分画の関係

全肺気量(TLC)は,最大吸気位で肺内にある空気の総量である。ここから最大限に吐き出せる量が肺活量(VC)であり,最大呼気後もなお肺内に残る量が残気量(RV)である。したがって次の式が成り立つ。 TLC = VC + RV すなわち RV = TLC − VC

計算

1. 残気量を求める RV = 7,400 mL − 3,600 mL = 3,800 mL 2. 残気率を求める 残気率 = RV ÷ TLC × 100 = 3,800 ÷ 7,400 × 100 ≒ 51.35% 3. 小数点以下第1位を四捨五入して 51%

不要な数値について

一秒量〈FEV1〉1,600 mLは残気率の計算には使わない。閉塞性障害の評価に用いる値であり,参考までに肺活量で割ると約44%となり(本来は努力肺活量〈FVC〉で割って一秒率を求める),70%未満の閉塞性換気障害に相当する。計算問題では与えられた数値をすべて使うとは限らないことに注意する。

結果の解釈

残気率の基準値はおおむね20〜35%程度(加齢とともにやや上昇する)であり,51%は明らかな高値である。慢性閉塞性肺疾患〈COPD〉では気道閉塞と肺の弾性収縮力低下によって呼気時に空気が肺内に取り残される(エアトラッピング)ため,RVおよび残気率が増加する。本症例の結果はCOPDの病態に合致する。

肺気量分画の整理

・1回換気量(TV): 安静呼吸1回で出入りする量 ・予備吸気量(IRV): 安静吸気位からさらに吸える量 ・予備呼気量(ERV): 安静呼気位からさらに吐ける量 ・残気量(RV): 最大呼気後に肺に残る量 ・肺活量(VC)= IRV + TV + ERV ・機能的残気量(FRC)= ERV + RV ・全肺気量(TLC)= VC + RV

測定法の注意

RV,FRC,TLCはスパイロメトリーだけでは測定できない(最大呼気をしても吐き出せない量を含むため)。ガス希釈法(ヘリウム閉鎖回路法,窒素洗い出し法)や体プレチスモグラフ法で測定する。COPDのように換気が不均等な肺では,ガス希釈法は換気の悪い領域にガスが届きにくく,体プレチスモグラフ法より低めに測定されやすい。

COPDの呼吸機能所見

・気管支拡張薬投与後の一秒率(FEV1/FVC)70%未満が診断の基本 ・RV,FRC,TLC,残気率の増加(過膨張・エアトラッピング) ・肺気腫優位型では肺胞破壊により肺拡散能(DLCO)が低下 ・肺コンプライアンスは増加(弾性収縮力の低下)

拘束性障害との対比

間質性肺炎などの拘束性障害ではVC,TLCがともに減少し,一秒率は保たれるか上昇する。

POINT

・RV = TLC − VC,残気率 = RV/TLC × 100 ・本問: (7,400 − 3,600) ÷ 7,400 × 100 ≒ 51% ・FEV1は残気率の計算には不要(閉塞性障害の評価に用いる値) ・残気率の基準はおおむね35%以下。COPDではエアトラッピングにより上昇する ・RV・FRC・TLCはスパイロメトリー単独では測定できない

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。