吐ききれない空気を数える―肺気量分画から解く残気率とCOPDのエアトラッピング
第110回医師国家試験 D問題 第60問
国試問題にチャレンジ
65歳の男性。労作時呼吸困難を主訴に来院し,慢性閉塞性肺疾患が疑われた。呼吸機能検査を行った結果,全肺気量〈TLC〉は7,400 mL,肺活量〈VC〉は3,600 mL,一秒量〈FEV1〉は1,600 mLであった。 残気率を求めよ。 ただし,小数点以下の数値が得られた場合には,小数点以下第1位を四捨五入すること。 解答: ①② %
対話形式の解説
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ドクターまとめ
残気率は全肺気量に占める残気量の割合で、残気量は「全肺気量-肺活量」で求められるため、本問では(7,400-3,600)÷7,400×100≒51%となります。一秒量は閉塞性障害の評価に用いる値で、残気率の計算には不要であり、計算問題では与えられた数値をすべて使うとは限らない点に注意が必要です。残気率の基準はおおむね35%以下で、COPDでは弾性収縮力の低下と呼気時の気道虚脱によるエアトラッピングのため残気量・残気率が上昇し、肺は過膨張になります。残気量や全肺気量はスパイロメトリー単独では測れず、ガス希釈法や体プレチスモグラフ法を用いることも重要です。肺気量分画を図として理解しておくことは、計算問題だけでなく、閉塞性・拘束性障害の病態理解の土台になります。
解答・解説
正解は51 %です
問われていること
残気率(%RV,RV/TLC)は,全肺気量〈TLC: total lung capacity〉のうち残気量〈RV: residual volume〉が占める割合である。本問ではRVが直接示されていないため,肺気量分画の関係からRVを求めてから割合を計算する。
肺気量分画の関係
全肺気量(TLC)は,最大吸気位で肺内にある空気の総量である。ここから最大限に吐き出せる量が肺活量(VC)であり,最大呼気後もなお肺内に残る量が残気量(RV)である。したがって次の式が成り立つ。 TLC = VC + RV すなわち RV = TLC − VC
計算
1. 残気量を求める RV = 7,400 mL − 3,600 mL = 3,800 mL 2. 残気率を求める 残気率 = RV ÷ TLC × 100 = 3,800 ÷ 7,400 × 100 ≒ 51.35% 3. 小数点以下第1位を四捨五入して 51%
不要な数値について
一秒量〈FEV1〉1,600 mLは残気率の計算には使わない。閉塞性障害の評価に用いる値であり,参考までに肺活量で割ると約44%となり(本来は努力肺活量〈FVC〉で割って一秒率を求める),70%未満の閉塞性換気障害に相当する。計算問題では与えられた数値をすべて使うとは限らないことに注意する。
結果の解釈
残気率の基準値はおおむね20〜35%程度(加齢とともにやや上昇する)であり,51%は明らかな高値である。慢性閉塞性肺疾患〈COPD〉では気道閉塞と肺の弾性収縮力低下によって呼気時に空気が肺内に取り残される(エアトラッピング)ため,RVおよび残気率が増加する。本症例の結果はCOPDの病態に合致する。
肺気量分画の整理
・1回換気量(TV): 安静呼吸1回で出入りする量 ・予備吸気量(IRV): 安静吸気位からさらに吸える量 ・予備呼気量(ERV): 安静呼気位からさらに吐ける量 ・残気量(RV): 最大呼気後に肺に残る量 ・肺活量(VC)= IRV + TV + ERV ・機能的残気量(FRC)= ERV + RV ・全肺気量(TLC)= VC + RV
測定法の注意
RV,FRC,TLCはスパイロメトリーだけでは測定できない(最大呼気をしても吐き出せない量を含むため)。ガス希釈法(ヘリウム閉鎖回路法,窒素洗い出し法)や体プレチスモグラフ法で測定する。COPDのように換気が不均等な肺では,ガス希釈法は換気の悪い領域にガスが届きにくく,体プレチスモグラフ法より低めに測定されやすい。
COPDの呼吸機能所見
・気管支拡張薬投与後の一秒率(FEV1/FVC)70%未満が診断の基本 ・RV,FRC,TLC,残気率の増加(過膨張・エアトラッピング) ・肺気腫優位型では肺胞破壊により肺拡散能(DLCO)が低下 ・肺コンプライアンスは増加(弾性収縮力の低下)
拘束性障害との対比
間質性肺炎などの拘束性障害ではVC,TLCがともに減少し,一秒率は保たれるか上昇する。
POINT
・RV = TLC − VC,残気率 = RV/TLC × 100 ・本問: (7,400 − 3,600) ÷ 7,400 × 100 ≒ 51% ・FEV1は残気率の計算には不要(閉塞性障害の評価に用いる値) ・残気率の基準はおおむね35%以下。COPDではエアトラッピングにより上昇する ・RV・FRC・TLCはスパイロメトリー単独では測定できない
