StudyMed医師国家試験

感作なしで即出動―NK細胞が「自然免疫のリンパ球」である理由

第110回医師国家試験 B問題 第14問

国試問題にチャレンジ

第110回 B問題 第14問

自然免疫に関与するのはどれか。

  1. a.NK細胞
  2. b.形質細胞
  3. c.ヘルパーT細胞
  4. d.細胞傷害性T細胞
  5. e.Bリンパ球〈B細胞〉

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、選択肢の免疫細胞を「自然免疫」と「獲得免疫」に振り分けられるかを問う問題だ。ポイントは、その細胞が抗原を特異的に見分ける受容体を持っているかどうか。まずは両者の違いから確認していこう。
医学生医学生
自然免疫は生まれつき備わっていてすぐに働く防御で、獲得免疫は特定の抗原を覚えて強く反応する仕組み、と免疫学の講義で習いました。
ドクタードクター
いいね。もう少し具体的に言うと、自然免疫はToll様受容体などのパターン認識受容体で、細菌のリポ多糖のような病原体に共通する構造を大まかに捉える。侵入後すぐに動けるけれど、特異性は低く、基本的に免疫記憶はつくらない。担当するのは好中球、マクロファージ、樹状細胞、好酸球、マスト細胞などだ。
医学生医学生
獲得免疫は立ち上がりに数日かかるけれど、2回目からは速く強く反応するんですよね。ワクチンの原理ですね。
ドクタードクター
その通り。そして獲得免疫を担うのは、遺伝子再構成によって多様なT細胞受容体やB細胞受容体を作り、個々の抗原を見分けるリンパ球だ。ここで質問。選択肢を見てどう思った?
医学生医学生
全部リンパ球の仲間に見えて、リンパ球なら全部獲得免疫かと一瞬思いました。
ドクタードクター
そこがこの問題の引っかけだね。リンパ球の中にも、抗原特異的な受容体を持たない細胞がいる。それがNK細胞で、これが正解だ。
医学生医学生
ナチュラルキラーという名前の「ナチュラル」は、生まれつき殺せるという意味なんでしょうか。
ドクタードクター
いい着眼点だ。事前に抗原にさらされて準備されることなく、ウイルス感染細胞や腫瘍細胞をすぐに傷害できることに由来している。NK細胞は、自己のMHCクラスIを認識する抑制性受容体と、ストレスを受けた細胞の分子を認識する活性化受容体のバランスで標的を見分けるんだ。
医学生医学生
ウイルス感染細胞や腫瘍細胞はMHCクラスIを減らして細胞傷害性T細胞から逃げる、と聞いたことがあります。
ドクタードクター
よく知っているね。MHCクラスIが減ると抑制シグナルが外れて、NK細胞に攻撃される。これをmissing selfという。T細胞から逃げた細胞をNK細胞が拾う、という補い合いの関係なんだ。攻撃にはパーフォリンとグランザイムを使い、IFN-γを出してマクロファージも活性化する。
医学生医学生
細胞傷害性T細胞も同じパーフォリンとグランザイムで殺しますよね。どこで区別すればいいですか。
ドクタードクター
そこが大事な点だ。細胞傷害性T細胞はCD8陽性で、MHCクラスIに載った抗原ペプチドをT細胞受容体で特異的に認識し、免疫記憶も持つ。殺し方は似ていても、抗原特異的な認識があるかどうかで獲得免疫に分類される。ヘルパーT細胞も同様で、CD4陽性でMHCクラスIIに載った抗原を認識し、サイトカインでB細胞やマクロファージを助ける獲得免疫の司令塔だ。
医学生医学生
B細胞は表面の膜型免疫グロブリンで抗原を認識するので、獲得免疫ですね。形質細胞は表面の受容体がほとんどないと聞きましたが、それでも獲得免疫ですか。
ドクタードクター
いい疑問だね。形質細胞は、B細胞が抗原刺激とヘルパーT細胞の助けを受けて最終分化した細胞で、特定の抗原に対する抗体を大量に分泌する。液性免疫を実行するエフェクター細胞として、獲得免疫に位置づけられるんだ。病理実習で見た、核が偏在して車軸状のクロマチンをもつ細胞を思い出すといい。
医学生医学生
抗原特異性と免疫記憶があるかどうかで分ければ、NK細胞だけが自然免疫側に残りますね。
ドクタードクター
その通り。最後に発展知識だ。NK細胞はFc受容体であるCD16で抗体が結合した細胞を認識して傷害する、抗体依存性細胞傷害、ADCCも担う。抗体医薬の効果の一部はこの仕組みによるんだ。
医学生医学生
血液内科を回ったとき、リツキシマブの作用機序の説明でADCCが出てきました。自然免疫と獲得免疫がつながっているんですね。
ドクタードクター
まさにそう。樹状細胞が病原体を捉えてリンパ節でT細胞に抗原提示するのも、両者の橋渡しだ。さらにNKT細胞やγδT細胞、自然リンパ球のように中間的な性質のリンパ球も知られている。2つの系統は独立しているのではなく、連携して働くと理解しておこう。

まとめ

免疫は、病原体共通の構造をパターン認識受容体で捉えて即座に働く自然免疫と、遺伝子再構成で多様化した受容体により個々の抗原を特異的に認識し、免疫記憶をもつ獲得免疫に大別されます。NK細胞はリンパ球でありながら抗原特異的受容体を持たず、事前の感作なしにMHCクラスIの発現が低下したウイルス感染細胞や腫瘍細胞を傷害する、自然免疫の代表的な細胞です。一方、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、B細胞、そしてB細胞から分化して抗体を産生する形質細胞は、いずれも獲得免疫に属します。NK細胞はADCCを通じて抗体の働きを実行するなど、自然免疫と獲得免疫は連携して生体を守っています。「抗原特異性と免疫記憶の有無」という軸で細胞を整理することは、感染症、腫瘍免疫、抗体医薬の理解の土台になります。

解答・解説

正解はaです

問われていること

免疫系は大きく「自然免疫」と「獲得免疫(適応免疫)」に分けられる。本問は選択肢の細胞をこの2つに振り分けられるかを問うている。

自然免疫と獲得免疫の違い

・自然免疫: 生まれつき備わっている防御機構で、病原体が侵入するとすぐ(数分〜数時間)に働く。病原体に共通する分子パターン(PAMPs、病原体関連分子パターン。細菌のリポ多糖〔LPS〕など)をToll様受容体〈TLR〉などのパターン認識受容体で大まかに認識する。抗原特異性は低く、免疫記憶をつくらない(2回目の感染でも反応の強さは基本的に変わらない)。担当する細胞は好中球、マクロファージ、樹状細胞、NK細胞、好酸球、好塩基球、マスト細胞(肥満細胞)など。 ・獲得免疫: 個々の抗原を特異的に見分ける受容体(T細胞受容体〈TCR〉、B細胞受容体〈BCR〉)を持つリンパ球が担う。初回の反応が立ち上がるまでに数日〜1週間程度かかるが、抗原特異性が高く、免疫記憶により2回目以降はより速く強く反応する。担当する細胞はT細胞(ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞など)、B細胞、B細胞から分化した形質細胞である。

考え方

リンパ球の中でも、抗原特異的な受容体を遺伝子再構成によって作るT細胞・B細胞は獲得免疫、そのような受容体を持たないNK細胞は自然免疫に属すると整理すれば、正解はNK細胞と判断できる。

選択肢考察

  1. ○a.  NK細胞

    正しい。NK(ナチュラルキラー)細胞は大型顆粒リンパ球で、事前の抗原感作(抗原にさらされて準備されること)なしに、ウイルス感染細胞や腫瘍細胞を直ちに傷害できる。抗原特異的な受容体(TCRやBCR)を持たず、自己のMHCクラスI分子を認識する抑制性受容体と、ストレスを受けた細胞の分子を認識する活性化受容体とのバランスで標的を見分ける。ウイルス感染細胞や腫瘍細胞ではMHCクラスIの発現が低下していることが多く、抑制シグナルが外れて攻撃される(missing self)。パーフォリンとグランザイムで標的細胞を殺し、IFN-γを産生してマクロファージを活性化する。また抗体が結合した細胞をFc受容体(CD16)で認識して傷害する抗体依存性細胞傷害〈ADCC〉も担う。自然免疫の主要なリンパ球である。

  2. ×b.  形質細胞

    誤り。形質細胞はB細胞が抗原刺激とヘルパーT細胞の補助を受けて最終分化した細胞で、特定の抗原に対する抗体(免疫グロブリン)を大量に分泌する。抗原特異的な抗体による防御は液性免疫と呼ばれ、獲得免疫の中心的な働きである。形質細胞自体は抗原を認識する受容体をほとんど表面に出していないが、獲得免疫の最終的な実行役(エフェクター細胞)に位置づけられる。

  3. ×c.  ヘルパーT細胞

    誤り。ヘルパーT細胞はCD4陽性T細胞で、抗原提示細胞がMHCクラスII分子に載せて提示した抗原ペプチドをTCRで特異的に認識する。サイトカインを放出してB細胞の抗体産生、細胞傷害性T細胞の活性化、マクロファージの活性化などを助ける、獲得免疫の司令塔である。抗原特異性と免疫記憶を持つ。

  4. ×d.  細胞傷害性T細胞

    誤り。細胞傷害性T細胞〈CTL〉はCD8陽性T細胞で、ウイルス感染細胞や腫瘍細胞がMHCクラスI分子に載せて提示した抗原ペプチドをTCRで特異的に認識し、パーフォリン・グランザイムやFasリガンドを介して標的細胞を殺す。抗原特異性と免疫記憶を持ち、細胞性免疫を担う獲得免疫の細胞である。同じように細胞を殺すNK細胞とは、抗原特異的な認識の有無で区別される。

  5. ×e.  Bリンパ球〈B細胞〉

    誤り。B細胞は表面の抗原特異的な受容体(BCR、膜型免疫グロブリン)で抗原を認識し、ヘルパーT細胞の助けを得て形質細胞やメモリーB細胞に分化する。抗体による液性免疫を担う獲得免疫の細胞である。またMHCクラスIIで抗原をヘルパーT細胞に提示する抗原提示細胞としても働く。

免疫細胞の整理

自然免疫: 好中球(細菌の貪食・殺菌、急性炎症の主役)、マクロファージ(貪食、サイトカイン産生、抗原提示)、樹状細胞(最も強力な抗原提示細胞。自然免疫で病原体を捉え、リンパ節でナイーブT細胞に抗原提示して獲得免疫を始動させる)、NK細胞、好酸球(寄生虫防御、アレルギー)、好塩基球・マスト細胞(ヒスタミン放出、I型アレルギー)。細胞以外では補体系、抗菌ペプチド、皮膚・粘膜のバリアも自然免疫に含まれる。 獲得免疫: T細胞(CD4陽性ヘルパーT細胞、CD8陽性細胞傷害性T細胞、制御性T細胞など)、B細胞、形質細胞、メモリー細胞。

自然免疫と獲得免疫の比較

・反応の速さ: 自然免疫は即時、獲得免疫は初回で数日以上 ・認識: 自然免疫はパターン認識受容体(TLRなど)で病原体共通の構造を認識、獲得免疫は遺伝子再構成で多様化したTCR・BCRで個々の抗原を認識 ・特異性: 自然免疫は低い、獲得免疫は高い ・免疫記憶: 自然免疫はなし(基本的に)、獲得免疫はあり(ワクチンの原理)

両者の橋渡し

樹状細胞やマクロファージの抗原提示、NK細胞によるADCC、補体による抗体の働きの増強など、自然免疫と獲得免疫は互いに連携して働く。また自然リンパ球〈ILC〉、NKT細胞、γδT細胞のように、両者の中間的性質をもつリンパ球も知られている。

POINT

・自然免疫: NK細胞、好中球、マクロファージ、樹状細胞、好酸球、好塩基球、マスト細胞、補体。 ・獲得免疫: T細胞(ヘルパー・細胞傷害性)、B細胞、形質細胞。 ・NK細胞はリンパ球だが抗原特異的受容体を持たず、事前の感作なしにウイルス感染細胞・腫瘍細胞を殺す自然免疫の細胞。 ・獲得免疫の特徴は抗原特異性と免疫記憶。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。