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「1分の時点」で止めて採点せよ―常位胎盤早期剝離の新生児で学ぶApgarスコアの落とし穴

第110回医師国家試験 A問題 第24問

国試問題にチャレンジ

第110回 A問題 第24問

日齢0の新生児。常位胎盤早期剝離のため緊急帝王切開で出生した。在胎40週,出生体重3,285 gであった。出生直後は啼泣がなく,刺激によって30秒後から不規則な呼吸が出現したが,微弱であったため1分過ぎからマスク持続気道陽圧呼吸を開始した。脈拍は出生直後70~80/分であったが,1分後には100/分以上となった。出生時から筋緊張は正常より低下し全身は蒼白であったが,1分半後から刺激に対して反応が見られるようになった。  この児の1分後のApgarスコアはどれか。

  1. a.1点
  2. b.3点
  3. c.5点
  4. d.7点
  5. e.9点

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は新生児のApgarスコアを計算する問題だ。採点項目そのものは覚えていても、意外と点を落としやすい。ポイントは「いつの時点の状態を採点するのか」。問題文には時間を追って状態が変わっていく様子が書かれているから、1分の時点を切り取って評価できるかが勝負になるよ。
医学生医学生
産婦人科の臨床実習で分娩に立ち会ったとき、助産師さんが1分と5分で点数をつけていました。項目はAPGARの頭文字で覚えています。
ドクタードクター
いいね。確認しよう。Appearanceが皮膚色、Pulseが心拍数、Grimaceが刺激への反応、Activityが筋緊張、Respirationが呼吸。それぞれ0〜2点で、合計0〜10点だ。では心拍数から。出生直後は100/分を切っていたけれど、どう採点する?
医学生医学生
出生直後が70〜80/分なので1点……でしょうか。
ドクタードクター
そこが最初の落とし穴だね。問われているのは1分後のスコアで、1分後には100/分以上に回復している。心拍数は100/分以上で2点、100/分未満で1点、なしで0点だから、ここは2点になる。
医学生医学生
なるほど、出生直後の値に引っ張られてはいけないんですね。呼吸はどうですか。30秒後から出ているけれど弱いです。
ドクタードクター
呼吸は強い啼泣で2点、弱い啼泣や不規則で浅い呼吸が1点、なしが0点。1分の時点では不規則で微弱な呼吸があるから1点だ。だからこそ1分過ぎから持続気道陽圧で呼吸を補助しているわけだね。
医学生医学生
筋緊張は「正常より低下」という表現なので、1点か0点か迷います。
ドクタードクター
迷うところだね。筋緊張は四肢を活発に動かせば2点、いくらか屈曲していれば1点、だらんとしていれば0点。今回は四肢の屈曲や自発運動についての記載がなく、出生時から低下しているとだけあるので、0点と評価するのが妥当だ。
医学生医学生
刺激への反応は1分半後から出ていますけど、これを入れたら点数が上がりますね。
ドクタードクター
それが二つ目の落とし穴。1分半後に出てきた反応は1分の時点ではまだないから0点。皮膚色は全身蒼白なので0点だ。全身ピンクで2点、体幹ピンクで四肢だけチアノーゼなら1点、全身チアノーゼか蒼白なら0点になる。
医学生医学生
すると心拍2点、呼吸1点、筋緊張0点、反射0点、皮膚色0点で、合計3点ですね。
ドクタードクター
正解。3点だ。ほかの点数がどう生まれるかも見ておこう。1点になるのは、心拍数を出生直後の値で採点して呼吸も0点にするなど、時点を早めに取り違えた場合。逆に5点前後になるのは、1分半後の刺激への反応を含めたり、筋緊張を1点と甘く見たりした場合だ。
医学生医学生
7点や9点は、蘇生処置が必要な今回の子にはありえない点数ですね。CBTの問題集では、元気な子でも手足の色で1点引かれて9点というのをよく見ました。
ドクタードクター
そう、四肢末梢のチアノーゼは生まれたての健常児でもよく見られるから、9点は「ほぼ正常」の典型なんだ。そして点数の解釈も大事。7〜10点は正常、4〜6点は軽症仮死、0〜3点は重症仮死。今回の3点は重症仮死に当たる。
医学生医学生
常位胎盤早期剝離だから、生まれる前から酸素が足りていなかったということですよね。
ドクタードクター
その通り。胎盤が胎児娩出前に剝がれると胎盤からの酸素供給が急に途絶えるから、胎児機能不全や新生児仮死、胎児死亡の重要な原因になる。母体も出血性ショックやDICを起こしうるので、多くは緊急帝王切開で急速遂娩する。
医学生医学生
1分値と5分値では、意味合いが違うと講義で習った気がします。
ドクタードクター
よく覚えているね。1分値は出生直後の状態、つまり蘇生がどれだけ必要かの目安で、5分値のほうが神経学的予後との関連が強いとされる。5分値が7点未満なら、5分ごとに20分まで評価を続けるんだ。
医学生医学生
でも、1分経つまで点数を待っていたら蘇生が遅れませんか。
ドクタードクター
大事な指摘だ。実際の蘇生はApgarスコアの算出を待たず、新生児蘇生法のアルゴリズムに沿って、出生直後から呼吸・心拍・筋緊張を評価して始める。無呼吸やあえぎ呼吸、心拍100/分未満があればバッグ・マスクによる人工呼吸を開始する。Apgarスコアはあくまで状態を記録・共有するための指標だと理解しておこう。

まとめ

Apgarスコアは心拍数・呼吸・筋緊張・刺激への反応・皮膚色の5項目を各0〜2点で採点する新生児評価法で、指定された時点(1分・5分)の状態だけを採点し、それ以降に出現した所見は含めないことが最大のポイントです。本症例の1分時点は心拍100/分以上(2点)、弱く不規則な呼吸(1点)、筋緊張低下(0点)、刺激への反応なし(0点)、全身蒼白(0点)で合計3点となり、重症仮死(0〜3点)に相当します。背景には常位胎盤早期剝離による急激な胎児低酸素があり、4〜6点は軽症仮死、7〜10点は正常と区分されます。1分値は蘇生の必要性、5分値は神経学的予後との関連をより反映しますが、実際の蘇生はスコアを待たず新生児蘇生法に従って直ちに開始します。時間経過を正確に読み取り評価時点を切り分ける力は、周産期医療の現場で状態を正しく記録・共有する基本となります。

解答・解説

正解はbです

問われていること

Apgarスコアは出生後1分と5分(必要に応じてその後5分ごと)に、心拍数・呼吸・筋緊張・反射(刺激への反応)・皮膚色の5項目をそれぞれ0〜2点で採点し、合計0〜10点で新生児の状態を評価する指標である。本問では「1分の時点」の状態だけを抜き出して採点することがポイントであり、1分以降に生じた変化(1分半後からの刺激への反応など)を含めてはならない。

1分時点の各項目の採点

・心拍数:出生直後は70〜80/分であったが、1分後には100/分以上となっている → 2点(100/分以上で2点、100/分未満で1点、なしで0点)。 ・呼吸:30秒後から不規則で微弱な呼吸が出現し、1分過ぎからマスク持続気道陽圧(CPAP)を開始している。1分時点では弱く不規則な呼吸である → 1点(強い啼泣で2点、弱い・不規則で1点、なしで0点)。 ・筋緊張:出生時から正常より低下しており、四肢の屈曲や活発な運動の記載はない → 0点と評価する。 ・反射(刺激への反応):刺激に反応するようになったのは1分半後からであり、1分時点では反応なし → 0点。 ・皮膚色:全身蒼白 → 0点(全身ピンクで2点、体幹ピンク・四肢チアノーゼで1点、全身チアノーゼまたは蒼白で0点)。 合計:2+1+0+0+0=3点。 常位胎盤早期剝離による胎児低酸素を背景とした新生児仮死であり、1分値3点は重症仮死(0〜3点)に相当する。

選択肢考察

  1. ×a.  1点

    1分時点で心拍数は100/分以上(2点)であり、それだけで2点を超えている。さらに微弱ながら呼吸もある(1点)ため、1点にはならない。心拍数を出生直後の70〜80/分で採点し、呼吸も0点とするなど、時点を取り違えると誤る。

  2. ○b.  3点

    1分時点では、心拍数100/分以上で2点、弱く不規則な呼吸で1点、筋緊張低下で0点、刺激への反応なし(反応出現は1分半後)で0点、全身蒼白で0点となり、合計3点である。0〜3点は重症仮死に分類される。

  3. ×c.  5点

    1分半後から出現した刺激への反応を1分時点の評価に含めたり、筋緊張を1点と過大評価したりすると5点前後になりうるが、1分時点の所見に限定して採点すると3点である。

  4. ×d.  7点

    7〜10点は正常(仮死なし)に相当する。本児は全身蒼白・筋緊張低下・刺激への反応なしであり、呼吸補助を要しているので、この点数にはならない。

  5. ×e.  9点

    9点は皮膚色のみ1点(四肢チアノーゼ)でほかは満点という、ほぼ正常な新生児に典型的な点数である。蘇生処置を要した本児には当てはまらない。

Apgarスコアの採点表

・心拍数(Pulse):なし0点/100/分未満1点/100/分以上2点 ・呼吸(Respiration):なし0点/弱い啼泣・不規則な浅い呼吸1点/強い啼泣2点 ・筋緊張(Activity):だらんとしている0点/四肢をいくらか屈曲1点/四肢を活発に動かす2点 ・反射(Grimace:鼻腔カテーテル刺激や足底刺激への反応):反応なし0点/顔をしかめる1点/泣く・咳やくしゃみをする2点 ・皮膚色(Appearance):全身チアノーゼまたは蒼白0点/体幹ピンク・四肢チアノーゼ1点/全身ピンク2点 頭文字をとってAPGAR(Appearance, Pulse, Grimace, Activity, Respiration)と覚える。

評価と解釈

・7〜10点:正常、4〜6点:軽症仮死(第1度仮死)、0〜3点:重症仮死(第2度仮死)。 ・1分値は出生直後の状態(蘇生の必要性の目安)を、5分値は神経学的予後との関連をより強く反映するとされる。5分値が7点未満の場合は5分ごとに20分まで評価を続ける。 ・ただし実際の蘇生はApgarスコアの算出を待たず、新生児蘇生法(NCPR)のアルゴリズムに従って、出生直後から呼吸・心拍・筋緊張を評価して開始する。心拍100/分未満や無呼吸・あえぎ呼吸があれば人工呼吸(バッグ・マスク換気)を開始する。

常位胎盤早期剝離と新生児仮死

妊娠中または分娩中に胎盤が胎児娩出前に子宮壁から剝離する病態で、胎盤からの酸素供給が急激に途絶えるため、胎児機能不全・新生児仮死・胎児死亡の重要な原因となる。母体側でも出血性ショックや播種性血管内凝固(DIC)を起こしうるため、急速遂娩(多くは緊急帝王切開)が必要となる。

POINT

・Apgarスコアは心拍数・呼吸・筋緊張・反射・皮膚色の5項目を各0〜2点で評価する。 ・指定された時点(1分・5分)の状態だけで採点する。それ以降に出現した所見は含めない。 ・心拍数は100/分を境に2点と1点に分かれる。 ・0〜3点:重症仮死、4〜6点:軽症仮死、7〜10点:正常。 ・5分値は神経学的予後とより関連する。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。