StudyMed医師国家試験

予定日を過ぎても「浮いている」児頭―浮動が告げる児頭骨盤不均衡のサイン

第109回医師国家試験 E問題 第23問

国試問題にチャレンジ

第109回 E問題 第23問

妊娠41週で児頭骨盤不均衡を示唆する児頭の所見はどれか。

  1. a.応形
  2. b.嵌入
  3. c.固定
  4. d.浮動
  5. e.骨重積

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、児頭骨盤不均衡、いわゆるCPDを疑わせる児頭の所見を選ぶ問題だ。カギは、児頭が骨盤に向かってどう下降していくかという用語の理解と、「妊娠41週」という時期の意味づけ。まずCPDとはどんな状態か、説明できるかな。
医学生医学生
母体の骨盤に比べて赤ちゃんの頭が大きすぎて、産道を通れない状態ですよね。
ドクタードクター
その通り。本質的な問題は、児頭が骨盤入口部に入り込めないことにある。では妊娠末期、児頭は普通どのように下降していくだろう。
医学生医学生
産科の講義で、浮動、固定、嵌入の順に進むと習いました。でも固定と嵌入の違いがいまいちあいまいです。
ドクタードクター
そこを整理しよう。浮動は児頭が骨盤入口より上にあって、触診で左右上下に自由に動かせる状態。固定は児頭の最大周囲径が骨盤入口面に達してはまり込み、動かなくなった状態で、先進部はおおむね坐骨棘間線より1〜2 cm上にある。嵌入は最大周囲径が骨盤入口面を通過した状態で、先進部が坐骨棘間線の高さ、つまりSP±0 cmに達すれば十分に嵌入したと判断する。
医学生医学生
「入口に届いた」のが固定で、「入口を通り抜けた」のが嵌入なんですね。
ドクタードクター
そう覚えるといい。特に初産婦では、分娩が始まる前の妊娠36〜38週ごろには児頭が固定・嵌入していることが多い。では、妊娠41週になっても児頭がまだ骨盤入口の上で動く、つまり浮動しているとしたら、何を考える?
医学生医学生
本来なら入っているはずの時期なのに入れていない……ということは、頭が大きすぎるか骨盤が狭くて入口を通れない、CPDを疑うということですか。
ドクタードクター
正解。だからこの問題の答えは浮動だ。逆に固定や嵌入していれば、少なくとも骨盤入口部は児頭が通過できているわけだから、CPDの可能性は低くなる。
医学生医学生
応形と骨重積はどうでしょう。頭が変形するくらいだから、狭いところを無理に通っているようにも思えて迷いました。
ドクタードクター
気持ちは分かるよ。胎児の頭蓋骨は縫合や泉門でゆるくつながっていて、産道から圧を受けると骨の縁どうしが重なり合う。これが骨重積で、その結果として児頭の形が変わり、通過断面が小さくなることを応形という。前方の頭頂骨の下に後方の頭頂骨がもぐり込むように重なるんだ。
医学生医学生
つまり、どちらも頭がすでに産道に入って圧を受けているからこそ起きる変化なんですね。
ドクタードクター
その通り。児頭が骨盤内へ進入していることを示す所見で、正常分娩でも起こる生理的な変化だから、通常はCPDを示唆しない。出生後数日で元に戻ることが多いよ。もっとも、分娩が長引いて閉塞した場合には高度の応形がみられることもあるけれど、分娩前の時点でCPDを疑う典型的な所見としては浮動を選ぶのが標準的な考え方だ。
医学生医学生
浮動していたら、すぐCPDと決めてしまっていいんでしょうか。
ドクタードクター
いい質問だ。浮動の原因はCPDだけではない。前置胎盤、子宮筋腫や卵巣腫瘍のような骨盤内腫瘍、羊水過多、児頭の回旋異常なども児頭が下降しない原因になる。それに経産婦では、分娩開始まで浮動していることも珍しくない。だから浮動はCPDを疑うきっかけであって、評価を進める必要がある。
医学生医学生
臨床実習で産科を回ったとき、恥骨結合の上で児頭を触る診察を見学しました。あれもCPDの評価ですか。
ドクタードクター
それはおそらくザイツ法だね。恥骨結合の上で児頭と恥骨結合前面の高さを比べて、児頭が恥骨結合より前に突出していれば陽性で、CPDを疑う。さらに骨盤エックス線計測のグースマン法やマルチウス法で骨盤の形と大きさを測り、超音波で児頭大横径を測って両者を比べる。産科的真結合線が9.5 cm未満なら狭骨盤だ。
医学生医学生
原因としては、母体側の狭骨盤と、胎児側の巨大児や水頭症が考えられるんですね。
ドクタードクター
そうだね。CPDと判断されれば経腟分娩は難しいので帝王切開を選ぶ。境界的な場合は、陣痛や分娩の進み具合をみながら試験分娩を行うこともある。予定日を過ぎても児頭が浮いているときは「待てば下がる」と安易に考えず、骨盤と児頭のバランスを評価する姿勢が大切だ。

まとめ

児頭骨盤不均衡(CPD)は、母体の骨盤に比べて児頭が大きく、児頭が骨盤入口部を通過できない状態です。児頭は妊娠末期に浮動、固定(最大周囲径が骨盤入口面に達する)、嵌入(最大周囲径が入口面を通過する)の順に下降し、特に初産婦では分娩前に固定・嵌入していることが多いため、妊娠41週になっても浮動している場合はCPDを疑います。一方、応形や骨重積は児頭が産道に入り圧を受けて生じる生理的変化で、CPDを示唆する所見ではありません。浮動は前置胎盤、骨盤内腫瘍、羊水過多などでもみられ、経産婦では正常でもありうるため、ザイツ法、骨盤エックス線計測、超音波による児頭大横径の計測で評価を進めます。児頭の下降を示す用語を正確に理解しておくことは、分娩経過の判断や帝王切開の適応を考える産科診療の基本になります。

解答・解説

正解はdです

本問は、児頭骨盤不均衡(CPD:cephalopelvic disproportion)を疑わせる児頭の所見を、児頭の下降に関する用語の理解から選ぶ問題である。 CPDとは、母体の骨盤に比べて児頭が大きいために、児頭が骨盤を通過できず分娩が停止する、あるいは母児に障害が生じると予想される状態をいう。CPDでは、児頭が骨盤入口部に入り込めないことが本質的な問題となる。 妊娠末期になると、児頭は通常、骨盤入口部へ向かって下降する。その段階は、骨盤入口より上で自由に動く「浮動」→ 最大周囲径が骨盤入口面に達して動かなくなる「固定」→ 最大周囲径が骨盤入口面を通過した「嵌入」と進む。特に初産婦では分娩開始前の妊娠36〜38週ごろには児頭が固定・嵌入していることが多い。 妊娠41週という分娩直前期(予定日を過ぎた時期)になっても児頭が骨盤入口より上で浮動しているなら、児頭が骨盤に入り込めない理由としてCPDを疑う必要がある。反対に、固定・嵌入していれば、少なくとも骨盤入口部は児頭が通過できていることを意味し、CPDの可能性は低い。また応形や骨重積は、児頭が産道に入って圧を受けた結果として生じる変化であり、児頭が骨盤内へ進入していることを示す所見である。

選択肢考察

  1. ×a.  応形

    胎児の頭蓋骨は縫合や泉門で互いに固く結合しておらず、ある程度動くことができる。そのため分娩時に産道の抵抗を受けると、頭蓋骨どうしが重なり合って児頭の形が変わり、通過する断面が小さくなって産道を通りやすくなる。この児頭の変形(およびその機能)を応形(応形機能)という。応形は児頭が骨盤内へ下降して産道から圧を受けたときに生じるため、通常はCPDを示唆する所見ではない。

  2. ×b.  嵌入

    嵌入とは、児頭の最大周囲径(最大通過面)が骨盤入口面を通過した状態をいう。固定に続く段階であり、児頭の先進部の高さ(station)がおおむねSP±0 cm(坐骨棘間線の高さ)に達すれば、十分に嵌入したと判断される。児頭が骨盤入口部を通過できていることを示すため、嵌入していればCPDは否定的と考えてよい。

  3. ×c.  固定

    固定とは、浮動していた児頭が下降し、最大周囲径が骨盤入口面に達して入口部にはまり込み、外から動かそうとしても動かなくなった状態をいう。先進部の高さはおおむねSP−1〜−2 cm程度である。児頭が骨盤入口部に入り始めていることを示しており、CPDを示唆する所見ではない。

  4. ○d.  浮動

    浮動とは、児頭が骨盤入口より上方にあり、内診や外診(腹壁上からの触診)で児頭を左右・上下に自由に動かせる状態をいう。初産婦では通常、分娩開始前に児頭が固定・嵌入するため、妊娠41週という分娩直前期になっても児頭が浮動している場合は、児頭が大きすぎて骨盤入口部に入り込めない可能性、すなわちCPDを疑う根拠となる。なお、前置胎盤、骨盤内腫瘍(子宮筋腫・卵巣腫瘍)、羊水過多、児頭の回旋異常などでも児頭は浮動しうるため、これらとの鑑別も必要である。また経産婦では分娩開始まで浮動していることも珍しくない。

  5. ×e.  骨重積

    骨重積とは、分娩時に産道の圧によって児頭の頭蓋骨の縁が互いに重なり合うことをいい、応形を形づくる具体的な変化である。前方(恥骨側)にある頭頂骨の下に、後方(岬角側)にある頭頂骨がもぐり込むように重なる。児頭が骨盤内へ下降してから生じる所見であるため、骨重積を認めることは児頭が産道に入っていることを意味し、CPDを示唆するものではない。

児頭の下降を表す用語

・浮動:児頭が骨盤入口より上にあり、自由に動く状態。 ・固定:児頭の最大周囲径が骨盤入口面に達し、移動性がなくなった状態(おおむねSP−1〜−2 cm)。 ・嵌入:児頭の最大周囲径が骨盤入口面を通過した状態(おおむねSP±0 cmで十分な嵌入)。 SP(station)は、坐骨棘間線を0として、児頭先進部がそれより上か下かをcm単位で表したものである。

児頭骨盤不均衡(CPD)の評価

・臨床所見:分娩直前期あるいは分娩開始後も児頭が浮動している、分娩が停止・遷延する、などがCPDを疑う手がかりとなる。 ・ザイツ(Seitz)法:恥骨結合の上で児頭と恥骨結合前面の高さを触診で比べる方法である。児頭が恥骨結合より前方に突出していれば陽性で、CPDが疑われる。 ・画像検査:骨盤エックス線撮影(グースマン法、マルチウス法)で骨盤の形と大きさ(産科的真結合線など)を計測し、超音波断層法で児頭大横径(BPD)を計測して両者を比較する。産科的真結合線が9.5 cm未満の場合を狭骨盤とする。 ・CPDと判断された場合は、経腟分娩は困難として帝王切開が選択される。境界的な場合は、陣痛の状況や分娩進行をみながら試験分娩を行うことがある。

CPDの主な原因

・母体側:狭骨盤(低身長、骨盤の変形・骨折の既往など) ・胎児側:巨大児(出生体重4,000 g以上)、水頭症などの児頭の拡大

応形と骨重積

胎児頭蓋骨は縫合・泉門で可動性をもち、分娩時の産道抵抗により骨が重なり合う(骨重積)ことで児頭が変形する(応形)。これにより通過断面が縮小し、産道を通過しやすくなる。正常分娩でも生じる生理的変化であり、通常は出生後数日で元に戻る。

POINT

・CPDでは児頭が骨盤入口部に入り込めないため、分娩直前期になっても児頭が浮動している ・児頭の下降:浮動 → 固定(最大周囲径が骨盤入口面に達する)→ 嵌入(最大周囲径が骨盤入口面を通過) ・固定・嵌入していればCPDの可能性は低い ・応形・骨重積は児頭が産道に入って圧を受けて生じる変化で、CPDを示唆しない ・CPDの評価:ザイツ法、骨盤エックス線計測(グースマン法・マルチウス法)、超音波による児頭大横径の計測

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。