成人の常識は通用しない―元気な新生児の「正常所見」を見抜く
第109回医師国家試験 B問題 第43問
国試問題にチャレンジ
生後3日の新生児。体動は活発で泣き声は強く哺乳も良好である。外表に奇形を認めない。 この児に合致しないのはどれか。
- a.胸式呼吸
- b.Moro反射陽性
- c.安静時心拍数120/分
- d.大泉門は対角3×3 cm開大
- e.肝を右鎖骨中線上肋骨弓下に1 cm触知
対話形式の解説
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクター
医学生
ドクターまとめ
新生児の身体所見は成人と大きく異なり、心拍数120〜160/分、肝臓を肋骨弓下に1〜2 cm触知、大泉門2〜3 cm程度の開大、Moro反射陽性はいずれも正常です。一方、新生児は肋骨が水平に近く肋間筋も未発達なため横隔膜に頼る腹式呼吸であり、胸式呼吸は合致しません。呼吸様式は2歳前後で胸腹式となり、学童期にかけて胸式の割合が増えます。原始反射の消失時期、大泉門の閉鎖時期、呼吸数40〜60/分や周期性呼吸と無呼吸発作の違い、生理的黄疸・体重減少もあわせて押さえておきましょう。正常値を発達段階に応じて理解することは、異常の早期発見と家族への適切な説明の土台になります。
解答・解説
正解はaです
所見の整理
生後3日の新生児で、体動が活発、啼泣が力強く、哺乳も良好であり、外表奇形もない。全身状態は良好で、何らかの疾患を疑わせる情報はない。したがって本問は「健康な新生児の正常な身体所見」を知っているかを問う問題であり、選択肢のうち正常新生児にみられない所見を選べばよい。
考え方
新生児の身体所見は成人とは大きく異なり、成人なら異常とされる所見が新生児では正常ということが多い。代表的なものとして次の点を押さえる。 ・呼吸:腹式呼吸で、呼吸数は40〜60/分程度。 ・心拍数:120〜160/分程度(睡眠時はやや低く、啼泣時は高くなる)。 ・大泉門:開いていて平坦。1歳6か月ごろまでに閉鎖する。 ・原始反射:Moro反射、把握反射、吸啜反射などが陽性であることが正常。 ・腹部:肝臓を右肋骨弓下に1〜2 cm程度触れることが多く、脾臓の先端を触れることもある。 成人の感覚で判断せず、新生児の発達段階に応じた正常値で評価することが大切である。
選択肢考察
- ○a. 胸式呼吸
新生児は腹式呼吸をしているので、この児には合致しない。新生児の肋骨は軟らかく、成人のように斜めに傾かず水平に近い向きで並んでいるうえ、肋間筋も未発達である。そのため胸郭を広げて換気することが難しく、主に横隔膜の上下運動に頼って呼吸する(腹式呼吸)。成長して胸郭の形が変わり肋間筋が発達するにつれ、2歳前後から胸腹式呼吸となり、学童期にかけて胸式呼吸の割合が増える。
- ×b. Moro反射陽性
Moro反射は、仰臥位の児の頭部を支えて急に少し落とすなど体位を急に変えたときに、両上肢を伸ばして開き(伸展・外転)、続いて抱きつくように閉じる原始反射である。原始反射は脳幹・脊髄レベルに中枢をもち、大脳の成熟とともに抑制されて消えていく。Moro反射は生後3〜4か月ごろに消失するのが正常で、新生児では陽性であることが正常所見である。新生児期に欠如・減弱していれば中枢神経障害を、左右差があれば分娩麻痺(腕神経叢麻痺)や鎖骨骨折を疑う。また消失すべき時期を過ぎても残る場合も中枢神経障害を疑う。
- ×c. 安静時心拍数120/分
新生児の心拍数の基準範囲はおおむね120〜160/分であり、安静時120/分は正常範囲に入る。新生児は1回拍出量が小さく、心拍数を多くすることで心拍出量を保っているため、成人(60〜100/分)より心拍数が多い。睡眠時には100/分前後まで低下することもある。心拍数は年齢とともに減っていく。
- ×d. 大泉門は対角3×3 cm開大
大泉門は、左右の前頭骨と頭頂骨に囲まれた菱形の骨の隙間である。出生時の大きさはおおむね2〜3 cm程度(個人差が大きく1〜4 cm程度まで幅がある)で、生後数か月でやや大きくなることもあり、その後縮小して1歳6か月ごろまでに閉鎖する。大泉門の大きさは本来、菱形の向かい合う辺の間の距離(辺の中点を結ぶ長さ)で測ることが多く、対角線の長さはそれより大きくなる。いずれにせよ3×3 cmは新生児として正常範囲である。なお大泉門が膨隆していれば頭蓋内圧亢進を、陥凹していれば脱水を疑う。
- ×e. 肝を右鎖骨中線上肋骨弓下に1 cm触知
新生児・乳児では体の大きさに比べて肝臓が相対的に大きく、また腹壁が薄く軟らかいため、右鎖骨中線上で肋骨弓下に1〜2 cm程度触れるのは正常である(2〜3 cm程度まで正常とされることもある)。脾臓も先端を左肋骨弓下に触れることがある。これより大きく触知する場合や硬さに異常がある場合は、心不全、感染症、溶血性疾患、代謝疾患などを考える。
新生児のバイタルサインの目安
・呼吸数:40〜60/分(60/分を超える持続は多呼吸)。腹式呼吸で、不規則になりやすく、数秒の呼吸休止(周期性呼吸)がみられることもある。20秒以上の呼吸停止や、徐脈・チアノーゼを伴う呼吸停止は無呼吸発作として異常である。 ・心拍数:120〜160/分程度 ・体温:36.5〜37.5℃程度(腋窩温)
年齢による呼吸様式の変化
新生児・乳児:腹式呼吸 → 2歳前後:胸腹式呼吸 → 学童期以降:胸式呼吸の割合が増える(女性は胸式、男性は腹式の要素が強いとされる)。
大泉門と小泉門
・大泉門:前頭骨と頭頂骨の間。1歳6か月ごろまでに閉鎖。早期閉鎖は頭蓋骨縫合早期癒合症や小頭症、閉鎖遅延はくる病、甲状腺機能低下症、水頭症、骨形成不全症などを疑う。 ・小泉門:頭頂骨と後頭骨の間。生後まもなく(遅くとも生後1〜2か月ごろまでに)閉鎖する。
主な原始反射と消失時期の目安
・Moro反射:生後3〜4か月ごろ ・手掌把握反射:生後3〜4か月ごろ ・吸啜反射・探索反射:生後4〜6か月ごろ ・非対称性緊張性頸反射(ATNR):生後4〜6か月ごろ ・足底把握反射:生後9〜10か月ごろ ・Babinski反射:1〜2歳ごろ
新生児に多い生理的所見
生理的体重減少(生後3〜5日で出生体重の5〜10%程度減少し、1〜2週で回復)、生理的黄疸(生後2〜3日で出現し、1〜2週で消退)、新生児中毒性紅斑、稗粒腫、蒙古斑など。いずれも病的なものではなく、経過観察でよい。
POINT
・新生児は腹式呼吸。胸式呼吸は新生児に合致しない。 ・新生児の呼吸数は40〜60/分、心拍数は120〜160/分程度。 ・Moro反射は新生児で陽性が正常で、生後3〜4か月ごろに消失する。 ・大泉門は出生時2〜3 cm程度で、1歳6か月ごろまでに閉鎖する。 ・新生児で肝を肋骨弓下に1〜2 cm触れるのは正常である。
