StudyMed医師国家試験

年齢・LDH・PS・病期・節外病変―IPIの5項目で見抜く「仲間外れ」

第109回医師国家試験 A問題 第7問

国試問題にチャレンジ

第109回 A問題 第7問

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の予後因子でないのはどれか。

  1. a.年齢
  2. b.病期
  3. c.血清CRP
  4. d.節外病変数
  5. e.パフォーマンスステイタス〈PS〉

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の予後因子を問う知識問題だ。カギになるのは国際予後指標、いわゆるIPIの5項目を正確に言えるかどうか。まずはこの病気がどんなリンパ腫かを確認しておこう。
医学生医学生
日本で一番多い非Hodgkinリンパ腫で、大型のB細胞がびまん性に増える中悪性度のリンパ腫ですよね。
ドクタードクター
その通り。無治療だと月単位で進行するけれど、化学療法で治癒が期待できる病気でもある。だからこそ、治療前に「この患者さんはどのくらい治りやすいか」を見積もる指標が重要になる。それがIPIだ。
医学生医学生
血液内科の講義でIPIは聞いたんですが、正直、項目がうろ覚えです。CRPも炎症の指標だから入っていそうな気がしてしまって……。
ドクタードクター
そこがこの問題の落とし穴だね。IPIは5項目で、該当1つにつき1点。60歳を超える年齢、血清LDHが正常上限を超える、PSが2〜4、Ann Arbor分類でIII期かIV期、節外病変が2か所以上。この5つだ。
医学生医学生
年齢、病期、節外病変数、PSは全部入っていますね。ということは、入っていないのはCRPだけです。
ドクタードクター
正解。CRPはIL-6の刺激で肝臓がつくる急性期蛋白で、感染症や自己免疫疾患、組織障害など多くの病態で上がる非特異的な炎症マーカーなんだ。リンパ腫でもB症状を伴う例などで上がることはあるけれど、確立した予後因子としてIPIには採用されていない。
医学生医学生
代わりにLDHが入っているのは、腫瘍そのものを反映するからですか。
ドクタードクター
いいところに気づいたね。LDHは腫瘍量や腫瘍細胞の増殖・崩壊を反映するから、病勢の指標として意味がある。では残りの項目も、なぜ予後に関わるのか考えてみよう。まず年齢はどうかな。
医学生医学生
高齢だと臓器の予備能が落ちていて、抗癌剤を標準量で使いにくいからでしょうか。
ドクタードクター
その通り。治療を完遂しにくく、治療関連の合併症や死亡も増える。PSも同じ発想で、日中の一部以上を臥床して過ごすような全身状態だと、強力な化学療法に耐えにくいんだ。
医学生医学生
PSはOSCEの医療面接の練習で、ECOGの0から4を確認したのを思い出しました。
ドクタードクター
臨床では毎回のように使う指標だから、しっかり覚えておこう。病期は横隔膜の両側に病変があるIII期、節外臓器へのびまん性浸潤があるIV期で点数がつく。節外病変は骨髄や消化管、肝、肺、中枢神経などに2か所以上あると1点で、どちらも病変の広がり、つまり腫瘍量の多さを表しているんだ。
医学生医学生
まとめると、患者さん側の要素が年齢とPS、腫瘍側の要素がLDH・病期・節外病変ということですね。
ドクタードクター
きれいな整理だね。合計点で、0〜1点が低リスク、2点が低中間、3点が高中間、4〜5点が高リスクに分けられる。60歳以下ではLDH・PS・病期の3項目で見る年齢調整IPIもあるし、リツキシマブ時代に合わせたR-IPIや、より細かく評価するNCCN-IPIといった改良版も使われている。
医学生医学生
臨床で可溶性IL-2受容体を測っているのをよく見ましたが、あれもIPIには入らないんですよね。
ドクタードクター
そう、可溶性IL-2受容体は病勢マーカーとして頻用されるけれどIPIには含まれない。β2-ミクログロブリンも同様で、こちらは濾胞性リンパ腫のFLIPI2や多発性骨髄腫の病期分類で出てくる。混同しやすいから注意しよう。
医学生医学生
治療はR-CHOP療法が標準でしたよね。
ドクタードクター
そうだね。近年はポラツズマブ ベドチンを組み込んだPola-R-CHP療法も初回治療の選択肢になっている。それから生物学的な予後因子として、遺伝子発現によるGCB型とnon-GCB型の分類があって、一般にnon-GCB型のほうが予後不良とされる。MYCとBCL2またはBCL6の両方に再構成があるダブルヒット・トリプルヒットリンパ腫は特に予後が悪いので、病理報告で見かけたら要注意だ。

まとめ

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の予後予測には国際予後指標(IPI)が用いられ、年齢60歳超、血清LDH上昇、PS 2〜4、臨床病期III〜IV期、節外病変2か所以上の5項目を各1点として評価します。CRPは非特異的な炎症マーカーであり、IPIには含まれません。腫瘍量を反映する指標として採用されているのはLDHで、可溶性IL-2受容体やβ2-ミクログロブリンもIPIの項目ではない点に注意が必要です。また、GCB型/non-GCB型の分類やMYC・BCL2の再構成といった生物学的因子も予後に関わります。IPIを「患者側の要素」と「腫瘍側の要素」に分けて理解しておくと、治療方針の決定や患者さんへの説明に役立つ実践的な知識になります。

解答・解説

正解はcです

問われているテーマ

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma:DLBCL)は、成人の非Hodgkinリンパ腫の中で最も頻度が高い病型で、日本では非Hodgkinリンパ腫の3割程度を占める。大型の異型B細胞がリンパ節の構造を壊しながらびまん性に増殖する中悪性度(aggressive)リンパ腫であり、無治療では月単位で進行するが、化学療法で治癒が期待できる。

予後予測の指標

DLBCLを含むaggressiveリンパ腫の予後予測に広く用いられるのが、国際予後指標(International Prognostic Index:IPI)である。IPIは次の5項目からなり、該当する項目1つにつき1点を与える。 ・年齢:60歳を超える ・血清LDH(乳酸脱水素酵素):施設正常上限を超える ・パフォーマンスステイタス(PS):2〜4 ・臨床病期:Ann Arbor分類でIII期またはIV期 ・節外病変数:2か所以上 合計点が高いほど予後不良である。

正解を導く考え方

選択肢のうち、年齢・病期・節外病変数・PSはいずれもIPIの構成要素である。血清CRPは炎症の程度を示す非特異的マーカーであり、IPIには含まれない。IPIの5項目を「年齢・LDH・PS・病期・節外病変」と確実に覚えていれば、IPIの5項目に入っていないCRPが正解だとわかる。

選択肢考察

  1. ×a.  年齢

    予後因子である。年齢はIPIの構成要素で、60歳を超えると1点となる。高齢者は臓器予備能が低く、標準用量の化学療法を完遂しにくいことや、治療関連の合併症・死亡が増えることが予後不良につながる。

  2. ×b.  病期

    予後因子である。臨床病期はIPIの構成要素で、Ann Arbor分類(Cotswolds改訂)のIII期(横隔膜の両側にリンパ節病変がある)またはIV期(節外臓器へのびまん性浸潤がある)で1点となる。病変が広範に及ぶほど腫瘍量が多く、予後が悪い。

  3. ○c.  血清CRP

    IPIの構成要素ではなく、確立した予後因子には数えられていない。CRP(C反応性蛋白)は、炎症性サイトカインであるIL-6(インターロイキン6)の刺激で肝臓が産生する急性期蛋白であり、感染症・自己免疫疾患・組織障害など多くの病態で上昇する非特異的な炎症マーカーである。リンパ腫でもB症状(発熱・盗汗・体重減少)を伴う例などで上昇することはあるが、病勢や予後の指標としてIPIに採用されているのは、腫瘍量や腫瘍の増殖・細胞崩壊を反映する血清LDHである。

  4. ×d.  節外病変数

    予後因子である。節外病変数はIPIの構成要素で、リンパ節以外の臓器(骨髄、消化管、肝、肺、骨、中枢神経など)への病変が2か所以上あると1点となる。節外病変が多いことは病変の広がりと腫瘍の悪性度の高さを反映する。

  5. ×e.  パフォーマンスステイタス〈PS〉

    予後因子である。PSはECOG(Eastern Cooperative Oncology Group)の基準で、患者の日常生活の活動度を0(無症状で発病前と同様に活動できる)から4(終日臥床し身の回りのことも全くできない)の5段階で評価するものである。IPIでは2〜4(日中の一部以上を臥床して過ごす、または身の回りのことしかできない状態)で1点となる。全身状態が悪いと強力な化学療法に耐えにくく、予後不良となる。

IPIによるリスク分類

合計点(0〜5点)により、次の4群に分けられる。 ・低リスク:0〜1点 ・低中間リスク:2点 ・高中間リスク:3点 ・高リスク:4〜5点

IPIの派生指標

・年齢調整IPI(age-adjusted IPI):60歳以下の患者に用いられ、LDH・PS・病期の3項目で評価する。 ・R-IPI(revised IPI):リツキシマブ(抗CD20モノクローナル抗体)を併用する時代の治療成績に基づき、IPIの点数を0点、1〜2点、3〜5点の3群に再分類したもの。 ・NCCN-IPI:年齢とLDHをより細かく段階分けし、節外病変を特定の部位(骨髄、中枢神経、肝・消化管、肺)に限定して評価する改良版。

DLBCLの概要

・症状:急速に増大する無痛性のリンパ節腫大が典型で、約3〜4割は節外臓器(消化管、中枢神経、精巣、皮膚など)から発生する。B症状を伴うことがある。 ・検査:確定診断はリンパ節などの生検による病理診断。免疫染色でCD20などのB細胞マーカーが陽性。病期診断にはFDG-PET/CTが有用である。 ・治療:標準治療はR-CHOP療法(リツキシマブ+シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾロン)で、限局期では放射線照射を併用することもある。近年はポラツズマブ ベドチンを組み込んだPola-R-CHP療法も初回治療の選択肢となっている。再発・難治例には大量化学療法と自家造血幹細胞移植、CAR-T細胞療法などが検討される。 ・生物学的予後因子:遺伝子発現に基づくGCB型(胚中心B細胞型)とnon-GCB型(ABC型:活性化B細胞型)の分類があり、一般にnon-GCB型のほうが予後不良とされる。MYCとBCL2(またはBCL6)の両方の遺伝子再構成をもつもの(いわゆるダブルヒット/トリプルヒットリンパ腫)はきわめて予後不良である。

関連知識:t(14;18)

t(14;18)(q32;q21)は免疫グロブリン重鎖(IGH)遺伝子とBCL2遺伝子の融合を生じ、アポトーシスを抑制するBCL2蛋白の過剰発現をもたらす。濾胞性リンパ腫の大部分にみられる代表的な染色体転座であり、DLBCLでは一部(主にGCB型)にみられるにすぎない。

POINT

・DLBCLの予後予測はIPIで行う。 ・IPIの5項目:年齢>60歳、血清LDH>正常上限、PS 2〜4、病期III〜IV期、節外病変2か所以上。 ・CRP、β2-ミクログロブリン、可溶性IL-2受容体はIPIに含まれない(β2-ミクログロブリンは濾胞性リンパ腫のFLIPI2や多発性骨髄腫の病期分類で用いられる)。 ・合計点が多いほど予後不良(0〜1点:低リスク、4〜5点:高リスク)。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。