カリフラワー状の無痛性いぼ―コイロサイトが導く尖圭コンジローマの治療
第108回医師国家試験 I問題 第73問
国試問題にチャレンジ
22歳の女性。外陰部の違和感を主訴に来院した。2か月前から気になっているという。痒みや痛みはない。陰唇と会陰部とに隆起性の病変が見られたため生検を行った。外陰部の写真(A)と生検組織のH-E染色標本(B)(C)とを別に示す。 治療として適切なのはどれか。

- a.イミキモド塗布
- b.アシクロビル経口投与
- c.副腎皮質ステロイド塗布
- d.メトロニダゾール腟内投与
- e.ヒトパピローマウイルス〈HPV〉ワクチン接種
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
外陰部の無痛性で乳頭状〜カリフラワー状の多発隆起に、組織で乳頭腫状増殖とコイロサイトーシスを認めれば、主にHPV6・11型による尖圭コンジローマと診断できます。治療はTLR7を介して局所免疫を高めるイミキモド外用か、凍結療法・電気焼灼・レーザー蒸散・切除などの外科的治療が中心で、イミキモドは腟内や子宮頸部の粘膜には用いません。アシクロビルは性器ヘルペス、メトロニダゾールはトリコモナス症や細菌性腟症の薬であり、ステロイドは局所免疫を抑えてかえって悪化させるおそれがあります。HPVワクチンは予防であって、発症した病変の治療にはなりません。再発しやすいことや高リスク型HPVとの重複感染にも目を配りつつ、外陰部病変を痛みの有無や形態で鑑別し、病原体に合った薬を選ぶ姿勢が性感染症診療の基本です。
解答・解説
正解はaです
所見の整理
・22歳の性的活動期にある女性が、2か月前からの外陰部の違和感を訴えている。痒みや痛みはない。 ・外陰部の写真(A)では、陰唇から会陰部・肛門周囲にかけて、表面が細かく凹凸した乳頭状~カリフラワー状(鶏冠状)の白色~淡紅色の小隆起が多発している。 ・生検組織の弱拡大(B)では、重層扁平上皮が肥厚し、樹枝状・乳頭状に外向性に増殖している(乳頭腫状増殖)。 ・強拡大(C)では、上皮の中~表層に、核の周囲が明るく抜けた(核周囲空胞化)細胞が多数みられる。核は濃染し、しわのよった不整形を示す。これはコイロサイト(koilocyte)と呼ばれ、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染に特徴的な細胞変化である。
診断へのプロセス
外陰部の無痛性の乳頭状多発隆起性病変+組織でのコイロサイトーシスから、HPV(主に6型・11型の低リスク型)感染による尖圭コンジローマと診断できる。 鑑別として、性器ヘルペスは有痛性の小水疱・びらん・潰瘍を形成し、梅毒の扁平コンジローマ(第2期梅毒)は表面が平坦で湿潤した丘疹で、梅毒血清反応が陽性となる。外陰カンジダ症は強い瘙痒と白色帯下が特徴である。高齢者であれば外陰癌などの悪性腫瘍も考えるが、本例は組織学的に悪性所見を示していない。
設問の考え方
尖圭コンジローマの治療は、病変を除去する外科的治療(凍結療法、電気焼灼、レーザー蒸散、切除)と、患者自身が塗布する外用薬(イミキモドクリーム)が中心となる。選択肢の中で尖圭コンジローマに対して有効性が確立し、治療薬として承認されているのはイミキモドのみである。他の選択肢は、別の感染症に対する治療薬、あるいは予防手段である。
選択肢考察
- ○a. イミキモド塗布
イミキモドは、自然免疫にかかわるToll様受容体7(TLR7)を刺激して、インターフェロンαなどのサイトカイン産生を促し、局所の細胞性免疫を高めてHPV感染細胞を排除させる免疫調節薬である。抗ウイルス薬のようにウイルスを直接攻撃するのではない。5%クリームを週3回、就寝前に病変に塗布し、6~10時間後に洗い流す方法で、最長16週間程度用いる。外性器・肛門周囲の尖圭コンジローマに対する第一選択の治療の一つであり、自宅で治療できる利点がある。ただし腟内・子宮頸部・尿道などの粘膜面には使用しない。副作用として塗布部位の紅斑、びらん、疼痛などの局所反応がある。
- ×b. アシクロビル経口投与
アシクロビルはヘルペスウイルスのDNAポリメラーゼを阻害する抗ウイルス薬で、単純ヘルペスウイルスによる性器ヘルペスや水痘・帯状疱疹に用いる。ウイルスのチミジンキナーゼによってリン酸化されて活性化されるため、この酵素をもたないHPVには効果がない。また、性器ヘルペスは有痛性の水疱・潰瘍を特徴とし、本例の無痛性の乳頭状病変とは異なる。
- ×c. 副腎皮質ステロイド塗布
副腎皮質ステロイドの外用は湿疹・皮膚炎などの炎症性疾患に用いるが、ウイルスによる上皮の増殖性病変である尖圭コンジローマを縮小させる効果はない。むしろ局所の免疫を抑制するため、ウイルス感染病変を悪化・拡大させるおそれがあり、不適切である。
- ×d. メトロニダゾール腟内投与
メトロニダゾールは原虫や嫌気性菌に効果を示す薬剤で、腟トリコモナス症(泡沫状で悪臭のある黄緑色帯下、外陰の瘙痒)や細菌性腟症の治療に用いる。ウイルス感染症である尖圭コンジローマには無効である。なお腟トリコモナス症ではパートナーからの再感染を防ぐため、経口投与や性パートナーの同時治療も行われる。
- ×e. ヒトパピローマウイルス〈HPV〉ワクチン接種
HPVワクチンのうち4価ワクチン(6・11・16・18型)と9価ワクチン(4価に31・33・45・52・58型を追加)は、尖圭コンジローマの原因となる6型・11型を含み、未感染者への接種で尖圭コンジローマや子宮頸癌の発症を予防する。しかし、ワクチンはウイルスの侵入前に中和抗体を作らせる予防手段であり、すでに感染して発症した病変を治す効果はない。したがって治療としては適切でない。
尖圭コンジローマの概要
・HPVの低リスク型である6型・11型の感染が原因の約9割を占める、良性の乳頭腫状病変である。主に性行為で感染する性感染症(STI)である。 ・潜伏期間は3週~8か月程度(平均約3か月)とされる。 ・好発部位:女性では大小陰唇、腟前庭、会陰、肛門周囲、腟、子宮頸部。男性では冠状溝、包皮、陰茎、肛門周囲。 ・症状:乳頭状・鶏冠状・カリフラワー状の隆起が多発する。痛みはないことが多く、違和感や軽い瘙痒程度である。 ・自然に消退することもある(一部の報告で数十%)が、治療後も潜伏したウイルスによる再発が多い(3か月以内に25%前後)。 ・低リスク型HPVによるため悪性化は極めてまれである。ただし子宮頸癌の原因となる高リスク型HPV(16型・18型など)の重複感染があり得るため、女性では子宮頸部細胞診も考慮する。
病理組織所見
・重層扁平上皮の乳頭状増殖、表皮肥厚(有棘層肥厚)、錯角化。 ・コイロサイトーシス:上皮の中~表層の細胞で、濃縮・不整形の核の周囲が空胞状に明るく抜ける。HPV感染細胞に特徴的である。
治療
・外用薬:イミキモド5%クリーム(外陰・肛門周囲に使用、粘膜内部には使用しない)。海外ではポドフィロトキシンなども用いられる。 ・外科的治療:凍結療法(液体窒素)、電気焼灼、炭酸ガスレーザー蒸散、外科的切除。腟・子宮頸部・尿道口などの病変や大きな病変はこれらで治療する。 ・妊娠中はイミキモドの安全性が確立していないため、凍結療法やレーザー蒸散などを選ぶ。妊婦の病変は、分娩時の産道感染により児の再発性呼吸器乳頭腫症(喉頭乳頭腫)の原因となることがある。
外陰部病変の鑑別の整理
・尖圭コンジローマ:無痛性、乳頭状・カリフラワー状、HPV6・11型 → イミキモド、凍結療法など ・扁平コンジローマ:第2期梅毒、平坦で湿潤した丘疹、梅毒血清反応陽性 → ペニシリン系抗菌薬 ・性器ヘルペス:有痛性の小水疱・潰瘍、単純ヘルペスウイルス → アシクロビル、バラシクロビル ・外陰腟カンジダ症:強い瘙痒、酒粕状・カッテージチーズ状の白色帯下 → 抗真菌薬 ・腟トリコモナス症:泡沫状悪臭帯下、瘙痒 → メトロニダゾール ・伝染性軟属腫:中心臍窩を伴う光沢のある丘疹、ポックスウイルス
POINT
・外陰部の無痛性、乳頭状~カリフラワー状の多発隆起+組織でコイロサイトーシス → 尖圭コンジローマ(HPV6・11型)。 ・治療はイミキモド外用(TLR7を介した免疫賦活)または凍結療法・電気焼灼・レーザー蒸散・切除。イミキモドは腟内・子宮頸部には使わない。 ・HPVワクチンは予防であり、既に発症した病変の治療には用いない。 ・アシクロビルは性器ヘルペス、メトロニダゾールはトリコモナス・細菌性腟症の治療薬である。 ・再発が多く、高リスク型HPVの重複感染にも注意する。
