IgGか、IgAか、どこに光るか―蛍光抗体直接法で水疱性類天疱瘡を見抜く
第108回医師国家試験 I問題 第19問
国試問題にチャレンジ
皮膚生検組織の蛍光抗体直接法の写真(①~⑤)を別に示す。 水疱性類天疱瘡の所見はどれか。

- a.①
- b.②
- c.③
- d.④
- e.⑤
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
蛍光抗体直接法は、患者の皮膚に沈着した免疫グロブリンや補体を検出する検査で、「何が(IgG・IgA・C3)」「どこに・どんな形で」沈着しているかを読むことが診断の鍵です。水疱性類天疱瘡では、ヘミデスモソームのBP180・BP230に対するIgGが結合するため、表皮基底膜部にIgGとC3が線状に沈着します。表皮細胞間の網目状IgGは天疱瘡、基底膜部の線状IgAは線状IgA水疱性皮膚症、真皮乳頭の顆粒状IgAは疱疹状皮膚炎、真皮小血管壁のIgAはIgA血管炎と、パターンごとに整理できます。基底膜部の線状IgGは後天性表皮水疱症でもみられるため、食塩水剥離皮膚を用いた間接法での鑑別も知っておくとよいでしょう。自己抗体の標的分子の位置と蛍光パターンを結びつけて理解すれば、水疱症の病態・臨床像・治療まで一貫して把握できます。
解答・解説
正解はeです
蛍光抗体直接法(direct immunofluorescence:DIF)は、患者の皮膚組織そのものに蛍光色素で標識した抗ヒト免疫グロブリン抗体(抗IgG、抗IgA、抗C3など)を反応させ、組織内のどこに、どのクラスの免疫グロブリンや補体が沈着しているかを見る検査である。自己免疫性水疱症や血管炎の診断に不可欠であり、読影では次の2点を確認する。 1) 何が沈着しているか(IgG か IgA か、C3 か) 2) どこに、どのような形で沈着しているか(表皮細胞間の網目状、表皮基底膜部の線状、真皮乳頭の顆粒状、真皮血管壁など) 水疱性類天疱瘡(bullous pemphigoid:BP)は、表皮と真皮をつなぐヘミデスモソームの構成蛋白であるBP180(ⅩⅦ型コラーゲン)やBP230に対する自己抗体(主にIgG)により表皮下水疱を生じる疾患である。自己抗体の標的が表皮基底膜部に一直線に並んでいるため、DIFでは表皮と真皮の境界(表皮基底膜部)に沿ってIgGおよびC3が線状に沈着する像が得られる。 写真を見ると、①〜③は抗IgA抗体、④⑤は抗IgG抗体で染色されている。IgGの沈着であり、しかも表皮真皮境界に沿った線状パターンを示すものを選べばよい。
選択肢考察
- ×a. ①
誤り。抗IgA抗体で染色され、表皮突起の凹凸に沿って表皮基底膜部に線状の沈着がみられる。表皮下水疱をきたす線状IgA水疱性皮膚症(線状IgA皮膚症、IgA水疱症)の所見である。沈着部位は水疱性類天疱瘡と同じ基底膜部だが、沈着する免疫グロブリンがIgGではなくIgAである点で区別される。
- ×b. ②
誤り。抗IgA抗体で染色され、真皮乳頭部(表皮直下)に点状・顆粒状の沈着がみられる。疱疹状皮膚炎(Duhring疱疹状皮膚炎)の所見である。本症はグルテン過敏性腸症(セリアック病)と関連し、表皮トランスグルタミナーゼに対するIgAが真皮乳頭に沈着して、強いかゆみを伴う小水疱が環状・集簇性に出現する。日本人ではまれである。
- ×c. ③
誤り。抗IgA抗体で染色され、真皮の小血管の壁に沿ってリング状にIgAが沈着している。IgA血管炎(Schönlein-Henoch紫斑病、アナフィラクトイド紫斑)の所見である。IgAを含む免疫複合体が小血管壁に沈着する小型血管炎で、下肢の触知可能な紫斑、腹痛、関節痛、腎炎(IgA腎症類似)を呈する。水疱症の所見ではない。
- ×d. ④
誤り。抗IgG抗体で染色され、表皮の細胞と細胞の間に網目状(ハチの巣状)の沈着がみられる。天疱瘡の所見である。天疱瘡では表皮細胞同士をつなぐデスモソームの構成蛋白であるデスモグレイン(尋常性天疱瘡ではデスモグレイン3±1、落葉状天疱瘡ではデスモグレイン1)に対するIgG自己抗体が生じ、表皮内水疱(棘融解)を起こす。IgGではあるが沈着部位が表皮細胞間であり、水疱性類天疱瘡とは異なる。
- ○e. ⑤
正しい。抗IgG抗体で染色され、表皮と真皮の境界(表皮基底膜部)に沿って線状の沈着がみられる。ヘミデスモソーム構成蛋白のBP180・BP230に対するIgG自己抗体が基底膜部に結合していることを示し、水疱性類天疱瘡に合致する。実際の診断ではC3も同じ部位に線状沈着することが多い。
蛍光抗体直接法の代表的パターン
・表皮細胞間に網目状のIgG(±C3):天疱瘡(尋常性・落葉状) ・表皮基底膜部に線状のIgG・C3:水疱性類天疱瘡(粘膜類天疱瘡、後天性表皮水疱症、妊娠性疱疹〈C3が主体〉も基底膜部に線状沈着を示す) ・表皮基底膜部に線状のIgA:線状IgA水疱性皮膚症 ・真皮乳頭部に顆粒状のIgA:疱疹状皮膚炎 ・真皮小血管壁のIgA:IgA血管炎(Schönlein-Henoch紫斑病) ・表皮基底膜部に顆粒状(帯状)のIgG・IgM・C3など:エリテマトーデス(ループスバンドテスト陽性)
蛍光抗体直接法と間接法
直接法は患者の皮膚に沈着した抗体を直接検出する。間接法は患者の血清を正常皮膚などの基質に反応させ、血中の自己抗体を検出する。水疱性類天疱瘡と後天性表皮水疱症はいずれも基底膜部に線状IgGが沈着するため、1 mol/L食塩水で表皮と真皮を人工的に剥離した皮膚を基質として間接法を行う(食塩水剥離皮膚法)と、類天疱瘡では表皮側に、後天性表皮水疱症(抗Ⅶ型コラーゲン抗体)では真皮側に抗体が結合し、鑑別できる。
水疱性類天疱瘡の臨床像
・高齢者に多い自己免疫性表皮下水疱症で、自己免疫性水疱症のなかで最も頻度が高い。 ・かゆみの強い浮腫性紅斑と、その上や正常皮膚上にできる緊満性(破れにくい)水疱が特徴。Nikolsky現象は通常陰性で、粘膜病変は少ない。 ・病理組織では表皮下水疱と好酸球浸潤がみられる。 ・血液検査で好酸球増多、血清IgE高値を伴うことがあり、ELISA法やCLEIA法で抗BP180抗体を検出する(抗体価は病勢と相関する)。 ・糖尿病治療薬のDPP-4阻害薬に関連した発症が知られている。 ・治療は副腎皮質ステロイド(外用・内服)が基本で、テトラサイクリン系抗菌薬とニコチン酸アミドの併用、免疫抑制薬、重症例ではIVIG(大量免疫グロブリン静注療法)や血漿交換などを用いる。
天疱瘡との比較
天疱瘡は表皮内水疱で弛緩性(破れやすい)水疱、Nikolsky現象陽性、びらんが主体となりやすい。尋常性天疱瘡では口腔粘膜病変が多い。自己抗体は抗デスモグレイン抗体である。
POINT
・蛍光抗体直接法は「何が(IgG/IgA/C3)」「どこに・どんな形で」沈着しているかを読む。 ・水疱性類天疱瘡:表皮基底膜部にIgG・C3が線状に沈着(標的はBP180・BP230)。 ・天疱瘡:表皮細胞間にIgGが網目状に沈着(標的はデスモグレイン)。 ・線状IgA水疱性皮膚症:基底膜部に線状IgA。 ・疱疹状皮膚炎:真皮乳頭部に顆粒状IgA。 ・IgA血管炎:真皮小血管壁にIgA。
