StudyMed医師国家試験

IgGか、IgAか、どこに光るか―蛍光抗体直接法で水疱性類天疱瘡を見抜く

第108回医師国家試験 I問題 第19問

国試問題にチャレンジ

第108回 I問題 第19問

皮膚生検組織の蛍光抗体直接法の写真(①~⑤)を別に示す。  水疱性類天疱瘡の所見はどれか。

第108回 I問題 第19問の問題画像
  1. a.①
  2. b.②
  3. c.③
  4. d.④
  5. e.⑤

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、皮膚生検の蛍光抗体直接法の写真から水疱性類天疱瘡を選ぶ問題だ。写真を読むときのポイントは2つだけ。「何が沈着しているか」と「どこに、どんな形で沈着しているか」。この2軸で5枚を整理していこう。
医学生医学生
蛍光抗体直接法は、患者さんの皮膚そのものに標識抗体をかけて見る方法でしたよね。
ドクタードクター
その通り。患者の皮膚組織に、蛍光色素で標識した抗IgG抗体や抗IgA抗体、抗C3抗体を反応させて、組織のどこに免疫グロブリンや補体がくっついているかを見る。患者の血清を正常皮膚などにかけて血中の抗体を探すのが間接法だ。まず、水疱性類天疱瘡の自己抗体の標的は何だったかな。
医学生医学生
BP180とBP230です。病理学の講義で、ヘミデスモソームの構成蛋白だと習いました。
ドクタードクター
よく覚えているね。ヘミデスモソームは表皮の基底細胞を基底膜につなぎとめる構造だから、そこに対するIgGが結合すると表皮と真皮の境目で剥がれ、表皮下水疱ができる。標的が表皮基底膜部に一直線に並んでいるので、蛍光はどう見えると思う?
医学生医学生
境界に沿って線状に光る、ということですね。
ドクタードクター
そう。表皮基底膜部にIgGとC3が線状に沈着する、これが水疱性類天疱瘡の典型像だ。では写真を見よう。5枚のうち3枚は抗IgA抗体、残り2枚が抗IgG抗体で染色されている。抗IgGで、表皮真皮境界に沿って線状に光っている写真が正解になる。
医学生医学生
IgGの2枚のうち、もう1枚は表皮の中が網目状に光っていました。あれは天疱瘡ですか。
ドクタードクター
正解。表皮細胞同士の間がハチの巣のように光るのは、デスモソームのデスモグレインに対するIgGが細胞間に結合している所見で、天疱瘡に特徴的だ。尋常性天疱瘡ではデスモグレイン3を中心に、落葉状天疱瘡ではデスモグレイン1が標的になる。同じIgGでも、沈着する場所が違えば疾患がまったく変わるわけだ。
医学生医学生
IgAの写真にも基底膜部に線状に光るものがあって、一瞬類天疱瘡かと思ってしまいました。
ドクタードクター
そこが引っかけだね。形は類天疱瘡と同じ線状でも、沈着しているのがIgAなら線状IgA水疱性皮膚症になる。だから「場所」だけでなく「何が」も必ず確認する必要があるんだ。残りのIgAの2枚はどうだろう。
医学生医学生
真皮乳頭に点々と光っているものは、疱疹状皮膚炎でしょうか。セリアック病と関連すると聞いた気がします。
ドクタードクター
その通り。真皮乳頭部の顆粒状IgA沈着は疱疹状皮膚炎で、グルテン過敏性腸症との関連が知られ、表皮トランスグルタミナーゼに対するIgAが関与する。日本人ではまれだけどね。最後の1枚は真皮の小血管の壁にリング状にIgAが沈着している。
医学生医学生
小児科の実習で、下肢の紫斑と腹痛の子を診ました。IgA血管炎ですね。
ドクタードクター
まさにそれ。IgAを含む免疫複合体が小血管壁に沈着する小型血管炎で、触知できる紫斑、腹痛、関節痛、腎炎を起こす。水疱症ではないけれど、蛍光抗体直接法の代表パターンとしてセットで覚えておきたい。
医学生医学生
整理すると、IgGで細胞間の網目は天疱瘡、IgGで基底膜部の線状は類天疱瘡、IgAなら線状・乳頭・血管の3パターンですね。
ドクタードクター
完璧だ。ここから発展知識も押さえよう。基底膜部に線状IgGが沈着する病気は類天疱瘡だけじゃない。VII型コラーゲンに対する抗体による後天性表皮水疱症も同じ像になる。そこで、1 mol/L食塩水で表皮と真皮を人工的に剥がした皮膚を基質に間接法を行うと、類天疱瘡では表皮側、後天性表皮水疱症では真皮側に抗体が結合して鑑別できる。
医学生医学生
臨床像では、天疱瘡と類天疱瘡はどう見分けるんでしょうか。OSCEの前に皮膚科の先生に聞きそびれていました。
ドクタードクター
類天疱瘡は高齢者に多く、かゆみの強い浮腫性紅斑の上に、破れにくい緊満性水疱ができる。Nikolsky現象は通常陰性で、粘膜病変は少ない。一方、天疱瘡は表皮内水疱なので破れやすい弛緩性水疱やびらんが主体で、Nikolsky現象陽性、尋常性天疱瘡では口腔粘膜病変が多い。
医学生医学生
類天疱瘡で、薬剤との関連が話題になっていると聞いたことがあります。
ドクタードクター
糖尿病治療薬のDPP-4阻害薬に関連した発症が知られているね。高齢の糖尿病患者さんに水疱が出たら、内服薬を確認する習慣をつけよう。診断には抗BP180抗体の測定も有用で、抗体価は病勢と相関する。治療は副腎皮質ステロイドの外用・内服が基本で、テトラサイクリン系抗菌薬とニコチン酸アミドの併用や免疫抑制薬、重症例では大量免疫グロブリン静注療法や血漿交換も選択肢になる。

まとめ

蛍光抗体直接法は、患者の皮膚に沈着した免疫グロブリンや補体を検出する検査で、「何が(IgG・IgA・C3)」「どこに・どんな形で」沈着しているかを読むことが診断の鍵です。水疱性類天疱瘡では、ヘミデスモソームのBP180・BP230に対するIgGが結合するため、表皮基底膜部にIgGとC3が線状に沈着します。表皮細胞間の網目状IgGは天疱瘡、基底膜部の線状IgAは線状IgA水疱性皮膚症、真皮乳頭の顆粒状IgAは疱疹状皮膚炎、真皮小血管壁のIgAはIgA血管炎と、パターンごとに整理できます。基底膜部の線状IgGは後天性表皮水疱症でもみられるため、食塩水剥離皮膚を用いた間接法での鑑別も知っておくとよいでしょう。自己抗体の標的分子の位置と蛍光パターンを結びつけて理解すれば、水疱症の病態・臨床像・治療まで一貫して把握できます。

解答・解説

正解はeです

蛍光抗体直接法(direct immunofluorescence:DIF)は、患者の皮膚組織そのものに蛍光色素で標識した抗ヒト免疫グロブリン抗体(抗IgG、抗IgA、抗C3など)を反応させ、組織内のどこに、どのクラスの免疫グロブリンや補体が沈着しているかを見る検査である。自己免疫性水疱症や血管炎の診断に不可欠であり、読影では次の2点を確認する。 1) 何が沈着しているか(IgG か IgA か、C3 か) 2) どこに、どのような形で沈着しているか(表皮細胞間の網目状、表皮基底膜部の線状、真皮乳頭の顆粒状、真皮血管壁など) 水疱性類天疱瘡(bullous pemphigoid:BP)は、表皮と真皮をつなぐヘミデスモソームの構成蛋白であるBP180(ⅩⅦ型コラーゲン)やBP230に対する自己抗体(主にIgG)により表皮下水疱を生じる疾患である。自己抗体の標的が表皮基底膜部に一直線に並んでいるため、DIFでは表皮と真皮の境界(表皮基底膜部)に沿ってIgGおよびC3が線状に沈着する像が得られる。 写真を見ると、①〜③は抗IgA抗体、④⑤は抗IgG抗体で染色されている。IgGの沈着であり、しかも表皮真皮境界に沿った線状パターンを示すものを選べばよい。

選択肢考察

  1. ×a.  ①

    誤り。抗IgA抗体で染色され、表皮突起の凹凸に沿って表皮基底膜部に線状の沈着がみられる。表皮下水疱をきたす線状IgA水疱性皮膚症(線状IgA皮膚症、IgA水疱症)の所見である。沈着部位は水疱性類天疱瘡と同じ基底膜部だが、沈着する免疫グロブリンがIgGではなくIgAである点で区別される。

  2. ×b.  ②

    誤り。抗IgA抗体で染色され、真皮乳頭部(表皮直下)に点状・顆粒状の沈着がみられる。疱疹状皮膚炎(Duhring疱疹状皮膚炎)の所見である。本症はグルテン過敏性腸症(セリアック病)と関連し、表皮トランスグルタミナーゼに対するIgAが真皮乳頭に沈着して、強いかゆみを伴う小水疱が環状・集簇性に出現する。日本人ではまれである。

  3. ×c.  ③

    誤り。抗IgA抗体で染色され、真皮の小血管の壁に沿ってリング状にIgAが沈着している。IgA血管炎(Schönlein-Henoch紫斑病、アナフィラクトイド紫斑)の所見である。IgAを含む免疫複合体が小血管壁に沈着する小型血管炎で、下肢の触知可能な紫斑、腹痛、関節痛、腎炎(IgA腎症類似)を呈する。水疱症の所見ではない。

  4. ×d.  ④

    誤り。抗IgG抗体で染色され、表皮の細胞と細胞の間に網目状(ハチの巣状)の沈着がみられる。天疱瘡の所見である。天疱瘡では表皮細胞同士をつなぐデスモソームの構成蛋白であるデスモグレイン(尋常性天疱瘡ではデスモグレイン3±1、落葉状天疱瘡ではデスモグレイン1)に対するIgG自己抗体が生じ、表皮内水疱(棘融解)を起こす。IgGではあるが沈着部位が表皮細胞間であり、水疱性類天疱瘡とは異なる。

  5. ○e.  ⑤

    正しい。抗IgG抗体で染色され、表皮と真皮の境界(表皮基底膜部)に沿って線状の沈着がみられる。ヘミデスモソーム構成蛋白のBP180・BP230に対するIgG自己抗体が基底膜部に結合していることを示し、水疱性類天疱瘡に合致する。実際の診断ではC3も同じ部位に線状沈着することが多い。

蛍光抗体直接法の代表的パターン

・表皮細胞間に網目状のIgG(±C3):天疱瘡(尋常性・落葉状) ・表皮基底膜部に線状のIgG・C3:水疱性類天疱瘡(粘膜類天疱瘡、後天性表皮水疱症、妊娠性疱疹〈C3が主体〉も基底膜部に線状沈着を示す) ・表皮基底膜部に線状のIgA:線状IgA水疱性皮膚症 ・真皮乳頭部に顆粒状のIgA:疱疹状皮膚炎 ・真皮小血管壁のIgA:IgA血管炎(Schönlein-Henoch紫斑病) ・表皮基底膜部に顆粒状(帯状)のIgG・IgM・C3など:エリテマトーデス(ループスバンドテスト陽性)

蛍光抗体直接法と間接法

直接法は患者の皮膚に沈着した抗体を直接検出する。間接法は患者の血清を正常皮膚などの基質に反応させ、血中の自己抗体を検出する。水疱性類天疱瘡と後天性表皮水疱症はいずれも基底膜部に線状IgGが沈着するため、1 mol/L食塩水で表皮と真皮を人工的に剥離した皮膚を基質として間接法を行う(食塩水剥離皮膚法)と、類天疱瘡では表皮側に、後天性表皮水疱症(抗Ⅶ型コラーゲン抗体)では真皮側に抗体が結合し、鑑別できる。

水疱性類天疱瘡の臨床像

・高齢者に多い自己免疫性表皮下水疱症で、自己免疫性水疱症のなかで最も頻度が高い。 ・かゆみの強い浮腫性紅斑と、その上や正常皮膚上にできる緊満性(破れにくい)水疱が特徴。Nikolsky現象は通常陰性で、粘膜病変は少ない。 ・病理組織では表皮下水疱と好酸球浸潤がみられる。 ・血液検査で好酸球増多、血清IgE高値を伴うことがあり、ELISA法やCLEIA法で抗BP180抗体を検出する(抗体価は病勢と相関する)。 ・糖尿病治療薬のDPP-4阻害薬に関連した発症が知られている。 ・治療は副腎皮質ステロイド(外用・内服)が基本で、テトラサイクリン系抗菌薬とニコチン酸アミドの併用、免疫抑制薬、重症例ではIVIG(大量免疫グロブリン静注療法)や血漿交換などを用いる。

天疱瘡との比較

天疱瘡は表皮内水疱で弛緩性(破れやすい)水疱、Nikolsky現象陽性、びらんが主体となりやすい。尋常性天疱瘡では口腔粘膜病変が多い。自己抗体は抗デスモグレイン抗体である。

POINT

・蛍光抗体直接法は「何が(IgG/IgA/C3)」「どこに・どんな形で」沈着しているかを読む。 ・水疱性類天疱瘡:表皮基底膜部にIgG・C3が線状に沈着(標的はBP180・BP230)。 ・天疱瘡:表皮細胞間にIgGが網目状に沈着(標的はデスモグレイン)。 ・線状IgA水疱性皮膚症:基底膜部に線状IgA。 ・疱疹状皮膚炎:真皮乳頭部に顆粒状IgA。 ・IgA血管炎:真皮小血管壁にIgA。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。