StudyMed医師国家試験

若い女性の「脈がない」―年齢で見分ける血管炎、高安動脈炎の素顔

第108回医師国家試験 I問題 第13問

国試問題にチャレンジ

第108回 I問題 第13問

思春期から若年成人に好発するのはどれか。

  1. a.顕微鏡的多発血管炎
  2. b.高安動脈炎〈大動脈炎症候群〉
  3. c.巨細胞性動脈炎〈側頭動脈炎〉
  4. d.アレルギー性肉芽腫性血管炎〈Churg-Strauss症候群〉
  5. e.IgA血管炎〈Schönlein-Henoch紫斑病〉〈アナフィラクトイド紫斑病〉

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は血管炎症候群の中から、思春期から若年成人に多いものを選ぶ問題だ。血管炎は種類が多くて混乱しやすいけれど、「どの太さの血管を侵すか」と「どの年代に多いか」の2軸で整理すると、ぐっと見通しがよくなる。まずは分類から確認していこう。
医学生医学生
Chapel Hill分類ですよね。大型・中型・小型血管炎に分けると膠原病の講義で習いました。
ドクタードクター
その通り。大型血管炎が高安動脈炎と巨細胞性動脈炎、中型が結節性多発動脈炎と川崎病、小型がANCA関連血管炎とIgA血管炎などの免疫複合体性血管炎だ。では、若い人に多いのはどれだと思う?
医学生医学生
IgA血管炎は子どもに多い印象なので、若年という意味ではこれかなとも思ったんですが……。
ドクタードクター
惜しいところだね。IgA血管炎は3〜10歳ごろの小児に多く、思春期〜若年成人よりももう少し年少なんだ。上気道感染のあとに、下肢やお尻の触知可能な紫斑、関節痛、腹痛、腎炎が出るのが典型で、成人発症はまれ。成人で起こるとむしろ腎炎が重くなりやすい点は覚えておくといい。
医学生医学生
小児科実習で、紫斑と腹痛で入院していた小学生の子を担当しました。血小板は正常でした。
ドクタードクター
いい経験だね。血小板数や凝固検査が正常なのに紫斑が出るのが、血小板減少による紫斑との大きな違いだ。さて、正解は高安動脈炎。10歳代後半から30歳代前半に好発し、患者の8〜9割が女性、日本を含むアジアに多い大型血管炎だ。
医学生医学生
大動脈とその枝が狭くなるから、「脈なし病」と呼ばれるんですよね。
ドクタードクター
そう。大動脈弓から出る鎖骨下動脈や頸動脈が狭窄すると、上肢の脈が弱くなったり、血圧に左右差が出たり、腕を使うとすぐ疲れる上肢跛行が出る。頸部の血管雑音やめまいもヒントになる。初期は発熱や倦怠感といった漠然とした全身症状だけのことも多いから、若い女性の不明熱では鑑別に入れておきたい。
医学生医学生
同じ大型血管炎の巨細胞性動脈炎とは、何が違うんでしょうか。組織はどちらも巨細胞を伴う肉芽腫性炎症だと病理で習いました。
ドクタードクター
組織像は似ているけれど、患者像は対照的なんだ。巨細胞性動脈炎はほぼ全例が50歳以上で、70歳代にピークがあり、欧米の白人に多く日本ではまれ。浅側頭動脈が侵されて側頭部の頭痛、顎跛行、そして失明につながりうる視力障害が問題になる。約半数でリウマチ性多発筋痛症を合併するのも特徴だ。
医学生医学生
若いアジア人女性なら高安、高齢の白人なら巨細胞性、という対比で覚えればいいんですね。
ドクタードクター
まさにそれがこの問題の核心。残りの小型血管炎も年代で整理しよう。顕微鏡的多発血管炎はMPO-ANCA陽性例が多く、日本ではANCA関連血管炎で最も多いけれど、患者の中心は70歳前後の高齢者だ。急速進行性糸球体腎炎や肺胞出血、間質性肺炎を起こしやすい。
医学生医学生
腎臓内科を回ったとき、急速進行性糸球体腎炎で入院していた高齢の方が顕微鏡的多発血管炎でした。Churg-Strauss症候群はどうですか。
ドクタードクター
今は好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、EGPAと呼ばれている。喘息やアレルギー性鼻炎が先行して、好酸球増加とともに多発単神経炎や紫斑が出てくる。発症は30〜60歳代、平均すると50歳代で、やはり若年成人の病気ではないね。
医学生医学生
まとめると、小児がIgA血管炎、若年が高安動脈炎、中年がEGPA、高齢が顕微鏡的多発血管炎と巨細胞性動脈炎ですね。
ドクタードクター
完璧だ。最後に臨床での注意点を。高安動脈炎は大動脈弁閉鎖不全症や、腎動脈狭窄による腎血管性高血圧を合併することがあり、HLA-B*52との関連も知られている。若い人の高血圧や心雑音を見たら、両腕で血圧を測る習慣をつけてほしい。
医学生医学生
OSCEの練習では片腕だけで測っていました。左右差を見るのは大事なんですね。
ドクタードクター
そうなんだ。治療はどちらの大型血管炎も副腎皮質ステロイドが基本で、再燃例や難治例ではトシリズマブなどの生物学的製剤も使われる。それから、近年の日本では中高年で診断される高安動脈炎も増えているから、年齢だけで除外しすぎないことも大切だよ。試験では旧名と新名が併記されることも多いので、Wegener肉芽腫症は多発血管炎性肉芽腫症、Schönlein-Henoch紫斑病はIgA血管炎と対応づけておこう。

まとめ

血管炎症候群は侵される血管の太さで大型・中型・小型に分類され、それぞれ好発年齢に特徴があります。思春期から若年成人、特に若い女性に好発するのは大型血管炎の高安動脈炎で、アジアに多く、上肢の脈拍減弱や血圧の左右差、大動脈弁閉鎖不全症、腎血管性高血圧などをきたします。同じ大型血管炎でも巨細胞性動脈炎は50歳以上の高齢者に多く、頭痛・顎跛行・視力障害が特徴で、両者は年齢層が対照的です。IgA血管炎は小児、EGPAは中年、顕微鏡的多発血管炎は高齢者に多いと年代で整理しておくと、選択肢の判別だけでなく実臨床での鑑別の出発点にもなります。若年者の高血圧や心雑音では両上肢で血圧を測る、という基本動作が見逃しを防ぐ鍵です。

解答・解説

正解はbです

テーマ

血管炎症候群は、炎症の主座となる血管の太さによって分類されている(Chapel Hill分類 2012)。 ・大型血管炎:高安動脈炎、巨細胞性動脈炎 ・中型血管炎:結節性多発動脈炎、川崎病 ・小型血管炎:ANCA(抗好中球細胞質抗体)関連血管炎(顕微鏡的多発血管炎、多発血管炎性肉芽腫症、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症)、免疫複合体性血管炎(IgA血管炎など) それぞれの血管炎には好発年齢と性差の特徴があり、国家試験では「どの年代に起こりやすいか」がよく問われる。

好発年齢の整理

・小児(おおむね10歳以下):IgA血管炎、川崎病(主に4歳以下の乳幼児) ・思春期〜若年成人(10〜30歳代):高安動脈炎(若年女性に多い) ・中年〜壮年(30〜60歳代):好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(Churg-Strauss症候群) ・高齢者:顕微鏡的多発血管炎、巨細胞性動脈炎(50歳以上に限られる)

解き方

同じ大型血管炎でも、高安動脈炎は若年女性、巨細胞性動脈炎は高齢者と年齢層が対照的であり、この対比を覚えておけば、思春期から若年成人に好発するのは高安動脈炎と判断できる。

選択肢考察

  1. ×a.  顕微鏡的多発血管炎

    高齢者に好発する。顕微鏡的多発血管炎(MPA)は、細動脈・毛細血管・細静脈などの小型血管に起こる壊死性血管炎で、肉芽腫を伴わない。MPO-ANCA(ミエロペルオキシダーゼに対するANCA)陽性例が多い。発症は50〜60歳代以降に多く、わが国では70歳前後の高齢者が中心で、日本ではANCA関連血管炎の中で最も頻度が高い。急速進行性糸球体腎炎(RPGN)や肺胞出血、間質性肺炎を起こしやすく、若年成人に好発する疾患ではない。

  2. ○b.  高安動脈炎〈大動脈炎症候群〉

    思春期から若年成人に好発する。高安動脈炎は大動脈とその主要な分枝(鎖骨下動脈、頸動脈など)、肺動脈、冠動脈に肉芽腫性の炎症を起こし、狭窄・閉塞・拡張をきたす大型血管炎である。発症は10歳代後半〜30歳代前半に多く、患者の約8〜9割が女性とされ、日本を含むアジアに多い。発熱や倦怠感などの全身症状に続いて、上肢の脈拍減弱(脈なし病)、血圧の左右差、頸部の血管雑音、上肢の易疲労(跛行)、めまいなどが現れる。大動脈弁閉鎖不全症や腎血管性高血圧を合併することもあり、HLA-B*52との関連が知られている。なお、近年わが国では中高年以降に診断される例も増えているが、若年女性に多いという特徴は変わらない。

  3. ×c.  巨細胞性動脈炎〈側頭動脈炎〉

    高齢者に好発する。巨細胞性動脈炎は大動脈とその分枝、とりわけ浅側頭動脈などの頸動脈の分枝を侵す肉芽腫性血管炎で、ほぼ全例が50歳以上で発症し、70歳代にピークがある。欧米の白人に多く、日本ではまれである。側頭部の頭痛、浅側頭動脈の圧痛・怒張、顎跛行(咀嚼で顎が痛む)、視力障害(失明の危険)を特徴とし、約半数でリウマチ性多発筋痛症を合併する。同じ大型血管炎でも若年女性に多い高安動脈炎とは好発年齢が対照的である。

  4. ×d.  アレルギー性肉芽腫性血管炎〈Churg-Strauss症候群〉

    中年期に好発する。本症は現在、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)と呼ばれる。気管支喘息やアレルギー性鼻炎が先行し、末梢血好酸球増加を伴って、小型血管の壊死性血管炎と好酸球浸潤を伴う肉芽腫を形成する疾患である。発症年齢は30〜60歳代が中心(平均50歳代)で、わが国ではやや女性に多い。MPO-ANCAは約半数で陽性となり、多発単神経炎や紫斑、消化管病変、心病変をきたす。思春期〜若年成人に好発する疾患ではない。

  5. ×e.  IgA血管炎〈Schönlein-Henoch紫斑病〉〈アナフィラクトイド紫斑病〉

    小児に好発する。IgA血管炎は、IgAを主体とする免疫複合体が小型血管壁に沈着して起こる血管炎で、上気道感染などを契機に発症することが多い。好発年齢は3〜10歳ごろの小児で、成人発症はまれである(成人例は腎炎が重症化しやすい)。下肢・臀部を中心とした触知可能な紫斑(palpable purpura)、関節痛、腹痛・消化管出血、腎炎(IgA血管炎腎炎)を特徴とする。血小板数や凝固検査は正常であり、血小板減少による紫斑とは区別される。思春期〜若年成人ではなく、より年少の小児に多い点で本問の条件に合わない。

高安動脈炎と巨細胞性動脈炎の比較

・好発年齢:若年(10〜30歳代)⇔ 50歳以上の高齢者 ・性差:女性が約8〜9割 ⇔ 女性にやや多い ・地域:アジア(日本など)に多い ⇔ 欧米の白人に多い ・主な侵襲部位:大動脈弓とその分枝、肺動脈、腎動脈 ⇔ 頸動脈の分枝(浅側頭動脈など)、大動脈 ・主な症状:脈拍減弱、血圧左右差、上肢跛行、大動脈弁閉鎖不全 ⇔ 頭痛、顎跛行、視力障害、リウマチ性多発筋痛症 ・両者とも組織学的には巨細胞を伴う肉芽腫性炎症で、治療の基本は副腎皮質ステロイドである。再燃例や難治例ではトシリズマブ(抗IL-6受容体抗体)などが用いられる。

ANCA関連血管炎の要点

・顕微鏡的多発血管炎(MPA):MPO-ANCA、高齢者、腎・肺病変、肉芽腫なし ・多発血管炎性肉芽腫症(GPA、旧称Wegener肉芽腫症):PR3-ANCA(日本ではMPO-ANCA陽性例も多い)、上気道(E)→肺(L)→腎(K)の順に病変 ・好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA、旧称Churg-Strauss症候群):喘息先行、好酸球増加、多発単神経炎

血管炎の名称変更

2012年のChapel Hill分類改訂で、人名を用いた疾患名は病態に基づく名称へ改められた(Churg-Strauss症候群→EGPA、Wegener肉芽腫症→GPA、Schönlein-Henoch紫斑病→IgA血管炎)。試験では新旧両方の名称が併記されることがあるので、両方を対応させて覚えておく。

POINT

・思春期〜若年成人(特に若年女性)に好発する血管炎は高安動脈炎。 ・巨細胞性動脈炎と顕微鏡的多発血管炎は高齢者に好発。 ・EGPA(Churg-Strauss症候群)は30〜60歳代、喘息先行と好酸球増加が特徴。 ・IgA血管炎は小児(おおむね10歳以下)に好発し、成人ではまれ。 ・同じ大型血管炎でも、高安動脈炎(若年・アジア)と巨細胞性動脈炎(高齢・欧米)は対照的。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。