立入検査ができるのはどっち?―保健所と市町村保健センターの役割分担
第108回医師国家試験 G問題 第2問
国試問題にチャレンジ
保健所と市町村保健センターとの比較で,保健所に限られるのはどれか。
- a.保健師の勤務
- b.地域保健の推進
- c.医療監視の実施
- d.健康日本21の推進
- e.対人サービスの提供
対話形式の解説
ドクター
医学生
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医学生
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医学生
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ドクターまとめ
保健所と市町村保健センターはいずれも地域保健法に基づく機関ですが、保健所は都道府県や指定都市などが必ず設置する行政機関で、所長は原則として医師です。一方、市町村保健センターは市町村が任意で設置する施設で、健診・保健指導・母子保健・予防接種など、住民に身近な対人保健サービスを担います。医療法第25条に基づく医療監視(医療機関への立入検査)のように行政上の監督権限を伴う業務は保健所に限られ、保健師の勤務、地域保健や健康日本21の推進、対人サービスの提供は両者に共通します。「権限を伴う専門的・広域的業務は保健所、身近なサービスは市町村」という役割分担を理解しておくことは、感染症の届出や結核対策などで保健所と連携する臨床現場でも役立ちます。
解答・解説
正解はcです
テーマ
地域保健を担う二つの行政機関、保健所と市町村保健センターの役割分担を問う問題である。
両者の位置づけ
・保健所:地域保健法に基づき、都道府県、指定都市、中核市、その他政令で定める市、特別区が設置する(必置)。広い地域を担当し、専門的・技術的な業務や広域的な業務を担う。感染症対策、食品衛生・環境衛生などの監視指導、医療機関への立入検査、精神保健、難病対策、地域保健に関する情報収集・調査研究などが代表例である。 ・市町村保健センター:地域保健法に基づき、市町村が設置できる施設である(設置は任意)。住民に身近な窓口として、健康相談、保健指導、健康診査など、住民に直接向き合う対人保健サービスを一体的に提供する。母子保健(乳幼児健診、両親学級など)、成人の健康づくり、予防接種などが中心である。
考え方
「保健所に限られる」業務を選ぶには、行政権限を伴う業務(許可、監視、立入検査など)かどうかに注目するとよい。市町村保健センターは住民サービスを提供する施設であり、事業者や医療機関を監督する権限は持たない。一方、保健師の勤務、地域保健の推進、健康づくり施策の推進、対人サービスは両者に共通している。
選択肢考察
- ×a. 保健師の勤務
両者に共通する。保健所でも市町村保健センターでも、家庭訪問、健康相談、保健指導などの対人保健活動に保健師が従事している。保健所の保健師は難病や精神保健、感染症などの専門的な支援を、市町村の保健師は母子保健や成人保健など身近な支援を担うことが多い。
- ×b. 地域保健の推進
両者に共通する。地域保健法は、地域住民の健康の保持・増進を目的として、保健所と市町村保健センターの両方を位置づけている。保健所は地域の公衆衛生の向上と増進を図る中核機関として、市町村保健センターは健康相談、保健指導、健康診査など地域保健に必要な事業を行う施設として、それぞれ地域保健を推進している。
- ○c. 医療監視の実施
保健所に限られる業務であり、これが正解である。医療監視とは、医療法第25条に基づいて、病院や診療所などの人員配置、構造設備、管理運営が法令に適合しているかを調べる立入検査である。権限を持つのは都道府県知事、保健所設置市の市長、特別区の区長であり、実際には保健所に置かれた医療監視員が行う。行政上の監督権限を伴うため、住民サービスを担う市町村保健センターの業務ではない。
- ×d. 健康日本21の推進
両者に共通する。健康日本21(21世紀における国民健康づくり運動)は健康増進法を根拠とする国の健康づくり計画であり、現在は第三次(2024年度開始)が進んでいる。都道府県は健康増進計画を策定しなければならず、市町村も策定に努めることとされている。保健所は広域的な計画づくりや市町村の支援、市町村保健センターは住民への具体的な健康づくり事業を担い、両者が推進に関わる。
- ×e. 対人サービスの提供
両者に共通する。市町村保健センターは健康診査や保健指導など、一般的な対人保健サービスの主な担い手である。保健所も、難病患者や精神障害者の支援、結核患者への服薬支援、エイズ・性感染症の相談・検査など、専門性の高い対人サービスを提供している。
保健所と市町村保健センターの比較
・根拠法:いずれも地域保健法 ・設置主体:保健所は都道府県、指定都市、中核市、政令で定める市、特別区。市町村保健センターは市町村。 ・設置義務:保健所は必置。市町村保健センターは任意設置。 ・所長:保健所長は原則として医師である(医師の確保が著しく困難な場合などは例外が認められる)。市町村保健センターのセンター長には医師である必要がない。 ・性格:保健所は行政機関であり、許可、監視、指導などの権限を持つ。市町村保健センターは住民に保健サービスを提供する施設である。
保健所の主な業務(地域保健法第6条に掲げられた事項の例)
地域保健に関する思想の普及、人口動態統計その他地域保健に関する統計、栄養の改善と食品衛生、住宅・水道・下水道・廃棄物処理・清掃など環境の衛生、医事・薬事、保健師に関する事項、公共医療事業の向上・増進、母性・乳幼児・老人の保健、歯科保健、精神保健、治療方法が確立していない疾病など長期療養を要する者の保健、エイズ・結核・性病・伝染病その他の疾病の予防、衛生上の試験・検査など。
市町村保健センターの経緯
かつては保健所が公衆衛生活動の第一線を担っていた。対人保健サービスへの需要が多様化・高度化したため、国は昭和53年度から市町村保健センターの整備を進めた。平成6年に保健所法が地域保健法に改正され(平成9年全面施行)、住民に身近な対人サービスは市町村、専門的・広域的・技術的な業務は保健所という役割分担がはっきりした。
POINT
・医療監視(医療法第25条に基づく立入検査)など行政権限を伴う業務は保健所が行う。 ・保健所:必置、都道府県などが設置、所長は原則医師、専門的・広域的・技術的業務を担う。 ・市町村保健センター:任意設置、市町村が設置、住民に身近な対人保健サービス(健診、保健指導、母子保健、予防接種など)を担う。 ・保健師の勤務、対人サービス、地域保健・健康づくりの推進は両者に共通する。
