StudyMed医師国家試験

「尋常性」の名に惑わされるな―関節まで炎症が及ぶ皮膚疾患は乾癬だけ

第108回医師国家試験 F問題 第7問

国試問題にチャレンジ

第108回 F問題 第7問

関節痛を伴いやすいのはどれか。

  1. a.尋常性乾癬
  2. b.尋常性痤瘡
  3. c.尋常性白斑
  4. d.尋常性魚鱗癬
  5. e.尋常性天疱瘡

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、「尋常性」と名の付く5つの皮膚疾患の中から、関節痛を伴いやすいものを選ぶ問題だ。着眼点はひとつ。その病気が皮膚だけで完結する局所の病気なのか、それとも全身の免疫・炎症が関わる病気なのか、という視点で見ていこう。
医学生医学生
5つとも「尋常性」が付いていて、何か共通点があるのかと思ってしまいました。
ドクタードクター
そう感じる人は多いね。でも「尋常性」は「よくみられる普通の型」という意味にすぎず、疾患どうしの関係を示す言葉ではないんだ。だから名前ではなく、それぞれの病態を思い出して判断する必要がある。
医学生医学生
関節痛というと、皮膚科の講義で習った「乾癬性関節炎」という言葉が浮かびます。
ドクタードクター
正解はまさにその尋常性乾癬だ。乾癬は境界明瞭な紅斑の上に銀白色の厚い鱗屑がのる局面が特徴で、肘や膝、頭部、腰殿部など擦れやすい部位に出やすい。大事なのは、乾癬が皮膚の病気というより全身性の慢性炎症性疾患だという点。樹状細胞が出すIL-23によってTh17細胞が活性化され、IL-17やTNF-αといったサイトカインが炎症の中心になる。この同じ炎症経路が、関節や腱の付着部にも炎症を起こすんだ。
医学生医学生
なるほど、皮膚と関節で同じサイトカインが働いているんですね。皮疹に関節炎を伴うものを関節症性乾癬と呼ぶんでしたっけ。
ドクタードクター
そう、関節症性乾癬、あるいは乾癬性関節炎だ。脊椎関節炎の一つで、リウマトイド因子は通常陰性。手指のDIP関節炎、指全体が腫れるソーセージ指、腱付着部炎、仙腸関節炎などが特徴だよ。
医学生医学生
DIP関節というと、関節リウマチは侵しにくい関節ですよね。CBTの勉強で、リウマチはPIPやMCPと覚えました。
ドクタードクター
よく覚えているね。その違いは鑑別の手がかりになる。それから爪の点状陥凹や爪甲剝離といった爪病変がある人は関節炎を合併しやすいので、診察では爪もしっかり見てほしい。では、ほかの選択肢も確認しよう。尋常性痤瘡はどうかな。
医学生医学生
いわゆるにきびですよね。毛包脂腺の病気なので、関節とは関係なさそうです。
ドクタードクター
その通り。アンドロゲンによる皮脂分泌亢進、毛孔の角化異常による閉塞、アクネ菌の増殖と炎症が関わる局所の病変で、関節症状は起こさない。ただ例外として、重症の集簇性痤瘡や電撃性痤瘡、掌蹠膿疱症や痤瘡に骨関節炎を伴うSAPHO症候群では骨関節症状がみられることがある。これらは尋常性痤瘡とは区別して考えよう。
医学生医学生
尋常性白斑は自己免疫が関わると聞いたので、少し迷いました。
ドクタードクター
迷うのはわかるよ。白斑は細胞傷害性T細胞などがメラノサイトを攻撃して脱色素斑ができると考えられていて、橋本病やBasedow病などの自己免疫性甲状腺疾患を合併することがある。でも疾患そのものとして関節炎を伴う特徴はないんだ。
医学生医学生
尋常性魚鱗癬はフィラグリン遺伝子の変異でしたね。アトピー性皮膚炎との関連で習いました。
ドクタードクター
そう。角質層の保湿とバリア機能に関わるフィラグリンの異常による角化異常症で、乳幼児期から四肢伸側や体幹に乾燥と細かい鱗屑がみられ、冬に悪化しやすい。炎症性・自己免疫性の病気ではないので、関節とは関係がない。最後に尋常性天疱瘡はどうだろう。
医学生医学生
デスモグレイン3に対する自己抗体で、表皮内水疱ができる病気です。病理実習で棘融解の像を見ました。自己免疫疾患ですが、関節症状は聞いたことがありません。
ドクタードクター
その理解で大丈夫。口腔粘膜のびらんで始まることが多く、弛緩性水疱やNikolsky現象がみられる。自己免疫ではあっても、標的は表皮細胞間の接着分子だから、関節炎を伴う特徴はないんだ。
医学生医学生
同じ自己免疫や炎症でも、標的がどこかで全身症状が変わるということですね。乾癬は全身性の炎症だから関節にも及ぶ、と整理できました。
ドクタードクター
いいまとめだ。発展として、乾癬は肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧といったメタボリックシンドロームや心血管疾患、ぶどう膜炎、炎症性腸疾患との関連も知られている。乾癬性関節炎はX線で骨びらんと骨新生が混在し、進行するとpencil-in-cup変形をきたすこともある。関節破壊は放置すると進むので、皮膚科で乾癬の患者さんを診たら関節痛や朝のこわばり、爪の変化を必ず尋ねて、早めにTNF-α阻害薬、IL-17阻害薬、IL-23阻害薬などの生物学的製剤を含めた治療につなげることが大切だよ。
医学生医学生
皮膚科の外来でも関節を診る意識が必要なんですね。ほかに関節痛を伴う皮膚症状の病気も整理しておきます。
ドクタードクター
ぜひ。全身性エリテマトーデス、IgA血管炎、成人Still病、皮膚筋炎、Behçet病、反応性関節炎、結節性紅斑を伴うサルコイドーシスなども、皮膚と関節の両方に症状が出る代表例だ。皮疹を見たら全身にも目を向ける習慣をつけよう。

まとめ

「尋常性」は「よくみられる型」という意味にすぎず、疾患の関連を示すものではないため、各疾患の病態から判断する必要があります。尋常性乾癬はIL-23/IL-17経路やTNF-αが関わる全身性の慢性炎症性疾患で、同じ炎症が関節や腱付着部に及ぶと関節症性乾癬(乾癬性関節炎)となり、RF陰性、DIP関節炎、ソーセージ指、付着部炎、爪病変が特徴です。尋常性痤瘡は毛包脂腺の局所病変、尋常性白斑はメラノサイトの消失、尋常性魚鱗癬はフィラグリン遺伝子変異による角化異常、尋常性天疱瘡は抗デスモグレイン3抗体による水疱症であり、いずれも通常は関節症状を伴いません。乾癬性関節炎は放置すると関節破壊が進むため、乾癬患者では関節痛や爪病変を確認し、生物学的製剤を含む治療へ早期につなげることが重要です。皮膚疾患を局所の病気か全身性炎症かで捉える視点は、皮膚と関節・内臓をまたぐ疾患の理解に役立ちます。

解答・解説

正解はaです

【テーマ】「尋常性」と名の付く代表的な皮膚疾患のうち、皮膚外の症状として関節症状を合併しやすいものを選ぶ問題である。「尋常性」とは「よくみられる普通の型」という意味で、疾患どうしの関連を示す言葉ではない。それぞれの疾患の病態を思い出して判断する。 【考え方】関節痛を伴いやすい皮膚疾患は、皮膚だけでなく全身の免疫・炎症が関わる疾患である。乾癬は、樹状細胞が産生するIL-23と、それにより活性化されるTh17細胞が産生するIL-17、さらにTNF-αなどのサイトカインが中心的役割を果たす全身性の慢性炎症性疾患であり、同じ炎症経路が関節や腱付着部(エンテーシス)にも炎症を起こす。このため、乾癬の皮疹に関節炎を伴う病型(関節症性乾癬、乾癬性関節炎)が存在する。 一方、尋常性痤瘡は毛包脂腺の局所的な病変、尋常性白斑はメラノサイトの消失による色素異常、尋常性魚鱗癬は皮膚バリアに関わる遺伝子異常による角化異常、尋常性天疱瘡は表皮細胞間の接着分子に対する自己抗体による水疱症であり、いずれも関節症状を伴うことは通常ない。

選択肢考察

  1. ○a.  尋常性乾癬

    関節痛を伴いやすい。乾癬は、境界明瞭な紅斑の上に銀白色の厚い鱗屑(うろこ状の角質)が付着する局面を特徴とする炎症性角化症で、肘・膝・頭部・腰殿部など擦れやすい部位に好発する。IL-23/IL-17経路やTNF-αを介した全身性炎症疾患であるため、関節炎を合併することがあり、皮疹に関節炎を伴うものを関節症性乾癬(乾癬性関節炎)という。脊椎関節炎の一つで、リウマトイド因子は通常陰性であり、手指の遠位指節間(DIP)関節炎、指全体が腫れるソーセージ指(指趾炎)、腱付着部炎、仙腸関節炎などが特徴的である。爪の点状陥凹や爪甲剝離などの爪病変を伴う例では関節炎を合併しやすい。放置すると関節破壊が進行するため、早期に発見して生物学的製剤(TNF-α阻害薬、IL-17阻害薬、IL-23阻害薬など)を含む治療につなげることが重要である。

  2. ×b.  尋常性痤瘡

    通常、関節痛は伴わない。尋常性痤瘡はいわゆる「にきび」であり、思春期のアンドロゲン増加による皮脂分泌亢進、毛孔の角化異常による閉塞、アクネ菌(Cutibacterium acnes)の増殖と炎症が関わる毛包脂腺系の疾患である。面皰(白にきび・黒にきび)、紅色丘疹、膿疱が顔面・前胸部・背部に混在する。病変は皮膚に限局し、関節症状は起こさない(例外的に、重症の集簇性痤瘡や電撃性痤瘡、SAPHO症候群では骨関節症状を伴うことがあるが、尋常性痤瘡とは区別される)。

  3. ×c.  尋常性白斑

    通常、関節痛は伴わない。尋常性白斑は、後天的に表皮のメラノサイト(色素細胞)が減少・消失して境界明瞭な脱色素斑を生じる疾患である。細胞傷害性T細胞などによるメラノサイトへの自己免疫的な攻撃が主な機序と考えられており、橋本病やBasedow病などの自己免疫性甲状腺疾患を合併することがある。しかし疾患そのものとして関節炎を伴う特徴はない。

  4. ×d.  尋常性魚鱗癬

    通常、関節痛は伴わない。尋常性魚鱗癬は、角質層の保湿とバリア機能に重要なフィラグリンの遺伝子変異(常染色体半顕性〈優性〉遺伝)によって生じる角化異常症で、主に四肢伸側や体幹に皮膚の乾燥と細かい鱗屑がみられる。乳幼児期に発症し、冬季に悪化しやすく、アトピー性皮膚炎を合併しやすい。炎症性・自己免疫性の疾患ではなく、関節症状とは関係がない。

  5. ×e.  尋常性天疱瘡

    通常、関節痛は伴わない。尋常性天疱瘡は、表皮細胞どうしをつなぐデスモソームの構成蛋白であるデスモグレイン3(皮膚病変も広い例ではデスモグレイン1にも)に対するIgG自己抗体によって、表皮内に棘融解(表皮細胞間の接着がはがれること)が起こり、水疱やびらんを生じる自己免疫性水疱症である。口腔粘膜のびらんで始まることが多く、弛緩性水疱やNikolsky現象(一見正常な皮膚をこすると表皮がはがれる)がみられる。自己免疫疾患ではあるが、関節炎を伴う特徴はない。

乾癬の病型

・尋常性乾癬: 最も多い病型。鱗屑を伴う紅斑局面。Auspitz現象(鱗屑をはがすと点状出血)、Köbner現象(外的刺激を受けた部位に皮疹が新生)がみられる。 ・関節症性乾癬(乾癬性関節炎): 皮疹に関節炎を伴う。皮疹が関節症状に先行することが多いが、同時発症や関節炎先行もある。 ・膿疱性乾癬: 発熱とともに全身に無菌性膿疱が多発する重症型。 ・乾癬性紅皮症: 全身の皮膚の大部分が潮紅し鱗屑を伴う。 ・滴状乾癬: 小型の皮疹が散在する。溶連菌による扁桃炎などの感染後に出現しやすい。

乾癬性関節炎の特徴

脊椎関節炎(血清反応陰性脊椎関節炎)の一つで、リウマトイド因子・抗CCP抗体は通常陰性。DIP関節炎、指趾炎(ソーセージ指)、付着部炎、非対称性の少関節炎、仙腸関節炎・脊椎炎、爪病変が特徴。X線では骨びらんと骨新生が混在し、進行例ではpencil-in-cup変形がみられる。関節リウマチがDIP関節を侵しにくい点が鑑別の手がかりとなる。 【乾癬と全身の合併症】乾癬は肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧などのメタボリックシンドロームや心血管疾患、ぶどう膜炎、炎症性腸疾患との関連も知られる。 【関節痛を伴いやすい他の皮膚症状を呈する疾患】全身性エリテマトーデス、IgA血管炎(旧称: Henoch-Schönlein紫斑病、アナフィラクトイド紫斑病)、成人Still病、皮膚筋炎、Behçet病、反応性関節炎、結節性紅斑を伴う疾患(サルコイドーシスなど)、SAPHO症候群(掌蹠膿疱症・痤瘡に骨関節炎を伴う)など。

POINT

・関節痛を伴いやすい「尋常性」疾患は尋常性乾癬である。 ・乾癬はIL-23/IL-17経路・TNF-αが関わる全身性炎症疾患で、関節炎を伴うものを関節症性乾癬(乾癬性関節炎)という。 ・乾癬性関節炎: RF陰性、DIP関節炎、ソーセージ指、付着部炎、爪病変が特徴。 ・尋常性痤瘡(毛包脂腺)、尋常性白斑(メラノサイト消失)、尋常性魚鱗癬(フィラグリン遺伝子変異)、尋常性天疱瘡(抗デスモグレイン3抗体)は関節症状を伴わない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。