StudyMed医師国家試験

「どれだけ揃えたか」「何をしたか」「どうなったか」―医療の質を測る3つのものさし

第108回医師国家試験 F問題 第13問

国試問題にチャレンジ

第108回 F問題 第13問

病院の質を測定する臨床機能評価指標〈クリニカルインディケーター〉は,①ストラクチャー(病院が有する基盤),②プロセス(提供される医療の内容),③アウトカム(提供された医療の成果)に分類される。  アウトカムに該当する指標はどれか。

  1. a.専門医数
  2. b.患者満足度
  3. c.年間総手術件数
  4. d.服薬指導実施率
  5. e.最寄駅からの距離

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、病院の医療の質をどう数値で測るか、という問題だ。問題文にあるストラクチャー・プロセス・アウトカムの3分類は、ドナベディアンという米国の医療研究者が提唱した、医療の質を評価する古典的な枠組みなんだ。ポイントは、それぞれの指標が「医療の前にあるもの」「医療そのもの」「医療の後に起きたこと」のどれを測っているかを見分けることだよ。
医学生医学生
公衆衛生の講義で名前だけは聞きました。でも、正直どれがどれだか曖昧なままです。
ドクタードクター
大丈夫、時間の流れで考えると整理しやすい。ストラクチャーは医療を行う前から存在する土台で、人員、設備、病床数、立地など。プロセスは実際に何をどれだけ行ったかで、手術件数や検査・投薬の実施率など。アウトカムは医療を受けた結果として患者に何が起きたかで、死亡率、合併症発生率、再入院率、QOLなどだ。
医学生医学生
そうすると、手術件数は結果っぽく見えますけど、プロセスなんですね。たくさん手術している病院のほうが成績がいい、という話も聞くので、つい結果側に入れたくなります。
ドクタードクター
そこは多くの人が引っかかるところだね。手術件数は「どれだけ医療行為を提供したか」という量の指標で、行った医療の中身を表すからプロセスになる。件数が多い施設で成績がよい傾向があるとしても、それは件数とアウトカムの関連であって、件数そのものは結果ではないんだ。結果として扱うなら、術後死亡率や合併症率を見ることになる。
医学生医学生
服薬指導実施率も同じ考え方でしょうか。病棟実習で薬剤師さんがベッドサイドで説明しているのを見ました。
ドクタードクター
その通り。対象患者のうち何割に服薬指導をしたか、という割合だから、提供された医療の内容を示すプロセス指標だ。もし服薬指導の結果として、患者が指示どおり薬を飲めるようになったか、つまりアドヒアランスが改善したかを測るなら、それはアウトカム側の評価になる。
医学生医学生
「実施率」はプロセス、「その結果どうなったか」はアウトカム、という区別ですね。では専門医数はストラクチャーで、最寄駅からの距離も……立地だからストラクチャーですか。
ドクタードクター
正解。専門医数は病院が備えている人的資源で、医療を始める前からある基盤だ。専門医が多いからといって、実際に良い医療が行われ良い結果が出ているかまでは分からない。最寄駅からの距離は受診のしやすさ、つまりアクセスを左右する病院側の条件で、これもストラクチャーになる。
医学生医学生
残った患者満足度がアウトカムですね。ただ、満足度って主観的なので、死亡率みたいな「結果」と同列に扱っていいのか少し疑問です。
ドクタードクター
良い疑問だね。アウトカムには死亡率や合併症率のような臨床的アウトカムだけでなく、患者自身が感じたことを評価する患者報告アウトカムも含まれる。患者満足度やQOLがその代表で、医療を受けた結果として患者が抱いた評価だから、アウトカムに分類されるんだ。医療は最終的に患者のためのものだから、患者の視点の結果も重要な成果だと考えるわけだね。
医学生医学生
OSCEの医療面接で患者さんへの説明や配慮を評価されたのも、そういう患者の視点を重視する流れとつながっている気がします。
ドクタードクター
そう言えるね。では少し発展的な話をしよう。アウトカムは最終的に知りたい成果そのものだけど、弱点もある。重症患者を多く受け入れる病院ほど死亡率は高くなりやすいから、単純に病院同士を比べると不公平になる。だから比較するときは、患者の重症度や背景を考慮したリスク調整が必要なんだ。
医学生医学生
なるほど、死亡率が高い病院が悪い病院とは限らないんですね。だとすると、プロセスやストラクチャーを測る意味はどこにあるんでしょうか。
ドクタードクター
プロセス指標は、ガイドラインに沿った治療ができているかなど、具体的に何を改善すればよいか分かりやすいのが長所だ。たとえば急性心筋梗塞の患者に来院後早くアスピリンを投与できた割合、周術期の予防的抗菌薬投与率などがある。ストラクチャー指標は把握しやすい反面、医療の質との関係は間接的だ。3つを組み合わせて見るのが大切なんだ。
医学生医学生
良い構造が良い過程を生み、良い過程が良い結果につながる、という連鎖で捉えるわけですね。
ドクタードクター
まさにそれがドナベディアンモデルの考え方だ。日本でも日本医療機能評価機構による病院機能評価や、各病院がクリニカルインディケーターを公表する取り組みがあって、PDCAサイクルで医療の質の改善に使われている。研修医になると、院内の転倒・転落や褥瘡の発生率といった指標の報告を目にする機会もあるはずだよ。それらは「起きた結果」だからアウトカムだね。
医学生医学生
これからは指標を見たら、医療の前・最中・後のどこを測っているかを考えるようにします。

まとめ

医療の質の評価には、ドナベディアンが提唱したストラクチャー(基盤)・プロセス(提供した医療)・アウトカム(医療の結果)の3分類が用いられます。専門医数や立地などはストラクチャー、手術件数や服薬指導実施率のような「件数・実施率」はプロセス、死亡率・合併症率・再入院率や患者満足度・QOLのように医療の結果として患者に起きたことはアウトカムに当たります。患者満足度は主観的な評価ですが、患者報告アウトカムとしてアウトカムに含まれます。アウトカムは病院間比較にリスク調整が必要であり、プロセスは改善の手がかりにしやすいなど、各指標には長所と短所があるため組み合わせて評価します。この枠組みを理解しておくと、病院機能評価やクリニカルインディケーターを通じた医療の質改善の取り組みを正しく読み解けるようになります。

解答・解説

正解はbです

テーマ

医療の質を評価する枠組みとして、米国の医療研究者ドナベディアン(Avedis Donabedian)が提唱した「ストラクチャー・プロセス・アウトカム」の3分類がある。病院の臨床機能評価指標(クリニカルインディケーター:医療の質を数値で示す指標)もこの枠組みで整理される。

各分類の見分け方

・ストラクチャー(構造):医療を提供する「土台」。人員(医師数・専門医数・看護師配置)、施設・設備(病床数、CT・MRIの台数)、立地・アクセス、組織体制など。医療を行う前から存在するもの。 ・プロセス(過程):実際に「何をどれだけ行ったか」。手術件数、検査・投薬の実施率、服薬指導実施率、ガイドラインに沿った治療の実施率など。 ・アウトカム(結果):医療を受けた「結果として患者に何が起きたか」。死亡率、合併症発生率、再入院率、生活の質(QOL)、患者満足度など。

考え方

各選択肢を「医療を行うための基盤か」「行った医療の内容・量か」「医療を受けた結果か」の順に当てはめればよい。患者満足度は、医療を受けた患者がその結果として抱く評価であり、アウトカムに分類される。

選択肢考察

  1. ×a.  専門医数

    誤り。専門医の人数は、病院がどのような人的資源を備えているかを示すもので、医療提供の前提となる基盤、すなわちストラクチャー指標である。専門医が多くても、実際に良い医療が行われ良い結果が出ているかは、この数だけではわからない。

  2. ○b.  患者満足度

    正しい。患者満足度は、医療を受けた患者が結果として感じた評価であり、アウトカム指標に当たる。アウトカムには死亡率や合併症率などの臨床的アウトカムのほか、患者満足度やQOLのような患者の主観に基づくアウトカム(患者報告アウトカム)も含まれる。

  3. ×c.  年間総手術件数

    誤り。手術件数は、実際に提供された医療行為の量を示すもので、プロセス指標に分類される。手術の成否や術後の経過(術後死亡率、合併症率など)であればアウトカムとなるが、件数そのものは結果ではない。

  4. ×d.  服薬指導実施率

    誤り。服薬指導を対象患者のうちどれだけに実施したかという割合で、提供された医療の内容を示すプロセス指標である。服薬指導の結果として服薬アドヒアランス(患者が指示どおり服薬する程度)が改善したかどうかを測れば、それはアウトカム側の評価となる。

  5. ×e.  最寄駅からの距離

    誤り。病院の立地・交通の便は、医療を受ける際のアクセスを左右する病院側の条件であり、ストラクチャーに分類される。医療行為の内容でも、その結果でもない。

ドナベディアンモデル

1960年代にドナベディアンが示した医療の質評価の枠組みで、「良い構造(ストラクチャー)が良い過程(プロセス)を生み、良い過程が良い結果(アウトカム)をもたらす」という考え方に基づく。

指標の例

・ストラクチャー:医師数・専門医数、看護師配置(例:7対1看護)、病床数、医療機器の保有、電子カルテ導入、感染対策チームの有無、立地・駐車場など。 ・プロセス:手術件数、急性心筋梗塞患者への来院後早期のアスピリン投与率、周術期の予防的抗菌薬投与率、服薬指導実施率、糖尿病患者のHbA1c測定率など。 ・アウトカム:院内死亡率、術後合併症発生率、院内感染発生率、転倒・転落発生率、褥瘡発生率、予定外再入院率、患者満足度、QOL、在院日数や医療費などの経済的アウトカムなど。

各指標の特徴

アウトカムは最終的に知りたい医療の成果そのものであるが、患者の重症度や背景の違いの影響を受けるため、病院間で比較するにはリスク調整が必要になる。プロセス指標は改善の手がかりにしやすく、ストラクチャー指標は把握しやすいが、医療の質との関係は間接的である。

関連事項

日本では、日本医療機能評価機構による病院機能評価や、各病院・病院団体によるクリニカルインディケーターの公表が行われており、医療の質の改善(PDCAサイクル)に活用されている。

POINT

・医療の質評価はドナベディアンの3分類:ストラクチャー(基盤)・プロセス(行った医療)・アウトカム(結果)。 ・ストラクチャー:専門医数、病床数、設備、立地など。 ・プロセス:手術件数、各種の実施率(服薬指導実施率など)。 ・アウトカム:死亡率、合併症率、再入院率、患者満足度、QOLなど。 ・「件数・実施率」はプロセス、「〜が起きた率・満足度」はアウトカムと見分ける。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。