StudyMed医師国家試験

6つの数値に惑わされるな―心胸郭比は「正中線から測る」で解ける

第108回医師国家試験 E問題 第69問

国試問題にチャレンジ

第108回 E問題 第69問

胸部エックス線写真を別に示す。  与えられた数値から心胸郭比を求めよ。  A:245 mm,B:200 mm,C:40 mm,D:87 mm,E:157 mm,F:145 mm  ただし,小数点以下の数値が得られた場合には,小数点以下第1位を四捨五入すること。 解答:①② %

第108回 E問題 第69問の問題画像

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は胸部エックス線写真から心胸郭比を計算する問題だ。数値が6つ与えられているけれど、全部を使うわけではない。どの線が何の距離を表しているかを見極めるのがポイントだよ。まず、心胸郭比の定義を言えるかな。
医学生医学生
心臓の横幅を胸の横幅で割って、100をかけたものです。
ドクタードクター
その通り。正確には、立位・吸気位・後前方向、つまりPA撮影の正面像で、心陰影の最大横径を胸郭の最大内径で割って百分率にしたものだ。英語ではcardiothoracic ratio、略してCTRと呼ぶ。心拡大をもっとも簡便に評価できる指標なんだ。
医学生医学生
心陰影の最大横径なら、心臓の右端から左端までを一直線で測ればいいんですよね。
ドクタードクター
そこがよくある誤解だね。心陰影の右縁で一番張り出しているのは右第2弓の右心房、左縁で一番張り出しているのは左第4弓の左心室で、この2点は高さが違うことが多い。だから正中線を1本引いて、そこから右縁まで、左縁までの水平距離を別々に測って足し合わせるんだ。
医学生医学生
なるほど、斜めに測るのではなく、左右それぞれの最大距離の和なんですね。胸郭のほうも同じ考え方ですか。
ドクタードクター
そう。胸郭は横隔膜に近い、最も広い高さで、正中線から左右の肋骨の内縁までを測って足す。外縁ではなく内縁という点も注意だ。この図では、Cが正中線から心右縁、Dが正中線から心左縁、Eが正中線から右胸郭内縁、Fが正中線から左胸郭内縁にあたる。
医学生医学生
じゃあ、AとBは使わないんですか。一番大きな数字なので、てっきり胸郭の幅かと思いました。
ドクタードクター
良いところに引っかかってくれた。AとBは心胸郭比の計算には使わない数値なんだ。国試ではこういう不要な値を混ぜて出題されることがあるから、数字の大きさではなく、図の上でその線がどこからどこまでを測っているかを必ず確かめよう。
医学生医学生
では計算してみます。心陰影の横径は40足す87で127ミリ、胸郭の内径は157足す145で302ミリです。
ドクタードクター
いいね。続けて。
医学生医学生
127割る302に100をかけて、約42.05パーセント。小数点以下第1位を四捨五入して42パーセントです。
ドクタードクター
正解だ。成人の正常上限はおおむね50パーセントだから、42パーセントは正常範囲で、心拡大はないと判断できる。
医学生医学生
循環器内科の臨床実習で、指導医の先生が毎朝ポータブル写真で心胸郭比をチェックしていました。あれも同じ基準でいいんでしょうか。
ドクタードクター
そこは臨床で大事な注意点だ。ベッドサイドのポータブル撮影は多くが臥位の前後方向、つまりAP撮影になる。心臓が検出器から遠くなって拡大して写るから、心胸郭比は過大評価されやすい。呼気位で撮ると横隔膜が上がって心臓が横に寝るので、これも大きく見える。肥満や妊娠、腹水で横隔膜が挙上していても同じだ。
医学生医学生
だから同じ条件の写真どうしで経過を比べるのが大切なんですね。
ドクタードクター
その通り。数値だけで判断せず、撮影条件を確認する癖をつけてほしい。それから、小児では基準が違う点も押さえておこう。新生児や乳幼児は心臓が相対的に大きく、胸腺の陰影も重なるから、60パーセント程度までは正常とされる。
医学生医学生
心陰影が大きくなる病気としては、心不全や拡張型心筋症、弁膜症などでしょうか。
ドクタードクター
そうだね。大動脈弁閉鎖不全症や僧帽弁閉鎖不全症による心室拡大、心房中隔欠損症のような右心系の拡大もある。心嚢液がたまると、心陰影が左右対称に広がって水瓶のような形になるのも特徴的だ。心胸郭比は単なる計算問題ではなく、こうした病態を拾い上げる入り口になる。
医学生医学生
OSCEの前に胸部写真の読影手順を練習しましたが、心陰影の弓の名前と心胸郭比をセットで確認する意味がよくわかりました。

まとめ

心胸郭比は、胸部エックス線正面像(立位・吸気位・PA撮影)で、心陰影の最大横径を胸郭の最大内径で割って百分率で表す、心拡大評価の基本指標です。心陰影の右縁(右心房)と左縁(左心室)は高さが異なるため、正中線から左右それぞれまでの距離の和で横径を求め、胸郭も正中線から左右の肋骨内縁までの距離の和で求めます。本問では(40+87)÷(157+145)×100≒42.05から42%となり、成人の正常上限50%以下で心拡大はありません。AP撮影や呼気位、横隔膜挙上では過大評価され、小児では60%程度まで正常とされるため、撮影条件や年齢を踏まえ同条件で経時的に比較することが重要です。不要な数値に惑わされず各計測線の意味を読み取る力は、心不全や弁膜症、心嚢液貯留などを見抜く画像診断の基礎となります。

解答・解説

正解は42 %です

心胸郭比とは

心胸郭比(cardiothoracic ratio:CTR)は、胸部エックス線正面像(立位・吸気位・後前方向〈PA〉撮影)で、心陰影の最大横径を胸郭の最大内径で割って百分率で表したものである。心拡大を簡便に評価する指標として用いられる。

図中の各計測値の意味

・C:正中線から心陰影右縁(右第2弓=右心房)までの最大距離 ・D:正中線から心陰影左縁(左第4弓=左心室)までの最大距離 ・E:正中線から右側胸郭内縁までの距離(横隔膜近くの胸郭が最も広い高さ) ・F:正中線から左側胸郭内縁までの距離(同じ高さ) ・A、B:CTRの算出には用いない計測値である。心胸郭比に必要なのは「正中線から心陰影の左右両縁まで」と「正中線から胸郭の左右両内縁まで」の水平距離だけであり、それ以外の長さは計算に入れない(問題にはこうした不要な数値も混ぜて示されることがあるため、どの線がどの距離を示すかを図で確かめることが大切である) 心陰影の最大横径は、右縁と左縁の最も張り出した点がそれぞれ別の高さにあるため、正中線からの距離を左右別々に測って足し合わせる(C+D)。胸郭の最大内径も同様に、正中線から左右の肋骨内縁までを足したもの(E+F)となる。

計算

CTR =(C+D)÷(E+F)× 100   =(40+87)÷(157+145)× 100   = 127 ÷ 302 × 100   ≒ 42.05(%) 小数点以下第1位を四捨五入して、答えは42%である。 成人の正常上限はおおむね50%であり、本例のCTR 42%は正常範囲内で、心拡大はないと判断される。

CTRの基準と解釈

・成人:50%以下を正常とし、50%を超えれば心拡大を疑う。 ・新生児・乳幼児:心臓が相対的に大きく胸腺陰影も重なるため、60%程度まで正常とされる。

CTRに影響する撮影条件

・前後方向(AP)撮影(臥位のポータブル撮影など):心臓がフィルム(検出器)から遠くなり拡大投影されるため、CTRが過大評価される。 ・呼気位での撮影:横隔膜が挙上し心臓が横に寝るため、CTRは大きくなる。 ・肥満、妊娠、腹水など横隔膜挙上を来す状態でも見かけ上大きくなる。 ・漏斗胸などの胸郭変形でも心陰影が偏位・拡大して見えることがある。 このため、CTRは同じ条件で撮影した画像どうしで経時的に比較することが重要である。

心陰影を拡大させる主な病態

・心不全、拡張型心筋症、弁膜症(大動脈弁閉鎖不全症、僧帽弁閉鎖不全症など)による心室拡大 ・心嚢液貯留(心膜液貯留):心陰影が左右対称に拡大し「水瓶状(フラスコ状)」を呈する ・心房中隔欠損症などの先天性心疾患による右心系の拡大

胸部エックス線正面像の心陰影の区分

・右第1弓:上大静脈(上行大動脈) ・右第2弓:右心房 ・左第1弓:大動脈弓 ・左第2弓:肺動脈 ・左第3弓:左心耳 ・左第4弓:左心室

POINT

・CTR=心陰影最大横径÷胸郭最大内径×100(%) ・心陰影最大横径は、正中線から右縁(C)と左縁(D)までの距離の和で求める。 ・胸郭最大内径は、正中線から左右の肋骨内縁まで(E、F)の和で求める。A・BはCTRの計算には使わない。 ・本問:(40+87)÷(157+145)×100≒42.05 → 42% ・成人の正常は50%以下。AP撮影や呼気位ではCTRが過大評価される。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。