StudyMed医師国家試験

入院患者のうち「命が危ない」のは何人に1人?―患者調査で見る入院医療の実像

第108回医師国家試験 E問題 第5問

国試問題にチャレンジ

第108回 E問題 第5問

 厚生労働省の患者調査(平成20年)による重症度の状況にみた推計入院患者の構成割合において,「生命の危険がある」患者の割合はどれか。

  1. a.約5%
  2. b.約15%
  3. c.約25%
  4. d.約35%
  5. e.約45%

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は公衆衛生の統計問題だ。厚生労働省の患者調査で、入院患者を重症度で分けたとき「生命の危険がある」人がどのくらいいるか、を問うている。数値を丸暗記していなくても、病院の実態をイメージできれば解ける問題なんだ。まず、患者調査がどんな調査か覚えているかな。
医学生医学生
公衆衛生の講義で習いました。3年ごとに行われる厚生労働省の調査で、受療率を出すものですよね。
ドクタードクター
その通り。統計法に基づく基幹統計で、全国から抽出した病院・診療所を対象に、10月中旬のある1日に受診した入院・外来患者を調べる。推計患者数や受療率、平均在院日数などが代表的な指標だ。その中に入院患者の「重症度等の状況」という項目があって、5つの区分に分けて集計されている。
医学生医学生
「生命の危険がある」以外には、どんな区分があるんですか。
ドクタードクター
「生命の危険は少ないが入院治療を要する」「受け入れ条件が整えば退院可能」「検査入院」「その他」だ。では直感で答えてみよう。入院患者のうち、生命の危険がある人はどのくらいだと思う?
医学生医学生
入院しているくらいだから重い人が多いはずで……3割くらいかなと思ってしまいました。
ドクタードクター
そう考える人は意外と多い。でも臨床実習で病棟を回ったときを思い出してほしい。受け持ち患者さんはどんな人たちだった?
医学生医学生
言われてみると、術後の経過観察やリハビリ待ち、慢性疾患の治療調整の方が多くて、本当に危ない状態の方はICUにいる一部だけでした。
ドクタードクター
まさにそこがポイント。ICUのような重症患者を扱う病床は、病院全体の病床のごく一部にすぎない。平成20年の調査では「生命の危険がある」は5.7%で、選択肢の中では約5%が正解になる。
医学生医学生
約15%や約25%は多すぎるということですね。約15%は何かの数字と紛らわしい気がします。
ドクタードクター
鋭いね。約15%に近いのは「受け入れ条件が整えば退院可能」の15.5%なんだ。これは生命の危険がある患者の割合ではない。約25%なら入院患者の4人に1人が重篤ということになり、集中治療の病床がずっと多く必要になるはずだ。約35%や約45%はさらに実態からかけ離れている。最も多いのは「生命の危険は少ないが入院治療を要する」で、63.5%と約3分の2を占める。
医学生医学生
生命の危険がある人と、その次の区分を足しても約7割ですから、危険がある人だけで45%はあり得ませんね。
ドクタードクター
そういう全体の構成から逆算する考え方も有効だよ。ちなみにこの問題は特定年度の数値を問うもので、今の国試対策として細かい数字を覚える必要性は高くない。大事なのは全体像のほうだ。
医学生医学生
全体像というと、どこを押さえればいいでしょうか。
ドクタードクター
注目してほしいのは「受け入れ条件が整えば退院可能」が約15%もあって、生命の危険がある患者の約3倍に上ることだ。医学的には入院の必要がないのに、家族の介護力や在宅・施設サービスが整わず入院を続けている、いわゆる社会的入院と関係が深い。
医学生医学生
実習で、退院できる状態なのに施設の空き待ちで入院が延びている患者さんがいました。MSWの方が調整に苦労していました。
ドクタードクター
まさにその例だね。こうした入院を減らして医療資源を効率よく使うために、地域包括ケアシステムの構築、在宅医療の推進、医療と介護の連携が進められている。医師も退院支援の視点を早い段階から持つことが求められるんだ。
医学生医学生
似た統計との区別も混乱しやすいです。医療施設調査や病院報告とはどう違うんですか。
ドクタードクター
医療施設調査は施設数や病床数など施設側の状況を調べるもの、病院報告は病院の患者数や病床利用率を毎月集計するもの、国民生活基礎調査は世帯を対象に有訴者率や通院者率を調べるものだ。患者調査は「患者側」を1日断面で捉える調査、と整理しておくと覚えやすい。受療率は入院・外来とも高齢になるほど高く、入院の傷病別では精神及び行動の障害、循環器系の疾患、新生物が上位を占めることも押さえておこう。

まとめ

厚生労働省が3年ごとに行う患者調査では、入院患者の重症度等の状況を5区分で集計しており、平成20年の「生命の危険がある」患者は5.7%と、入院患者のごく一部にすぎません。最も多いのは「生命の危険は少ないが入院治療を要する」患者(約3分の2)で、ICUなど重症病床が全病床のわずかな割合であることとも合致します。一方、「受け入れ条件が整えば退院可能」な患者が約15%存在し、社会的入院の問題として地域包括ケアや在宅医療推進の背景となっています。特定年度の数値を暗記するよりも、医療現場の実態から構成比を推測できる全体像の理解と、医療施設調査・病院報告・国民生活基礎調査など類似統計との区別を押さえることが、公衆衛生の学習では重要です。

解答・解説

正解はaです

テーマ

患者調査は、厚生労働省が3年ごとに実施する基幹統計調査である。全国の病院・診療所から抽出した施設を対象に、10月中旬のある1日に受診した入院・外来患者の傷病名、年齢、受療の状況などを調べ、推計患者数や受療率を求める。調査項目の一つに入院患者の「重症度等の状況」があり、次の5区分に分けて集計される。 ・生命の危険がある ・生命の危険は少ないが入院治療を要する ・受け入れ条件が整えば退院可能 ・検査入院 ・その他

平成20年(2008年)の結果

・生命の危険がある: 5.7% ・生命の危険は少ないが入院治療を要する: 63.5% ・受け入れ条件が整えば退院可能: 15.5% ・検査入院: 1.2% ・その他: 14.0%

正解を導く考え方

数値を覚えていなくても、医療の実態から推測できる。入院患者の多くは、手術後の管理、慢性疾患の治療、リハビリテーション、長期療養などであり、直ちに生命の危険がある重症患者は一部にすぎない。集中治療室(ICU)などの重症患者を扱う病床が、病院の全病床のごく一部しかないこととも合う。したがって「生命の危険がある」患者は1割に満たない約5%が妥当である。

本問の位置づけ

本問は特定年度の統計数値を問うものであり、現在の国家試験対策としての有用性は低いとされる設問である。数値そのものよりも、「入院患者の大部分は生命の危険がない」「退院可能なのに入院を続けている患者が一定数いる」という全体像を理解しておけばよい。

選択肢考察

  1. ○a.  約5%

    平成20年の患者調査で、推計入院患者のうち「生命の危険がある」とされた患者は5.7%であり、約5%が最も近い。入院患者の大部分は「生命の危険は少ないが入院治療を要する」患者であり、重篤な患者はごく一部である。ICUなど重症患者を扱う病床が全病床のわずかな割合にすぎないことからも推測できる。

  2. ×b.  約15%

    実際の割合5.7%の約3倍にあたり、多すぎる。なお、約15%に近い区分は「受け入れ条件が整えば退院可能」(15.5%)であり、これは生命の危険がある患者の割合ではない。

  3. ×c.  約25%

    入院患者の4人に1人が生命の危険がある状態ということになり、実態(5.7%)と大きく異なる。これほど重症患者が多ければ、集中治療の病床がはるかに多く必要になるはずである。

  4. ×d.  約35%

    実際の割合5.7%を大きく上回る。入院患者の約3分の2(63.5%)は「生命の危険は少ないが入院治療を要する」患者であり、生命の危険がある患者は少数である。

  5. ×e.  約45%

    入院患者の半数近くが生命の危険があるという数値であり、実態とかけ離れている。「生命の危険がある」と「生命の危険は少ないが入院治療を要する」を合わせても69.2%であり、生命の危険がある患者だけで45%に達することはない。

患者調査の概要

・実施主体: 厚生労働省。統計法に基づく基幹統計調査。 ・周期: 3年ごと(10月に実施)。 ・対象: 層化無作為抽出した病院・診療所(歯科を含む)を利用した患者。 ・主な指標: 推計患者数、受療率(人口10万対の推計患者数)、平均在院日数、退院患者の状況、重症度等の状況など。 ・受療率は入院・外来とも高齢になるほど高い。入院の傷病別では精神及び行動の障害、循環器系の疾患(脳血管疾患など)、新生物が上位を占める。

「受け入れ条件が整えば退院可能」な患者

医学的には入院を続ける必要がないにもかかわらず、家族の介護力や在宅・施設サービスが整わないなどの理由で入院を続けている患者であり、いわゆる社会的入院と関係が深い。平成20年は15.5%と、生命の危険がある患者の約3倍に上った。こうした入院を減らし、医療資源を効率的に使うために、地域包括ケアシステムの構築、在宅医療の推進、医療と介護の連携などが進められている。

類似する統計との区別

・医療施設調査: 医療施設の数や病床数など施設側の状況を調べる(静態調査は3年ごと)。 ・病院報告: 病院の患者数や病床利用率などを毎月集計する。 ・国民生活基礎調査: 世帯を対象に有訴者率・通院者率などを調べる(大規模調査は3年ごと)。

POINT

・患者調査(3年ごと、厚生労働省)の重症度等の状況で、「生命の危険がある」入院患者は約5%(平成20年は5.7%)。 ・最も多いのは「生命の危険は少ないが入院治療を要する」(約6割強)。 ・「受け入れ条件が整えば退院可能」が約15%あり、社会的入院の問題と関連する。 ・本問は現在の国試対策としての有用性は低く、細かい数値より全体像を押さえればよい。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。