StudyMed医師国家試験

時計を書き出せば答えが見える―経産婦の「2時間50分」が示す分娩第2期遷延

第108回医師国家試験 E問題 第43問

国試問題にチャレンジ

第108回 E問題 第43問

30歳の1回経妊1回経産婦。妊娠41週5日。午前6時に陣痛発来し,午前8時に入院した。妊娠経過は順調であった。入院直後の内診所見では,子宮口は3 cm開大,卵膜を触知し,児頭下降度SP-1 cmで,同時に行った胎児心拍数陣痛図では異常を認めなかった。午前10時に自然破水。午後7時に子宮口全開大し,午後9時50分に3,805 gの男児を経腟分娩した。羊水混濁は認めない。Apgarスコアは8点(1分),8点(5分)であった。午後10時10分に胎盤が自然娩出し,出血量は500 mLであった。  この分娩に関して正しいのはどれか。

  1. a.過期産である。
  2. b.前期破水である。
  3. c.第2期遷延である。
  4. d.巨大児である。
  5. e.新生児仮死である。

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は分娩経過の問題だ。妊娠週数、破水のタイミング、出生体重、Apgarスコア、そして分娩各期の所要時間と、分娩にまつわる定義を一つずつ当てはめていく力が試されている。コツは、時刻をメモに書き出して各期の長さを計算すること。まず分娩の3つの期は言えるかな。
医学生医学生
第1期が陣痛発来から子宮口全開大まで、第2期が全開大から児娩出まで、第3期が児娩出から胎盤娩出まで、ですよね。
ドクタードクター
その通り。それぞれ開口期、娩出期、後産期とも呼ぶ。では今回の各期の長さを計算してみよう。
医学生医学生
第1期は朝6時から夜7時までで13時間、第2期は夜7時から9時50分までで2時間50分、第3期は20分です。第2期が長い気がしますが、初産婦の目安が2時間だったので、少し超えたくらいでしょうか。
ドクタードクター
そこが落とし穴だね。この方は経産婦なんだ。第2期の目安は初産婦でおよそ2時間、経産婦でおよそ1時間。経産婦は一度産道が広がった経験があるから、娩出がずっと速く進むのが普通なんだ。
医学生医学生
経産婦の基準で考えると、1時間の目安に対して2時間50分なので、大幅に超えていますね。だから第2期遷延が正しい、と。
ドクタードクター
そう。3,805 gとやや大きめの児だったことも、娩出に時間がかかった一因と考えられる。では、ほかの選択肢も定義で確認しよう。まず41週5日という週数はどうかな。
医学生医学生
予定日をかなり過ぎているので過期産かと一瞬思いましたが……。
ドクタードクター
産婦人科の講義で習った区分を思い出してみよう。正期産は37週0日から41週6日まで、過期産は42週0日以降だ。41週5日はぎりぎりだけど正期産に含まれる。ちなみに22週0日から36週6日が早産、22週未満は流産だよ。
医学生医学生
破水については、陣痛が始まってから4時間後に破水しているので、前期破水ではないですね。
ドクタードクター
その通り。前期破水は陣痛発来前の破水。陣痛開始後で子宮口全開大前の破水は早期破水と呼ぶ。全開大の前後なら適時破水、全開大後も破水しないものは遅滞破水だ。「前期」と「早期」は混同しやすいから、陣痛の前か後かで区別しよう。
医学生医学生
出生体重は4,000 g未満なので、巨大児ではないですね。
ドクタードクター
正解。巨大児は在胎週数に関係なく出生体重4,000 g以上、4,500 g以上を超巨大児とする。3,805 gは正出生体重児の範囲だ。最後にApgarスコアはどうだろう。
医学生医学生
OSCE前に覚えた5項目は心拍数、呼吸、筋緊張、反射、皮膚色で、各0〜2点でした。8点なら正常ですよね。
ドクタードクター
よく覚えているね。一般に8〜10点が正常、4〜7点が軽症仮死、0〜3点が重症仮死とされる。1分値・5分値とも8点で羊水混濁もないから、新生児仮死ではない。
医学生医学生
出血量の500 mLは多くないんですか。産婦人科の実習で、分娩後の出血をすごく気にしていたのが印象的でした。
ドクタードクター
経腟分娩で500 mL程度は許容範囲とされている。わが国では単胎経腟分娩で800 mLを超えるものに注意すべきとされているよ。ただ、第2期遷延や大きめの児は弛緩出血のリスク因子にもなるから、胎盤娩出後も子宮収縮と出血量の観察は欠かせない。
医学生医学生
総分娩時間も16時間ちょっとあって、経産婦としては長いですね。
ドクタードクター
鋭いね。総分娩時間が初産婦で30時間以上、経産婦で15時間以上を分娩遷延とする定義もあって、本例はこれにも当てはまる。なお近年は、硬膜外麻酔の有無や母児の状態を考慮して第2期の許容時間を長めに見る考え方もあるけれど、試験では初産婦2時間・経産婦1時間の目安で判断すれば十分だ。臨床では時間だけでなく、胎児心拍数陣痛図で胎児の状態を確認しながら、吸引分娩や鉗子分娩などの介入を判断していくことになる。
医学生医学生
時刻を書き出して各期を計算し、初産か経産かで基準を切り替える、という手順を守れば迷わないですね。
ドクタードクター
その通り。分娩経過の問題は定義の当てはめ問題でもある。週数、破水、体重、Apgar、所要時間を数字とセットで覚えておけば、確実に得点できるよ。

まとめ

分娩第2期は子宮口全開大から児娩出までで、目安は初産婦で約2時間、経産婦で約1時間とされ、これを超えると分娩第2期遷延となります。本例は経産婦で第2期に2時間50分を要しており、第2期遷延に該当します。そのほか、正期産は37週0日〜41週6日(過期産は42週0日以降)、前期破水は陣痛発来前の破水(陣痛開始後〜全開大前は早期破水)、巨大児は4,000 g以上、Apgarスコア8〜10点は正常という定義で各選択肢を判定できます。分娩経過の問題では時刻を書き出して各期の所要時間を計算し、初産婦か経産婦かで基準を使い分けることが大切です。これらの定義は、分娩進行の異常や介入のタイミングを判断する臨床の基本にもなります。

解答・解説

正解はcです

経過の整理

30歳の経産婦(1回経妊1回経産)、妊娠41週5日。経過を時刻順に並べると次のようになる。 ・午前6時:陣痛発来(分娩開始) ・午前8時:入院。子宮口3 cm開大、卵膜触知(未破水)、児頭下降度SP−1 cm(坐骨棘を結ぶ線より1 cm上)。胎児心拍数陣痛図は異常なし。 ・午前10時:自然破水(陣痛開始後、子宮口全開大前) ・午後7時:子宮口全開大 ・午後9時50分:児娩出(3,805 gの男児、羊水混濁なし、Apgarスコア1分8点・5分8点) ・午後10時10分:胎盤娩出、出血量500 mL

分娩各期の所要時間

・分娩第1期(陣痛発来〜子宮口全開大):午前6時〜午後7時で13時間 ・分娩第2期(子宮口全開大〜児娩出):午後7時〜午後9時50分で2時間50分 ・分娩第3期(児娩出〜胎盤娩出):午後9時50分〜午後10時10分で20分 ・総分娩時間:16時間10分

考え方

本問は、分娩に関する定義(妊娠週数による分類、破水の時期による分類、出生体重の分類、Apgarスコアの評価、分娩所要時間の基準)を一つずつ当てはめていく問題である。 分娩第2期の所要時間の目安は、初産婦で約2時間以内、経産婦で約1時間以内とされ、これを超えるものを分娩第2期遷延とする。本例は経産婦で第2期が2時間50分かかっており、基準を大きく超えている。したがって「第2期遷延である」が正しい。 他の選択肢は、妊娠週数(41週5日は正期産)、破水時期(陣痛開始後・全開大前なので早期破水)、出生体重(4,000 g未満)、Apgarスコア(8点で正常)をそれぞれ定義に照らせば否定できる。

選択肢考察

  1. ×a.  過期産である。

    過期産は妊娠42週0日以降の分娩をいう。正期産は37週0日〜41週6日、早産は22週0日〜36週6日である。本例は41週5日での分娩であり、予定日を過ぎてはいるが正期産に含まれる。

  2. ×b.  前期破水である。

    前期破水は陣痛発来前(分娩開始前)に卵膜が破れることをいう。本例は午前6時に陣痛が始まり、午前10時に破水しているので前期破水ではない。陣痛開始後で子宮口全開大前の破水は早期破水と呼ぶ。なお、子宮口全開大の前後に起こる破水が適時破水、児娩出まで破水しないものが遅滞破水である。

  3. ○c.  第2期遷延である。

    分娩第2期は子宮口全開大から児娩出までの期間で、所要時間の目安は初産婦で約2時間、経産婦で約1時間とされる。本例は経産婦であり、子宮口全開大(午後7時)から児娩出(午後9時50分)まで2時間50分を要しており、基準を大きく超えるため分娩第2期遷延に当たる。3,805 gとやや大きめの児であることも、娩出に時間がかかった一因と考えられる。

  4. ×d.  巨大児である。

    巨大児は在胎週数に関係なく出生体重4,000 g以上の児をいう(4,500 g以上を超巨大児とする)。本例の3,805 gは2,500 g以上4,000 g未満の正出生体重児の範囲であり、巨大児ではない。

  5. ×e.  新生児仮死である。

    Apgarスコアは心拍数・呼吸・筋緊張・反射(刺激への反応)・皮膚色の5項目を各0〜2点で評価する(合計0〜10点)。一般に8〜10点が正常、4〜7点が軽症仮死、0〜3点が重症仮死とされる。本例は1分・5分ともに8点で正常範囲であり、新生児仮死ではない。羊水混濁もない。

分娩の3期

・分娩第1期(開口期):陣痛発来(陣痛が約10分以内の間隔で規則的になった時点)から子宮口全開大まで。目安は初産婦で10〜12時間、経産婦で5〜6時間程度とされる。 ・分娩第2期(娩出期):子宮口全開大から児娩出まで。目安は初産婦で2時間、経産婦で1時間程度。 ・分娩第3期(後産期):児娩出から胎盤娩出まで。15〜30分程度で、30分を超えても胎盤が娩出されない場合は胎盤遺残などを考え対応する。 ・総分娩時間が初産婦で30時間以上、経産婦で15時間以上のものを分娩遷延とする定義もある(本例の総分娩時間は16時間10分でこれにも該当する)。 ・なお近年は、硬膜外麻酔の有無や母児の状態を考慮して第2期の許容時間をより長く見る考え方も示されているが、国家試験では上記の目安で判断すればよい。

破水の時期による分類

・前期破水:陣痛発来前の破水 ・早期破水:陣痛発来後、子宮口全開大前の破水 ・適時破水:子宮口全開大の前後の破水 ・遅滞破水:全開大後も破水せず、卵膜を被ったまま進行するもの

妊娠期間による分類

・流産:22週未満 ・早産:22週0日〜36週6日 ・正期産:37週0日〜41週6日 ・過期産:42週0日以降

出生体重による分類

・超低出生体重児:1,000 g未満、極低出生体重児:1,500 g未満、低出生体重児:2,500 g未満 ・巨大児:4,000 g以上(4,500 g以上は超巨大児)

Apgarスコアの項目

心拍数(0:なし、1:100/分未満、2:100/分以上)、呼吸(0:なし、1:弱い泣き声・不規則、2:強く泣く)、筋緊張(0:だらり、1:四肢をやや屈曲、2:活発に動かす)、反射(0:反応なし、1:顔をしかめる、2:泣く・咳嗽)、皮膚色(0:全身蒼白またはチアノーゼ、1:体幹ピンク・四肢チアノーゼ、2:全身ピンク)。出生後1分値と5分値を評価する。

分娩時出血

経腟分娩で500 mL程度の出血は許容範囲とされる。分娩時異常出血の目安として、わが国では単胎経腟分娩で800 mL(90パーセンタイル値)を超えるものに注意すべきとされている。

POINT

・分娩第2期(子宮口全開大〜児娩出):初産婦2時間・経産婦1時間を超えれば第2期遷延。 ・分娩経過の問題は、時刻を書き出して第1期・第2期・第3期の所要時間を計算する。 ・正期産は37週0日〜41週6日。42週0日以降が過期産。 ・前期破水は陣痛発来前、早期破水は陣痛発来後〜全開大前の破水。 ・巨大児は4,000 g以上。 ・Apgarスコア8〜10点は正常、4〜7点は軽症仮死、0〜3点は重症仮死。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。