StudyMed医師国家試験

祖父の帯状疱疹から2週間―水痘の皮疹は「時間とともに姿を変える」

第108回医師国家試験 C問題 第18問

国試問題にチャレンジ

第108回 C問題 第18問

2歳の男児。発熱と皮疹とに気付いた母親に連れられて来院した。前日の夜から胸部と腹部とに皮疹が出現し,今朝から38.0℃の発熱がある。同居している祖父が2週前に右頬の帯状疱疹に罹患している。体温38.2℃。直径2~5 mmの紅斑が顔,胸部,腹部および四肢に散在し,一部は水疱を伴っている。  この患児が4日後に再診したときに最も多く見られる皮疹はどれか。

  1. a.丘疹
  2. b.水疱
  3. c.痂皮
  4. d.びらん
  5. e.苔癬化

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、小児の発熱と水疱を伴う皮疹から診断を考え、さらに皮疹がこの先どう変化していくかを予測する問題だ。注目してほしいのは、同居する祖父の帯状疱疹と、そこから発症までの間隔。そして、問われているのが「今」ではなく「4日後」の皮疹だという点だね。
医学生医学生
帯状疱疹のおじいさんから、子どもに帯状疱疹がうつったということでしょうか。
ドクタードクター
惜しい、そこはよくある誤解なんだ。帯状疱疹は、過去の水痘で知覚神経節に潜伏していた水痘・帯状疱疹ウイルスが再活性化したもの。でも水疱の中には感染性のウイルスがいるから、免疫のない子どもがそれに触れると、初感染として起こるのは水痘のほうなんだ。
医学生医学生
なるほど、同じウイルスでも初感染なら水痘、再活性化なら帯状疱疹になるんですね。微生物学の講義でヘルペスウイルス科の潜伏感染を習ったのを思い出しました。
ドクタードクター
その通り。しかも祖父の発症から2週間という間隔は、水痘の潜伏期のおよそ2〜3週間とよく合う。発熱に加えて、体幹を中心に紅斑と水疱が混在して散らばっている所見も水痘らしいね。
医学生医学生
小児科実習で、麻疹や風疹と比べて「水痘は新旧の皮疹が混在する」と教わりました。
ドクタードクター
そこが今回の核心につながる。水痘の個々の皮疹は、紅斑から丘疹、水疱、ときに膿疱を経て、最後は痂皮、つまりかさぶたになる。新しい皮疹は発症からおよそ3〜5日間次々に出てくるから、急性期にはいろいろな段階が同時に見られるんだ。
医学生医学生
4日後の再診というと、皮疹が出てから5〜6日目くらいですね。そのころには新しい皮疹はもう出にくくなっている……?
ドクタードクター
いい推論だ。その時期には皮疹の新生がほぼ止まり、すでにある皮疹は水疱の段階を過ぎて乾いていく。だから最も多く見られるのは痂皮、というのが答えになる。
医学生医学生
丘疹は初期の段階だから、5〜6日目には少ないということですね。水疱も、初診時にはもう出ていたので、4日後には乾いているはずです。
ドクタードクター
そう。水疱は数日で混濁して乾燥し、痂皮へ移る。だから4日後の主役にはならない。では、びらんはどうだろう。
医学生医学生
水疱が破れたらびらんになりますよね。かゆくて掻いてしまう子も多そうですし、ありえる気がします。
ドクタードクター
掻き壊しや二次感染で一時的に見られることはあるけれど、水痘の通常の経過で主体となる皮疹ではないんだ。「最も多い」とはいえないね。苔癬化は、アトピー性皮膚炎のような慢性の掻破で皮膚が厚く硬くなった状態だから、急性に経過する水痘では起こらない。
医学生医学生
皮膚科の講義で、原発疹と続発疹を区別して覚えるよう言われたのが、こういうところで効いてくるんですね。
ドクタードクター
まさに。最後に臨床で押さえておきたい点をまとめよう。水痘は学校保健安全法の第二種感染症で、すべての発疹が痂皮化するまで出席停止になる。痂皮化すれば感染性はほぼなくなると考えるからだ。
医学生医学生
家族から「いつから保育園に行けますか」と聞かれたら、「全部かさぶたになったら」と説明すればいいんですね。
ドクタードクター
その通り。ほかにも、解熱にアスピリンを使うとReye症候群のリスクがあるのでアセトアミノフェンを選ぶこと、免疫不全者や成人、新生児では肺炎や脳炎などで重症化しやすいこと、そして生ワクチンが2014年から2回の定期接種になっていることも覚えておこう。家族に帯状疱疹の人がいれば、未感染の子どもへの感染にも気を配りたいね。
医学生医学生
かさぶたの段階まで時間軸で追えるようになると、出席停止の判断や家族への説明にもつながるんですね。

まとめ

同居家族の帯状疱疹から約2週間後に、発熱とともに体幹中心の紅斑・水疱が混在する皮疹が出たら、水痘・帯状疱疹ウイルスの初感染による水痘を考えます。水痘の皮疹は紅斑→丘疹→水疱→(膿疱)→痂皮と進み、急性期は新旧の皮疹が混在しますが、発症から5〜6日たつと新生はほぼ止まり、大部分が痂皮化します。びらんは掻破などで一時的に見られる程度で、苔癬化は慢性湿疹などの所見であり水痘とは関係しません。学校保健安全法ではすべての発疹が痂皮化するまで出席停止とされ、解熱薬はReye症候群を避けるためアセトアミノフェンを用います。皮疹を「時間の流れ」で捉える視点は、診断だけでなく感染管理や家族への説明にも直結します。

解答・解説

正解はcです

所見の整理

・2歳男児。前日夜に胸腹部から皮疹が出現し、翌朝から38℃台の発熱。 ・皮疹は直径2~5 mmの紅斑で、顔・体幹・四肢に散在し、一部は水疱を伴う(体幹に多く、紅斑から水疱までの段階が混在している)。 ・同居の祖父が2週前に右頬の帯状疱疹を発症している。

診断へのプロセス

小児の発熱+発疹の鑑別には、麻疹、風疹、突発性発疹、伝染性紅斑、溶連菌感染症、手足口病、川崎病、EBウイルス感染症などがある。このうち「水疱を含む皮疹が体幹を中心に散在し、紅斑と水疱が同時に見られる」のは水痘に特徴的である。 さらに、帯状疱疹は体内に潜伏していた水痘・帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus:VZV)の再活性化であり、その水疱内には感染性のウイルスが含まれる。VZVに免疫のない小児が帯状疱疹患者と接触すると、初感染として水痘を発症しうる。祖父の発症から2週という間隔は、水痘の潜伏期(おおむね2~3週、典型的には約2週)と合致する。以上から本児は水痘と診断できる。

設問の考え方

水痘の個々の皮疹は、紅斑 → 丘疹 → 水疱 → (膿疱)→ 痂皮 の順に、数日の経過で変化していく。新しい皮疹は発症後およそ3~5日間にわたって次々に出現するため、急性期には様々な段階の皮疹が混在するが、新生が止まった後は各皮疹が順に乾燥していく。 本児は皮疹出現の翌日に受診しており、その4日後の再診時は発症からおよそ5~6日目にあたる。この時期には皮疹の新生はほぼ終わり、大部分の皮疹が水疱の段階を過ぎて痂皮化していると考えられる。

選択肢考察

  1. ×a.  丘疹

    丘疹(皮膚面から盛り上がった直径1 cm未満の充実性の発疹)は、紅斑に続く水痘の初期段階である。発症5~6日目には新たな皮疹の出現はほぼ止まっており、丘疹の段階にある皮疹は少ない。

  2. ×b.  水疱

    水疱は丘疹に続いて1~2日のうちに形成される段階で、初診時にすでに一部見られている。水疱は数日で混濁・乾燥して痂皮に移行するため、4日後の時点で最も多い皮疹とはならない。

  3. ○c.  痂皮

    痂皮(かさぶた)は水痘の皮疹の最終段階である。皮疹出現から5~6日目には新生が止まり、既存の皮疹の多くが水疱から乾燥して痂皮化しているため、再診時に最も多く見られる皮疹となる。すべての皮疹が痂皮化すると感染性はほぼ消失したと判断され、学校保健安全法でもこれが出席停止解除の基準となっている。

  4. ×d.  びらん

    びらんは表皮の欠損で、水疱が破れた後に一時的に生じうるが、水痘の通常の経過で主体となる皮疹ではない。ひっかき傷や二次感染があれば見られることはあるが、「最も多い」皮疹とはいえない。

  5. ×e.  苔癬化

    苔癬化は、慢性的な掻破などにより皮膚が厚く硬くなり、皮溝・皮丘が目立つ状態であり、アトピー性皮膚炎や慢性湿疹などの慢性病変で見られる。急性に経過する水痘では生じない。

水痘の概要

・病原体:水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV、ヒトヘルペスウイルス3型)の初感染による。 ・感染経路:空気感染(飛沫核感染)、飛沫感染、接触感染。感染力は非常に強い。帯状疱疹患者の水疱内容からも感染しうる。 ・潜伏期:おおむね2~3週(典型的には約14~16日)。 ・症状:発熱と、体幹を中心に顔・頭皮・四肢へ広がる瘙痒を伴う発疹。頭皮や口腔粘膜にも出現する。紅斑→丘疹→水疱→痂皮と変化し、新旧の皮疹が混在するのが特徴(麻疹・風疹のように一斉に同じ段階をたどらない)。 ・合併症:皮膚の細菌二次感染、肺炎、小脳失調・脳炎など。免疫不全者や成人、新生児では重症化しやすい。 ・治療:健常児では対症療法が中心だが、抗ウイルス薬(アシクロビル、バラシクロビル)が用いられる。解熱にアスピリンを使うとReye症候群のリスクがあるため避け、アセトアミノフェンを用いる。 ・予防:生ワクチンが2014年から定期接種(2回接種)となっている。 ・学校保健安全法:第二種感染症であり、すべての発疹が痂皮化するまで出席停止。

帯状疱疹との関係

初感染後、VZVは知覚神経節に潜伏し、加齢や免疫低下で再活性化すると、神経支配領域(皮節)に沿った片側性の帯状の水疱を生じる(帯状疱疹)。帯状疱疹患者から、免疫のない人に水痘が伝播することがある。

POINT

・同居家族の帯状疱疹から約2週後に発熱+水疱を伴う散在性皮疹 → 水痘(VZV初感染)。 ・水痘の皮疹は紅斑→丘疹→水疱→痂皮と進み、急性期は新旧の皮疹が混在する。 ・発症から5~6日を過ぎると皮疹の大部分は痂皮化する。 ・すべての皮疹が痂皮化するまで出席停止。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。