英語で読む身体所見―「どこで見るか」で解ける眼振の問題
第108回医師国家試験 C問題 第12問
国試問題にチャレンジ
頭部にみられる病的所見はどれか。
- a.asterixis
- b.clubbing
- c.gynecomastia
- d.nystagmus
- e.scoliosis
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
asterixisは羽ばたき振戦(上肢)、clubbingはばち指(指趾)、gynecomastiaは女性化乳房(胸部)、nystagmusは眼振(眼球)、scoliosisは側弯(脊柱)であり、頭部で観察される病的所見は眼振です。眼振は緩徐相と急速相からなり、方向は急速相で表し、Frenzel眼鏡で固視を除くと検出しやすくなります。一方向性で固視抑制される眼振は末梢性、注視方向で向きが変わる眼振や純粋な垂直性眼振は中枢性を示唆します。なお羽ばたき振戦・ばち指・女性化乳房はいずれも肝硬変でみられうる所見です。身体所見の英語表記を日本語名・観察部位・代表疾患とセットで覚えることは、英語のカルテや文献を読む力と系統的な診察の両方に役立ちます。
解答・解説
正解はdです
本問は身体所見を表す英語の医学用語の意味を問う問題である。各用語を日本語に置き換え、その所見が体のどの部位で観察されるかを考えればよい。 asterixisは羽ばたき振戦、clubbingはばち指、gynecomastiaは女性化乳房、nystagmusは眼振、scoliosisは側弯(脊柱側弯症)である。観察部位はそれぞれ、羽ばたき振戦は上肢(手関節・手指)、ばち指は手足の指先、女性化乳房は胸部、眼振は眼球、側弯は脊柱(背部)となる。頭部(眼を含む頭頸部の診察範囲)でみられる所見は眼振(nystagmus)のみである。 いずれも国家試験や臨床現場で頻繁に登場する基本用語であり、英語表記と日本語、所見の意味、代表的な原因疾患をセットで覚えておくことが重要である。
選択肢考察
- ×a. asterixis
asterixisは羽ばたき振戦のことである。両上肢を前方に伸ばし手関節を背屈させた姿勢を保たせると、筋緊張が瞬間的に途切れる(陰性ミオクローヌス)ため、手が鳥の羽ばたきのようにがくっと落ちては戻る動きを繰り返す。肝性脳症の代表的所見で、尿毒症やCO2ナルコーシス(高二酸化炭素血症)でもみられる。観察部位は上肢であり、頭部の所見ではない。
- ×b. clubbing
clubbingはばち指のことである。手足の指の末節が太鼓のばちのように丸く膨らみ、爪の付け根の角度が消失(180°以上に開大)する。肺癌、気管支拡張症、特発性肺線維症などの慢性肺疾患、チアノーゼ性先天性心疾患、感染性心内膜炎、肝硬変、炎症性腸疾患などでみられる。指趾の所見であり、頭部の所見ではない。
- ×c. gynecomastia
gynecomastiaは女性化乳房のことで、男性の乳腺組織が増殖して乳房が腫大する状態である。エストロゲン作用がアンドロゲン作用に比べ相対的に優位になることで生じ、肝硬変(エストロゲンの代謝低下)、精巣腫瘍、Klinefelter症候群、スピロノラクトンなどの薬剤が原因となる。思春期や高齢者では生理的にもみられる。胸部の所見であり、頭部の所見ではない。
- ○d. nystagmus
nystagmusは眼振のことで、眼球が不随意に律動的に往復運動する現象である。ゆっくり一方向へ偏位する緩徐相と、元に戻す急速相からなる衝動性眼振が多く、方向は急速相の向きで表す。末梢性めまい(良性発作性頭位めまい症、前庭神経炎、Ménière病など)や、小脳・脳幹の障害(脳梗塞、多発性硬化症、Wernicke脳症など)で出現する。眼球、すなわち頭部で観察される病的所見である。
- ×e. scoliosis
scoliosisは側弯(脊柱側弯症)のことで、脊柱が前額面で側方へ弯曲し、多くは椎体の回旋を伴う。思春期の女子に多い特発性側弯症が最も多く、ほかに神経筋疾患やMarfan症候群、神経線維腫症1型などに伴うものがある。前屈させて背部の肋骨隆起(rib hump)の左右差をみる前屈テストで評価する。背部(脊柱)の所見であり、頭部の所見ではない。
部位別にみた主な身体所見の英語表記
・頭頸部: nystagmus(眼振)、ptosis(眼瞼下垂)、exophthalmos(眼球突出)、jaundice/icterus(黄疸。眼球結膜で観察しやすい)、anisocoria(瞳孔不同)、goiter(甲状腺腫)、jugular venous distention(頸静脈怒張) ・胸部: gynecomastia(女性化乳房)、spider angioma(くも状血管腫) ・腹部: ascites(腹水)、hepatomegaly(肝腫大)、splenomegaly(脾腫)、caput medusae(メドゥーサの頭:腹壁静脈怒張) ・四肢: clubbing(ばち指)、asterixis(羽ばたき振戦)、palmar erythema(手掌紅斑)、edema(浮腫) ・脊柱: scoliosis(側弯)、kyphosis(後弯)、lordosis(前弯)
肝硬変でみられる所見
本問の選択肢のうち、羽ばたき振戦、女性化乳房、ばち指はいずれも肝硬変でみられうる所見である。ほかにくも状血管腫、手掌紅斑、腹水、腹壁静脈怒張、黄疸なども肝硬変の身体所見として重要である。
眼振の評価
眼振は注視方向による変化(注視眼振)、頭位や頭位変換による誘発(頭位眼振・頭位変換眼振)を調べ、Frenzel眼鏡を用いて固視を除いた状態で観察すると検出しやすい。一方向性で固視により抑制される水平回旋混合性眼振は末梢性、注視方向により向きが変わる眼振や純粋な垂直性眼振は中枢性を示唆する。
POINT
・asterixis=羽ばたき振戦(上肢)、clubbing=ばち指(指趾)、gynecomastia=女性化乳房(胸部)、nystagmus=眼振(眼球・頭部)、scoliosis=側弯(脊柱)。 ・身体所見の英語表記は、日本語名・観察部位・代表的な原因疾患とセットで覚える。 ・羽ばたき振戦、女性化乳房、ばち指はいずれも肝硬変でみられうる。
