StudyMed医師国家試験

高血糖が狙うのは「詰まる血管」―糖尿病と関連の薄い疾患を見抜く

第108回医師国家試験 C問題 第11問

国試問題にチャレンジ

第108回 C問題 第11問

糖尿病との関連が少ない疾患はどれか。

  1. a.膵癌
  2. b.脳梗塞
  3. c.慢性腎不全
  4. d.くも膜下出血
  5. e.閉塞性動脈硬化症

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、糖尿病がどんな疾患と結びついているかを整理し、関連の薄いものを選ぶ問題だ。カギは、糖尿病の合併症を「細い血管」「太い血管」「それ以外」に分けて考えること。まず、糖尿病の慢性合併症を大きく2つに分けるとどうなるかな。
医学生医学生
細小血管障害と大血管障害です。細小血管障害は神経障害・網膜症・腎症で、CBTの勉強のときに「しめじ」で覚えました。
ドクタードクター
完璧だね。大血管障害のほうは?
医学生医学生
動脈硬化による病気なので、脳梗塞、狭心症や心筋梗塞、それに足の動脈が詰まる病気です。
ドクタードクター
その通り。持続する高血糖は全身の血管を傷め、動脈硬化を促進する。糖尿病患者では脳梗塞のリスクが2〜3倍程度に高まるとされ、アテローム血栓性脳梗塞だけでなく、穿通枝が詰まるラクナ梗塞も起こりやすい。だから脳梗塞は糖尿病と関連が深い。
医学生医学生
閉塞性動脈硬化症も大血管障害ですね。
ドクタードクター
そう。下肢の動脈が狭窄・閉塞して、間欠性跛行、安静時疼痛、潰瘍や壊疽を来す。糖尿病は喫煙と並ぶ強力な危険因子で、特に膝から下の細い動脈に病変が多いのが特徴だ。神経障害で痛みに気づきにくく、感染にも弱いから糖尿病足病変になりやすく、非外傷性の下肢切断の主な原因になっている。
医学生医学生
慢性腎不全は、糖尿病腎症が進んだ姿ということですか。
ドクタードクター
その理解でいい。糖尿病腎症は糸球体の細小血管障害で、微量アルブミン尿から始まり、顕性蛋白尿、腎機能低下を経て慢性腎不全に至る。わが国では新規透析導入の原因疾患の第1位だ。
医学生医学生
腎臓内科を回ったとき、透析室の患者さんの多くが糖尿病だったのを覚えています。でも膵癌は血管の病気ではないので、関連が少ないのは膵癌かなと思ったんですが……。
ドクタードクター
そこが引っかけどころだね。糖尿病は膵癌の危険因子で、糖尿病患者では膵癌の発生が多いことが疫学的に示されている。逆に、膵癌が膵実質を壊して糖尿病を新たに起こしたり、既存の糖尿病を急に悪化させたりすることもある。つまり双方向の関係なんだ。
医学生医学生
血管合併症だけでなく、癌との関連もあるんですね。
ドクタードクター
そう。肝癌や大腸癌なども糖尿病患者で多いと言われている。臨床では、高齢での糖尿病の新規発症や、原因のはっきりしない血糖コントロールの急な悪化をみたら、膵癌を念頭に画像検査を考えるのが大切だ。
医学生医学生
そうなると、残るのはくも膜下出血ですね。脳卒中なのに糖尿病と関係が薄いのは少し意外です。
ドクタードクター
理由を考えてみよう。くも膜下出血の大部分は脳動脈瘤の破裂で起こる。その確立した危険因子は高血圧、喫煙、過度の飲酒、家族歴、そして多発性嚢胞腎やEhlers-Danlos症候群などの遺伝性疾患だ。糖尿病は主に動脈硬化で血管を「詰まらせる」方向に働くもので、動脈瘤ができて「破れる」こととの関連は乏しい。
医学生医学生
詰まる病気と破れる病気で、危険因子の顔ぶれが違うということですね。
ドクタードクター
その整理はとても役に立つ。脳出血でも最大の危険因子は高血圧で、糖尿病は出血性病変より虚血性病変との関連のほうがずっと強い。脳神経外科を回るときには、突然の「これまでで最悪の頭痛」と頭部CTでの脳底槽の高吸収域、という典型像もあわせて押さえておこう。
医学生医学生
糖尿病の患者さんを診るときは、血糖だけでなく全身を見る必要がありますね。
ドクタードクター
そうだね。糖尿病は全身の血管と臓器に影響する病気で、歯周病、骨粗鬆症、認知症、白内障なども合併しやすい。冠動脈疾患は神経障害のせいで無痛性のこともある。合併症の系統的な整理が、そのまま診療のチェックリストになるんだ。

まとめ

糖尿病の慢性合併症は、神経障害・網膜症・腎症からなる細小血管障害と、脳梗塞・冠動脈疾患・閉塞性動脈硬化症からなる大血管障害に大別され、糖尿病腎症はわが国の透析導入原因の第1位です。さらに糖尿病は膵癌の危険因子であり、膵癌が糖尿病の発症や急な悪化を招くこともあるため、両者は双方向に関連します。一方、くも膜下出血の大部分は脳動脈瘤破裂によるもので、危険因子は高血圧・喫煙・過度の飲酒・家族歴・多発性嚢胞腎などであり、糖尿病は含まれません。糖尿病は血管を「詰まらせる」病態と強く結びつき、「破れる」病態との関連は乏しいと整理すると理解しやすくなります。合併症を体系的に把握しておくことは、糖尿病患者の全身管理や、見逃してはならない疾患のスクリーニングに直結します。

解答・解説

正解はdです

糖尿病は持続する高血糖によって全身の血管を傷害する疾患である。その合併症は、細い血管が障害される細小血管障害(糖尿病網膜症・糖尿病腎症・糖尿病神経障害の三大合併症)と、太い動脈の動脈硬化による大血管障害(脳梗塞・冠動脈疾患・末梢動脈疾患)に大別される。さらに、疫学的には糖尿病患者で特定の癌(肝癌・膵癌・大腸癌など)の発生が多いことも知られている。 選択肢を見ると、脳梗塞と閉塞性動脈硬化症は大血管障害、慢性腎不全は糖尿病腎症の終末像、膵癌は糖尿病と双方向に関連する悪性腫瘍である。これに対し、くも膜下出血の大部分は脳動脈瘤の破裂によって起こり、その危険因子は高血圧、喫煙、過度の飲酒、家族歴、多発性嚢胞腎などの遺伝性疾患であって、糖尿病は確立した危険因子に含まれない。したがって、糖尿病との関連が最も少ないのはくも膜下出血である。

選択肢考察

  1. ×a.  膵癌

    糖尿病は膵癌の危険因子であり、糖尿病患者では膵癌の発生リスクが高いことが疫学的に示されている。逆に、膵癌が膵実質を破壊することで糖尿病が新たに発症したり、既存の糖尿病が急に悪化したりすることもある。とくに高齢者の糖尿病の新規発症や、原因のはっきりしない血糖コントロールの急激な悪化をみた場合は、膵癌を念頭に置いて画像検査を行うべきである。糖尿病と密接に関連する疾患である。

  2. ×b.  脳梗塞

    糖尿病は動脈硬化を促進し、大血管障害の重要な危険因子となる。糖尿病患者では非糖尿病者に比べて脳梗塞の発症リスクが約2〜3倍に高まるとされ、アテローム血栓性脳梗塞のほか、穿通枝の細い血管が詰まるラクナ梗塞も起こりやすい。糖尿病と関連の深い疾患である。

  3. ×c.  慢性腎不全

    糖尿病腎症は糸球体の細小血管障害で、微量アルブミン尿から始まり、顕性蛋白尿、腎機能低下を経て慢性腎不全に至る。わが国では糖尿病腎症(糖尿病性腎臓病)が新規透析導入の原因疾患の第1位であり、糖尿病と最も関連の深い疾患の一つである。

  4. ○d.  くも膜下出血

    くも膜下出血の大部分は脳動脈瘤の破裂による。その危険因子として確立しているのは高血圧、喫煙、過度の飲酒、家族歴、および多発性嚢胞腎(常染色体顕性〈優性〉多発性嚢胞腎)やEhlers-Danlos症候群などの遺伝性疾患であり、糖尿病は含まれない。糖尿病は主に動脈硬化による閉塞性(虚血性)病変のリスクを高めるもので、動脈瘤の形成・破裂との関連は乏しい。したがって本問で糖尿病との関連が少ない疾患として選ぶべきものである。

  5. ×e.  閉塞性動脈硬化症

    閉塞性動脈硬化症(下肢の末梢動脈疾患)は、主に下肢の動脈が動脈硬化で狭窄・閉塞し、間欠性跛行、安静時疼痛、潰瘍・壊疽を来す疾患である。糖尿病は喫煙と並ぶ強力な危険因子であり、糖尿病では膝下の細い動脈に病変が多い。神経障害や易感染性も加わって糖尿病足病変となり、非外傷性の下肢切断の主な原因となる。糖尿病と密接に関連する。

糖尿病の合併症の整理

・急性合併症: 糖尿病ケトアシドーシス、高浸透圧高血糖状態、低血糖(治療に伴う)、感染症 ・細小血管障害(三大合併症): 神経障害(し)、網膜症(め)、腎症(じ)の順に出現しやすいとされ、「しめじ」と覚える ・大血管障害: 脳梗塞、冠動脈疾患(狭心症・心筋梗塞。無痛性のことがある)、閉塞性動脈硬化症 ・その他: 糖尿病足病変、歯周病、骨粗鬆症、認知症、白内障、癌(肝癌・膵癌・大腸癌など)

くも膜下出血の概要

原因の約80〜90%は脳動脈瘤の破裂で、他に脳動静脈奇形や外傷などがある。突然発症の激しい頭痛(「これまでで最悪の頭痛」)が典型で、頭部CTで脳底槽の高吸収域を認める。危険因子は高血圧、喫煙、過度の飲酒、家族歴などで、多発性嚢胞腎では脳動脈瘤の合併が多い。

脳出血と糖尿病

脳出血(脳実質内出血)の最大の危険因子は高血圧である。糖尿病は主に脳梗塞のリスクを高め、脳卒中の中でも出血性病変との関連は虚血性病変ほど強くない。

POINT

・糖尿病は細小血管障害(神経障害・網膜症・腎症)と大血管障害(脳梗塞・冠動脈疾患・閉塞性動脈硬化症)を来す。 ・糖尿病腎症はわが国の透析導入原因の第1位である。 ・糖尿病は膵癌の危険因子であり、糖尿病の新規発症や急な悪化は膵癌のサインとなりうる。 ・くも膜下出血の危険因子は高血圧・喫煙・過度の飲酒・家族歴・多発性嚢胞腎などで、糖尿病は含まれない。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。