「調剤薬局」は通称だった―健康保険法が定める「保険薬局」の正体
第108回医師国家試験 B問題 第3問
国試問題にチャレンジ
健康保険法に基づく療養の給付の一環として保険調剤業務を取り扱う薬局をこの法律で何と呼ぶか。
- a.院外薬局
- b.基準薬局
- c.処方薬局
- d.調剤薬局
- e.保険薬局
対話形式の解説
ドクター
医学生
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医学生まとめ
健康保険法では、療養の給付として保険調剤を行う薬局を「保険薬局」と呼び、厚生労働大臣の指定を受けた薬局がこれに当たります。院外薬局や調剤薬局は通称、処方薬局は法律上存在しない呼び名、基準薬局は職能団体による旧認定制度で、いずれも健康保険法上の名称ではありません。薬局は薬機法による開設許可と健康保険法による指定の二段階を経て保険薬局となり、そこで調剤する薬剤師は保険薬剤師の登録を要します。これは保険医療機関(指定)と保険医(登録)の関係と同じ構造で、「機関は指定、個人は登録」と整理できます。こうした制度の理解は、医薬分業や疑義照会の意義を踏まえ、薬剤師と連携して安全な薬物療法を行う土台になります。
解答・解説
正解はeです
問われていること
健康保険法のなかで、保険診療の一部として処方箋に基づく調剤を行う薬局が、法律上どのような名称で規定されているかを問う問題である。
考え方
健康保険法では、被保険者が受ける「療養の給付」の一つとして薬剤の支給が含まれる。療養の給付を担当できるのは、厚生労働大臣の指定を受けた病院・診療所・薬局に限られ、法律上、指定を受けた病院・診療所を「保険医療機関」、指定を受けた薬局を「保険薬局」と呼ぶ(健康保険法第63条第3項)。被保険者はこれらのうち自分で選んだところから療養の給付を受ける。 したがって、保険医が発行した処方箋を受け付け、保険調剤を行う薬局の法律上の名称は「保険薬局」である。
二段階の仕組み
薬局として営業するには、まず医薬品医療機器等法(薬機法:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)に基づき、都道府県知事等から薬局開設の許可を受ける必要がある。そのうえで、健康保険法に基づき厚生労働大臣(実務は地方厚生局長に委任)の指定を受けると保険薬局となる。さらに、保険薬局で保険調剤に従事する薬剤師は「保険薬剤師」として登録を受けていなければならない。医師側の「保険医療機関」と「保険医」の関係と同じ、機関の指定と個人の登録という二重の仕組みになっている。
選択肢考察
- ×a. 院外薬局
医療機関の外にある薬局を指す日常的な呼び方であり、健康保険法上の名称ではない。医療機関が処方箋を患者に交付し、外部の薬局で調剤を受ける方式は「院外処方」と呼ばれるが、それを受ける薬局を法律が「院外薬局」と規定しているわけではない。
- ×b. 基準薬局
日本薬剤師会が定めた基準(患者情報の管理、服薬指導体制など)を満たし、都道府県薬剤師会から認定を受けた保険薬局が名乗ることのできた名称で、職能団体による任意の認定制度であった。法律上の用語ではなく、この制度は2015年3月末で終了した。現在はこれに代わるものとして、厚生労働省の制度である健康サポート薬局や、薬機法に基づく認定薬局(地域連携薬局・専門医療機関連携薬局)などがある。
- ×c. 処方薬局
法律上このような名称は存在しない。そもそも処方(どの薬をどれだけ使うかを決めること)は医師・歯科医師が行うものであり、薬局が行うのは処方箋に基づく「調剤」である。この点からも用語として不適切である。
- ×d. 調剤薬局
処方箋を受け付けて調剤を主に行う薬局を指す一般的な呼び方として広く使われているが、健康保険法上の名称ではない。実際に「調剤薬局」と呼ばれている薬局の多くは保険薬局の指定を受けており、その指定があって初めて保険調剤を行うことができる。
- ○e. 保険薬局
健康保険法第63条第3項は、療養の給付を担当する機関として、厚生労働大臣の指定を受けた病院・診療所(保険医療機関)と薬局(保険薬局)を定めている。保険薬局では、登録を受けた保険薬剤師が、保険医の交付した処方箋に基づいて保険調剤を行い、その費用は診療報酬(調剤報酬)として保険者に請求される。したがって本問の答えである。
療養の給付の内容(健康保険法第63条第1項)
①診察、②薬剤または治療材料の支給、③処置・手術その他の治療、④居宅における療養上の管理およびその療養に伴う世話その他の看護、⑤病院・診療所への入院およびその療養に伴う世話その他の看護、の5項目である。保険薬局での調剤は②の薬剤の支給にあたる。
機関と個人の対応関係
・機関の「指定」(厚生労働大臣):保険医療機関(病院・診療所)、保険薬局 ・個人の「登録」(厚生労働大臣):保険医・保険歯科医、保険薬剤師 保険診療・保険調剤は、指定を受けた機関で、登録を受けた者が行う必要がある。
薬局の開設
薬局は薬機法で「薬剤師が販売または授与の目的で調剤の業務を行う場所」などと定義され、開設には所在地の都道府県知事(保健所を設置する市・特別区では市長・区長)の許可が必要である。病院・診療所の調剤所は薬局に含まれない。
医薬分業と院外処方
医師が処方箋を交付し、薬剤師がそれに基づいて調剤と服薬指導を行う役割分担を医薬分業という。薬剤師が処方内容を独立して確認することで、処方の誤り・重複投与・相互作用の発見につながる。複数の医療機関を受診している患者では、服薬情報を一つの薬局に集約する「かかりつけ薬剤師・薬局」を持つことで、重複投与や飲み合わせの問題に気付きやすくなる。
近年の薬局制度
・健康サポート薬局(2016年〜):かかりつけ機能に加え、地域住民の健康づくりを積極的に支援する薬局 ・地域連携薬局・専門医療機関連携薬局(2021年〜):改正薬機法に基づき都道府県知事が認定する薬局
POINT
・健康保険法で療養の給付として保険調剤を行う薬局=「保険薬局」(厚生労働大臣の指定)。 ・保険薬局で保険調剤を行う薬剤師=「保険薬剤師」(厚生労働大臣への登録)。 ・医療機関側も同じ構造で、「保険医療機関」(指定)と「保険医」(登録)。 ・院外薬局・調剤薬局は通称、基準薬局は職能団体の旧認定制度で、いずれも健康保険法上の名称ではない。 ・薬局の開設許可は薬機法に基づき都道府県知事等が行う。
