2005年に底を打った「谷」―出生関連5指標のグラフは形で読み解く
第108回医師国家試験 B問題 第20問
国試問題にチャレンジ
合計特殊出生率,周産期死亡率,出生時の平均体重,低出生体重児の出生割合,複産〈多胎〉の出生割合を図に示す。それぞれ1990年における数値を100%としたときの2010年までの変化である。 合計特殊出生率はどれか。

- a.①
- b.②
- c.③
- d.④
- e.⑤
対話形式の解説
ドクター
医学生
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ドクターまとめ
合計特殊出生率は1990年の1.54から低下を続け、2005年に当時の過去最低1.26を記録した後、2010年には1.39までやや回復したため、1990年を基準にすると2005年を底とする谷型の推移を示します。同じ期間に、周産期死亡率は周産期医療の進歩により一貫して低下して約半分に、低出生体重児の割合は妊婦のやせや高年妊娠などを背景に一貫して増加し、多胎の割合は生殖補助医療の普及で2005年前後にピークを迎えた後、移植胚数の制限で減少しました。出生時の平均体重はわずかに減少したものの、変化率としてはほぼ横ばいです。合計特殊出生率は人口置換水準(約2.07)を大きく下回り、近年は1.15まで低下しているため、少子化の動向と出生をめぐる医療・社会の変化を結びつけて理解することが、公衆衛生学の統計問題に対応する力になります。
解答・解説
正解はdです
【テーマ】1990〜2010年のわが国の出生関連指標(合計特殊出生率、周産期死亡率、出生時の平均体重、低出生体重児の出生割合、複産〈多胎〉の出生割合)の推移を、1990年を100%とした相対値のグラフから読み取る問題である。
グラフの形の整理
・①:一貫して上昇し、2010年に約150%。 ・②:2005年まで大きく上昇(約165%)し、2010年に低下(約140%)。 ・③:ほぼ横ばいで、わずかに低下(約97%)。 ・④:2005年まで低下(約82%)し、その後やや持ち直す(約90%)。 ・⑤:一貫して大きく低下し、2010年に約50%。
考え方
合計特殊出生率は1990年に1.54(いわゆる「1.57ショック」の翌年)で、その後低下を続け、2005年に過去最低の1.26を記録した。以後はわずかに回復し、2010年は1.39であった。1990年を100%とすると、2005年は約82%、2010年は約90%となり、「2005年を底としたV字(谷型)」の推移を示す④が該当する。 他の指標も「医療の進歩で改善し続けたもの(周産期死亡率)」「晩産化・不妊治療・妊婦の体格変化などで増えたもの(低出生体重児、多胎)」「ごくわずかしか変わらないもの(平均体重)」という特徴で見分けることができる。
選択肢考察
- ×a. ①
低出生体重児(出生体重2,500g未満)の出生割合である。1990年の約6.3%から一貫して増加し、2010年には約9.6%(1990年比約150%)となった。背景として、妊婦のやせや妊娠中の体重増加の抑制、高年妊娠の増加、多胎妊娠の増加、喫煙、周産期医療の進歩による早産児の救命・早期娩出などが挙げられている。2005年以降は増加が頭打ちとなり、ほぼ横ばいで推移している点もグラフと一致する。
- ×b. ②
複産(多胎)の出生割合である。1990年代以降、生殖補助医療(体外受精などの不妊治療)の普及により多胎が増え、2005年前後にピークを迎えた。その後、日本産科婦人科学会が体外受精で子宮に戻す胚の数を原則1個とする方針(2008年)を示したことなどから多胎は減少に転じた。このため、2005年に山があり2010年に下がる②の形となる。
- ×c. ③
出生時の平均体重である。1990年の約3.1kgから2010年の約3.0kgへとわずかに減少しており、1990年比で約97%とほぼ横ばいに見える。体重という絶対量は20年で大きく変化しないため、変化率は5つの指標の中で最も小さい。減少の要因は低出生体重児の増加と同様で、妊婦のやせ志向、妊娠中の体重管理、早産の増加などが関係している。
- ○d. ④
合計特殊出生率である。1990年1.54、1995年1.42、2000年1.36と低下が続き、2005年には過去最低の1.26(1990年比約82%)となった。その後はやや上昇し、2010年は1.39(1990年比約90%)であった。「2005年を底に下降から上昇に転じる」という特徴的な形は④のみが示している。
- ×e. ⑤
周産期死亡率(妊娠22週以後の死産と早期新生児死亡〈生後1週未満の死亡〉の合計を、出産〈出生+妊娠22週以後の死産〉千対で表したもの)である。周産期医療体制の整備、新生児集中治療室(NICU)の拡充、母体搬送システムの普及などにより一貫して低下し、2010年は4.2(出産千対)と1990年のおよそ半分になった。日本の周産期死亡率は世界でも最低水準である。
合計特殊出生率とは
15〜49歳の女性の年齢別出生率を合計したもので、1人の女性が一生の間に産む子どもの平均数に相当する。人口を維持するのに必要な水準(人口置換水準)は約2.07である。
合計特殊出生率の主な推移
・第1次ベビーブーム(1947〜49年):4.3以上。 ・1966年(丙午〈ひのえうま〉):1.58と一時的に急低下。 ・1989年:1.57となり丙午の年を下回った(「1.57ショック」)。 ・2005年:1.26で当時の過去最低。 ・その後やや回復し2015年に1.45となったが、再び低下し、2022年に1.26、2023年は1.20、2024年は1.15と過去最低を更新している。
周産期死亡の定義
1995年から、周産期死亡は「妊娠22週以後の死産+早期新生児死亡」と定義されている(それ以前は妊娠28週以後の死産を用いていた)。分母は「出生数+妊娠22週以後の死産数」(出産千対)である。
低出生体重児の区分
・低出生体重児:2,500g未満 ・極低出生体重児:1,500g未満 ・超低出生体重児:1,000g未満
出生に関する統計の資料
これらの指標は人口動態統計(毎年)で把握され、テーマ別に詳しくまとめた人口動態統計特殊報告として「出生に関する統計」が公表されている。
POINT
・合計特殊出生率:1990年1.54 → 2005年1.26(当時の最低)→ 2010年1.39。2005年を底とする谷型。 ・周産期死亡率:一貫して低下(2010年には1990年の約半分)。 ・低出生体重児の割合:一貫して増加(2010年に約9.6%)。 ・多胎の割合:不妊治療の普及で増加し2005年前後がピーク、その後減少。 ・出生時の平均体重:わずかに減少(ほぼ横ばい)。
