StudyMed医師国家試験

わずかなくぼみを見逃さない―内視鏡で見抜く0-Ⅱc型早期胃癌

第108回医師国家試験 A問題 第5問

国試問題にチャレンジ

第108回 A問題 第5問

上部消化管内視鏡像(①~⑤)を別に示す。  0-Ⅱc型胃癌はどれか。

第108回 A問題 第5問の問題画像
  1. a.①
  2. b.②
  3. c.③
  4. d.④
  5. e.⑤

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は5枚の上部消化管内視鏡像から0-Ⅱc型胃癌を選ぶ問題だ。解き方は2段階。まず写っているのが本当に胃かどうか、次にその形が早期癌の0型なのか、進行癌の1〜4型なのかを見極める。
医学生医学生
0-Ⅱcは表面陥凹型、つまり浅いくぼみの早期癌でしたよね。くぼんでいる病変を探せばいいでしょうか。
ドクタードクター
方向性はいいけれど、それだけだと落とし穴がある。最初の像を見てごらん。細長い管腔に白っぽく平滑な粘膜が続いていて、下のほうに発赤した不整な陥凹がある。
医学生医学生
白っぽい粘膜は扁平上皮だから……これは食道ですね。くぼみだけ見て選びそうになりました。
ドクタードクター
そう、表在型の食道癌を疑う所見ではあるけれど、胃の病変ではないから0-Ⅱc型胃癌には当たらない。形より先に臓器を確認することが大事なんだ。食道の表在癌はヨード染色で不染帯になることや、NBIなどの拡大観察で評価することも覚えておこう。
医学生医学生
2枚目は内視鏡が画面に写り込んでいます。反転観察ですか。
ドクタードクター
その通り。噴門部を見上げた像で、表面が顆粒状・結節状の隆起性病変がある。隆起型だから陥凹型の0-Ⅱcではない。低い隆起なら0-Ⅱa型、より高く突出していれば0-Ⅰ型になる。
医学生医学生
3枚目はひだがすごく太くて蛇行していて、間に白苔のついた潰瘍があります。
ドクタードクター
癌が粘膜下層以深にびまん性に浸潤して、壁が硬く肥厚した状態だね。4型、つまりびまん浸潤型の進行胃癌で、その多くはスキルス胃癌だ。送気しても胃壁が十分に伸びないのが特徴で、未分化型が多く予後は不良だ。
医学生医学生
5枚目もくぼんでいますが、深い潰瘍の周りが土手のように盛り上がっています。
ドクタードクター
よく見ているね。厚い白苔を伴うクレーター状の潰瘍を、境界明瞭な周堤が取り囲んでいる。これは2型、潰瘍限局型の進行癌だ。周堤の境界が不明瞭で周囲に浸潤していれば3型になる。陥凹があっても深い潰瘍と周堤を伴う点で、0-Ⅱcとは別物だよ。
医学生医学生
となると4枚目、前庭部の平坦な粘膜にある浅いくぼみが答えですね。境界がはっきりしていてギザギザしています。
ドクタードクター
正解だ。周囲とわずかな段差をもつ浅い陥凹で、境界は明瞭かつ不整、辺縁には発赤やびらん状の変化がある。明らかな潰瘍や周堤はない。これが0-Ⅱc型、表面陥凹型の早期胃癌で、早期胃癌のなかで最も多い肉眼型なんだ。
医学生医学生
消化器内科の実習で、指導医の先生が陥凹の縁を「蚕食像」と言っていました。
ドクタードクター
虫がかじったようなギザギザの境界のことだね。ほかにも陥凹内に島状に残る粘膜、いわゆるインゼルや、陥凹に向かって集中するひだの先細り・途絶が典型所見だ。ひだの先端が棍棒状に太くなったり融合したりしていれば、粘膜下層以深への浸潤を疑う。
医学生医学生
陥凹の色にも意味があるんですか。
ドクタードクター
あるよ。周囲より白っぽい褪色調の陥凹は未分化型癌、発赤調の陥凹は分化型癌を示唆することが多い。ただし確定は生検の病理診断で、インジゴカルミンを散布する色素内視鏡で境界をはっきりさせて範囲診断を行う。
医学生医学生
早期胃癌なら内視鏡で切除できることも多いですよね。
ドクタードクター
リンパ節転移の可能性が極めて低い病変、例えば潰瘍所見のない分化型の粘膜内癌などはESDの適応になる。それ以外はリンパ節郭清を伴う胃切除が基本だ。なお早期胃癌は深達度が粘膜か粘膜下層にとどまるものを指し、リンパ節転移の有無は問わない。0型は内視鏡上の形からの推定で、最終的な深達度は病理で確定する、という点も押さえておこう。
医学生医学生
臓器を確認して、早期か進行かの形を見て、最後に陥凹の性状を読む。この順番を守れば迷わずに済みそうです。
ドクタードクター
その通り。実際の検査では0-Ⅱcはわずかな色調変化や段差しかないことも多いから、「何か変だ」と感じたら近づいて観察し、色素散布や生検で確かめる姿勢が早期発見につながるよ。

まとめ

0-Ⅱc型胃癌は表面陥凹型の早期胃癌で、早期胃癌の中で最も頻度の高い肉眼型です。内視鏡では周囲とわずかな段差をもつ浅い陥凹、境界明瞭で不整な辺縁(蚕食像)、インゼル、集中するひだの先細り・途絶が特徴で、褪色調なら未分化型、発赤調なら分化型を示唆します。読影ではまず臓器が食道か胃かを確認し、次に0型か、深い潰瘍と周堤を伴う2・3型やひだの肥厚と壁硬化を示す4型などの進行癌の形かを見分けます。診断は生検と色素内視鏡による範囲診断で行い、条件を満たす病変はESDで治療できます。わずかな陥凹を見逃さない観察力が、胃癌の早期発見と低侵襲治療につながります。

解答・解説

正解はdです

胃癌の肉眼型分類(胃癌取扱い規約)を内視鏡像に当てはめる問題である。解くときは次の2段階で考えるとよい。 1. 写っている臓器が胃かどうか:食道は細長い管腔で、正常粘膜は白っぽく平滑な扁平上皮である。胃は内腔が広く、橙赤色の粘膜とひだ(皺襞)がみられる。「0-Ⅱc型胃癌」を問われている以上、食道の病変は正解になりえない。 2. 早期癌の形(0型)か進行癌の形(1〜4型)か:0型(表在型)は粘膜面の軽い隆起・平坦・浅い陥凹であり、明らかな潰瘍と周堤(土手状の盛り上がり)を伴う腫瘤やひだの著明な肥厚は進行癌の形である。0型のうち、浅い陥凹を示すものが0-Ⅱc型である。 0-Ⅱc型の内視鏡的特徴は、周囲よりわずかに低い陥凹面と、その辺縁が明瞭で不整な「蚕食像」(虫がかじったようなギザギザの境界)である。陥凹内には小さな島状の粘膜(インゼル)や発赤・びらんがみられることがあり、陥凹に向かって集中するひだの先端が細まったり途絶したりする所見を伴うこともある。 各画像の要点は次のとおりである。 ・①:食道(管状の内腔、扁平上皮粘膜)の病変 ・②:反転観察した噴門部の隆起性病変 ・③:胃体部の太く蛇行したひだと潰瘍、壁の硬化(4型) ・④:前庭部の平坦な粘膜にみられる、境界明瞭で浅い陥凹性病変(0-Ⅱc型) ・⑤:周堤で囲まれ、境界明瞭な潰瘍を伴う腫瘤(2型)

選択肢考察

  1. ×a.  ①

    誤り。細長い管腔と白っぽい扁平上皮の粘膜から、食道の像と判断できる。下方の粘膜に発赤した不整な陥凹状の病変がみられ、表在型の食道癌を疑う所見であるが、胃の病変ではないため「0-Ⅱc型胃癌」には該当しない。形態が浅い陥凹であっても、まず臓器を確認することが重要である。なお食道の表在癌の評価には、ヨード染色(癌部は不染帯となる)や拡大内視鏡・NBI(狭帯域光観察)が用いられる。

  2. ×b.  ②

    誤り。内視鏡を反転させて胃の上部(噴門部)を見上げた像で、画面右に内視鏡自体が写っている。噴門近傍に表面が顆粒状・結節状の隆起性病変がみられる。隆起型の病変であり陥凹型の0-Ⅱc型ではない。高さの低い表在隆起であれば0-Ⅱa型、より高く突出していれば0-Ⅰ型に分類される。

  3. ×c.  ③

    誤り。胃体部のひだが太く腫大・蛇行し、その間に白苔を伴う潰瘍がみられる。癌が粘膜下層以深を広くびまん性に浸潤し、壁が硬く肥厚した状態を示しており、4型(びまん浸潤型)進行胃癌の像である。4型の多くはいわゆるスキルス胃癌で、送気しても胃壁が十分に伸展しないことが特徴であり、未分化型癌が多く予後不良である。早期癌の形態ではない。

  4. ○d.  ④

    正しい。前庭部の比較的平坦な粘膜に、周囲とわずかな段差をもつ浅い陥凹がみられ、その境界は明瞭で不整である。陥凹の辺縁には発赤やびらん状の変化が伴う。明らかな潰瘍や周堤はなく、表面の浅い陥凹として観察されることから、0-Ⅱc型(表面陥凹型)の早期胃癌の像である。0-Ⅱc型は早期胃癌で最も頻度の高い肉眼型である。陥凹面の色調は組織型推定の手がかりとなり、周囲より白っぽい褪色調の陥凹は未分化型癌、発赤調の陥凹は分化型癌を示唆することが多い。確定には生検による病理診断を行い、色素内視鏡(インジゴカルミン散布)で境界を明瞭にして範囲診断を行う。

  5. ×e.  ⑤

    誤り。前庭部に、黄白色の厚い白苔を伴う深い潰瘍(クレーター状の陥凹)と、その周囲を取り囲む盛り上がった周堤がみられる。周堤と周囲粘膜との境界が明瞭であることから、2型(潰瘍限局型)進行胃癌の像である。周堤の境界が不明瞭で周囲へ浸潤性に広がっていれば3型(潰瘍浸潤型)となる。陥凹はあるが、深い潰瘍と周堤を伴う点で0-Ⅱc型とは異なる。

胃癌の肉眼型分類(胃癌取扱い規約)

・0型(表在型):癌の浸潤が粘膜下層までにとどまると推定される形態。  0-Ⅰ型(隆起型):明らかな腫瘤状の隆起(高さがおおむね3mmを超える)  0-Ⅱa型(表面隆起型):低い隆起  0-Ⅱb型(表面平坦型):正常粘膜とほぼ同じ高さ  0-Ⅱc型(表面陥凹型):わずかな陥凹(びらん程度)  0-Ⅲ型(陥凹型):明らかに深い陥凹(潰瘍)  複数の型が混在する場合は「0-Ⅱc+Ⅲ」のように面積の広い型から順に記載する。 ・1型(腫瘤型):明らかに隆起し、周囲との境界が明瞭 ・2型(潰瘍限局型):潰瘍と、境界明瞭な周堤をもつ ・3型(潰瘍浸潤型):潰瘍と、境界不明瞭な周堤をもち、周囲に浸潤する ・4型(びまん浸潤型):明らかな潰瘍や周堤がなく、壁の肥厚・硬化が主体(スキルス胃癌の多く) ・5型(分類不能):上記に当てはまらないもの 1〜4型はボールマン(Borrmann)分類に対応する。

早期胃癌と0型の関係

・早期胃癌は深達度が粘膜(M)または粘膜下層(SM)にとどまるものと定義され、リンパ節転移の有無は問わない。 ・0型は内視鏡上の形態からの分類であり、最終的な深達度は病理で確定する。

0-Ⅱc型の内視鏡所見

・境界明瞭で不整な陥凹(蚕食像) ・陥凹内のインゼル(島状粘膜残存)、発赤、びらん ・集中するひだの先端の変化(先細り、途絶、棍棒状肥大、融合):棍棒状肥大や融合は粘膜下層以深への浸潤を示唆する ・色調:褪色調は未分化型、発赤調は分化型を示唆

治療の概略

・リンパ節転移の可能性が極めて低い病変(例:潰瘍所見のない分化型の粘膜内癌など)は内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の適応となる。 ・それ以外は外科切除(リンパ節郭清を伴う胃切除)が基本となる。

POINT

・0-Ⅱc型=表面陥凹型の早期胃癌。浅い陥凹、境界明瞭で不整な辺縁(蚕食像)、インゼル、ひだ集中の先端変化が特徴。 ・早期胃癌の中で最も多い肉眼型は0-Ⅱc型である。 ・内視鏡像の読影は「臓器(食道か胃か)」→「早期癌の形か進行癌の形か」の順に判断する。 ・2型は境界明瞭な周堤+潰瘍、3型は境界不明瞭な周堤+潰瘍、4型はひだ肥厚・壁硬化が主体。 ・陥凹の色調:褪色調→未分化型、発赤調→分化型を示唆。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。