飛び飛びに、深く、縦に―Crohn病の腸を形づくる3つのキーワード
第108回医師国家試験 A問題 第16問
国試問題にチャレンジ
Crohn病に特徴的なのはどれか。2つ選べ。
- a.敷石像
- b.輪状潰瘍
- c.小腸狭窄
- d.大腸黒皮症
- e.連続性病変
対話形式の解説
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ドクターまとめ
Crohn病は口腔から肛門までの消化管に生じる原因不明の慢性肉芽腫性炎症性疾患で、回腸末端〜回盲部に好発します。特徴は、正常粘膜をはさんで飛び飛びに現れる非連続性病変、長軸方向の縦走潰瘍と敷石像、腸管壁全層に及ぶ炎症の3点で、全層性炎症と線維化のため小腸狭窄や瘻孔・膿瘍をきたしやすくなります。連続性病変は潰瘍性大腸炎、輪状潰瘍は腸結核の特徴であり、大腸黒皮症はアントラキノン系下剤の常用によるリポフスチン様色素の沈着でCrohn病とは無関係です。非乾酪性類上皮細胞肉芽腫も含めた所見を「分布・形・深さ」で整理しておくと、炎症性腸疾患や腸結核との鑑別、さらに狭窄など合併症の予測にも役立ちます。
解答・解説
正解はa, cです
Crohn病は、口腔から肛門までの消化管のどこにでも起こりうる原因不明の慢性肉芽腫性炎症性疾患である。10~20歳代の若年者に多く、腹痛・下痢・発熱・体重減少・肛門病変(痔瘻、肛門周囲膿瘍)などで発症する。 病変の特徴は次の3点に集約される。 ①分布:病変が健常粘膜をはさんで飛び飛びに存在する(非連続性、skip lesion)。好発部位は回腸末端~回盲部であり、小腸・大腸の両方に病変をもつ小腸大腸型が多い。 ②肉眼形態:腸管の長軸方向に沿う縦走潰瘍と、潰瘍に囲まれた粘膜が盛り上がって石畳のように見える敷石像(cobblestone appearance)が典型である。 ③深さ:炎症が粘膜から漿膜まで腸管壁の全層に及ぶ(全層性炎症)。そのため線維化による狭窄、瘻孔、膿瘍などの合併症を起こしやすい。組織学的には乾酪壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫がみられる。 比較対象として、潰瘍性大腸炎は直腸から口側へ連続的に広がる大腸の粘膜・粘膜下層の病変であり、腸結核は輪状(帯状)潰瘍が特徴である。これらとの違いを整理しておけば、各選択肢を判断できる。
選択肢考察
- ○a. 敷石像
正しい。敷石像は、縦走潰瘍や多数の小さな潰瘍に囲まれた粘膜が、粘膜下層の浮腫・炎症細胞浸潤や粘膜筋板のひきつれによって大小不揃いに盛り上がり、石畳を敷き詰めたように見える所見である。縦走潰瘍とともにCrohn病の診断基準の主要所見に含まれる、代表的な内視鏡・造影所見である。
- ×b. 輪状潰瘍
誤り。Crohn病の潰瘍は腸管の長軸に沿う縦走潰瘍が特徴であり、腸管を輪のように取り巻く輪状潰瘍ではない。輪状(帯状)潰瘍は腸結核に特徴的である。結核菌が腸管のリンパ流(腸管壁を輪状に走る)に沿って広がるため、潰瘍が腸管の短軸方向に広がると考えられている。腸結核は回盲部に好発し、萎縮瘢痕帯を伴うこともある。
- ○c. 小腸狭窄
正しい。Crohn病は潰瘍性大腸炎と異なり小腸にも病変を生じ、特に回腸末端が好発部位である。炎症が腸管壁の全層に及び、再燃と寛解をくり返すうちに線維化が進むため、小腸の狭窄をきたしやすい。狭窄は腸閉塞の原因となり、内視鏡的バルーン拡張術や外科的治療(狭窄形成術、腸切除)が必要になることも多い。
- ×d. 大腸黒皮症
誤り。大腸黒皮症(大腸メラノーシス)は、大腸粘膜が褐色~黒褐色に着色する状態である。センナ・大黄・アロエなどのアントラキノン系下剤を長期に常用すると、傷害された上皮細胞を貪食したマクロファージが粘膜固有層にたまり、その中にリポフスチン様の色素が沈着することで生じる。名称に反してメラニンの沈着ではない。下剤を中止すれば改善しうる可逆性の変化であり、Crohn病とは関係がない。
- ×e. 連続性病変
誤り。Crohn病の縦走潰瘍や敷石像は、正常な粘膜をはさんで飛び飛びに存在する非連続性病変(skip lesion)が特徴である。直腸から口側へ途切れずに連続して広がる病変は、潰瘍性大腸炎の特徴である。
Crohn病と潰瘍性大腸炎の比較
・病変部位:Crohn病は全消化管(回腸末端~回盲部に好発)、潰瘍性大腸炎は大腸に限られる(直腸は必ず侵される) ・分布:Crohn病は非連続性(skip lesion)、潰瘍性大腸炎は直腸から連続性 ・炎症の深さ:Crohn病は全層性、潰瘍性大腸炎は主に粘膜~粘膜下層 ・肉眼所見:Crohn病は縦走潰瘍・敷石像・アフタ、潰瘍性大腸炎は血管透見像の消失・びらん・偽ポリポーシス、X線での鉛管像(ハウストラの消失) ・組織所見:Crohn病は非乾酪性類上皮細胞肉芽腫、潰瘍性大腸炎は陰窩膿瘍・杯細胞減少 ・合併症:Crohn病は狭窄・瘻孔・膿瘍・痔瘻、潰瘍性大腸炎は中毒性巨大結腸症・大腸癌 ・症状:Crohn病は腹痛・下痢・体重減少、潰瘍性大腸炎は粘血便
Crohn病の診断基準(主要所見)
①縦走潰瘍、②敷石像、③非乾酪性類上皮細胞肉芽腫。副所見として、消化管の広範囲にみられる不整形~類円形潰瘍またはアフタ、特徴的な肛門病変、特徴的な胃・十二指腸病変がある。
輪状潰瘍をきたす主な疾患
腸結核のほか、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)起因性腸病変でも輪状潰瘍や膜様狭窄がみられることがある。
POINT
・Crohn病の三大所見は縦走潰瘍・敷石像・非乾酪性類上皮細胞肉芽腫。 ・病変は全消化管に非連続性に分布し、回腸末端に好発する。全層性炎症のため狭窄・瘻孔・膿瘍をきたしやすい。 ・連続性病変は潰瘍性大腸炎、輪状潰瘍は腸結核の特徴。 ・大腸黒皮症はアントラキノン系下剤の常用による色素沈着(メラニンではない)。
