StudyMed医師国家試験

「つながる」潰瘍性大腸炎、「飛び飛び」のCrohn病―病変の広がり方で見抜くIBD

第119回医師国家試験 A問題 第7問

国試問題にチャレンジ

第119回 A問題 第7問

潰瘍性大腸炎に特徴的な所見はどれか。

  1. a.敷石像
  2. b.縦走潰瘍
  3. c.全層性炎症
  4. d.難治性痔瘻
  5. e.連続性病変

対話形式の解説

ドクタードクター
今回は、炎症性腸疾患の2大疾患である潰瘍性大腸炎とCrohn病を見分ける知識問題だ。実は選択肢のうち4つはCrohn病の特徴で、潰瘍性大腸炎の特徴は1つだけ。だから「この所見はどちらの病気のものか」を1つずつ仕分けていけば答えにたどり着ける。まず、両者の違いをどう覚えているかな。
医学生医学生
消化器内科の講義では、潰瘍性大腸炎は大腸だけ、Crohn病は口から肛門まで、と習いました。
ドクタードクター
いいスタートだね。それに加えて押さえたいのが「病変の分布」と「炎症の深さ」だ。潰瘍性大腸炎は原則として直腸から始まり、口側へ途切れずに広がる。炎症は主に粘膜、深くても粘膜下層までの表層性だ。一方、Crohn病は正常な部分をはさんで飛び飛びに病変ができ、炎症は腸管壁の全層に及ぶ。
医学生医学生
ということは、潰瘍性大腸炎の特徴は連続性病変ですね。
ドクタードクター
正解。直腸から連続してびまん性に広がり、病変と正常粘膜の境目がはっきりしているのが典型だ。範囲によって直腸炎型、左側大腸炎型、全大腸炎型に分類される。Crohn病の飛び飛びの病変はskip lesionとよばれ、これが両者を見分ける大きなポイントになる。では残りの選択肢を仕分けていこう。全層性炎症はどうかな。
医学生医学生
これはCrohn病ですね。病理実習で、Crohn病の切除標本は壁全体が厚くなっていると教わりました。
ドクタードクター
その通り。粘膜から漿膜まで全層に炎症が及ぶから、腸管壁が硬く厚くなり、狭窄や瘻孔、膿瘍、穿孔が起こりやすい。潰瘍性大腸炎でも劇症型で中毒性巨大結腸症になると例外的に深くまで炎症が及ぶことはあるけれど、基本は表層性だ。
医学生医学生
縦走潰瘍は少し迷いました。潰瘍性大腸炎でも潰瘍はできますよね。
ドクタードクター
鋭い疑問だね。潰瘍性大腸炎でも重症になると縦長の潰瘍を認めることはある。でも、腸の長軸に沿って長く延びる縦走潰瘍はCrohn病の診断基準の主要所見で、とくに腸間膜付着側にできやすい。ほかに虚血性大腸炎や感染性腸炎でもみられることがあるから、「縦走潰瘍=潰瘍性大腸炎の特徴」とは言えないんだ。
医学生医学生
敷石像も、縦走潰瘍と関係があるんでしょうか。
ドクタードクター
大いに関係がある。縦走潰瘍とそれにつながる潰瘍が網目状に走ると、取り残された粘膜がむくんで丸く盛り上がる。その外観が石畳に似ているから敷石像というんだ。深い潰瘍が網目をつくるCrohn病ならではの所見で、表層の炎症がびまん性に広がる潰瘍性大腸炎では通常みられない。
医学生医学生
難治性痔瘻もCrohn病ですよね。外科実習で、痔瘻の手術を繰り返している若い患者さんがCrohn病だったことがありました。
ドクタードクター
まさにそれが典型例だ。全層性の炎症が肛門周囲に及ぶと、枝分かれした複雑な瘻管ができて治りにくい。肛門周囲膿瘍や裂肛、浮腫状の皮垂も含め、肛門病変がCrohn病発見のきっかけになることは多い。若い人の難治性痔瘻をみたら、消化管全体を調べることを考えよう。
医学生医学生
整理すると、潰瘍性大腸炎は「直腸から・連続性・表層性・大腸だけ」、Crohn病は「飛び飛び・全層性・全消化管」ですね。
ドクタードクター
完璧だ。そこに内視鏡所見と組織所見を重ねておくとさらに強い。潰瘍性大腸炎の内視鏡では血管透見像の消失、粘膜の粗ぞう・細顆粒状変化、触れただけで出血する易出血性、偽ポリポーシス。組織では陰窩膿瘍と杯細胞の減少だ。Crohn病はアフタや縦走潰瘍、敷石像、組織では非乾酪性類上皮細胞肉芽腫が特徴になる。
医学生医学生
CBTでも肉芽腫の有無はよく問われました。臨床的に注意すべき点はありますか。
ドクタードクター
潰瘍性大腸炎では、長く続く全大腸炎型で大腸癌のリスクが上がるため、定期的な内視鏡サーベイランスが欠かせない。腸管外合併症として原発性硬化性胆管炎、関節炎、結節性紅斑、壊疽性膿皮症、ぶどう膜炎も覚えておこう。それから、喫煙は潰瘍性大腸炎では発症しにくい方向、Crohn病では悪化させる方向に働くという対照的な関係もある。
医学生医学生
手術の考え方も違うんでしたよね。
ドクタードクター
そう。潰瘍性大腸炎は病変が大腸に限られるから、大腸全摘で根治が期待できる。一方、Crohn病は全消化管に再発しうるので、腸管をできるだけ残す手術を行う。病変の広がり方の違いが、治療方針の違いにまで直結しているんだ。

まとめ

潰瘍性大腸炎は、原則として直腸から口側へ途切れずに広がる連続性病変を特徴とし、炎症は粘膜から粘膜下層までの表層性で大腸に限局します。これに対しCrohn病は、全消化管に非連続性(skip lesion)に病変が生じ、全層性炎症のため縦走潰瘍、敷石像、狭窄・瘻孔、難治性痔瘻をきたしやすく、組織では非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を認めます。潰瘍性大腸炎の内視鏡では血管透見像の消失や易出血性、組織では陰窩膿瘍や杯細胞減少が特徴で、長期例では大腸癌のサーベイランスや原発性硬化性胆管炎などの腸管外合併症にも注意が必要です。「分布・深さ・部位」の3軸で両疾患を対比して理解しておくことは、所見の仕分けだけでなく、大腸全摘で根治が期待できるか、腸管温存を優先するかといった治療方針の理解にもつながります。

解答・解説

正解はeです

炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease:IBD)の代表は、潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis:UC)とCrohn病である。本問では、両者の病変の特徴の違いが問われている。選択肢のうち4つはCrohn病の特徴で、潰瘍性大腸炎の特徴は1つだけである。

潰瘍性大腸炎の病変の特徴

・部位: 大腸に限られる。原則として直腸から始まる。 ・広がり方: 直腸から口側(奥)へ、途切れずに連続して広がる(連続性病変)。 ・炎症の深さ: 主に粘膜で、深くても粘膜下層までの表層性の炎症である。 ・内視鏡所見: 血管透見像が消える、粘膜が粗ぞう・細顆粒状になる、易出血性(触れただけで出血する)、びらん・潰瘍、偽ポリポーシス。 ・組織所見: 陰窩膿瘍、杯細胞の減少、陰窩の形がゆがむ(陰窩のねじれや枝分かれ)。

Crohn病の病変の特徴

・部位: 口腔から肛門まで消化管のどこにでも起こる。回盲部(小腸の終わりと大腸の始まり)が最も好発部位である。 ・広がり方: 正常な部分をはさんで飛び飛びに出る(非連続性病変、skip lesion)。 ・炎症の深さ: 腸管壁の全層に及ぶ(全層性炎症)。そのため狭窄、瘻孔、膿瘍が起こりやすい。 ・内視鏡所見: 縦走潰瘍、敷石像、不整形潰瘍、アフタ。 ・組織所見: 非乾酪性類上皮細胞肉芽腫。 ・肛門病変: 難治性痔瘻、肛門周囲膿瘍、裂肛、皮垂(スキンタグ)など。 正解を選ぶには、各選択肢がどちらの病気の所見かを判断すればよい。

選択肢考察

  1. ×a.  敷石像

    Crohn病に特徴的な所見である。Crohn病では縦走潰瘍とそれにつながる潰瘍が網の目のように走る。潰瘍に囲まれて取り残された粘膜は、むくんで(浮腫)丸く盛り上がる。その外観が石畳(cobblestone)に似ているため敷石像とよばれる。炎症が全層に及び、飛び飛びに出るCrohn病だからこそできる所見である。表層の炎症がびまん性に連続して広がる潰瘍性大腸炎では、通常みられない。

  2. ×b.  縦走潰瘍

    Crohn病に特徴的な所見である。縦走潰瘍とは、腸の長軸に沿って縦に長く延びる潰瘍で、Crohn病の診断基準の主要所見の一つである。Crohn病では腸間膜付着側に沿ってできやすい。虚血性大腸炎でも縦長の潰瘍がみられることがある。重症の潰瘍性大腸炎でも縦長の潰瘍を認めることはあるが、潰瘍性大腸炎の特徴的所見ではない。

  3. ×c.  全層性炎症

    Crohn病の特徴である。全層性炎症とは、粘膜・粘膜下層・固有筋層・漿膜(または外膜)という消化管壁のすべての層に炎症が及ぶことをいう。このため狭窄、瘻孔、膿瘍、穿孔が起こりやすい。潰瘍性大腸炎の炎症は主に粘膜にとどまり、深くても粘膜下層までである。ただし、劇症型で中毒性巨大結腸症を起こした場合などは、例外的に深い層まで炎症が及ぶことがある。

  4. ×d.  難治性痔瘻

    Crohn病に特徴的な肛門病変である。全層性の炎症が肛門管や直腸周囲に及ぶと、枝分かれした複雑な瘻管をもつ痔瘻ができ、治りにくい。肛門周囲膿瘍、裂肛、潰瘍、浮腫状の皮垂などとともに、Crohn病を疑うきっかけとなる。若い人の難治性痔瘻をみたら、Crohn病を疑って消化管を調べるべきである。潰瘍性大腸炎は炎症が表層にとどまるため、痔瘻はできにくい。

  5. ○e.  連続性病変

    潰瘍性大腸炎に特徴的な所見である。潰瘍性大腸炎の炎症は、原則として直腸から始まり、口側へ途切れることなく連続して、びまん性に広がる。病変と正常粘膜の境目ははっきりしている。炎症の範囲によって、直腸炎型・左側大腸炎型・全大腸炎型に分ける。これに対し、Crohn病は病変が飛び飛びに出る非連続性病変(skip lesion)が特徴で、ここが両者を見分ける大きなポイントとなる。

潰瘍性大腸炎の概要

・大腸の粘膜にびらんや潰瘍ができる、原因不明のびまん性の炎症性疾患である。発症のピークは20歳代だが、高齢者でも発症する。 ・主な症状は、血便(粘血便)、下痢、腹痛。症状が悪化する時期(再燃)と落ち着く時期(寛解)を繰り返す。 ・腸の外の症状(腸管外合併症)として、関節炎、結節性紅斑、壊疽性膿皮症、虹彩炎・ぶどう膜炎、原発性硬化性胆管炎(PSC)などがある。 ・長く続く全大腸炎型では、大腸癌(colitis-associated cancer)のリスクが上がるため、定期的に内視鏡で調べる(サーベイランス)。 ・喫煙者では発症しにくいことが知られている(Crohn病は逆に喫煙で悪化する)。

潰瘍性大腸炎とCrohn病の対比

・病変部位: UCは大腸のみ(直腸から)/Crohn病は全消化管(回盲部に多い) ・病変の分布: UCは連続性/Crohn病は非連続性(skip lesion) ・炎症の深さ: UCは粘膜〜粘膜下層/Crohn病は全層性 ・内視鏡所見: UCは血管透見像の消失・易出血性・偽ポリポーシス/Crohn病は縦走潰瘍・敷石像・アフタ ・組織所見: UCは陰窩膿瘍・杯細胞減少/Crohn病は非乾酪性類上皮細胞肉芽腫 ・合併症: UCは中毒性巨大結腸症・大腸癌/Crohn病は狭窄・瘻孔・膿瘍・難治性痔瘻 ・手術: UCは大腸全摘で根治が期待できる/Crohn病は再発が多く、腸管をできるだけ残す手術を行う

縦走潰瘍の鑑別

Crohn病のほかに、虚血性大腸炎、重症の潰瘍性大腸炎、感染性腸炎などでもみられることがある。

POINT

・潰瘍性大腸炎の病変は「直腸から連続性・表層性(粘膜〜粘膜下層)・大腸に限局」。 ・Crohn病の病変は「非連続性(skip lesion)・全層性・全消化管(回盲部に多い)」。 ・縦走潰瘍、敷石像、難治性痔瘻、全層性炎症、非乾酪性類上皮細胞肉芽腫はCrohn病を示す。 ・潰瘍性大腸炎の組織所見は陰窩膿瘍と杯細胞の減少である。

※問題・正答は厚生労働省の公開資料をもとに掲載しています。